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花田種苗の5人姉弟妹  作者: グレープヒヤシンス
第6章
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緊急搬送

 金庫のダイヤルを5・3に合わせた。出てきたのは、予想していた衛星電話じゃなく、極普通のスマホだった。電源を入れるとバッテリーは76パーセント。電波も届いていた。宛先に登録されているのはプロデューサーさんで、

『何かトラブルか?』

スピーカ機能を使って皆んなで聞いている。

「ポンコツが倒れました、もみじの見立てでは盲腸の疑いです。」

『コンクリートの港は解るな?迎えを出すから1時間待ってくれ。』

 ん?1時間って、どこから来るんだ?スマホが繋がるのも可怪しいよね?まぁ今は、ポンコツ優先なので、日除けの柱に使っていた木と毛布で即席の担架を作って港に向かった。

 担架の前に僕、後ろに美白、潔癖はパンパンのリュック、ゲーマーはカメラ。30分程で港に到着した。それから30分待つと、水平線から船が現れた。見えてから中々近付かないように思えたが、なんとか着岸。ポンコツを船に載せ、皆んなも席に着いた。

「おお、しっかり回収出来ているな!じゃっ出して下さい!」

一緒に迎えに来てくれたスタッフさんが、運んできた機材をチェックして船は岸を離れた。

 船の壁には海図が貼ってあり、1時間(・・・)の謎が解けた。空港のある島から船を乗り継いで遠く離れていたと思っていたが、本土側に近付いていて、1時間で手前の島に渡れる距離だったようだ。行きの道中は、撮影機材の使い方やソーラーパネルの組立て等の資料とにらめっこだったので、どっちに向いて進んでいるのか解らず、すっかり騙されていた。


 港には救急車が待機、ちゃんとした担架で運び込んだ。お医者さんもスタンバイしていて、僕の診断が正しかった事、ロケの中止も正解だったと褒めてくれた。

 救急車を見送り、ワンボックスで後を追った。と言っても、ドンドン引き離され、病院に着いた時には手術が始まっていた。


「君達はコッチよ!」

ベテラン師長さんに連れられ健康診断。4人とも少し体重が落ちた位で、すこぶる健康だった。

「君、プロフィールから5センチも伸びてるわよ!」

174センチになっていた。4月の身体検査の値なので、島にいるうちに伸びた訳じゃ無いが、一緒に驚いておいた。


 最後に先生の問診があり、異常なしのお墨付きを貰った。ポンコツの手術も丁度終わった所で、病室に行ったがまだ面会出来る状態じゃなかった。廊下で様子を覗っていると、執刀の先生が出て来て、

「もし、明日まで待っていたら、かなり長引く状態だったと思います。適切な判断でしたね。虫垂炎で間違え無かったから、感染の心配なんかもいらないよ、君達も安心して身体を休ませると良いな。」

ポンコツは眠っているようなので、プロデューサーさんと、宿に向かった。


 宿は大部屋の旅館で、プロデューサーさん達3人とポンコツも含めた5人で雑魚寝らしい。空港で没収されていたスマホが、帰ってきた。サバイバル感を演出するためと思っていたが、孤島感を捏造するには必須だったようだ。


遅いランチにしようとゲーマーの誘いで、宿を出ようとしたが、

「シャワーでシャンプーがしたい!」

との潔癖のアピールで、バスタイム。島の温泉も悪くなかったが、久しぶりのシャワーは、天の恵みに思えた。のんびりお湯に浸かって、スポーツドリンク。成人の皆んなはビール。一旦部屋に帰ってちょっとだけ、畳で寝転んだつもりが、気付くと日が暮れていた。

 トイレの灯りを点けるつもりが、部屋の灯りと間違えてしまった。朝日で目覚める習慣が付いているせいか、3人も一斉に目を覚ました。

『おう、起きたか。メシ行こうか?』

プロデューサーさんは、改めて食事に誘ってくれた。


 島のご馳走と言えば海鮮だが、揃って肉をリクエスト。焼肉屋さんで20日間の肉断ちから解放された。さっきは居なかったスタッフさんも一緒で、僕等が寝ているうちに、撮りためた映像をチェックしていたそうで、

