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花田種苗の5人姉弟妹  作者: グレープヒヤシンス
第5章
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自宅学習

 夢の中では、6泊7日が経過していたけど、現実を確認するとホンの数分しか経っていなかった。あまりにも鮮明な夢をおさらいしてみる。なんか、向こうの方が平和だな。もしかして願望?楓のゲームのせいか、モザイクが掛かって然るべき視界も凄く現実的だったし、色々な感覚もリアル体験だと思って疑わなかった。こんな夢の事が姉バレしちゃ大変なので、記憶だけで間違えても記録なんかはしないでおこう。

 壮大な夢だと判り、ホッとしたような、ガッカリしたような感覚で、本格的に眠る事にした。

 翌朝目を覚ますと、キッチンからいい香りが漂い空腹を刺激した。秋野の母さんの朝食を食べて、作って貰ったお弁当を持って、花田の家に向かった。ちょっと様子が違う気がするが、多分、一週間先の未来から帰って来た感覚なんだろうな。


 入学式のお手伝い係になっていない姉達を除いて登校する。

 新入生は、夢とは違い男子も混ざっていた。去年と同じか、ちょっと多い位かな?無難に式を終え、僕達のお仕事も午前中だけですんなり終了。

 花田の家で晩ごはんを作り、秋野の家に帰って母さんのご飯。元の生活のままだった。やっぱりちょっと空気が違う気がした。


 翌日、帰って来たテストは夢と同じ成績だった。違うのは体育の授業。当然だけど更衣室は男子だけ。去年は各クラスに散って、まともな授業が出来なかったけど、14人いればバレーの試合は出来るな。やった事無いけど、7人制ラグビーもオーケーだね。

 花田の家のキッチンで夕食の支度。やっぱり空気が重い感じがして、いろはに聞いて見た。

「皆んなね、夢でもみじと、その、えっと、楓のゲームみたいな体験をしたのよ。不思議な事に同じ日に見てね、あまりにもリアルな夢だったからね、なんとなくもみじと目を合わせ辛かったのよね。」

 余計、気不味いよね?仕上げを当番に引き継いで秋野の家に帰った。


 夕食を食べてテレビ中継で野球観戦。同点で迎えた9回裏、先頭が四球を選び、即盗塁を決めた。セカンドゴロで一死三塁サヨナラのチャンス。

「満塁策で、代打・鶴井のゲッツー崩れでサヨナラですよ!」

「玄人っぽい予想だね、勝てばそれでもいいんだけど、もっと華やかな結末がいいな!」

 父さんの予想を話しているうちに、2つの申告敬遠のあと、代打・鶴井が送られた。

「よし、満塁ホームランだ!」

父さんの熱い声援は、何分の1しか届かず、高いバウンドのショートゴロ。三塁ランナーはホームを駆け抜け、セカンドに送りフォースアウト、ファーストに転送されたが、鶴井のベッドスライディングが一瞬早くベースに到達、僕の予想がパーフェクトに的中した。

「凄いな、松太郎君!」

「たまたまですよ。」

ビールを一本追加して、

「あと3年か?一緒に祝盃を上げような!」

麦茶で付き合った。


 千葉との約束は夢の中だけだった様で、それらしいメッセージは入っていなかった。おかしな夢を見る事も無く、清々しい朝を迎えた。

 普通に学校に通い、土日は花田の家の食料庫を整えたり、庭の手入れをしたりして過ごした。


 夢と同じ様に、感染症対策の為に休校になり、同じ様に中間試験対策。大体は夢の通りに過ごしたが、夕食を作ったら秋野の家に帰ったので、それ以降は違っていたけどね。最低限の買い物以外は、庭の連絡通路の往復だけだったけど、大勢いるので、登校するのとあまり変わらない感覚で勉強する事が出来た。始めは自主学習だったけど、宿題のプリントが届いて、ちょっとやり易くなったかな?一応、教科書を良く読めば解ける問題で構成されていた。

 リモート授業の環境調査とかもあり、花田の家は問題ないが、秋野家は、ちょっと無理っぽい。クラスの半分位しか対応出来ない様で、当面は紙ベースでのやり取りになるそうだ。


 そんな生活が続いて、そのままゴールデンウィーク。それまでと変わらないが、一応お休みなので、学校のノルマ的な物はなく更にのんびりと過ごした。

 休みの日には、各自単発のバイトをしている事もあったけど、どのバイト先も時短や休業で全く仕事が無かったので、のんびりに拍車が掛かっていた。毎年はほぼ独り、雨が手伝ってくれる位の庭仕事も、大勢で済ませたり出来たので、今迄手が回らなかった、大物に取り組んだり、母さんが送ってくれた苗で花壇を飾ったりして日中を過ごし、夜は秋野家に帰る日々で、連休が開けた。

 とは言え、自宅学習なのであまり変わら無かった。ちょっと違うのは、次の日曜日が母の日なので、会社に電話して見ると、カーネーションの販売は今年もするそうで、土日の2日間、駐車場に仮設販売所を開設するそうだ。開設と言っても倉庫から鉢を並べる段のついた台を出して、レジを置くカウンター的なテーブルを置いて、幟を立てて出来上がり。皆んな手伝ってくれて、あっという間に完成した。当日も販売員になると張り切っていた。会社がここだった頃、周りが住宅地になり、土埃や肥料や農薬の臭いとかのクレーム回避のため、ほぼ利益無しで売り始めてから、そのまんまのスタンスで続けているので、バイト代なんて出せるんだろうか?母さんは、姉弟妹に丸投げし、BBQ代で手を打ったらしい。姉達は、住人達をBBQで釣って、皆んなは、学校祭の模擬店のノリで手伝ってくれるらしい。打ち上げにBBQは丁度良いかもしれないね。


 金曜の午後には結構な数のカーネーションが届いた。追加で頼んでいた花の苗も届いて、売り場から見えるスペースを綺麗に飾る事にしている。土の準備は万端なので、デザイン通りに植えるだけになっている。折角、買いに来てくれるんだから、花屋らしくして置きたいからね。売り場の準備を含め、暗くなるまで掛かってなんとか完成した。

 泥だらけになったので、シャワーを浴びる。いつもなら、誰か入って来る所だけど、落ち着いて浴びて脱衣場に出ても下着がすり替わったりする事は無かった。ちょっと寂しいかな?

 夕食はいろはが支度していた。

「しょうくんも食べて行くでしょ?」

なんか、すっかりいろはの家に遊びに来た感じになっていた。ご飯を食べて、秋野の家に帰る。すんなり帰されてやっぱり寂しく感じた。


 スマホが鳴って、開いて見ると、夢愛からのメッセージで、外出自粛で帰って来られないので、カーネーションを届けて欲しいとの依頼だった。すぐ後に、

『私も!』

小雪からのメッセージだった。リクエストを聞くと、二人ともシンプルな赤って事で明日の夕方頃届ける約束になった。

 そう言えば、母の日にカーネーションを贈った事なかったな。プレゼント代は姉弟妹でワリカンなので毎年徴収されてはいるけど、何を贈ったのか覚えてないな。売り場に来るんなら、晩ごはんサービスしょうかな?

 ワインにあうおつまみとかを考えながら眠りに付いていた様だった。 

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