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花田種苗の5人姉弟妹  作者: グレープヒヤシンス
第6章
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クリスマス

 次は水だな。大昔、家がならんでいたと思われる所に井戸がある筈と踏んで、ボリタンクを持って調査に向かう。

「冒険者になった気分!」

ポンコツはご機嫌でサバイバルナイフを掲げるが、危なっかしいので止めて貰いたい。言えずに冒険(・・)に出掛けた。

 井戸(だった所)は、直ぐに見つかったが、蔦の類の樹で水を汲む状況ではなかった。水を確保するには、この井戸を修復するか、この水脈を利用して新しく井戸を掘る、もしくは新たな水源を探す。その位が選択肢だろう。ちょっと悩んだけど、まずは修復にトライ。

 蔦を引っ張ると、ズルズルと剥がれるので、ドンドン引っ張ってみた。かなりの量を引き抜くと葉っぱの隙間からずっと深い闇が見えてきた。更に引っ張り続け、蔦が絡み合って網のようになった所が見えて来た。

「ソコ、切ってくれる?」

サバイバルナイフの出番がやって来た。

「いや、マジで危ないでしょ?ムリムリ!」

思った以上のポンコツ、

「じゃあ、ナイフ貸して!」

ザクザクと蔦を切って網を解きながら、手が届く分の蔦を除去した。日光を欲して上部に茂っていて、日の当たらない部分は余り無い様で、ただの闇に見えていた井戸の底には水面が揺れていた。機材を包んでいたブルーシートを覆って一度テントに戻った。


 ゲーマーは外、美白はテントの中でゴロゴロ。アテになりそうもないが、井戸から水を汲む方法を相談した。想像通り、有効は反応は無かった。

 食料が入っていたレジ袋を、蔦を編んで作ったロープ(的なもの)に縛って井戸におろした。一度目はただ濡れただけ、レジ袋に重りを入れると少し掬う事が出来た。蔦を丸めて、袋が開いた状態にすると、袋に3分の1?コレ以上なら袋がヤバい絶妙な量を掬った。何度も繰り返し、18リットルのポリタンク3つを満タンにした。次は、飲めるかどうか。やっぱり沸かしてからが、安心だよね?テントの所に帰ろうと思ったら、

「うめぇ!」

ポンコツは、レジ袋から直接水を飲んだ。

「ダ、ダメだよ!飲めるか判らないんだから!」

「ん?何で?だって井戸でしょ?全体飲み水じゃん!」

結構な量を飲んだみたいで、全然へっちゃらな感じなので、即効性の有害物質は入っていなさそうだ。口に含んで見ると、無味無臭、ほんのり冷たく、ポンコツの主張が正しく思われた。


 カンパンが飯盒メシになり、一歩前進。集落跡の奥には、畑だったと思われるスペースがあり、ほとんど薮になっているが、野生化?したサツマイモが点在していた。細くて美味しそうじゃないけど、腹の足しにはなりそうなので、手当り次第に掘りあさり、20本ちょい。まあまあの収穫ってことでもうちょい奥の山を調査。キノコ類はポツポツ生えいるが、毒かどうかの判断ができないのでパス。しばらく彷徨って山わさびをゲットした。メインの食材が無ければ宝の持ち腐れになりそうだが、手ぶらよりはマシかな?迷子にならないうちにテントに帰った。

 イモは焼いたり蒸したりして、中々の味。ここに来てからずっと粗食なのでそう感じるだけたもしれない。

ゲーマーは意外と気に入った様子で

「美味いけど、クリスマスイヴのディナーにはちょっと物足りないかな?」

と言いつつ、一気に2、3本食べていた。

「あっ!クリスマスに開けれって、コレ!」

ポンコツが自分のリュックから封筒を出した。焚き火の灯りで目を凝らすと、この島の地図の様で、縮尺が何の位かピンと来ないが、そう遠くない所に温泉マークが記されていた。翌朝探しに行くことにして、寝袋に包まった。


 翌朝、誰が付いて来てくれるか心配だったが、まさかの全員参加。僕がカメラを担当した。

 一応、獣道っぽい所の薮を漕いで進む。途中から最近誰かが通ったと思われる、薮を踏み倒した形跡があり、それを辿ると、迷わずに温泉に到着した。いかにも秘湯って感じで、かなり古いけど朽ちていない屋根が付いていた。その隣には、ブルーシートで覆われた箱。

『MERRY CHRISTMAS』

とシートにマジック書き。開けてみると、タオルやシャンプー、洗面器など入浴グッズが入っていた。早速、温泉を堪能。ちょっと熱すぎだが、そのお陰で虫とかがいないのかも知れない。潔癖も思ったより抵抗無く入っていた。


 プレゼントを搬入した経路が、途中からだったので、どうも僕等が上陸した桟橋以外から運んだ様に思え、薮を踏み倒したルートを探って見ることにした。美白と潔癖は反対したが、二人で先に帰るよりはマシだと同行。ポンコツは相変わらず、サバイバルナイフを掲げて先頭を歩いた。少し歩くと、かつて整備されていた道路に出た。かなり歩きやすくなり、1キロも歩いだだろうか?かなり古いが、しっかりコンクリートで作られた港に到着した。この島は、明治時代に入植し、上手くいかずに撤退。戦時中、補給基地に利用する為に港を整備したが、完成を見ることなく、前線が後退し、そのまま放置されていたそうだ。コンクリートの港はその時の物だろう。バブル期には、リゾート開発の計画もあったようだが、調査段階でバブルが弾け、またまた放置されていた。木の桟橋はきっとこの時との物と思われる。物置小屋が有り、覗いて見ると、またブルーシート。

『探検お疲れさま!』

中身は釣り道具、早速釣ってみた。餌を付けるのは絶対ムリと潔癖はシャットアウトしていたが、

「ルアーだから大丈夫だよ!」

ゲーマーは、仕掛けを選んで、

「こんなモンだろう。」

納得の表情だが、糸にはつながない。

「リアルではやった事ないし。」

ゲームでは竿や仕掛け、餌なんかを選んで釣るそうだが、選ぶだけで完成なので、そこでフリーズしていた。選ばれた仕掛けをセットして5人で竿を振った。

 僕は途中からカメラに専念、

「うっ!これがアタリ?バイブと一緒じゃん!」

リールを巻き上げ、水面に姿を現したのは超大物、だが、敢え無くバラしてしまった。ポンコツは一番にアタリが来て、それをバラしてからノーヒット。最初にバラした時、疑似餌は取られてしまい、その後は重りだけを海に浸していたらしい。美白と潔癖が一匹ずつ、

「イシダイだな、高ポイントだぞ!」

ゲーマーは、魚の種類もゲームの知識が活きていた。


 クリスマスプレゼントとイシダイ2匹をテントに運んだ。一匹を刺し身、もう一匹を炊き込みご飯と焼き魚様に切り身にした。

「ビストロ観たけどさ、ホントに料理上手いな!」

普段、他人の手料理NGの潔癖もタイの炊き込みに舌鼓。ポンコツ以外は成人しているので、

「いやぁ、酒飲みてぇ!味もそうだけど、コレ、その包丁で切ったんだよね?板前さんの刀みたいなヤツじゃないとムリかと思っていた!」

ゲーマーもご機嫌だった。


「元旦に開ける手紙もあるけど、ちゃんと元旦まで待つ?」

ポンコツはズルい顔をしていたが、

「ディレクターさんの筋書きに乗った方が面白いと思うな、指示通り、お年玉にしようぜ!」

ゲーマーは封筒をリュックに戻させた。

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