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花田種苗の5人姉弟妹  作者: グレープヒヤシンス
第5章
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デート?

 とうとう土曜日になってしまった。千葉との約束は夕方なので、作り置きの料理に取り組んだ。冷凍庫をギッシリにして出掛ける時間。

「ねえ、いろは。私って千葉のことなんて呼んでたかな?」

「千葉君だったと思うよ。因みに先輩達は、山岸さん、斉藤さんね!そのままで行くの?デートならスカートが良くない?」

「おかしいかな?」

「ううん、そうじゃ無いけど初デートならもっとお洒落しても良いんじゃ無いかと思って。」

聞き付けた住人達が集まり、ファッションショーに発展しそうだったが、何とか振り切って、元々の予定で手掛けることが出来た。前に魔法だと思った(多分)催眠術の時も選んだ、ピタピタのショーパン。女装の時は無理なので、特別な感じがするんだよね。別にデートじゃ無いしね(多分)。

 国道を走るバスに乗る。ショッピングモールの前で降りる。約束の5時にはまだ少しあるので、ブラリお店を見て回った。特に欲しい物がある訳でも無かったけど、クローゼットの在庫と脳内でコーディネートして遊ぶのはなかなか面白かった。時間になってシネコンのフロアに昇った。

 既に千葉は到着済みで山岸さん、斉藤さんも一緒だった。モジモジした3人は松太郎の記憶通り、姉達?花田三姉妹を紹介して欲しいと言うのか、いろはの見立ての様に私に興味があるのか見極めが出来なかった。ほぼ正直に、記憶に不具合がある事を告げ、今日もどういう集まりなのか解っていない事を白状した。

「実はね、3日前までは男の子で、うたた寝から覚めなら女の子になっていたって自分の記憶ではそう思ってるの。前の記憶では、千葉とは小中ずっと親友で山岸さんと斉藤さんはクラブの先輩なんだよね。今は、女装して男同志で映画観に来たって感じなんだよね。」

3人の表情が曇った。映画のチケットはまだ買っていなかったので、松太郎の記憶に付いて詳しく説明した。

「それ、冗談とか、新手のドッキリとかじゃ無いんだよね?」

3人とも心配そうにトーンダウン。お互いの記憶を確認して、やっぱり私だけの記憶がおかしい事を再確認。どういう約束で今日会ったのかは結局聞けずに終わった。

「不思議な状況なんだね、何が出来るか判らないけどさ、何でも相談してくれよな。」

花田の家まで送ってくれた。


「パラレルワールド?ファンタジーに出て来るヤツ!」

カレンはファンタジー漫画の中で、パラレルワールドについて解説したページに付箋を付けて熱く語り始めた、図解のページを画像にしてスクリーンに映し指示棒を振るった。そんなモノかなと思うと、

「単なる記憶障害ですわ!男性の記憶があるんでしたら、私が恋愛に付き合ってあげてもよろしくってよ。」

美月はキュッと腕を組んだ。

「って、事はお風呂も更衣室も覗き放題ね!」

彩花が意地悪っぽく視線を合わせた。圧力に負けて視線を逸らすと、

「後ろめたい事が有るんだね?白状してご覧なさい。」

更に押されてしまった。顔に出るのは松太郎の時と変わらないらしい。更衣室では、スカートの中をどうするのがチェックした事を話した。

「そんな事、私達に聞けばいいでしょ?」

彩花は攻撃の手を緩めない。

「いや、なんか恥ずかしくて聞けなかったんだ。」

上手い具合いに、ベッドでの体験に触れずに済みそうだ。と、思った瞬間。

「今、『本命を隠せた』って思ったでしょ?」

芒の不意打ちになす術が無かった。正直に白状すると決めた途端、自分の耳が赤くなっている事が、鏡を見ずに判る位に体温上昇を感じた。夢の内容を話さず、気持ちのいい夢を見て、目覚めた時に右手がパジャマの中のその中で活躍していたと告げた。それだけで充分に恥ずかしいので、勘弁して貰えると踏んでいたが、

「夢の中でも、そう言う事してたの?」

尋問担当が姉達?三つ子達に変わった。ここの人間関係は判らないが、松太郎としては、自白の魔法か掛かったように話さざるを得ない。夢の中の行為が独りではなく千葉とふたりだった事、目が覚めてからも暫く続きを止められなかった事を話すと、3人は何時もの満足した表情では無く、耳まで真っ赤に恥ずかしそうな顔をしていた。回りの皆んなも同じ様な反応だった。


 ざわつく中、先生が帰って来た。

「なんか妙な雰囲気ね?何かあったの?」

直ぐ側にいた楓は、目があってしまったので、経緯を話そうと試みたが、

「も、もみじ殿の夢の話でござる・・・」

オーバーヒートしてしまった。桐は視線で『自分で話しなさい』と指示していた。先生も赤面しつつ、

「体育の教師ですから、保健を受持つ事もあります。知識は有っても、そう言う事を耳にすると、動揺しちゃうわね。」

めっちゃポーカーフェイスを決めているつもりだろうが、耳まで真っ赤で、偶にファルセットが混じっていて、かなりの動揺が見て取れた。


 秋野の両親に心配掛けたく無いので、家では普通に娘として過ごす事になる。事情を知った花田の家の方が落ち着けるのではと、暫くこっちで暮らす事になった。別に珍しい事では無いようで、秋野家の反応に特別な物はなく、雨といろはが、プチ引越しを手伝ってくれた。

 引っ越しと言えば、小雪と夢愛はちゃんと暮らしてるのかな?山岸さんは元の記憶をと同じように石見沢教育大に進学しているから、二人も創成教育大だよね?

「小雪と夢愛はやっぱり創成?」

「後藤委員長の事?ユアさんって千葉君の先輩の山口さん?」

いろはは、あまり面識の無い人をファーストネームで呼ぶのを聞いて、違和感が溢れ出していた。

「ルームシェアしてるそうよ、知り合いだっのね。うん、創成教育大って聞いてるよ。」

なんか、他にも松太郎の記憶とのズレが有りそうだ。荷物を運んでからはキッチンで、正しいと思われる記憶を学習した。花田の家のキッチンは使い慣れた状態で、冷蔵庫や食料庫のストックは、記憶の感じと変わらないし、誕生日に貰ったミンサーもキッチリ据え付けてあった。

 こっちの事を聞きたかったんだけど、雨にねだられると、ついつい松太郎の事を話す事になってしまった。

「そんな、あり得ないでしょ?」

 女装して姉達の身代わりでデートしたり、メイト喫茶に潜入捜査で働いたりしたことは、スルーで信じてくれたけど、ここの住人とのお風呂やお泊りに付いては衝撃だったようだ。

「雨はむこうの方がいいかな?お兄ちゃんいるの嬉しいし、いろはねえがホントのお姉ちゃんじゃ無いのも、お兄ちゃんのお嫁さんになれば解決出来るしね!」

嬉しそうに私達の手を繋がせた。

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