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花田種苗の5人姉弟妹  作者: グレープヒヤシンス
第5章
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変身?

 花田の家に帰り、キッチンに直行。雨が、既に生地作りの準備を整えていた。

「分量は調べてないけど、これで足りるかな?いろはねえが、おうちに型を取りに行ってるよ。」

「あ、うん、オッケー!レシピはさっき鈴木君の家で見てきたから大丈夫。先ずは、溶かしバターだね!」

 バレンタインの時に、チョコを湯せんする裏ワザでドライヤーで溶かす動画を見ていたので、バターで試してみる。思ったより快調に溶けてハチミツを混ぜてスタンバイ。溶き卵に篩った薄力粉、ベーキングパウダー、砂糖を投入。纏まって来たらさっきのバターを少しずつ合わせて行く。生地を寝かせていると、バターの香りが3階に届いたようで、

「真田氏の鼻が、台所をめざせと申しておる。」

楓とこころが降りて来た。

 型にバターを塗って、生地を流し込む。予熱しておいたオーブンに入れて暫し待つ。焼き上がる頃には、全員降りて来て、先生も丁度帰って来た。

「日本のマドレーヌも貝なのね?瓶の蓋みたいなギザギザの円いのはアメリカだけかしら?」

 カレンの疑問でマドレーヌ会議。『貝派』、『王冠派』、『カタチは関係無い派』、『お店で買うのが貝、家で焼くのが王冠派』と意見が割れた。

「ほう、貝派が正統の様でござる。」

楓はスマホを弄りながら、

「王冠派は日本で広まったようでごさる、母君がそれを継承したのでござろう。」

 一件落着?第二弾が焼き上がった。秋野の家のお土産をキープして第三弾をオーブンにセット。夕食の支度に取り掛かった。当番の美月と彩花に仕上げを任せて、秋野の家に帰った。


 宿題も無く、明日の教科書を揃えてベッドに転がった。

「まだ9時前か・・・」

少しうたた寝をしたようで、リビングからの歓声で目を覚ました。

『逆転サヨナラツーランホームラ〜ン!』

どうやら贔屓チームが勝った様だ。秋野の父さんは歓声を上げ、ビールを一本追加していた。時計は9時を回っていた。


 何となく締め付け感があって、脇を確かめると下着を着けていた。ん?学校から帰って、鈴木君ちと、花田の家でマドレーヌを焼いたよね?で、帰って来て、もみじになった記憶無いよね?下も確認するとトランクスじゃ無かった。その中に居る筈の松太郎を探すが、みつからない。恐る恐る、普段はパットを重ねたニセの膨らみを触ってみると、特有の弾力が手のひらに伝わり、ホックを外した中身は間違いなく、肌の感触だった。

 鏡を探すと、部屋を入れ替わる前のいろはの部屋のまんまの様になっていて、チェストの上に、B4サイズ位の鏡がリップクリームとかと一緒に乗っていた。慌てて覗き込むと、さっきとは違うレディースの部屋着を着たいろは!?どう見てもいろはが映っていた。

 さっき、手で触って確かめた事を、映して目視確認。スカートを捲り上げたショーツに不自然な膨らみは無く、少し下ろしてみたが、全く松太郎の痕跡は見つからなかった。パーカーとTシャツを脱いで、ホックを外して機能していないブラを外すと、それなりに成長した膨らみが映っていた。

 スマホを探す。いろはに連絡して見よう。ん?制服のポケットかな?壁に掛けてある制服を見ると、いつの間にかズボンがスカートに変っていた。ポケットには生徒手帳だけ、『秋野もみじ』偽造とは思えないモノだった。スマホは枕元にあり、いろはにメッセージを送ったが、何時ものように返信してくれた。

【もみじ】

ちょっとうたた寝しているうちに、いろはに、なっちゃったんだ!

【いろは】

何それ?じゃあ、わたしがもみじ?

【もみじ】

いや、鏡見たら、いろはそっくりだし、カラダも女の子なんだ!

【いろは】

今迄、女の子じゃなかったみたいに言うのね?

【もみじ】

松太郎じゃなく、もみじなんだって!

【いろは】

何言ってるのか、さっぱり解らないよ。

【もみじ】

そっち行くから、あって話そう。

【いろは】

うん、待ってる。


「ちょっと、花田の家に行って来ます。」

「ああ、もみじ、泊まって来んのか?」

ん?秋野の父さんは『松太郎君』か『もみじちゃん』だったよね?呼び捨ては初めてかも?しかも、いろはとひとつ屋根の下を避ける為に松太郎がこっちで暮らしてるのに、お泊まりOKって感じだよね。

「戸締まりしちゃうわよ、学校の支度して、真っ直ぐ行くんじゃ無いの?」

母さんの口調も普段いろはと喋っている感じだった。

「いえ、ちょっと確かめておきたい事があるだけですから、直ぐに戻ります。鍵は持ってますから大丈夫ですよ。」

「もみじ、ママに敬語なんてどうかしたの?なんか慌ててるみたいだし。」

「あ、うん、取り敢えず行ってきます。」

玄関に急ぎ、靴箱を開けると、どう見ても女子高生が履くと思われる靴が並び、メンズは父さんの物しか無かった。取り敢えずローファーを履いて、庭の連絡通路で花田の家に向かった。


「ただいまー!」

物凄い勢いで、雨が抱き付いてきた。

「もみじねえ、雨が何回お願いしても『お邪魔します!』だったでしょ?」

いろはが降りてきて、

「どうしたの?こんな時間に?おじさん心配してなかった?まあウチなら心配無いか。」

ん?『おじさん』って自分の父さんだろ?

 取り敢えず、いろはの部屋に行ってうたた寝以降の話しを説明した。秋野の父さん母さんの反応もおかしいと言うと、

「いつも、パパママなのに、秋野の父さん母さんとかどうしたの、おばさんと喧嘩てもした?」

やっぱり、食い違っている。雨の事を話しても、普段は『雨ちゃん』と呼んでいたらしい。生徒手帳を見せても、

「何処がおかしいの?」

不思議な反応で自分の生徒手帳を出してきた。

「何も変わってないわよ。」

『花田いろは』の生徒手帳を当たり前の様に見せてくれた。


 深呼吸して、自分の記憶を整理して、松太郎の事を伝えた。

「えっ?もみじ、小説家になったの?でも、それじゃあ設定に無理有り過ぎじゃない?ラノベでも痛いんじゃないかな?」

いろはは全く現実だと思っていない様だった。桜を呼んで事情を話すと、

「記憶障害かしら?」

ホームシアターに移動して、小さい頃からの映像を見せてくれた。幼稚園までは女の子の格好だったので、記憶とズレは感じないが、小学校になってもスカートのまま、中学の修学旅行は啓愛女子中等部の制服でいろはと一緒に映っていた。

 どう見ても加工した映像じゃ無く、一緒に映っているクラスメイトも知ってる顔だった。『松太郎』の方が夢?

 桜といろはは、お互いを見つめ、偶に僕を見て、桐と芒を呼んだ。

「もみじがおかしいのよ。」

動揺して気づかなかったけど、いろはの見掛けが、元のもみじって言うか、三つ子と、雨とふつうに姉妹に見える感じだった。顔はソックリだけど、表情でいろはってハッキリ判るのがちょっと嬉しいかな。

 多数決で正しいと思われる記憶をある程度教えてもらって、秋野の家、自宅に帰りじっくり整理した。

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