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花田種苗の5人姉弟妹  作者: グレープヒヤシンス
第6章
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タネ明かし

 平穏な日常に戻・・・れない。

登下校時には、何時もカメラかスマホが向けられていた。突然握手やツーショ、サインを求められたりする。で、納得行かないのは、実際にアイドル活動をしているGBAの皆んなは、そういった事は無く、僕だけが被害を被っている事だ。

「サインしてさしあげれば?」

教室で愚痴をこぼすと、美月はノートにサラサラと『Syoutarou』にハートマーク、無言で突き出した。彩花が横取りして隣に『Momiji』iとjの点がみんなハートだった。

「彩花の方がカワイイわね、もみじらしくってよ、」

美月も気に入ったようだ。

「いっそ、松太郎殿も正式に芸能界デビューされては如何か?某、即、ファンクラブ入会するでござる!」

「・・・。」

「おお!真田殿も、オフィスG初の男性タレントと申しておる!」

 まぁ、ここで解決策が出てくるなんて期待はしていない。


 過激なファンは居ないと踏んで、GBAのガードを緩める事になった。家から学校までマイクロバスでの送迎だったのを、制服の警備員同伴で徒歩通学になった。問題なく登下校出来るのを確認して、警備員も止める計画らしい。

 目眩ましを兼ねて、僕だけマイクロバスで送ってもらった。連絡通路でこっそり花田の家に忍び込んで、バスに乗る。カーテンが掛かっているので、誰が乗っているか解らない筈。学校に到着してバスの扉が開くと、一眼レフの連写音が響いていた。ある程度は予測して、気を抜かないよう、茂木さんからアドバイスを貰っていたので、拡散されても恥ずかしい顔では無いだろう。

 普通に登校したり、警備員さんと一緒だったりと色々試したが、パパラッチのターゲットは僕だけだった。一番狙われる筈のGBAメンバー本人達も、一人で心配な雨も大丈夫なので、ある意味安心かも知れないな。写真を撮られるくらいなら我慢することにした。

 

 そう考え直すと、まぁ平穏な日常かな?登下校も、買い物も特に困らない。花田の家の分は、週末に茂木さんか、事務所の他の人が車を出してくれるので、以前よりラクなくらい。

「ねぇ、もみじちゃん、そろそろ諦めて、入所しない?」

大型スーパーでカートから車に積み込み中に茂木さんが、またまたスカウト。

「芸能界に興味が無いのは変わっていませんよ。」

「あれ?何時ものシャットアウトからちょっと弛んだかしら?」

そんな積もりは無かったが、毎日タダで写真撮られているので仕事なら結構な収入かも?なんて思っていたのが、反応に影響したのかも知れない。取り敢えず、聞かなかった事にしてもらった。


 花田の家に帰ると、

「コレ、昨日届いていたの。」

雨が差し出した封筒は、『親展』の赤い文字、宛先は花田もみじ、差出人は、三浦・森田・竹中と連名だった。

『都合の良い日を連絡してください』

と、1行だけ。あとは無料通信アプリのアカウントが入ったQRコードが3つ。こりゃ替え玉がバレて、怒っているんだろうな。QRを読んで、友達登録をした。直ぐにグループヘのお誘いが届いた。

『花田もみじファンクラブ設立準備委員会』

明日、日曜の16時新創生で待ち合わせることになった。


 さて、正直に話して謝るのがいいかな?姉達は関係なく、僕が単独で動いていた事にしようかな?一応、ツーパターンで考えておく。あとは、もみじで行くのか、松太郎で行くのか迷う所だ。手紙の宛名ももみじだし、チャットの中でももみじだったから、やっぱりもみじ?替え玉の謝罪なのに女装なんてふざけてるかな?

