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花田種苗の5人姉弟妹  作者: グレープヒヤシンス
第2章
28/139

子供の森

玄関には夢愛さん。

「バスで山っち(山岸さん)と斉藤君と待ち合わせているよ!」

バス停で待っていると、停まったバスには山岸さんが乗っていて、2つ先のバス停で斉藤さんが乗って来た。

新そうせいから地下鉄オーロララインに乗りポールラインに乗り換える。南に2つ行って、中の森駅。


遊園地では、4人で乗れる物から乗って、ふたり乗りのアトラクションは、山岸さんと斉藤さん、かわりばんこに一緒に乗った。観覧車は、4人で乗れるのに、なぜか夢愛さんとふたりで乗った。

「万引き疑われたとき、助けてくれてありがとう。」

あの時は、小学生男子だと思っていたとは言えないな。

「小学生男子だと思ったのに、年上の女子高生だったなんて驚いたでしょ?」

「えっ?バレてたの?」

「うん、千葉くんが、入部した時に、出身中学聞いた時に()()()くんのこと聞いてみたんだ。あの本屋さんに良く通ってる話をしたら、あの時の事件の話になって、『万引きグループに間違いられそうになった小学生の男の子を助けてあげた』って言ってたから!」

会話のラリーが完全に読みを外して、どうしても返せそうにない。

「あっ、気にしないで、日常茶飯事だし、つい最近も、女湯で拒否られたし。」

番台で生徒手帳を見せた入ったそうだ。

「空港でカレンと一緒だったのは、偶然?」

「実はね、山っち経由で芒ちゃんからメッセージ貰っていたから、3人に合わせて帰って来たんだ。」

芒、何て誘ったんだろう?頭の中の『?』に気付いてくれて、

()()()の彼女は、1枠しかないから、厳しいけど、()()()の親友なら、なん枠かあるからって誘ってくれたんだ。」

それで女装も気にしないんだな。

一周が終わって丁度お昼だったので、ベンチでまっていた二人と合流してお弁当を食べた。特大は、何度か一緒に食事をしているので、予想通りのサイズだった。夢愛さんも気に入ってくれたようで、小さな身体のどこに収まるの?って勢いで平らげた。

「部活引退して、この勢いで食べ続けたら、おデブちゃんになりそうね!」

呑気に笑って最後の唐揚げをパクり!

食後、山岸さんが、

「ふたりでジャンケンして!」

夢愛さんとジャンケン、俺が勝つと、斉藤さんが、

「じゃあ、もみじちゃんは俺と一緒ね!」

ボートに乗るペアを決めるジャンケンだった。


ボートに乗ると、低い所に向かい合って座る格好になり、スカート丈が圧倒的に足りない。ホンモノの女子なら、上手に座るのかも知れないが、俺にはそこまでのスキルが無かった。姉妹やいろはとボートに乗った時、彼女達はどうしていたかを思い出しながら、不自然な座り方をしていると、斉藤さんは、タンクトップの上に羽織っていたシャツを脱いで膝に掛けてくれた。

「あっ、ありがとう。」

「なんか、気が散ってボート転覆させたらヤバいでしょ?」

赤面しながらも、ジェントルマンの斉藤さん、相手が俺だってこと忘れてるんじゃないかな?

「島回って見ようか?」

頷くとスピードを上げて、池の中の方へ進んだ。いくつか浮かぶ小島は、上陸するようにはなっていない筈だが、1艘ボートが留まっていて、島に上がった様に見える。島の裏側から見えたのは、カップルさんの濃厚なイチャイチャ。R18表現になるので、描写は割愛ってことで。

斉藤さんは、更に赤くなり、全速力で島を離れた。

「オーイ!」

遠くから山岸さんの声、慌てて近付いてきた。

「雷と集中豪雨の警報が出たみたいだから、もう帰るぞ!」

急いでボート小屋に戻り、地下鉄駅に走った。

いきなり、空は黒い雲に覆われ、大雨が降ってきた。

ピカッ、ゴロゴロ!!

ピカッからほぼ遅れ無しのゴロゴロは、近くに落ちたんだろう。まだ明るい時間だから良くわからないが、看板や、ビルの窓から見える照明は消えている。周りを確かめると、信号機も消えていた。

階段を降りて、改札に行くと、茶色い制服の駅員さんが、

「落雷による停電で、運休しています!復旧の見込みは立っておりません!」

スマホで確認すると、今夜から明日にかけて影響の可能性があった台風が、予想を越えた規模と速度で接近したらしい。タクシーで帰る?かなりの金額だろうな。駅の出口周辺には、タクシー乗り場は見当たらないし、タクシー自体が走っていない。雨は一向に弱まる気配はなく、雷も遠くない距離で幾度も落ちていた。

