松太郎で出演
もみじでの登下校は続き、パパラッチ的な連中は見掛けなくなった。学校で着替えるのも面倒なので、そのままもみじでいると、クラスの男子も騒がなくなって、平和な日々を過ごしている。
終末は、東京で収録。土曜の朝から、いろは、楓、こころと都内在住ロケ。15時からカレン、彩花、美月、美羽、琴音と体力勝負のゲーム番組、途中抜けたり戻ったりして、姉達の収録に参加する。
午前のロケは、感染症で観光客が激減している定番の観光スポットの状況を調査、以前は行列必至の人気店も、数分の待ち時間だったりと、閑散をメリットにする楽しみ方を紹介。
「あれ?もみじちゃん?今日はめちゃボーイッシュだね?男の子みたい!」
ガイド役の芸人さんは、以前クイズ番組で共演しているので、一応は面識があった。
「実は、コッチがホントなんです。」
「うん、知ってた。」
ただイジられただけのようだった。3人を紹介してさぁ撮影!と思ったら、さっきからカメラは回っていたそうだ。いろは達の顔を売る作戦と思われる。
武士口調で暴走しかける楓をコントロールするいろは、相変わらず喋らない、こころが表情だけで食レポを熟したり、ワイワイガヤガヤ、修学旅行を楽しんだ感じでロケを終えた。スタッフさん達の表情からは、上手く行ったと思われるが、撮れ高?どうなんだろう?
局に帰ってスタジオに直行。カレン達の収録に参加した。ロケの時と同じように『男装』をイジられ、カレン達を紹介した。5人ひとチームなので、わたし、いや、僕の出番は無い。若手芸人さんのチームと、番宣で来ている程々有名な俳優さんと駆出し共演者のチームが二組。計4組で競い合う。
元々アスリート系の皆んなは、サクサクとクリア。最後の難関とされる立体迷路も過去の放送動画の全てをAIに読み込ませ、実際のサイズ感や傾斜、トラップの位置をバッチリ把握していたので、アッサリとクリアしてしまった。予習して来たことはナイショで商品の、豪華お取り寄せスイーツをゲットしていた。
姉達の収録は、秀悟の事務所の先輩3人グループ『ゾニーズ』の番組で、大きく分けて3コーナーで構成されている。
歌のコーナーでは、ゲストが歌手なら、お互いカバーしあったり、セッションしたり、歌わない人の時は、リクエストを歌ったりする。対戦コーナーではクイズかゲームで対戦する。おもてなしコーナーでは、手料理でゲストをもてなし、メンバー同士で料理対決。1時間の番組だけど、収録は平均5時間位らしい。対戦コーナーは、3ON3で、近くのスポーツ施設で午前中に撮って来たそうだ。因みに、勝敗はオンエアまでナイショ。
通常、24グループのメンバーだと、国民投票のランキングで一桁がこの番組の出演目安なので、CDデビューもしていないし、国民投票に参加したこともない新入りが呼ばれるのは異例らしい。さっきまで一緒にバスケしていた筈だけど、オンエアの順番の都合で、初対面の設定になっている、秀悟の紹介で松太郎、その繋がりで、姉達が呼ばれたって感じらしい。
歌のコーナーは、ゾニーズのヒットメドレーを3声にアレンジ、24風のダンス付きで歌い上げた。後半は、ゾニーズの皆さんも参加したけれど、なんとなく、バックダンサーに見えてしまった。
さて、料理対決。MC担当以外の二人がゲストのリクエストで料理、どっちが好みか判定するってルール。キッチンのあるセットに移動した。
「何時もは、僕等で対決していますが、今日はタッグを組んで闘います!」
へ?誰と?と思っていたら、アシスタントのお姉さんがエプロンを持ってやって来た。キッチンに移動。
『気楽なイタリアン』をテーマに料理対決が始まった。1時間半で何品作っても良い。豊富な食材、充実設備、電源も確保していて、いっぺんに使ってもブレーカーが飛ぶ事は無い計算とのこと。
先ずは炊飯器にお米とサフラン、バターを入れてしばし放置。もう少し時間が欲しいけど、炊きあがりから逆算すると20分位しか浸せないな。続いては小麦粉を捏ねる。蕎麦打ちの皿に白い盆地を作って、中に水を入れてピザの生地にしていく。程よい固さになったら、餅つき機に放り込む、つやが出できたら丸めて潰してクルクルクル。ホタテの殻を外し、エビを剥いて背ワタを取る。イカはゴロを取ってリングにした。忘れずに炊飯器のスイッチオン。ちぎったレタスにザク切りトマトでサラダの完成。
「この番組を観て、コレ欲しくなったんですよ!」
ミンサーで肉を挽きながら呟くと、
「念願の挽き肉かな?」
「いえ、誕生日のプレゼントギフトで貰って、活用してます!」
「普通、男子高校生が貰って喜ぶプレゼントじゃ無いよね!」
妙にウケていた。
ホタテのマリネ、イカとエビのアヒージョ、キノコのガーリックバター炒め、ドンドンテーブルを埋め、ガスオーブンにはミートソースドリア、オーブンレンジにはシーフードピザがスタンバイ。ホタテのヒモと余った野菜のスープを温め直してタイムアップ。
試食タイムでは、
「温かいうちに食べて下さい。」
芒は僕の料理をゾニーズのみなさんに取り分けた。
「何時もとルール違うから、良いかな?」
「うめぇ!ナニコレ!!」
「ワインにあいそう、っつうか、ワイン無しは拷問だね、このクオリティー!」
「アレ、飾りですか?」
セットにあったワインセラーを指さすと、
「今日、コレがラストだから、呑んじゃう?」
呑む気満々なので、一本取り出し、飾ってあったソムリエナイフとオーブナーで栓を抜いて3人に注いで回った。
「凄く慣れた手付きだね!」
「祖母と母が呑兵衛で、小さな頃から開けてましたからね。」
グラスが空いた頃にピザが登場、もう一杯注いで、ドリアも出した。
姉達は冷静にゾニーズの料理の食レポ。ゾニーズの皆さんは、ご機嫌で呑んでいるので、余っていた食材でおつまみを追加。
「いつも大人数分を作るから、分量間違っちゃって、あと、アンチョビってどうしても余っちゃうんですよね。」
結局、ワイン一本空になって、ジャッジタイム。
「コレは結果を聞くまでもなく、松太郎来んでしょ?」
ドラムロールの後、姉達は一斉に、
「勝者、ゾニーズの皆さんです!」
「えっ?気を使わなくても良いんだよ?」
桜はニコリ微笑んで、
「松太郎の反則負けです。私達の好きなもの知り尽くして、ど真ん中でしたからね!」
「いや、まぁ、じゃあ勝たせてもらいますか。では、ご褒美のキス!」
ゲストが女性の場合、勝ったシェフの頬にキスをする事になっている。桐の視線が僕をロック、そういう事?ほろ酔いの3人の頬にキスをして回った。
収録は一応終了。ディレクターさんとかも喜んでいるようなので、成功って事でスタジオを後にした。




