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花田種苗の5人姉弟妹  作者: グレープヒヤシンス
第2章
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プール

「ねえ、花ちゃん!」

帰りの地下鉄の中で千葉が珍しく、以前の呼び方で話しかけてきた。

「プール行こうよ、プール!今日のみんなでさ!」

小学生のプール授業以来プールには縁が無いらしい。授業じゃないプール、スク水じゃない水着をご所望なんだろうな。

「まさか、もみじの水着姿を期待するわけはないよね!」

「さすがに、それは・・・」

どうでもいいけど、顔を赤くしながら言い訳しないで欲しいな。

「ねえ、桐!千葉が一緒にプール行きたいって!」

心の準備が出来ていなかったらしく、釣り上げられた魚のように、あたふたしている。

「えっ?二人で?」

釣り上げられた魚は、まな板に移動させられた。

「○×+○%!・・・って、あの・・・」

千葉は、普通に会話が出来る状態じゃ無かったので、通訳。みんなで行こうと誘ったら全員一致で決定。出来ればリゾートっぽい所がいいので、『お菓子の王国』にあるプールに行く。夢愛は、水着を持っていないと言うので、新創成で見ていくことになった。委員長も、今日のバイト代で買おうかな?って、ぞろぞろと店をうろついた。姉達を捕まえて、

「プールは松太郎で行きたいな!」

さすがに、水着はムリだし、更衣室でつかまっちゃうでしょ?懇願の視線を汲み取ってくれたのか、以外とあっさり、

「そうね、プール()()は松太郎でいいよ!」

ん?今のって、『プール以外は()()もみじ』って約束したことになっちゃったかな?まあいいか。今と変わらないからね。

夏休みも後半だったからかな?水着が安くなっていたので、全員新調していた。メンズの売り場が貧弱だったので、近くのスポーツショップに移動。店員さんは、3人のガタイを見て、競泳選手のようなブーメランを進めてきた。きっと似合う筈だが、ビーチボールで遊んだりするには、もう少しカジュアルな方がいいな。3人の分を選んで試着している間に、松太郎の分も選んだ。試着は出来ないがウエストが合えば大丈夫だろう。若い女性店員さんがか、こそこそ話で、

「3人の中でだれかが彼氏かな?どの子でも美男美女よね・・・」

聞こえてるよ。まあ、目立っからしょうがないかな?

レジに並び自分の番になると、不思議そうな店員さんの視線に耐えきれず、

「あ、兄に頼まれて・・・」

いらない嘘をついてしまった。

女性陣と合流。購入の時、別行動だったお陰で、明日の御披露目が楽しみになった。どんな水着を選んだかの情報は伏せておくことにしてバスターミナルに向かった。猛者達は、水着を妄想しているのか、とても幸せそうな表情で視線を泳がせていた。


家に着いて、ご飯の支度。きっとこうなると思って、ご飯は大量に炊いてある。牛肉を解凍している間にたまねぎを刻んで炒め、牛肉を投入。秘密のタレで少し煮込む。どんぶりのご飯の上に乗せると、牛丼の完成だ。いろはが、お味噌汁を作ってくれたので、『早い』『旨い』を再現できた。

満腹になって、委員長と夢愛さんは、猛者達が送って行った。最後にお風呂に入ると、脱衣室に松太郎の私服が置いてあった。久しぶりに男装?いや普通の格好でリビングに行くと、パジャマじゃなく普通の服のいろはが待っていた。

「しょうくん、送ってくれる?」

いつ以来かな、自宅に帰るんだね!いろはを送って家に戻ると、

「お帰り、お兄ちゃん!」

雨が、懐かしい呼び方で迎えてくれた。

「あっ、ショタ丁度良かった、ドラッグストアー行って、日焼け止め買ってきて!強力なヤツ!」

「目薬もいる?」

いろいろとお使いを言いつけられて、ドラッグストアーとコンビニに向かった。帰ったら、プールのバッグがないとか、ビーチボールを探せとか麦わら帽子はどれがいいかとか、バタバタして夜中になった。久しぶりに独りで寝るベッドは、異様に広く感じた。スマホが揺れると、いろはからのおやすみメッセージだった。爆睡のスタンプを送って、広いベッドで眼を閉じた。


翌朝、いろはがいない朝食。昨日のうちにおにぎりを作っていたので、いろはが作ってくれたお味噌汁を温め直して、目玉焼きを焼いて完了。雨にみんなを起こして回ってもらった。芒以外はすんなり起きて来て、朝食を済ませた。芒を起こしに行ったが、タオルケットにくるまってピクリとも動かない。足をくすぐったり、脇腹をつついて、何とか反応させた。

「変態、痴漢、シスコン!」

最近あまり聞かなかった罵声を浴びせられ、何とかタオルケットを没収した。

「プール行く日だよ!みんな朝ごはん食べちゃったよ!」

何とかベッドから降ろすことに成功した。ダイニングに引っ張って行くと、いろはが来ていた。

「ご飯は?」

「うちで食べてきたよ!」

芒のご馳走さまを待って、駅に向かった。久しぶりに()()()としての外出だ!


