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花田種苗の5人姉弟妹  作者: グレープヒヤシンス
第4章
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隠蔽

 地元バーガーショップは、結晶郭の近くにもあって、昼はそこで、常識的なサイズのハンバーガーを食べた。猛者達は、昨日苦戦した非常識なサイズをオーダー、ペロリと平らげていた。


 修道院に向かう電車を降り、

「お手洗い借りてから行くね!」

コンビニに寄ろうとすると、

「観光地だから、おトイレくらいあるわよ。」

桐はガイドマップを見せてくれるが、

「なんか、修道院の中の女子トイレ入るのって、他より罪深い感じしない?」

桐が吹き出して、

「他は良くて、修道院だけは(・・・)不味いって訳ね?」

意地悪にツッコんで来た。先生も笑うと、

「えっ遥さん、今、笑う所って解るんですね?」

桜がすかさずツッコむと、2人別々に囲まれて尋問を受けた。


 こうなってしまうと、下手に隠した方がダメージが大きいので、全て包み隠さずに証言する。尋問を担当する桐は、視線を確かめながら淡々と聞き出して言った。暫くすると先生を担当していた芒が交代、桐と同じような事を繰り返し質問した。

「ココは審議ね!」

どうやら先生は、隠せる事は隠しておこうと頑張っている様子だった。2人の証言に食い違いのある部分を桜が追求。先生は白旗を上げ、昨夜の出来事を白状し始めた。今朝、深くは聞かなかった新事実も明らかになる。

「アルコール度数間違えて、強いカクテル呑んで、潰れちゃったの。あっ桐のオススメ、お母さんが好きだって言うカクテル!」

桐は聞こえない振りで、先生の話しが続いた。

「ベッド迄、運んで貰って、」

「どんな風に?」

「・・・お姫様抱っこで。それから夜中に目が覚めておトイレ、戻った時に確かめたくなったの・・・」

「何を?」

「もみじちゃんが、松太郎君の女装じゃないかって・・・」

「どうやって?」

「・・・ペロンって。」

「ペロン?」

「お布団捲ったら、ショーツだったからね、安心してちょっと脱がせて見たの、そうしたら・・・、松太郎君だったの!慌てて戻そうとしたら、寝返りを打って、上手く出来なくてね、夢だと自分に言い聞かせてベッドに潜っのよね。」

「どっちのベッド?」

「自分のベッドのつもりだったけど、朝目覚めたら、松・・・もみじちゃんのベッドだったのよね。」

「夢だと思ったんですね?」

先生が頷くと、

「他にはどんな夢を見ましたか?」

「も、もみじちゃんにキスする夢、見ました。」

「では、夢だと思っていたけど、実際にキスしていたと言う事ですね?」

先生がモジモジすると小雪は、

「裁判長!誘導尋問です!」

「では、質問を変えます。先生の恋愛対象は、男性ですが?女性ですが?」

「だ、男性です。」

「それでは夢の中で(・・・・)キスした相手がもみじと言うのは不自然ですね?」

 先生は真っ赤になって陥落。スキー学習以来の葛藤を語り始めた。スキーの時は、ただ純粋に教え方が上手いと教師として興味深く思ったそうだ。ホットチョコレートの缶も、何も考えていなかったけど、美月のツッコミで異性として気にしているのかも知れないと同様。桜の耳うち『義妹(いもうと)が年上でも気にしませんよ』で、すっかり自分の気持を理解したとの事。バスで会った時から疑っていたが、あまりにも普通に女子の振る舞いだし、一緒の部屋を勧める位だから、もみじ(・・・)なんだろうと思い込む事にしていたそうだ。


「ギルティー!」

桜が判決を下す。皆んなが頷くと、先生はしょんぼり。

「今、正直に話してくれた事が罰って事で良いわね?」

また皆んな頷いて一件落着?

「さあ、またライバルが増えたわ!」

カレンが先生に握手を求めると、

「宣戦布告?」

先生はニッコリ握り返した。

「いえ、いろはの独走を阻止する同胞です!宜しくお願いしますね!」


 急拵えの裁判が終わり、修道院を訪ねた。これからキレイになるはずの庭を眺め、集合写真のスポットを借りて写真を取り、お土産屋さんを物色した。

 地元の新聞社に務めた事があると言う、有名な歌人の公園に行ったり、聖地巡礼で、モデルの実在が確認できていない、カフェを探したりしながら夜行バスの時間まで散策を楽しんだ。


 猛者達を見送り、ホテルに戻る。

「もみじに決まってるでしょ?コロコロ人が変わったらホテルの人だって迷惑じゃない!」

先生の部屋に泊まるのを交代すると思っていたら、桐にシャットアウトされてしまった。

もみじ(・・・)ちゃんですから、気にしませんよ!」

先生は、そう答えるしか無い雰囲気に流されていた。


「お風呂行って来るね。」

部屋に二人きりになるのを嫌ったのか、部屋に入った途端に浴衣に着替えていた。慌ててトイレに駆け込んで見ない様にしたけど、先生なりの『もみじ扱い』アピールなのかもしれない。

「行って来ます!」

の声と、ドアが閉まった音を確かめてから、トイレからでた。少し荷物を整理してからシャワーを浴びて、ベッドで伸びると、沢山歩いて、沢山遊んで沢山ドキドキしたお陰で、また一瞬で眠りについたらしい。


 カーテンの隙間から朝日が差し、目が覚めた。視界に入った隣のベッドは無人で、ベッドメイクから乱れた所は無く、先生のバッグが乗っていた。実は、見て確かめ無くても、頬と手の平に感じる柔らかさで、先生が自分の下にいる事が判っていた。

 起きてるのかな?そっと離れようと思ったら、ムックリ起きた先生が逆転して

馬乗りになった。

「私、自首して学校辞めるわ。」

「えっ?自首って?」

「だって、コレって淫行罪よね?君が18才未満なのは勿論知っているし!」

「酔っ払って、ベッド間違えた位セーフでしょ?」

「昨夜はわざとここで寝たの。」

「その格好で?」

「ううん、下着着けて浴衣着てたわ。今朝、君が脱がしたんでしょ?」

「えっ!そうなの?じゃあ先生の方が被害者じゃない?ごめんなさい!」

「法的に私がアウトなの、君には迷惑掛けないようにするわ。」

「誰も困って無いし、騒ぎにしたらさ、ウチの同居とかも問題になりそうだし、第一、学校が困るでしょ?」

隠蔽に気持がシフトした先生に、

「絶対、大丈夫!チェックインの時も『桜』で署名してるからね!」

まあ、姉達に説得を任せたら、心配する事も無いんだけどね、一応、するべき事はしておいた方が良いよね?取り敢えず、交番に駆け込んだりはしない雰囲気で身支度を始めた。

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