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花田種苗の5人姉弟妹  作者: グレープヒヤシンス
第1章
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推理小説同好会

しばらくの間、様子見と言う名目で何もしなかった。正直、話が大き過ぎて何をすればいいのか解らない。必死に調べた事が、役に立ったのかも微妙な所だ。一応テレビ、新聞、ネットはしっかりチェックしている。

『合成麻薬』に関わっていた、風俗店のスジで反社会的組織に激しいダメージを与えたらしい。こんな事に俺達が役立ったとすると、誇るべきかもしれないが、恐ろしいと言う気持ちが殆どだ。


この間に変わった事と言えば、いろはが殆ど、うちで暮らしている。元々俺の部屋にあったタンスやクローゼットがかなりの大容量で、姉妹は丁度いいと言うが、俺の場合は衣替えせずに、全部収納しても半分にも満たない位だったが、いつの間にか殆ど、いろはが持ち込んだ衣類で満たされている。元々の俺の服は、制服以外は殆ど見当たらない。学校から帰って来たら、いろはの着せ替え人形になってしまう。

一緒のベッドに寝るのも興奮して寝付けなかったのは、1週間位。興奮しても何も出来ない事に改めて気付くと気がラクになり、今ではひとりで寝ていたときと変わらないし、寝返りで密接するようなことがあっても、全然へっちゃらになった。

慣れるとは、恐ろしい事だ。慣れて少し困っているのが言葉使いかな?学校で、もみじが出て来る事がある。周りが女子ばかりなので、埋もれて気付いていないのかも知れない。


解っている事をまとめてみる。

『学校祭カフェ』は閉店した。働いていた女の子達の変な噂は流れていない。

あずさこと、海野美貴とは連絡していないが猛者達の情報によると、普通に登校してきているそうだ。

啓愛学院でもトラブルは無い。不審者も出ないし、嫌がらせや脅迫もない。生徒会長も、以前と変わらないそうだ。


不思議なこともまとめよう。

谷川、橋本、水島については、未成年ながら、伏せ字で報道され、ネットで晒されているが、畠山に関しては全く出て来ない。

留学と言っているが、どこの国に行ったかすら解っていない。

合成麻薬の原料についての報道が一切無い。『週間論春』の記事では、いかにもクズ(元市長)の親族会社が怪しいように書いてあったが、何も無かった様子で、当の工場は通常運転を続けている。脱税の加算税等でダメージはあった筈だが、外側から見る範囲では、へっちゃらのようだ。

市長は辞任したが、息子、その嫁、孫娘に法的にはお咎めなし。直ぐに選挙を迎える息子にはキツイど思われるが比例で当選もあり得る。他はまだ任期が残っているので、次の選挙には過去の事件になっているかもしれない。日本の法律ってそんなに甘いのかな?


竹中さんからメールが届いた、畠山の情報だ。

まずは留学の件だが、どうやら嘘っぱちらしい。どこかに転校した筈だが、情報は無い。調べるにしても精々、担任に聞く程度だろう。無理して危ない橋を渡って欲しくない。

もう1つは『畠山』姓は、義父の姓で、母親の旧姓『中田』を名乗っている筈と言うことだ。

少なくとも、うちの学院には転校生は来ていない。一学期始まったばかりなので、普通あり得ない。


またしばらく目立ってた事の無い日々が続き、中間試験の時期を迎えた。猛者達の高校もほぼ同じ日程で試験期間中は、部活が出来ないそうで、3人揃って遊びに来た。最近の情報も持って来た。

山岸さんの中学時代の同級生が、工業高校に進み、推理小説同好会に所属していたそうだ。普通に読書が好きで、推理小説もまあ、好きな程度だったが、調子のいい勧誘で入会したが、活動内容が余りにも犯罪研究に特化してきたので、退会したかったが、谷川の圧力で、渋々幽霊会員を続けていたそうだ。谷川の卒業を期に全員退会したので、廃会になってしまったとのこと。同好会の資料等がいくつか、生徒会の倉庫にあるそうだ。