「想像以上の撮れ高だよ、編集期待してね!」


 思い切り昼寝しちゃったので、夜眠れるか心配したが、灯りを消した途端即睡だったようで、カーテンの隙間から届いた朝日で目を覚ますまで一瞬の出来事に感じていた。

 ポンコツのマネージャーさんが到着、一緒にお見舞いに行って、ポンコツの世話を交代、スタッフさん達と空港に向かった。


 空港でお土産を買って、また羽田へ飛ぶ。乗り継ぎじゃないので不思議に思っていると、このあと東京で収録があるそうだ。返してもらったスマホをチェックすると、姉弟妹5人での出演らしい。他の皆んなは、創成劇場でほぼ毎日出演しているそうだ。イヴには握手会でまともなパーティーは無く、大晦日もオンラインライブで大変だったようだ。ターキー、ケーキ、おせち、お雑煮。リクエストがビッシリだった。

 東京の収録の後はフリーなので、帰ったら料理三昧かな?皆んなが美味しそうにしている姿を思い浮かべながらメニューを考えた。

『冬休みのうちに、クリスマスと年越しのリベンジだね!楽しみにしてるよ!』

スマホが繋がったのが知れ渡ると、着信のバイブが止まらなくなって、チャット画面が何回もスクロールしないと見られなくなっていた。なんとか登場前に一段落。

『これから飛行機だから、羽田に降りたら返信するね!』

機内モードにして、それぞれに返信。羽田で一気に送るつもり。


 さて、返信。皆んなが気になっていた件、ジャミーズと24グループとの交際の噂が何組もあってその真相を探るのが宿題にされていた。釣りしながらとか、ご飯を食べながらとか、様子を見て探っていた。ゲーマー達は、正直に答えてくれたが、殆がシロ、クロはひと組だけ、グレイがふた組、そのうちのひと組はグレイでも、チャコールグレーの様だ。定期的に合コンしているとか、乱○パーティーしてるとかも噂されているが、そっちは全くのガセネタらしい。潔癖は、

「僕が呼ばれないだけかもね!」

「言われりゃ、そうかもな?」

ゲーマーも潔癖説に一票、完全否定はしなかったが、まぁそんな感じ?週刊誌ネタとしては残念な調査結果だった。これならチャットでも大丈夫だろう。あとはパーティーのメニューが多いな。ローストターキーが一番人気、かなりクリスマス寄り。うん、先ずはクリスマスのやり直しだな。ならケーキは必須だよね、プレゼント交換とかもアリ?さっきのお土産は一応、島の名前が入った焼き菓子だけど、プレゼントの代用にはなりそうにないな。料理担当で免除してもらえるかな?そんな事を考えながら、皆んなのメッセージに返信というか、その作業が殆どお品書きを考えるみたいになっていた。機内でほぼほぼメニューを書き上げた。

 羽田に降りると、茂木さんが待っている。普通に待ちあわせてモノレールで移動だが、ゲーマー達は一応名の通ったアイドルなので、コッソリ裏口から出て事務所の車で帰るそうだ。僕だけなら全然目立たないって想定だったが、どこで嗅ぎつけたのか、デジタル一眼の群れに囲まれてしまった。強行突破も考えたが、警備員さんに事情を話すと、無線で何やら相談して、減便でクローズ中のカウンター前を解放してくれて、即席で撮影・握手会を開いた。1時間程でミッションクリア。

「実は、ウチの息子がファンなんです。」

勤務中でサインをするようなモノが無かったので、茂木さんは24グループのポストカードを出してくれて、それにサインしてニッコリ渡した。

 モノレールの改札まで、警備員さんの先導で順調に進んで、なんとか羽田を脱出出来た。

ラストまで、あと2話です。

よろしくお願い致します!

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