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花田種苗の5人姉弟妹  作者: グレープヒヤシンス
第5章
116/139

ドラマ撮影

 大画面には、ネットニュースが映し出され、サブ画面で地上波のニュースを探していた。

 自宅マンションで覚醒剤を使用していた現行犯で逮捕、一緒に居たのが2人の女子高生で淫行の容疑も追加されているらしい。所属事務所の会見があり、当面の間、芸能活動は休止、捜索次第では契約の解除、引退勧告を考えているそうだ。当然のように、出演した作品は公開されない。『YUME』では、主人公達のクラスの担任で結構な頻度で出て居る筈なので、差し替えとなると、ほぼほぼ撮り直しになってしまいそうだ。

「もみじのデビュー作、お蔵入りかな?」

カレンは、的確な日本語で残念そうにしていた。

 創生劇場の準備で来ていた茂木さんのスマホが鳴って、映画の公開中止が決定した事が伝えられた。撮影中に、安原と食事に出掛けたりプライベートでの接触があった人は、事情聴取されるらしく、大騒ぎになっているそうだ。幸い、未成年で酒の席は免除されていたので、事情聴取の対象にはなっていない。打ち上げの後、お茶の誘いにノコノコ付いて行っていたらと思うと嫌な汗が滲んて来た。

 普通のバイトと比べるとかなり高額なギャラを貰ったし、実際に会うことなんて考えても見なかった人達に会えたので良い経験と言う事にしておこう。正直なところ、ガッカリよりも、後々の騒ぎが回避された安心の方が大きいかも知れない。


 茂木さんのスマホは鳴り止まず、タブレットとにらめっこ。やっと収まると、

「松太郎君、ドラマのオファーが来てるんですが、受けますよね?」

『YUME』の後日談でこの度撮った映像を、回想シーンとして活用するらしい。

「失敗した卵焼きをスクランブルエッグにするみたいですね。」

「あら、君でもそんな失敗するの?」

「最近ではほとんど無いですけど、小学生の頃は、色々やらかしましたよ。」

「えっ?そんな頃から、厨房仕切ってたの?」

「いえいえ、姉妹とばあちゃんと母さんの分だけですよ。」

「それだってシェフとまではいかなくても、主婦レベルのボリュームよね!」

『受けますよね?』の疑問文は、疑問の意味は持っていなかった様で、サクサクと撮影の段取りを進めていた。


 急いで宿題を片付けて東京に飛ぶ。ほとんどがジュンと夢の2人だけの芝居で、エキストラのクラスメイトが20人位のいるけど、猛と隼人は偶に電話で参加する位。彼等は既にそのシーンは撮り終えているそうだ。

 2日間びっちり撮影して秀悟と聖人が参加するシーンを残すだけになった。3日目も2人のシーンの予定だったが、思ったより順調なので、1日オフ。茂木さんの提案で、首都圏地区のアイドルグループの見学に行く事になった。


 アイドルグループのステージは感染症対策でネット配信しかしていないけど、茂木さんの口利きで特別に見学させて貰える事になった。私服は松太郎で来ていたけど、杏美の物を借りてもみじになり、茂木さんと3人で通用口から入る。男子高校生が入れる筈の無い所なので、もみじになって、メンバーか、研修生になりすます。

 無事に入る事が出来て、通しのリハーサルの頭から見ることが出来た。このグループの発祥の地で、地上波でもよく観るメンバーが沢山なので、ダンスのキレなんかは眼を見張るモノだったが、姉妹を始め、ウチの住人達で免疫が出来ているのか、美少女に興奮することは無かった。そんな反応を見抜いたのか、

「もみじちゃんは、ホントに女の子ね!」

杏美が半ば呆れたように呟くと、茂木さんは大きくゆっくりと頷いていた。

 ワンステージを終え、休憩がてら反省点なんかのチェックをしている様子だった。

 杏美を見つけ、手を振ったり、話し掛ける娘がいて、

「新メンバー?」

「ううん、今度新しく創生で立ち上げるグループのぉ・・・スタッフ?」

杏美は、流石に松太郎をバラさないほうが良いと思ったらしい。ぎこちなく応対していると、

「ジュンちゃん、夢ちゃん!」

役名で呼ぶのは、セリフとかは無かったけど、クラスメイト役の研修生の娘で、にこやかに駆け寄って来た。あっさりと女装がバレてしまったが、

「あら、ホントに女の子みたいね!メンバーに紛れても違和感無いわね!」

茂木さんが一緒なのもあるだろうが、不法侵入者扱いはされずに済んだ。ウチの皆んなが練習している曲になると杏美に手を引かれ飛び入り参加。

「か、完璧ぃ!」

ダンスの先生は、遥々出張で教えに来てくれた先生だったので、程々の驚きだったが、杏美やその仲良し達はかなりのインパクトらしい。

「正確な上に、艶っぽさと可愛さのバランスが絶妙ね!」

「良い所に目を付けるわねアンアン!人気投票ランク急上昇は伊達じゃ無いわね!」

杏美は、地方グループでは異例の上位にランキングされている。姉達や、ウチの住人達がその土俵に上がるとは、何とも現実味を感じない。それよりも、自分のダンスが褒められるのも不思議な気分だった。

 細かい指導が始まったので、邪魔にならないよう、退散する事にした。茂木さんは、打合せがあって、杏美と2人で劇場を後にした。杏美は地方グループのメンバー向けの、寮のように使っているマンションに帰り、慣れない電車を乗り継いでホテルに帰る。普段のICカードが使えるので、余分にチャージしているから行き先だけ気にしていれば良いからそれ程困る事も無い。乗り継ぎの時なんていくら買ったら良いか難しいんだよね。

 ホテル間近でスマホが振るえた。聖人からのメッセージで、秀悟と一緒にロビーで待っているそうだ。

『今、ホテルに戻ってる所、アンアンと一緒だったから、()になってるんだ、このままで会ったら、写真とか不味いだろうから、一度部屋戻って、松太郎になってから行くから、15分位待ってくれる?』

 ロビーにいる2人は上手くオーラを消し、マスクとメガネで一般の空気に溶け込んでいた。横目でスルーして、急いで部屋に戻って着替える。何とか15分でロビーに降りた。

「確かにアレじゃぁ週刊誌の餌食だな。男の視線掻っ攫ってたぜ!」

「そう言う聖人だって、ガン見だったよな?」

「自分は違うみたいに言うなよ!」

「まぁ、騒ぎにならんうちに、行こうぜ。」

 ホテルの近所で個室のあるレストランを予約してくれていて、人目を気にせず食事が出来た、元々一人ならこんな心配も無いので、然程有り難い事でも無いが、まぁ楽しいし、美味しいので良かった事にしておこう。結構な価格帯と思われるが、彼等のファン対策の為なので、今回は奢って貰っている。

「どうした?嫌いだった?」

聖人は心配そうに覗き込んだ。

「いや、なんの香りかと思って、レタスとか中身は普通何だけと、ドレッシングが初めての味っていうか香りっていうか、凄く新鮮な感覚なんだ!」

「もしかして、作ろうと思ってる?」

「うん、舌コピー。ちょっと解らないなぁ。」

「聞いて見ようか?」

「いや、それは反則!」

成り行きで、普段の生活を話す事になって、厨房の様子なんかを話して、『姉妹、クラスメイト、担任が寮のように暮らしていて、その近所に住んでいて、料理を手伝いに行っている』と、少しボカして説明しておいた。控えめでもかなり驚いていたので、激レアな環境を改めて実感、なるべく話題を逸らすようにして食事を終え、ホテルに避難した。

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