歓迎会・祝勝会
「久しぶり!」
「welcome!」
「お帰り!」
「いらっしゃい!」
「おめでとう!」
「ただいま!」
空港の到着口でいろんな挨拶が、飛びかった。
インターハイからの凱旋した柔道部の猛者達と義妹のカレンが一緒に到着していた。インターハイは奈良大会で、カレンはニューヨークから関空経由。猛者達が1便遅らせて、合流してもらっていた。カレンは、アメリカ国内やヨーロッパはひとり旅の経験が有るので、お出迎えは要らないと言っていたが、英語が通じない土地は初めての筈なので、心配している所に千葉達がボディーガードを買って出てくれた。カレンは日本語も堪能なので、英語が解らない猛者達との合流も問題ない。1番のメリットは、俺たちが空港に来るのが1度で済んだ事かな?
ゲートから駆け出して来たカレンは、俺に抱きついて、いや、抱き締めて有無を言わさずキスをした。
「ニューヨークでも、言ったけど、日本人は挨拶でキスしないから、やめてって・・・」
「はじめまして、もみじ!」
松太郎とは約束したが、もみじと約束した覚えは無いと、涼しい顔で笑っていた。事件のあと鬱だったと聞いていて、姉達が短期留学と言って一緒に過ごしているうちに、前に会った時よりハイになったようだ。
あとを追うように猛者達が出て来た。金髪のお姫様が屈強なボディーガードを従えている様子は、VIP登場って感じ・・・でもないか。猛者達がダークなスーツなら完璧なんだけどね!学校名が入ったTシャツにハーフパンツ。通学の時と変わらないバッグを提げて、カレンの荷物持ちもしてくれていた。『柔道はスパイク要らないし!』以前、遠征に向かう千葉に、荷物が少ない事を話した時に言ってたっけ。
ド派手な4人の後ろに、大きなバッグを背負った小さい女の子が付いて来ている。猛者達とお揃いのTシャツなので、部のマネージャーさんかな?山岸さんが紹介してくれて、なんと女子柔道部の主将で女子で唯一インターハイに進んだ選手で三年生だった。うちの委員長みたいな、フワフワのロリじゃなく、くりくりオメメの小学生男子って感じ。山口夢愛ちゃん。いや、夢愛さんだね先輩だから。良く見ると、大きなバッグに見えていたのは、猛者達と同じサイズだった。簡単に自己紹介、姉達は有名なので、俺、いろは、雨だけで良かった。その後JRに向かった。夢愛さんは、バスで帰るそうで直ぐに別れた。俺達もバスを乗り継いだ方が早いけど、カレンの来日する目的の一つ『カワウソと握手』を叶えるために水族館に行くことになっている。夢愛ちゃ、さんも誘ったが、部活のTシャツじゃ流石にと、断られた。『先に言っておいてよ!』と山岸さんの鳩尾に、一発パンチが入っていたがシックスパックの鎧はビクとも・・・あっ?結構、効いてるな!子供のような見掛けだけど、インターハイ出場は伊達じゃないな。
快速に乗って、水族館。カワウソの体調によって、握手は中止の時があると貼り紙があったが、折角来たので入場した。幸い、カワウソ君は元気な日だったようで、カレンのミッションを一つクリア出来た。ついでに科学館にも寄って、プラネタリウムを楽しんだ。実験を体験できるコーナーがいくつもあって、遊んでいるのはほとんどが小学生だったが、カレンは初めて見るものばかりでどこに行ってもはしゃいでいた。はしゃいでいたのは、解説のバイトのお兄さん達。子供達に話す態度と明らかに違う。鼻の下を測る装置がもしあったら、かなりの測定値が出るだろう。俺も久しぶりに来たが、いつになく親切にして貰った。あっ、もみじで来てたんだった、あの親切さは、松太郎の時と、もみじの違いだったんだね。
その後、おとぎ話のシーンのような、スイーツビュッフェに行ってケーキ三昧。柔道部の猛者達も次の大会迄かなり有って、体重管理の心配が無いので、モリモリ食べていた。
胃袋はもちろん、食道迄ケーキを詰め込んで、ウィンドウショッピング。バスターミナルにカレンの大荷物と猛者達と一緒に留守番のつもりだったが、いろはに拘束されたままだったのでお買い物に付き合う事になった。
カレンのミッションも兼ねて、お洋服を見て回った。コスプレ系の店に入ると一目散に制服コーナーに向かって行った。カレンは日本のアニメや漫画が好きで、ここに来たのは、『セーラー服』だった。宴会グッズってレベルじゃなく、普通に外を歩いていても気にならないクオリティ。アニメの制服なんかもあって、カレンはかなり興奮しているようだ。鏡の前で色々当てて見て、オーソドックスな白の半袖に紺の襟に白の線が1本。赤のスカーフに、紺のスカート。セットで6980円。アニメキャラクターの制服らしいが準ヒロインの、後輩の友達の中学校の制服とのこと。主役の衣装の半額くらいなので、妥当な価格かな?芒の目が、『バイト代入ったでしょ?買ってあげてね!』頷くと、『みんなの分もね!』桐の目が輝いた。実家の花田種苗で、真夏の温室作業を2週間びっしり働いて5万円。高校生からなので、初体験。学園祭カフェを覗いては、初給料なので、何かプレゼントするつもりだったから問題無いんだけどね。桜はさっさとサイズを見極め、いろはと雨の分を選んで、俺の所に来た。レジに連れて行かれ、
「7着買うんで、マケてもらえませんか?」
7着って俺も?桜の交渉で、ニーハイをサービスしてもらい、試着室を借りて着替えから、バスターミナルに向かった。
留守番の猛者達は、姉達の姿を見てうっとりしている。目をハートにしている。俺をそのままハートのまんま見るのは、止めて欲しいが、女装がバレて、外で騒ぎになる方が不味いからこれで良かったのかな?
