普通が羨ましい
女の子に囲まれて過ごすのって、男冥利に尽きるって思う人多くないですか?ハーレムって言うんだろうけどね。家では7人中でひとり、クラスでは3人だけ。肩身が狭いったらありゃしない。そんな中で頑張る俺、松太郎を応援お願い致します。
おはようございます!
俺、花田 松太郎16歳。本日より高校生になりました!
因みに、学校の名前も『啓愛女学院』から『啓愛学院』にかわって、今年から共学になったばかりの最初の男子生徒です。
中高一貫教育の学校なので、殆どが中等部からのスライドで、高等部からの生徒も女子が多いので、男子は、全体の1割にも満たない。中等部も同じく今年から共学だが、全員新規なので、ほぼ男女半々らしい。今の中1が高3になって、ようやく普通の共学っぽくなるんだろうな。
一般的な共学に進んだ友達からは『ハーレムじゃん!』と言われて羨ましいと思うらしいが、経験上そんな事はあり得ない。
どんな経験かと言うと、我が家の家族構成だ。
祖母・菖蒲、母・牡丹、長姉・桜、次姉・桐、三姉・芒、俺・松太郎、妹・雨の七人家族だ。少数派が栄えた試しはない。花田5姉弟妹と呼ばれたりもする。
『キレイで優秀な、お姉さん達と、可愛い妹に囲まれて何が不満なんだ?』必ずそう突っ込まれる。
妹に関しては全くその通りだが、姉達は・・・。
詳しく言うと、姉達のファンというか、信者に迫害されそうなので、話せない。そうしていると、結局俺が我儘なだけという結論になる。しかも今日からは同級生だ。
なぜ今日から?細かい話しだが、高校の新入生の多くは、15歳だろう。4月2日産まれの俺はもう誕生日を過ぎて16歳だ。四ツ子の姉達三人は、0時を回る前に産まれたので、4月1日産まれで学年はひとつ上だった。
『上だった』と言うのは、昨年とある事件に巻き込まれ、三学期を全休してしまった。春休みに補習受けさせて貰えたので、俺は何とか三年に進級出来て、姉達も卒業したが、高校を受験していなかったので一浪、学校からは特例で入試を受けさせくれると申し出があったが断り、今年一緒に受験した。めでたく?四ツ子揃って高校一年生と言うわけだ。
今までは、学校にいる間だけは、学年という壁に護られて姉達から解放されていたが、これからはもう何も護ってくれない。しかもクラス迄一緒だった。
ガラガラッ!
教室の戸が乱暴に開いて、
「お兄様!」
中等部の制服を着た少女が叫ぶ。妹の雨ではないし、雨はいつも『お兄ちゃん』と呼ぶので、あとふたりいる男子のどちらかの妹だろう、『お兄様』ってどこの貴族様だ?なんて、呑気に無視していたら、目の前にその子が走って来た。
「雨ちゃんのお兄様ですね?雨ちゃんが、市長の孫に絡まれて大変なんです!」
市長の孫というのは、悪さし放題で、カネと権力で、揉み消し、のうのうと生きてる、クズの代表みたいな奴だ。昨日コクられた雨が、速攻振ったところ、逆恨みで大勢の取り巻き引き連れて乗り込んで来たそうだ。慌てて、現場に走る。姉達も聞いていたので、
「僕、すぐ行くから、サポートお願い!」
「徹底的する?ショタからのお願いってことでいいね?」
急いでいたので取り敢えず細かい事は考えずに、
「うん、お願い!」
と言って走った。
現場に着くと二十人程の取り巻きと市長の孫、毅然として睨み付ける、雨がいた。
「脅しまでして付き合って、何が嬉しいの?」
雨の言葉に、市長の孫が一瞬怯んだ。完全に見下ろしている。その隙に割って入った。
「あーあ、せっかくサシで話していたんですがね、邪魔が入っちゃいましたね。そちらがそう言う事でしたら、こちらも!」
と言うと、顎をしゃくり出した。ガタイのいい奴等がが三人寄って来て、いきなり蹴りが飛んで来た。見掛け程の手強さは無かったので、しばらく軽くかわしていたが、避けると雨が危ない角度だったので、蹴りを受け止めた。パワーだけは立派だったので、結構なダメージを喰らった。次のパンチ以降は、かわし切れなくなった。でも、もう少し持ち堪えれば、姉達のサポートがくるはずだ。
