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オレンジ14

気がつけば、私は暗闇の中を一人で歩いていた。

何だろう。何で私はこんな暗いところにいるんだろう。不安だし、なんだかすごく怖い。

そんなときだった。

「亜希子、聞こえる?」

と声からして姉さんの声だ。またしても私は姉さんの夢を見ているみたいだ。

「うん。聞こえるよ」

「もう。私は亜希子の夢に出るのはこれで最後にするよ」

「えっ、どういうこと?」

「私はさあ、いつも亜希子のことが心配だったの。だから私はいつも亜希子のこと見守っていたの」

「そうなの?」

と言った瞬間、私の目を背けさせるほどの閃光が暗闇の中を照らした。

ゆっくりと目を開けると、辺りはパンジーの花畑だった。目の前に立っていたのが私の姉さんだった。

「姉さん。どうしたって言うの?」

「亜希子が夢を追いかけることに私は心から祝福したいの」

「そうなの姉さん?」

と私はまだ訳が分からずに首を傾げていた。

「亜希子。どんな辛いときでも、そのサユリさんみたいな臨床心理士になりたいという夢をどうか手放さないでね。私はいつでも亜希子のこと応援しているからね」



夢から覚めた私は爽快だった。

窓を開けると心地の良い太陽の光と冬の冷たいハーモニーが混ざり合って、私の心はオレンジ色に染まっている。今日も良いことがありそうな気がする。

居間に向かうと、まだ母さんは起きていない。そう言えば今日は日曜日だった。

私はパンを焼いて目玉焼きを作った。

パンの上に目玉焼きをのせて食べるのが私は好きだ。

朝食を済まして、私は大検に向けての勉強をした。集中力が途切れもなく私の頭の中にすらすらと入っていく。

お昼になり、勉強もこれぐらいに引き上げようとしたとき、私の携帯が鳴り出した。着信画面を見るとサユリさんからだった。

「もしもしサユリさん」

「亜希子ちゃんですか?」

「はいそうですけど」

「今日あいてる?」

「うん。勉強も終わって今からどこか出かけようかななんて、考えていたところです」

「そう」

「それと、あづさちゃんは元気ですか?」

「エエ、元気よ」

「今日は私があづさちゃんの面倒を見ましょうか?」

「うん。それと今日は長岡のアイキャンと言うところのフリースクールに遊びに来ないって誘いが出ているの。もし良かったら亜希子ちゃんも来ない?」

「どうしようかな?」

なんて迷う私。

「行きましょうよ。きっとまた良い経験にもなると思うからさあ」

なんてサユリさんに言われた私は、

「わかりました。行きます」

「じゃあ、私が車で亜希子ちゃんの家に向かうね」

「よろしくお願いします」

と言って、十秒。車のクラクションが鳴って外を見ると運転席で女神様スマイルのサユリさんが手を振って待っていた。

なるほど、どうやっても私を連れて行くつもりだったらしい。

まあいいと思い、すかさず助手席に座る私だった。



サユリさんはハンバーガーを食べながら運転している。私はお昼はまだだったので、おいしそうに食べるサユリさんをちらちら見つめていた。

「亜希子ひゃんも食べる?」

と行儀悪くも口に物を入れて言うサユリさん。

「はい」

と言って、袋を差し出され中を見るとハンバーガーが十七、八個はあると思う。

私は二つほどもらってサユリさんに一言。

「太るよ」

なんて言ったら、

「大丈夫、私はどんなに食べても太らないの」

なんて言う。羨ましい。

私はあづさちゃんにミルクを与えている。

アイキャンというフリースクールに到着して建物を見ると、うちのフリースクールホットイップクと良い勝負かも。だって、ボロイ一軒家に中はうちよりひどく散らかっている。

「ごめんくださーい」

とサユリさんは声を発した。

「はい」

と言って一人の老人が出てきて、塾長の方と思いきや、サユリさんがそう訪ねると、

「俺はここの生徒だよ」

と老人は言った。

それに対して、疑問に思い「はあ」と顔をしかめて突っ込むところじゃないかと思った。

でもサユリさんは、

「そうですか、じゃあ塾長さんは不在ですか?」

「ああ、今でとるところだっけよ」

「そうですか」

「まあすぐに帰ってくると思うから、中で待っていると良いよ」

「ありがとうございます」

中に入って老人は座って何か問題集をやっている。ちらりと問題集を見ると小学校でやるかけ算をやっている。

私は何でかけ算なんかやっているんですか?と聞いてみたかったが一歩引いて、それは失礼なこと何じゃないかって思い黙って見ていた。

そんなとき、サユリさんが老人の問題集を見つめて、

「何かわからないことがありましたら、遠慮なく私に言ってくださいね」

と得意の女神様スマイルで言うサユリさん。

「じゃあ、かけ算はもう出来るんだよ。俺はわり算が出来ないんだよ。教えてくれるか?」

「はい。喜んで」

と言うサユリさん。この人は誰に対しても優しい人なんだなあって感心してしまう私だった。

これも臨床心理士の心得の一つなんだろうと思う私で、ぜひ見習っておきたい。

私はサユリさんが教えているところをあづさちゃんを抱きながら見ていた。

年寄りというのは理解力が乏しい。サユリさんは何度も同じところを繰り返し教えているのになかなか理解しないみたいだ。心の中で思っていた。なんていらいらするんだろうと。でもサユリさんは得意の女神様スマイルを崩さずに何度も教えている。そしてついに。