「もみじちゃん、そいつとデートしてくれたら、資料貰えるんだけど、どうする?」

山岸さんがグッと迫った。テーブルを挟んでいるのに、圧力を感じる。もし畳の上だったら、立っているだけで一本負けだろう。

いろはを振り向くと、

「もみじの好きにしていいよ」

全然怒っていない。

「是非お願いします!誰になって会えばいいですか?」

「うん、松太郎君で!」

「えっ?まさかのBL?」

「いやいや安心して、女の子だよ、工業にも少ないけど女子もいるんだ!」

それはそれで困る。横目でいろはを見たら、かなり機嫌が悪そうだ。

オロオロする俺を見て猛者が笑う。

「ゴメンゴメン、嘘嘘!資料があるって所迄ホント。実物はこれ!」

小さい段ボールだった、ガムテープで封じてある。ただ、普通に開けちゃ不味いと思って持って来たそうだ。

「『週間論春』の記者さんに相談してみようか?」

みんなが同意して、芒が早速電話を掛けた。

近くで取材しているので、今すぐ来るそうだ。


到着すると、箱をもって公園に向かった。毒物や爆発物があっては不味いとの考えだ。動画を録りながらカッターでテープを切る。中から出て来たものは、数札のノート、ポケットアルバム、ファイルとUSBメモリが入っていた。手袋をはめてなかを確認。すべてのページをスマホで撮った。


「ねえ、もみじ!リサイクルショップで買い取ってくれなかったノートパソコン、どうしたんだっけ?」

桐が突然尋ねる。

「流石だね桐!物置にあるよ、直ぐ持ってくる!」

USBメモリの中身は気になるが、ウィルスが仕込まれていたら大変だ。OSのサポート期間が切れて、売りに行ったけど売れなかった古過ぎるパソコン。売ろうとした時に、全てクリアしていたし、Wifiは、元から付いて無いから回線さえ繋がなければ、ウィルスなんてへっちゃらだ。

起動してUSBメモリを差し込むと、パスワード入力の画面が開いた。残念これ迄か?

何かヒント無い?

USBメモリを良く見ると、『MOT R』途中消えかけた、と言うか、殆ど見えないが、『MOTHER』に読めない事もない。

「マザーね!パスワード忘れた時の『秘密の質問』にね、『母親の旧姓』ってあるよね?」

N、A、K、A、T、Aエンター!駄目か?

「何入れたの?」

桐がムッとして聞く。

「母親の旧姓名乗ってるって言ってたでしょ?」

「それは、畠山の話で、このメモリは谷川・・・」

「開いた!ナカタじゃなくなって、ナカダだったよ、NAKADA!」


データを全部コピーして、マスターとノート類は記者さんに任せた。


記者さんの話によると、クズ(元市長)は、中央政界に大量のカネを流しているようで、金づるを守る為に圧力が掛かっているそうだ。

メモリの中には、合成麻薬の原料やその調達先なんかも入っていて、クズの親族会社が関わっている証拠になるかもしれない。刑事さんと連携して進めてくれる事になった。


スマホの画像を確認した。合成麻薬の他に、水島が飲んだ薬物の事が書いていないか探した。殆ど当たり障りの無いことばかりだった。


メモリの中には、金銭出納簿があり、相手の社名は判らないようになっているが、それらしい相手の入出金つき合わせ見れば直ぐに判りそうだ。


そっちは、記者さんや刑事さんに任せて、

「数学、大丈夫?」3人揃って首を横に振った。

千葉が数学ダメなので、心配したのに、先輩方迄とはねえ。姉達はそれぞれ、試験範囲を確認して、教科書とノートに目を通した。サラサラとマーキングしたりメモをしたりして、1時間ほど説明すると、うちに来るとデレデレで締まりの無い3人がキリッとしていた。『柔道は、一本か、技あり2つ、押さえ込みなら30秒だからそれ以上の数字は必要はない!』なんて言ってたけど、こころを入れ換えたようだ。

「追試と補習の分、練習出来そうです!」

千葉は、素直に喜んでいるが、先輩達はなぜ、2、3年の数学が?と不思議顔。

昨年の浪人中に、大検受かっているから高校卒業程度の学力はあるので、驚く必要はない。やっぱり驚くか?

せっかくなので一緒に勉強した。いろはも比較的数学が苦手なので、要点を説明。

「もしかして、もみじも大検?」

「いや、一緒に勉強してたから、結構自信有るけど受けて無いよ。」

取り敢えず、試験を乗り切ってそれからメモリを調べる事にして、猛者達は、一夜漬けの厳選メニューを手に入れて帰って行った。

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