しばらくの間、猛攻に耐えていると、暴れる三人と、取り巻き数名のスマホが一斉に鳴った。それぞれ、へこへこしながら対応している。その間に、スーツ姿のおじさんがふたり、市長の孫に近づいて何か話しかけたかと思うと、腕時計を確認し、手錠を掛けた。取り巻き全員を護送車に乗せた。護送車の後ろには、テレビ局の中継車が来ている。ワンセグで確認すると、『市長、孫まで逮捕』の報道。市長の汚職疑惑や、息子で参議院議員候補の公職選挙法違反疑惑、孫娘で最年少市議のホストクラブ通いや、親族経営会社の脱税容疑等、これでもかって言うくらい叩かれている。スマホの速報では、『市長辞任か?』と、飛んで来た。丁度着信が入った。
『着信・桜』長女からだ。
「もしもしショタ?雨は無事でしょうね?」
「あ、うん大丈夫。警察とか、テレビって姉ちゃん達が手配したの?」
「面倒な事とは聞かなくていいから!で、徹底的ってどの位かな?市長の娘で、そこのクズの母親が県議なんだけど潰しておく?」
『それ、私が手配しちゃってるよ、政務調査費でホコリ出たよ!』
次女、桐の声が聞こえた。手配ってなんなんだ?
三女、芒が電話に代わって、
「取り巻きは、保護者が来れば帰れるようにしてあるから心配要らないよ、あと『論春』の記者さんが行くと思うから、話ししてあげてね!」
プツンと通話が切れると、目の前には、カメラを提げたお兄さんと名刺を差し出すお姉さんがいた。名刺には『週間論春』と書いてあり、『政治担当』と肩書きが付いていた。雨が状況を説明し、幾つか簡単な質問を受けた。俺の青アザとシャツに付いた血を撮影し、記者達は帰っていった。刑事さんにも何か聞かれるかと思ったが、一人は主犯をパトカーに押し込み、もう一人が寄って来て、
「花田松太郎君と雨さんですね?特に何も無いと思いますが、何かあればこちらに、」
と言って名刺をくれた。
「あっ、僕の携帯・・・」
「お姉さんに伺ってるので大丈夫です。」
いつの間に?
ほっとして教室に、戻った。たったの一時間程でこんな展開ってなんなんだ?
警察の介入があったので、入学式は繰り下げて、これからになっていた。出席番号順だったので、さくらの後ろに座った、後ろですすきが邪魔だとオーラを出している。先生が来て、さっきの顛末を聞かれると覚悟していたが、既に丸く収まっていた。
担任は、若い女性で、先月まで女子校だったから、取っ組み合いの喧嘩をした生徒を見るのはたぶん新鮮なんだろう。シャツに付いた血を見て、かなり動揺して、保健室に行かなくて大丈夫か?とか、しつこく聞いて来る。対応に困っていると、桜が適当にあしらって何とか解放された。
体育館に移動し、入学式が始まる。校長先生、同窓会会長、PTA会長、生徒会長、登壇して話すのは、全員女性だった。同窓会会長や生徒会長が女性なのは当たり前だが、こうも男が居ないと、自宅のような圧迫感がしてしまう。
新入生代表の挨拶も女子・・・!桜だった。
各クラスの後ろ数人ずつの男子生徒が息を飲む気配が解った。ひそひそ話が耳障りだ、『美少女三姉妹に弟がいるんだって、羨ましいな、弟っていくつなんだろ?友達になって姉ちゃん紹介させようか?』っていう会話が続いていた。
オマケではあるが俺も結構有名なんだけどな?名乗り出る訳にもいかないし、同意を求められても困ってしまう。時が過ぎるのをただ待ち続けた。
何とか入学式が終わり、下校の途についた。
こんにちは、グレープヒヤシンスです!
2作目の投稿になります。1作目のもまだ上手く書けていませんが、考え方を考えている状態なので、こちらは当面、『5人姉弟妹』に因んで5日毎更新の予定です!
よろしくお願いいたします。