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花田種苗の5人姉弟妹  作者: グレープヒヤシンス
第5章
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ストーカー対策

 普通に登校する様になると、怪しい人影が気になる様になって来た。母の日以来、ネットが騒がしく、アニメイベントでコスプレした時、『7月の白雪姫(ななゆき)』のイベントの時と同一人物だと、炎上してしまった。望遠レンズを装備したカメラ小僧とか、門の前で自撮りするお兄さんとか、直接的な被害は無いが、かなり迷惑な状態だった。ファンレター的なお手紙や、謎のプレゼントが届く様になり、宅配便は受け取り拒否。サインや、ツーショを強請る輩まで発生し、全員での登下校が必須になってしまった。

 窮屈な生活を余儀なくされていると、ある日の夕食後、先生が何かパンフレットを皆んなに配った。何時もなら支度が済んだら秋野の家に帰るんだけど、先生に引き留められていた。

 パンフレットは芸能プロダクションの会社案内で、名刺がホチキスでとまっていた。

『株式会社 オフィスG

営業部長代理 創成支店設立準備担当

茂木 聡美』

「あなた達をスカウトしたいそうなの。学業優先でアイドル活動すれば、ガードマンや、家のセキュリティは会社の経費で賄えるそうなの。教師の立場からはオススメじゃ無いんだけどね、安全を考えると、悪く無い選択肢なのよね。」

7月の白雪姫(ななゆき)』のイベント以来探していたけど、阿房宮の店長さんが上手く誤魔化してくれていたそうだ。皆んなの反応は割と前向きで、明後日の土曜日、茂木さんに来て貰う事があっさりと決まってしまった。特にカレンはノリノリで、有名になってアニメの声優さんや、原作者に会うって鼻息を荒くしていた。


 土曜日の午後、茂木さんが来る少し前にチャイムが鳴った。ドアホンのモニターには教頭先生が映っていた。

「親御さんの承諾は貰ってる様ですけど、不利な条件で契約しては困りますから、牽制しに参りました。」

教頭先生は、15年前の卒アル持参で付箋のページを開くと、担任が教頭先生で、前列中央で1番目立っているのが茂木さんだった。


 時間通りにチャイムがなった。

「えっ?先生?」

茂木さんは、教頭先生を見てフリーズ、上原先生がサポートしてなんとか正気に戻った。

 創成での劇場設置計画や、他のアイドル候補、現在東京で活躍中のアイドルが創成でも活動する事等の計画について説明があり、うちの住人達のユニットの資料を持参のPCで説明を始めた。

「それなら、大きい画面で見ましょう!」

桜がシアタールームを勧めると楓はPCの端子を確認して、

「直ぐに接続出来るでござる!」

自宅学習中に授業ゴッコをした時、画面を見せながら説明出来るように、PCのテーブルを用意していたので、繋ぐだけで即プレゼン可能になっていた。

 予餞会で披露したバンドで売り出す予定で、オフィスG劇場で土日祝、夏冬春休みに公演するらしい。待遇は、他の地方都市で活動するアイドルと同程度との事。教頭先生はその条件は調査済みで、細かい所までしっかりチェックしていた。更にセキュリティ関係について詳しく確かめ、深く頷きながら聞いていた。

「校内は私達が護りますが、校外になると目も手も届きませんから、今の状態よりは安心かもしれませんね。OGがサポートしてくれるんでしたら更に安心出来そうですね。」

にこやかに話していたが、『貴女が責任持ちなさい!』って聞こえるのは気のせいかな?茂木さんもそう聞こえた様で、

「はい、私が責任を持って学業と両立させます。」

 茂木さんは、イベントの映像をチェック済みで、

「12番は?」

「あっ、ええ。」

桜が珍しく口籠った。

「お仕事のパートナーには、隠し事はしない方が良いわよ。」

教頭先生は、視線で僕を呼んだ。どうやらもみじの正体に気付いているようだ、上原先生に視線で尋ねると、首を横に振っていたので、先生から漏れたのでは無さそうだ。

「囮捜査の時から気付いてましたよ。」

アイドルの鉄則、恋愛禁止に抵触しない工夫が必要と茂木さんは眉間に皺を寄せた。

「ソコは、禁止じゃ無くて工夫(・・)なんですね?」

上原先生が不思議そうに尋ねると、

「思春期の()にそんなルール守れる訳が無いでしょ?まあ、メンバーの実弟だから身近に居てもセーフよね。でも、一つ屋根の下って言うのはちょっとねぇ。」

今は、秋野家で暮らしている事と、庭の連絡通路の話しをすると、茂木さんは安心した表情に戻った。それぞれの実家に挨拶に行って、保護者の承諾書を貰う日程を調整して、茂木さんは慌ただしく空港に向かった。


 マスクとストーカー紛いの奴らが鬱陶しい位で、何時もとあまり変わらない生活を送った。ただ、周囲の環境は大きく変わっていた。学校行事の殆どが中止になり、部活も禁止、インターハイ予選なんかも全て中止になってしまった。

 平日は皆んな揃って登下校、ウチの住人達に加え、警備会社の女性ガードマンが同行。パパラッチ達は遠巻きしていたが、構えたカメラはしっかりとこちらを捉えていた。いくら望遠レンズでも、そんなに良く写せないよね?マスクしてるし。窮屈ながら、事件的な展開にならずに過ごす事が出来た。ちょっと平和な変化としては、鈴木君のパティシエレベルが上がった様で、レシピ本の質問がどんどん難易度を上げていた。即答出来ずに悩むと、

「実践で試すといいわ、仕方が無いから味見、手伝って差し上げますわ!」

美月のツッコミで花田の家のキッチンで実践する事になってしまった。

 普段の放課後は、倉庫を片付けた仮設レッスン場で、ダンスの基礎訓練やボイトレで過ごした。何故か僕も一緒に参加していたが、今日はレッスンを免除してもらって、キッチンでレシピ本と格闘した。何となく上手く出来てしまったけど、鈴木君が詰まっていた状態が判らなく、説明に困っていたが、僕の作業を見てからは、鈴木君も何か掴んだ様で、あっさりクリアしていた。

 レッスン上がりのアイドル候補達に味見してもらい、美月のコメント以外は表情だけで合格が判るデキだった。

 来る時もそうだったけど、庭の連絡通路を使って、秋野の家の門から避難する様に鈴木君を送った。普段の経路だと、パパラッチが張っているので、クラスの男子が遊びに来たってのはちょっとよろしく無さそうなので、ちょっと気を使って見た。騒ぎにならずに、帰ったようなので一安心。鈴木君も喜んでいたし、味見係の皆んなも大喜び、スイーツのレパートリーも一つ増えたし、いい事だらけだね。

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