「出来たじゃないですかお爺さん」

「おう。ありがとよ。それと俺の名前は徳川正宗って言うから、名前で呼んでくれよ」

あれから二時間、どうやらやっと徳川さんはわり算を理解したみたいだ。

「それにしても、塾長さん帰ってきませんねえ」

とあづさちゃんのおしめを交換しながら言う私。

「お母さんは塾長に何か用事でもあるのか?」

と言う徳川さん。

「私お母さんじゃないですよ」

「じゃあ、その子は」

「これにはいろいろと事情があるんですよ」

「まあ良い。お母さんはまだ若い。その子も大学出て立派な社会人として貢献できるようにつとめるんだぞ」

「別に大学出たからって、良い社会人にはなるとは限らないですよ」

なんて反論する私。

「俺はよお、若いとき勉強して大学行きたかったよ。でも戦争と貧しさで勉強どころではなかったんだよ」

なんて、昔のことを突然語り出す徳川さん。

「聞かせてください。どうして今になって勉強がしたいのか」

と言うサユリさん。

私もサユリさんの意見には賛成だ。これも社会勉強の一つだ。

「ああ、俺は隠居して十年、今まで所帯を持って大工で働いていたんだよ。しかも子供は大学行って、卒業して今は一流企業の課長を務めているんだ」

「すごいですねえ」

と私。

「おお。だって俺の自慢の息子だからよお」

「ふーん」

とサユリさん。

「まあ、俺はもう八十になるんだけど、勉強して死ぬ前に大学を受験して入りたいんだよ」

「そうなんですか」

と私。徳川さんの話を聞いて、これは自分のためだと思い、黙って聞くことにした。

徳川さんは若いとき、戦争と貧しさで勉強どころではなく、毎日働かされたらしい。でも徳川さんは勉強は嫌いではなかった。いつか出来るのなら、勉学につとめたいと思っていたらしい。だから隠居して勉強して若いとき憧れていた大学生になりたいらしい。

