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花田種苗の5人姉弟妹  作者: グレープヒヤシンス
第1章
19/139

インターハイ地区予選

週末を迎え、インターハイ地区予選の応援に来た。3人の階級には20人程がエントリーされているので、1回戦から出る千葉は、5回勝って県大会進出。去年の実績で、2回戦からの山岸さん、斉藤さんは4回だね。因みに3人とも階級が違うので対戦することは無いそうだ。早々に出て来た千葉は、早々に一本勝ち。昼近くなって、3人とも出番。やはり秒殺で応援するタイミングを逃がしてしまった。

お昼はリクエストされていたお弁当を食べて貰った。本来ならご贔屓の姉達に直々に作って貰いたいところだが、そうそう協力してくれる訳も無いので、基本俺が作って、姉達にもちょっとずつ手伝って貰った。卵をパックから出したり、ウインナーの袋を開けたり、炊飯器のスイッチを入れたりしてくれた。やや正直に、『姉達も手伝ってくれたお弁当』として提供した。嘘はついていない(と思う)。

午後は、ベスト8、準決勝、決勝とどれも秒殺で終わらせてしまった。明日は団体戦でもう少しゆっくり観られるらしい。他の競技も同じような日程で開催されているので、応援席は疎らで、知ってる顔は見なかった。明日もこうなら安心して応援できるのだが、近くでやっているサッカーが負けると、大量の応援が柔道に流れて来そうだ。


翌日の団体戦は、3人とも同じ畳で戦うので、応援で迷子になる心配がない。個人戦は各階級2面ずつあったので、6面のなかのどこかでっていう感じで落ち着いていられなかった。今日は2回戦になるベスト8からのスタートなので、3回勝って県大会進出。先鋒:斉藤、次鋒:千葉、中堅:山岸、副将、大将は強そうだが、対戦相手がもっと強いらしく、3連勝スタートが、勝ち上がる条件だという。

ベスト8、準決勝を順調に勝ち上がり、決勝進出。決勝戦を前に、サッカー会場から大量の応援団が押し寄せた。顔は確認できないが、小中の友達や知り合いが多数いる筈だ。慌てて、離れた席に避難して事なきを得た。

試合は、山岸さんが、判定まで縺れての辛勝だったが、3連勝スタートで優勝した。簡単な表彰式があるようだが、出口が詰まらないうちに退散した。


うちの学院も当然、地区予選に参加している。勝ち残っている競技によっては全校応援とかの可能性もある。柔道は屋内だからいいけど、炎天下の応援は、出来る事なら回避したい物だ。

帰宅して桜に聞いてみたが、生徒会長が行方不明で、全校応援してる状況じゃないらしい。委員長が情報入り次第連絡してくれるそうなので、それを待っている。

土日の応援は、自由参加だが、経過・結果を各部のマネージャーから生徒会に報告、その情報を学院のサイトにアップして、いつ、どこに行くとどの部の応援が出来るかわかるようにしているらしい。土曜日の午後から、更新が止まっていて、委員長からの連絡も既読になっていないそうだ。


結局、夜になってやっと来た委員長からの連絡は、情報が無かった事だけだったが、慌ただしいチャイムと共にやって来た刑事さんが、新しい情報を持ってきた。

スマホの画像を見せてくれた。お墓の前で横になっている人、顔には白い布が掛けられているが、間違い無くうちの制服で多分、生徒会長だろう、スラリと伸びた手足は滅多に見られない筈だ。後ろに写っている墓石に『大森家』と彫ってあった。

現在、司法解剖に回っているが、争った跡や、着衣の乱れも無く、真っ直ぐ寝そべって祈るように手を組んでいるので、自殺と考えているそうだ。

マスコミ発表はしていないので、おおっぴらな聞き込みは出来ないので、本人確認と身辺の情報収集に来たらしい。

「服毒でしょうか?」

桐が尋ねる。刑事さんは、

「解剖の結果待ちだけど、水島が飲んだ薬じゃないかな?パトカーの隣で死んだ時、あんまりにも自然にいていたので、ただ黙っているだけだと思ったらからね、飲んであのポーズになって乱れていないから、きっとそうだと思うよ。」

「遺書は?」

桐が畳み掛ける、

「遺書って程のものじゃないけど、ブラウスのポケットに『もみじちゃん、ありがとう』ってメモって言うか便箋が入っていたそうだよ。」

「どんな便箋?」

俺が喰い付くと、そこに喰い付く?って顔の刑事は、

「くまの絵の便箋だって。」


不審者の件から、中田の逮捕までの情報は全て提供しているので、聞き込みとか言われても、乾いた雑巾を搾るようなもんだ。芒が閃き、

「あっ、会長が途中手を引くって言って捜査や推理を辞めたって言うか、私達と会わなくなった時期があったよ!」

桜が記憶を辿る、

「確か、谷川が工業高校の出身で専門学校に行ったと聞いて、竹中さんに会いに行った頃だったよね、しょう()()()がもみじになった時だよね?」

会長本人だと確認できた事と、一連の事件から離れた時期が解っただけでも収穫だと言って、刑事さんが帰って行った。


入れ替わりに猛者達が到着した。個人戦が3人全員と団体戦で優勝したら、うちで祝勝会を開く約束をしていたので、これからパーティーが始まる。下ごしらえは、済ませてあるので、仕上げを姉達に任せた。今日は委員長がいないので、あのフリフリエプロンは掛けて居なかったが、カウンター越しにキッチンを凝視する3人はとても幸せにそうだ。さっき遠目で見た表彰式よりも数段喜んでいるようだ。


せっかく楽しんでいる所なので、会長の話はしなかった。普段の千葉だったらキリッとして、俺が嘘なんてついたら顔色でバレバレになる所だが、上手い具合にデレデレモードになっていたので何事も無かったように隠し通した。

大人の宴会だと、これから酔いが回って本番なんだろうが、残念ながらシラフなので、早めのお開きにした。明日も学校なので丁度いいかな?

会長の件を考えながら、後片付けをしちゃおうか。

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