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花田種苗の5人姉弟妹  作者: グレープヒヤシンス
第2章
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もみじの尋問

『モテ期』?幼なじみの美少女、ブロンドのハーフ美少女、小柄で少年のような美少女が、『もみじ』を奪いあっている?芒と桐が噛んでいて、桜が関わっていない筈がない。桜が掘った奈落まで繋がる落とし穴には、いくら注意しても、し過ぎる事は無いだろう。


現状を把握してみる。

ここしばらく俺の部屋で同居中のいろは。

俺としては、『松太郎』としていろはを異性として好きだけど、いろはは、同性の『もみじ』と親友として付き合っているつもりだろう。イマイチ、喜んでいいものか判断出来ない。

留学で我が家にホームステイすることになったカレン。

テロ事件に一緒に巻き込まれ、『吊り橋効果』で好いてくれたのかも知れない。再開していきなりのキスには、驚いたが、基本的に姉妹のつもりでいるような感じ。やはり『松太郎』がモテている感じじゃない。

1番の謎が夢愛さん。

別の高校に通う友達の部活の先輩ってだけで、少なくとも、名乗りあったりしていないし、会話した記憶もない。もし何か間違いでもあって『松太郎』を好いてくれていたとしても、『もみじ』の姿ですっかり冷めちゃう筈。柔道部の猛者達の誰か狙いかな?3人ともかなり整った顔立ちだよね。まあ、柔道部のオーラと筋肉で、()()くらいなので、アイドル好きな娘から見ると恐い人かも知れないけどね。


姉達がどう思っているかが1番の問題だな。大体、いろはが部屋に住み着いたのも、姉達といろはで決めた事だし、いろはが来てからは、学校や必要最低限の外出以外は『もみじ』として暮らす事になってしまっている。初恋以来、延々と想い続けている女の子が同じベッドで寝ていて、手を出せないのは、拷問以外の何でもないと思っていたが、慣れて来ると、これ程恵まれた環境は無いとも思えてきた。何かが動き出して、この環境が変わってしまうのは、ちょっと受け入れ難い。いろはも、姉達とどう話をつけているのか教えてくれない。俺が現状維持を希望し始めたので、状況の撹拌に出たのかも知れない。

今の所、具体的に動いたのは、

芒・『カレンvsいろは』では、カレンの勝ち目が無いので、たまたま見かけた夢愛さんを巻き込んだ。

雨・いろは推し。小さい頃から姉妹みたいな感じだったからね。

桐・『三つ巴対決』でも、いろはの圧勝が崩れ無いので、二人をサポートして、混戦になるように仕向けた。

猛者達・夢愛さんを引き合わせたのは、単純に同じ遠征先から帰っただけなのか、姉達の意向が反映されての事なのかが気になるな。千葉に聞いて見ようかな?


千葉にメッセージを送ると、

『もみじから、デートに誘ってくれるなんて嬉しいな!明日の稽古は3時迄だから、4時頃迎えに行くよ!行きたい所考えておいてね!』

松太郎は眼中に無いようだ。


シャワーだけでさっと済ませて寝よう!浴槽の栓を抜こうとしたら、いろはがが入ってきた。

「さっき、入ってなかった?」

「うん、で、もみじが手抜きしないか、監視ってやつかな?明日はデートだから、念入りにお手入れしなきゃね!」

「えっ?『もみじ』で行くの?そんなつもり無かったんだけど?」

「メールの返信ちゃんと読んだ?」

いろはは、笑って背中を流してくれた。髪もしっかりケアしてくれた。もちろん、急に伸びたりすることは無いが、キチンと手入れした髪は女子っぽい。


明日の事が気になって、見過ごしていたのか当然お風呂なので、いろはは全裸だった。気付かないふりで浴槽に逃げ込んだ。二人でお湯に浸かって、温泉プチ旅行の話をした。カレンや夢愛さんの話は出て来なかった。逆上せる寸前まで話し込んで、部屋に戻った。

「お風呂であんなに話さなくても、ここに帰ってからでも良かったのにね!」

いろはは、呑気に言うが、カラダの変化でお湯から出られなかったのが正直な所なんだけど、チェックが入らないから黙っておこう。


当たり前の様に眠って、当たり前の様に目を覚ました。いろはは、先に起きていて、クローゼットとにらめっこ。

「おはよう、いろは。何してるの?」

「デートコーデを考えてたよ!これとこれ、どっちがいい?」

これは、『松太郎』を選択する事は不可能だろう。せっかくなので、どちらかというと、桐が好みそうな方を選んだ。それを着るのかと思ったが、出掛ける前に着替えるのがいいと、部屋着を渡された。


午前中は、宿題をしながらカレンの勉強を手伝った。一応、1学期迄の勉強を日本語で理解出来るようにする予定。意外な事に日本史や、日本の地理をしっかり把握しているのに驚かされた。


午後は、久しぶりにスマホのゲーム三昧。夏休みに入ってからは、なかなか自分の時間が取れなかったので、毎日、ログインボーナスとデイリーミッションだけしか出来ていなかった。ガチャチケットが貯まっていたり、アイテムの強化をして、メインストーリーを進めた。課金はしない主義なので、そうそう一気に進め無いが、貰いっぱなしのアイテムで回復しながら、レベルアップボーナスでしばらく楽しめた。

「いい加減にして、デートの支度したら?」

いろはが手を引いて、鏡台に座らされた。ビューラーで睫毛を持ち上げると、ますます姉達に似ていて可笑しくなってきた。目元に少しと、色付きリップ。ほんの少しで、こんなに変わるんだ!かなり嬉しいんだけど、喜んだりしたら、永久にもみじのままで松太郎に戻れ無い気がしたので、何とか誤魔化しておいた。


『ピンポーン』

部活のジャージで登場すると思っていた千葉は、チノパンにポロシャツ伸びかけの坊主頭が何かでツンツンしていた。まさかのデートモード?