『お菓子の王国』へは、創成駅から送迎バスが出ているので、JRを使う。駅で集合すると、山岸さんが元気無かった。こっそり聞くと、興奮して眠れ無かったそうだ。列車は空いていたので、姉達をばらして、猛者達にチャンスを作った。彼らは、お目当ての隣をゲットするまでは良かったが、そこで固まってしまい、あまり会話は楽しめ無かったようだ。


送迎バスでも同じ感じだったが、今度は少し楽しそうな声が聞こえて来た。姉達って義理で付き合ったりしそうにないから、もしかして気に入っているのかな?だったらいいな。なんて思っているうちに、『お菓子の王国』に到着。受付を済ませ、更衣室で別れた。

ポロシャツとデニムを脱ぐと、猛者達は一斉にあっちを向いた。

「ガン見して欲しい訳じゃ無いけど、今日は松太郎なんだからね!」

3人は顔を赤くしながらこっちを向いた。普通に松太郎で安心してくれたようだ。ただ、あまりにも()()()でいる事が多くて、上半身に何も着けていない事が少々違和感を覚えた。


更衣室を出ると、カレンが勢い良くハグ。シンプルな青のビキニだが、中身のせいでかなり目立っている。

姉妹といろはは、お揃いの黒。縁取りが色違いになっていて、桜が赤、桐が青、芒が緑、いろはがオレンジ、雨がピンク。初ビキニの雨が恥ずかしそうにいろはの後ろに隠れていた。

委員長は水色のビキニというか、セパレートって感じ。スカート付きで上はタンクトップを短くした感じ。

夢愛さんは、かなり頑張ったようで、赤のビキニ。下は両脇がリボンになっていて、ほどけたら大丈夫か?ってイメージ。上も胸元と首の後ろがリボンで、なんとなく心配になるデザインだった。


「お兄ちゃん、変じゃないかな?」

「うん、似合ってる。可愛いよ!」

へへっと笑って、委員長と浮き輪を借りに行った。


猛者達には、なるべく姉達に接触するチャンスを作ろうと思っていたが、ガチで泳いでタイムを競っていた。もう放っておこう。


いろは、カレン、夢愛とビーチボールで遊んでいた。ボールが少し流れ、プールに落ちるかと思ったら、夢愛のアスリート魂に火を付けてしまったようで、水飛沫を上げてダイブしていた。ボールは上がって、トスが続くと思ったら、赤い布がプールに浮いていた。慌てて拾い、夢愛に渡した。いろはとカレンも壁なって、大事には至らなかった。一生懸命直している所に、何も気が付いていない山岸さんが、ボール遊びに参加しようと泳いで来た。

「山っち、来るな!」

夢愛が叫ぶと、山岸さんは不思議顔で止まった。かなり遅れて事情を把握すると、回れ右で退散した。

しばらく勝手に過ごしていると、ビーチチェアで寝転んでいた姉達に、ナンパ男が群がって来た。面倒臭そうにしているので、猛者達に助っ人に行って貰った。普段、衣類越しでも目立っている筋肉が、海パン一丁だと、チャラいお兄さん達には、凶器に見えたようで、蜘蛛の子を散らすってこんな事を言うんだろうな。

「面倒な事にならないように、近くにいた方がいいよ!」

ボディーガード代わりに猛者達を配置して平和が戻った。一安心して、反対側のビーチチェアで横になっていると、眠ってしまったようだ。知らない声に起こされた。

「これから、海にドライブ行こうよ、やっぱプールより海だよ!」

眠っているうちに、バスタオルを掛けてくれていたようで、ナンパのお兄さんが勘違いしてしまったようだ。ムクッと起きて、バスタオルが剥がれると、お兄さんは猛ダッシュで居なくなった。髪もずいぶん伸びたし仕方がないのかな?


その後は目立った事件もなく、ランチを食べて、午後も少し泳いで、みんな満足したようだったので、『お菓子の王国』のお菓子を物色してみた。母さんが好きそうなお菓子を見つけ、賞味期限も長めだったので買っておいた。送迎バスとJRで帰宅した。


家に帰って、ご飯を食べて、お風呂に入った。風呂上がり、脱衣室にはレディースのパジャマが置いてあった。

リビングに行くと、いろはが、アイスコーヒーを入れてくれた。いろはもパジャマだったので、今夜は泊まって行くようだ。()()()でいるといろはが泊まって行くルールなんだろうな。


柔道部の休日は2日で終わったので、明日からはまた稽古三昧だろう。

「明日の、予定は?」

いろはは、また何かイベントが有るのかとワクワクして聞いてきた。取り敢えず、決まっていない事を話すと、

「ここ!カレンが喜びそうだよ!」

スマホで検索した画面を見せてくれた。

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