バスの中では、インターハイの報告をして貰った。
3年連続で出場の山岸さんは、過去2回とも初戦敗退。念願の初勝利から、爆進しての銀メダル。
去年銀の斉藤さんは、銅だったが、去年決勝で瞬殺された相手に、3位決定戦で勝ってのメダルなので、とても喜んでいた。
千葉の階級には、3連覇がかかった絶対王者がいて、階級を変えた有力選手が多く、運良く銀メダルだった。運良くと言っても、全国2位には、違い無いよね!
結果は先に知っていたので、祝勝会の準備はしているので、カレンの歓迎会と合わせてこれから開く。荷物持ちや荷物番のご褒美もしなきゃね。
メニューは手巻き寿司。タイマーでご飯は炊けているし、ネタも用意してあるので、帰って直ぐにパーティーを開始。
目の前で姉達が巻いた手巻き寿司で猛者達は、夢見心地。このまま昇天しそうで心配だが、今まで頑張ったご褒美だから、まあいいね。
カレンはお母さんが、日本人なので、手巻き寿司は知らない訳では無かったが、自分で巻くのは初めてで、ご飯の量が多過ぎて1つ目は失敗。手伝ってあげようと思ったら、いろはにムシリ取られ、カレンの分はいろはが巻いていた。
満腹になって、猛者達は名残惜しそうに帰って行った。カレンから、大ニュースがあると言うので、テーブルが、少し引き締まった。
「日本留学が決定しました!日本の2学期から、なんと!」
少し貯めてから、
「敬愛学院に編入します!」
母、牡丹には、既に連絡してあり、学院にもうちから通うと告げてあって、俺達のクラスに来ることも決まっているそうだ。バカンスで滞在なら、客間もあるのに、わざわざ部屋を準備させたのは、そのせいだったんだね。
両親が、円満離婚だとは聞いていたが、元々顔見知りとは言え、後妻であるカレンのお母さんと連れ子の留学の相談に乗り、ホームステイさせるなんて、改めて母の懐の深さを噛み締めた。
永く暮らす事になるので、歯ブラシの置く所とか細かい調整をして、荷ほどきを手伝った。その時もいろはがメインで働いてくれた。部屋に戻ると、
「お風呂お先にどうぞ!」
みんな済んでいるので、早く入っちゃお。
もみじでいる時が多いので、男子としてはかなり長めの髪は、意外な事にシャンプーの負担が増えた感じはない。ドライヤーは少し時間が増えたかな?リンスとかもサボるといろはに叱られるので頑張っている。早めにいろはに交代するよう急いで上がろうとしたが、磨りガラスの向こうに人影。なんと、いろはが入って来た。姉妹達は最近当たり前のように一緒に入るようになっていたが、いろはは初めてだった。浴槽の中で、下半身が反応していまい、出られなくなっていると、目の前で掛け湯して隣に浸かった。
「もみじは、ガードが甘過ぎだよ。カレンのキス、避けようと思えば避けられたでしょ?」
いや、あれはムリでしょ?前触れもないし、向こうで会った時、日本人スタンダードでキスは挨拶じゃないって話し合っていたしね。
「反省した?」
なんか、桜に叱られてるパターンみたいだな。反論は焼け石に水どころか、ガソリンになりそうだから、そっと頷くと。視界全部がいろはの顔になっていて、次の瞬間、唇に柔らかな物が押し当てられた。
「やっぱりガード甘々!ちゃんと反省してね!」
「あ、うん、先に上がってるね!」
逃げように風呂場を出た。