スマホの災害情報では、交通機関は全てストップ。避難勧告が出たり、外出自粛の呼び掛けが出ていた。


駅で雨宿りしていたが、スマホの災害通知が鳴り続けた。

「帰るより、泊まる所探した方が良さそうね!」

山岸さんに、スマホで宿を検索して貰った。

「2番出口のところがビジネスホテルだけど、アクセス集中して予約の画面に行けないんだ!」

山岸さんがイライラしてスマホを弄る。

「直接行ってみようよ!」

みんなを誘って2番出口からホテルに駆け込んだ。フロントで相談すると、ツインが1室、ダブルが1室だけ空いているとのこと。

「男性お二人でツイン、女性お二人がダブルがよろしいかと思います。」

フロントのお姉さんは、帰宅難民の高校生と見抜いて、男女別部屋にして、ネット予約で来たことにして、最安値で処理してくれた。

ホテルの傘を借りて、夢愛さんとコンビニに買い出し。晩ご飯、朝ごはん、おやつ、非常食。行きは追い風だったけど、帰りは当然向かい風で、傘が壊れそうなので、差さずにダッシュ。ずぶ濡れで帰った。


家に連絡しようとしたが、回線が混みあっているのか、全然繋がらない。メッセージを送ると返事が来たので、届いているようだ。うちは、特に問題無いそうでホッとした。


ダブルの部屋で4人で食事。フロントから内線が入り、発電設備も停電の恐れがあるので、お風呂は直ぐ済ませ、エレベーターは使わない様に言われた。

お風呂は済ませていたので、緊急に備え早めに寝ることにした。山岸さんと斉藤さんが部屋に戻ると、ダブルベッドの部屋に、夢愛さんとふたりが残った。

「やっぱり、向こうの部屋で泊まるよ。」

そう言い残して、二人を追った。

部屋に着いて、夢愛さんとダブルベッドは流石に不味いから、泊めて欲しいと頼んだ。二人も戸惑っていたが、本来なら松太郎と夢愛が同室は無いなと、同意してくれたが、ツインの部屋にはソファーも予備のベッドも無いので、山岸さんのベッドにお邪魔することになった。山岸さんは、吃りながらお休みを言って、すぐに寝たフリをしているようだ。俺は、いろはがベッドに来た時と比べたら、動揺する程でもないので、落ち着いて眠れたようだ。


朝起きると、スマホが圏外表示。四人とも圏外なので内線でフロントに電話しようとしたが、受話器を持っても無音だった。照明もダメ、エレベーターもダメ。幸い、3階だったので、階段でフロントに行くと、市内全域で停電し携帯電話の基地局もバッテリーが尽きて繋がらなくなったらしい。暴風はまだ吹き続けているので、もう1泊になりそうだ。

雨は収まっていたので、昨日のコンビニに行って見たが、食べ物は殆んど売り切れていた。残っていたお菓子とペットボトルのお茶を買い込んでホテルに戻った。外出はまだ危険と言うので、部屋でおとなしくしていた。スマホは圏外のままなので、バッテリー温存の為に電源を切った。昨日買っておいた朝ごはんを、半分だけ食べて部屋でのんびりしていた。ホテルも停電なので、水も出なくなった。

お昼は、朝に半分残しておいたお弁当を食べて、晩ご飯は、お菓子を摘まんで凌いだ。

フロントで貸してくれたボートゲームは、なかなか面白く、山岸さんと斉藤さんが結婚したりして大いに盛り上がった。何度目かの時、斉藤さんと夫婦になったが、出産枠に止まる度に恥ずかしがるのは、勘弁して欲しかった。ゲーム内では、パーティーや、高級レストランでのお食事なんかもあったが、リアルではクッキーとポテチが今日のディナーだった。空腹を抱えて、灯りも無いので、さっさと眠る。今日は斉藤さんのベッドに泊めて貰う。昨日の山岸さん同様、かなり緊張しているようだ。やっぱり寝たフリだね。俺はすっかりリラックスしているので、ぐっすり眠った。

明け方、電気が復活したようで、照明が付いて目を覚ました。スマホを確認すると、電波も復活していた。災害情報を確認すると、地下鉄は始発から通常営業、バスは天候を確認しながらの再開になるそうだ。

チェックアウトに行くと、2泊目は無料にしてくれて、人数分のあんパンをプレゼントしてくれた。ボートゲームが面白かったとお礼を言って返そうとしたら、大昔、プレゼントで配ったものの余りで、ゲーム機やスマホのアプリに負けて、人気がなくなったそうで、良かったらどうぞとのこと。家でやるのも楽しそうなので、ありがたく頂いて帰った。

始発に乗って、新そうせい迄戻った。バスターミナルには、既に結構な人数が並んでいるが、バスは1台も見当たらない。まあ、他の選択肢よりは、確率が高いだろうから、のんびり待ってみる。9時を過ぎると、徐々にバスが入ってきて、10時過ぎにはバスに乗れた。信号機が消えているところとかで、かなりノロノロだったが何とかお昼頃、家にたどり着いた。

桜は、千葉を呼び出し、遊園地の報告会が始まる。

と思ったが、山岸さんと斉藤さんがリビングのソファーに座った途端、爆睡してしまった。

貰って来たボードゲームで盛り上がって、二人の復活を待つことにした。

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