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花田種苗の5人姉弟妹  作者: グレープヒヤシンス
第1章
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双子コーデ

家に入ると、いろはが待っていた。桜とスマホを取り替え、バッシュのマスコットを渡した。

桜もバスケ経験者なので、23番の価値は理解している。

「大事に持っていてよ、オークションに出したらダメだからね!」


谷川の学校が多分『IT』だろうと言うとこで、いろはに、デートの許可申請した。いい加減諦めたのか、あまり嫌な顔はしなかった。桐のスマホからメールすると、明日の土曜日ランチをしようと返信。専門学校の近くにいい所があるとの事だ。

「桐、私服貸して!」

二人で桐の部屋に向かうと、

「私も一緒に選んでいい?」

いろはも付いてくる。


桐は、普段自分が出掛ける時のように選んでくれたが、いろはが、ダメ出しをする。

「私服なんだからスカートじゃなくても良くない?」

「デートなんだからスカートでしょ?」

桐も引かない。

桐のチョイスがいいと言うと、

「やっぱり女装したいんだ!」

「いろはのだって、充分女装じゃん!実はね、レディースのパンツだと、股間が隠せないので、スカートの方がいいんだ、股を閉じる意識も維持しやすいしね!」

「ショタ、正直な所、可愛い服着て嬉しいでしょ?」

「いや、純粋に事件の調査の為の変装だよ!」

いろはは、同意してくれるが、桐は鼻で笑い、

「うんうん、そうだよね!」

そう言いながら、桐と洋服を選ぶのは、結構楽しかった。いろはが思うほど、嫌な事じゃないことは確かだ。借りた服を着て、桜と芒にチェックして貰った。雨も帰って来て凄く褒められた。いろはも、いい加減諦めたのか、イライラオーラは出さなくなっていた。


土曜日の朝。桐の服を着てウィッグを被り、ニセ桐の出来上がり。姿見でチェックしていると、いろはがやって来た。

「ずいぶん、楽しそうだね!そりゃこれからデートだもんね。」

やっぱり不機嫌だった。

姿見の中の美少女に満足して眺めていたとは言えないな。ランチの約束なので、もっとゆっくりでもいいが誰かに会ったり見られたりの確率を考えて、9時に出る事にした。それより早いと、部活で登校する生徒に会いそうで、以降遅くなるほど人通りが増えると予想しての判断だった。


出かけようとすると、いろはが付いて来た。

「お昼まで付き合ってあげる。」

一緒にいてくれた方が心強いのは確かだ。

女装バレした時、いろはがいればギャグに出来るかも知れない。


駅のホームに着くと、

「女性専用車両にのろうね!」

「ムリに危ない橋渡らせないでよ!」

「土曜日だから専用車両ないよ。」

いろはが笑う。


専門学校の1つ前の駅で電車を降り、開店直後のショッピングモールに入った。店員さん達が並んで出迎えてくれるのは、どうも落ち着かない。いろはに引かれて、ウインドウショッピングをして時間を潰す。

「しょうちゃん、これ可愛い!」

ブルーのシャツを俺に見せた。確かに可愛い、凄く似合いそうだ。

「ねぇ、お揃いで買おうよ、双子コーデ!」

いやいや、俺が女装するの嫌がっていたよね?どう見てもレディースじゃん。別に今更『双子』って言ったって、元々『四つ子』だしね。

「とりあえず、止めようよ。」

シャツを戻したが、色々物色して双子コーデにしたがる。ワンピースを俺に当てて首を傾げるいろはを見た店員さんが絶対似合うと、売る気満々で寄ってきた。『双子コーデしようよ!』を聞き付けた店員さんは、もう一着を俺に渡して、試着室に押し込んだ。しかも、いろはと一緒に!