夢愛さんの事を聞きたかっただけなので別にどこかに行こうとか考えていなかったけど、流石に千葉のお洒落を無視したら、いろはや、姉達に責められそうなので、パフェを食べに行った。以前、桜に変装して三浦さんと行ったカフェだ。いつになく、口数の多い千葉は、不審者捜索の時に、桐とデートのフリをしていた時と同じ顔だった。ちょっと調子に乗って、腕を組んでみた。今度は一転、すっかり無口になってしまった。


カフェに着いて、俺は抹茶パフェ、千葉はチョコパフェをオーダー。

「ねえ、夢愛さんってどんな人?」

「えっ?柔道部の先輩だって言ったでしょ?」

「桐と芒は、何か知っているのかな?」

じっと目を合わせると、

「わかった、話すよ!」


~~~~4月の麻幌高校、格技場~~~~

「幌町中から参りました、千葉です!」

新入部員の自己紹介が終わり、先輩方の自己紹介。最後には、マネージャーさんかな?

「女子柔道部、部長の山口です。」

ショートカットで美少女と言うか、中性的な美少年のような、小動物系の女の子。サイズ的には、小学生みたいだった。

稽古が終わった時、

「千葉君、幌町だったら『花田松太郎君』って知ってる?」

「あっ花ちゃん、松太郎なら仲良しっす、一応親友のつもりっす!お姉様じゃなく、松太郎の事をそうやって聞かれるのって珍しいなあ。松太郎知ってるんですか?」

「い、いや、一方的にね、名前も最近解ったんだ!」

どう見ても、松太郎の事が好きだって言っているようにしか見えない。耳まで赤くしてモジモジする姿はなんとも可愛い。

「先輩は松太郎の事が好きなんすか?」

『バン!!』

返事の代わりに、背中と畳がぶつかり合う音がして一瞬息が出来なかった。視界は、可愛い先輩から、格技場の天井に代わっていた。

~~~~~~~~~~~~~

そんな話を、姉達にしたそうだ。

「因みに、それだけしか聞いて無いからね!桐ちゃんに話した事全部だから、それ以上聞かないでくれよな!」

「うん、解ったよ!パフェ美味しいよね!抹茶も食べてみる?」

『あーん』してみた。千葉は真っ赤になって一口食べて、

「山岸さんに聞いたんだけど、夢愛先輩が高1の時中学生に一目惚れしたって言ってたんだって。本屋でなんかあったとかって。」

上目遣いで、

「それだけ?」

「あっ、うん、その、万引きグループに間違えられそうになった時、無実の証言をしてくれたって言ってたらしいよ。」

あっ、あの時!

いつもの本屋で、お弁当のレシピ本を物色していたら、アスリート食の本を選んで、悩んで買わずに帰った小学生の男の子。翌日は、母の日でうちの前で母の日だけ開くカーネーション売り場にその子が買いに来てくれた。2日続けて会ったのと、選んでいた本が、どうも小学生のチョイスに思えなくて、しっかり記憶に残っていた。


月末、もう一度本屋で、見かけた。小学生の悪餓鬼達が万引きしようとしていたので、裏口が開かないように、こっそり足で抑えておいた。悪餓鬼達は、本屋のおっちゃんに捕まって、アスリート食の本を選んでいた子も捕まってしまった。本屋のおっちゃんは、顔馴染みなので、無関係なアスリート食の子を解放してもらった。

「うん、思い出したよ?って言うか、あの事件は忘れて無かったから、『思い出した』は変だね?あの男の子、小学生の悪餓鬼と仲間に見られてたけど、当時高1の夢愛さんだったんだね?」

なるほど、ピンチを救った俺は、夢愛さんにとっては、ヒーローに見えたのかも知れないな。

「もっと食べる?」

白玉を掬って、『あーん』すると、パクり。

「山岸先輩のスマホで画像見せたら、去年も、今年も、母の日にカーネーション買いに来ていたの芒ちゃんが覚えていて、いつか連れて来る約束してたんだよ、カレンちゃんのお迎えの時、チャンスだって、芒ちゃんが言うからさ・・・。もう、ホントのホントに全部話したから、『あーん』しても、『上目遣い』しても、何も話せないよ!」

えっ?私、色仕掛けで千葉の口を割らせたの?

うっ!しかも、一人称が()?無意識に()使ってたんだ。気がつくと、無性に恥ずかしくなった。残っていたパフェを、二人で一気喰い。伝票を掴んでレジに急いだ。

「私が誘って、情報貰ったから今日はご馳走させてね!」

無言で頷く千葉と、カフェの前で別れようとして手を振ったが、

「家まで送る。」

ぼそっと言って、歩き出した。来るときは冗談で腕を組んだけど、思い出しただけで、汗が滲むので、大きな背中を眺めながらスピードも合わせてついて行った。

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