 姉達に相談したら、散々からかわれるだけな気がするし、僕が一人で責任を被るなら、明日会うことも知らない方が良いかも知れない。迷った挙げ句、事情を知っている中では、一応年の功?小雪と夢愛に打ち明けてみた。

「そうね、全て正直に話すのがいいわ、変に隠すと後で辻褄が合わなくなるからね。」

「私もそう思うな!」

スピーカで一緒聞いていたらしく、夢愛の同意の声も聞こえてきた。

「「そりゃ、もみじでしょ!!」」

何を迷ってるの?って勢いの、もみじ一択。

「しっかり、おめかしだよ!」

「うんとミニが良いわ、もみじ脚キレイだからね、胸は残念だけど。」

そりゃ当たり前にぺったんこだよ、態々言わなくても。姉達を頼るのと、あまり変わらなかったかも知れない。


 翌日、どんよりの気分で、新創生行きのバスに乗った。結局、姉達に話すと全員に知れ渡り、昨夜はデートコーデ問題で、遅くまでファッションショーのモデルを務めた。途中からは、単純に僕に着せてみたい洋服を試して遊んでいたとしか思えない。まぁ、日が変わるまでに解放してくれたら気にしない事にしよう。

 

 バスを降りて、待ち合わせ場所に向かった。大型スクリーンのある吹き抜けの広場には3人とも、すでに到着していた。三浦さんは、

「昭和レトロの喫茶店があるんだ、ずっと気になっていたんだけど、なかなか機会がなくてね。」

エスカレーターで3階に昇り、本屋を突っ切って喫茶店のドアを開けた。確かにドラマとかで昔のシーンに出て来そうな作りだった。私はクリームソーダを頼んで、替え玉の件を話そうと思ったが、竹中さんが、

「判っていても、もみじちゃんにしか見えないな!お姉さん達が会いに来たときは絶対に嘘だと思ったよ。」

三浦さんも森田さんもにこにこ頷いていた。

「え?姉達って?」

 クズ元市長が失脚して、騒動の終結が見えた頃、3人で謝罪に来たそうだ。種明かしを聞いても、なかなか信じられなかったが、死者も出ている一件でそんな冗談を言う訳も無いと、替え玉を信じ、謝罪も受け入れたそうだ。

「それでね、お詫びにもみじ(・・・)ちゃんが、公序良俗に反しない範囲で何でも願いを聞いてくれる事になってるんだよね!」

森田さんは嬉しそうに、スマホを見せてくれた。

『花田もみじファンクラブ設立準備委員会』のホームページで、入会希望者が3万人を超えていた。

「それで、俺たちの願いって言うのは、設立準備委員会をリアルのファンクラブに昇格させる事、つまり、君が芸能界デビューする事。周りの人も勧めてるんでしょ?」

「ずっと断り続けてたから、もう期限切れかも知れません。」

「じゃあ、事務所の人とかが受け入れてくれればOKなんだよね?」

「そうですね、一応。」

「じゃあ、決定かな?」

設立準備委員会のメンバーは、ここにいる3人は勿論、杏美、秀悟、聖人、それに茂木さんも入っていた。


 姉達に会ったのは3組一緒で、やはり新創成だったそうだ。デートらしい事でもしたのかと思ったが、ランチのあとは、近くの区民体育館でバスケをしたそうだ。特売のスニーカーを買って、阿房宮でコスプレの小道具で用意しているバスケットボールを借りたとのこと。

「しばらくいい勝負だと思ってたんだけどね、ラスト5分って言った途端スリーポイントはスパスパ入るし、パスしようと思ったら全部塞がれてるし、いつの間にかボールを奪われちゃうし、5分間で1ポイントも取れなかったよ。」

「そして、俺達は汗ダクの息ゼハゼハなのに、彼女達は涼しい顔なんだよね!」

3人とも、少し呆れた様に回想していた。本職のバスケ部に圧勝した話なんかで盛り上がっていると、コロンコロンと優しい鈴の音に合わせてドアが開いた。

「お待たせしました。」

茂木さんの登場だった。

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