いろはは、何の躊躇いもなく着替えた。意外と広いので、スペース的には余裕だが、何故俺の目の前で着替えられるんだ?いろはの圧力に屈し着替えた、鏡の中の二人は確かに似合っていた。カーテンを開けると店員さんがべた褒め。冬物なので、半額の上に2点で更に10%オフ。店員さんといろはのタッグ攻撃に陥落して購入してしまった。雨のお土産にすればいいかな?雨が着ても

きっと可愛い筈だ。

レジに行くと、いろはが両方払ってくれた。自分の分は払うと言ってもきかない。

「私からのプレゼントだから、雨ちゃんのお土産とか言っちゃダメだよ。」

そこまで、お見通しか?


そうしていると、約束の時間が近くなった。念のため、トイレを済ませ、ウィッグを確認して、リップを塗り直した。解放される時間によっては一緒に帰ろうと言って別れた。


待ち合わせの場所に行くと、まだ10分前なのに森田さんがもう待っていた。

「こんに・・・」

「おはよ・・・」

早くから行動していたので『こんにちは』の気がするけど、まだ午前中だから『おはよう』でいいんだろうね。


連れて行ってもらったのは、イタリアンだった。高そうな店だが、ランチセットが美味しくて、リーズナブルらしい。席に案内されてメニューを渡された。

「ランチセットは?」

セットは平日のみだった。森田さんの顔色が怪しい。1番安い『ナポリタン』で980円か。

「私、ナポリタンがいいです!」

「じゃあ、それを2つと食後にコーヒー、」

目で合図するので、頷く。

「2つお願いします。」

後で知った情報では、ランチセットだと、パスタとハーフピザ、サラダ、スープ、コーヒー、ミニケーキで1200円らしい。パスタとコーヒーで1180円はがっかりした事だろう。


なかなか暖かくならないねとか、学校には慣れたかとか、差し障りのない話題をして、会話が温まった所で不審者の話を切り出した。パパラッチが女子生の写真を売り捌いでいたことや、死者が出ているので、極秘事項だという事を伝え、協力してくるかどうか尋ねた。二つ返事で手伝ってくれると言ってくれた。改めて、極秘と安全第一を約束して『谷川』について尋ねた。名前を聞いてもピンと来ていないようだったが、ほとんど普通科卒の中、工業出身が珍しいのと、画像を自分のスマホに取り込み、黒の短髪を茶ロン毛に加工すると、間違いなく、同じ専用学校の学生とのこと。『学校祭カフェ』と言うところでバイトしているらしい。メイドカフェのメイドさんが、東京の有名お嬢様高校の制服で接待するそうだ。そのカフェ自体は健全なお店のようだが、風俗店のスカウトと直結しているらしい。谷川はその辺りの仕事をしていて、風俗店の優待券などを見せびらかしていたそうだ。女子学生にはスカウトだと言い募集チラシを配っていたので、学校に行けば、チラシは見つかるかも知れない。森田さんは行って見ようかと誘う。

「学校、お休みで入れるんですか?」

「大丈夫、実習でマシン使いたい人が途切れないからいつでも開いてるんだ。進路相談で見学っていえば、大丈夫だと思うよ。」

コーヒーを飲み干し、ワリカンにしようと申し出たが、断固拒否されたので有り難くご馳走になった。


『IT』に着いた、本当は長い名前の学校だがこの略称だけが有名。オフィスのような玄関で高校とは雰囲気が違った。座学を受ける教室は、大きいだけで学校っぽい作りだが、コンピュータを扱う教室は、学生証かざして、暗証番号で解錠しなければ入れない。ちょっと格好いいな。色々覗いているうちに、森田さんがチラシを見つけてくれた。とりあえずそれを貰い、何か情報があったらメールをしてくれると話を付け駅まで送って貰った。もっと拘束時間は長く想定していたが、デートのプランニングを失敗した感じで、早目の解放になったのかもしれない。反対の電車に乗り、『学校祭カフェ』へ向かった。

採用条件は、『女子校生の制服が似合う人』だ。不本意ながら、かなり似合う筈だ。履歴書、身分証明等は一切不要、給料も現金払いなので口座もいらない。潜入してみよう。

いろはに報告した方がいいかな?いや、反対されるか、一緒に行くって言いそうだから、事後報告がベターだな。

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