そんなこんなで、私とサユリさんは徳川さんと語り合った。

もう窓の向こうを見るとすべてをオレンジ色に染める夕日が沈みかけている。

突然、アイキャンの電話が鳴りだし、徳川さんは受話器を取った。

そして戻ってきて、

「あんたら悪いんだけど、どうやら塾長の豊川先生は用事があって帰れないんだと」

「そうですか、じゃあ亜希子ちゃん今日は引き上げようか」

「はい」

「おうよ、わり算教えてくれてありがとよ。豊川先生にあんた達のこと伝えておくからよ」

「よろしくお願いします」

とサユリさんは言って車にエンジンをかけた。

私はあづさちゃんをチャイルドシートに乗せて寝かしつけた。かわいらしい寝顔だ。私は思わず、ほっぺにキスをしてしまった。そんなときサユリさんが、

「亜希子ちゃん」

「何ですかサユリさん」

「今日は私にとっても亜希子ちゃんにとっても良い話を聞かせてもらったと思うんだけど、亜希子ちゃんはどう思った?」

「サユリさんと同じですよ。すごい勉強になりました」

「私は初めて見たよ。あんなパワフルな高齢者がいるなんて」

「私もです」

「やっぱり亜希子ちゃんも私もああいう人たちと巡り会って生きて成長していくべきなんだなあって思ったわけだよ」

「サユリさん。携帯鳴ってますよ」

と言って、車を運転するサユリさんに携帯を渡した。

「はいもしもし」

と誰かと会話している。

五分くらいが経過して、どうやらアイキャンの豊川先生との会話だって事がわかった。

さらに十分が経過して、サユリさんは急に深刻そうな面もちになった。

その顔はまるで医者に末期のガンを告知されたようなときの感じだ。だから私はサユリさんに、

「どうしたんですかサユリさん?」

「・・・」

どうやら言葉も出せないほどの深刻な話を聞いたかのような感じだ。

「サユリさん」

ともう一度言った。

「あーあー亜希子ちゃん」

と突然笑い出して言うサユリさん。私はびっくりして、

「どうしたんですか?」

「亜希子ちゃん。ラーメンでも食べようか」

「別に良いですけど、どうしたんですか?」

「・・・」

にっこりと微笑んだまま黙っているサユリさんだった。

とりあえず私の家によってもらってあづさちゃんを母さんに預けた。

「で、どこのラーメン屋に行くんですか?」

「近所よ」

歩いて十分。ラーメン屋に到着した。

サユリさんはラーメン特盛りとチャーハン特盛りを注文した。ちなみに私はラーメンいっぱい。

じゅるじゅるとサユリさんの豪快な食べっぷりを見ながら私はラーメンをゆっくりとすすっていた。

「どうしたの亜希子ちゃん。私を見つめて」

「いや、すごい食べっぷりだなあーッと思って」

「こんなの毎度の事じゃない」とサユリさんは食べ終えて「あっ、店員さん。追加でラーメン特盛りとチャーハン特盛りね」と注文するサユリさん。

そんなサユリさんを見て私は心配して、

「サユリさん。何かあったんですか?」

と言った。

サユリさんは笑顔だったんだけど、目をそらしていたので、深刻そうな面もちだと何となくわかった。

そんな表情のまま十秒ぐらい沈黙した。そして、

「実はさあ、徳川さん余命三ヶ月なんだって」

「エエッ」

と私は驚いたし、ショックで口元を思わず手を当てた。だからさっきの電話で豊川先生に余命三ヶ月のことを聞いて、それで深刻そうな顔立ちをしていたのか。

「なんか、せっかく良いお友達が出来たと思ったのにすごく残念で」

とサユリさんの体は小刻みに震えだし、終いには涙を流してしまった。

私もサユリさんにつられて、涙を流してしまった。しかも返す言葉もなかった。

サユリさんは悲しくなったとき、やけ食いをする癖があるのか、追加した大量の物をペロリと泣きながら食べた。

「サユリさん。帰りましょうか」

と言う私。

「うん。そうだね、帰ろうか」

外に出て、サユリさんの背後を見つめながら歩いていた。

その丸くなったサユリさんの背中は悲しさに満ちているような物だった。

そんなサユリさんを見ていると私は辛い。だから私は、

「あの、サユリさん」

「何、亜希子ちゃん」

といつものサユリさんじゃない。女神様スマイルはどこへ行ったのか?

私はそんなサユリさんを見ていると私まで悲しくなってしまうので、

「元気出してくださいサユリさん。私とサユリさんはこれからいろんな人たちとの出会いを笑顔で迎えるという・・・なんて言うかさあ」

これ以上なんて言っていいのかわからずに言葉が詰まり、サユリさんの涙色の素顔を見ていると気まずいムードだったが私は笑顔で、

「サユリさんは笑顔の方がいいよ。サユリさんがそんな顔していると私なんか辛い。だからそう言うとき笑ってくださいよ」

私も自分で何を言っているのかわからないが、サユリさんは、

「ありがと亜希子ちゃん」

と涙色のスマイルだ。

「そうですよ。今は私も辛い」と言って、徳川さんのことが頭によぎり、悲しくなり、涙を流してしまったが、ここはあえて笑顔で「こう言うときこそ笑いましょうよ」とおどけてサユリさんをくすぐる私。

「ちょっと、やめなさいって」

とすっかり笑って元気が出たのか、

「やったわね」

と言ってサユリさんは仕返しって感じでくすぐり返してくる。

これで良いのだ。まるでサユリさんの悲しみと私の悲しみを二人で二分化した感じだ。悲しいときこそサユリさんがいて私がいる。

その時思った。理屈には合わないかもしれないが悲しみたす悲しみは笑顔って。

そんなふうに思えたら、人間という生き物はすてきだって。

「じゃあ、サユリさん。また明日」

と言って笑顔で手を振った。そんなときサユリさんは、

「私、亜希子ちゃんに出会えて良かったよ」

と涙はすっかりはれていて、女神様スマイルのサユリさんだ。

そんな笑顔を見て、幸せを感じてしまった私は、

「私もですよ。どうしてサユリさんは何の取り柄もない私をこのフリースクールのスタッフに選んだんですか?」

「それは亜希子ちゃんがすてきだからだよ」

「じゃあこれからも、もっとすてきになるからこれからもよろしくお願いします」

「うん」

サユリさんと別れ、私は家に戻った。



私はあづさちゃんをゆりかごに寝かしつけた。

あづさちゃんのお母さんは私とサユリさんだ。

あづさちゃんに願うのはサユリさんも同じだと思うが、それは悲しいときも苦しいときも、ずっと人に幸せをもたらす笑顔でいてほしいと。


オレンジ日記。


徳川さんは余命三ヶ月と言うのに希望を忘れずに大学受験に挑むあなたはきっと私とサユリさんの記憶の中で一生残るでしょう。

もし希望を失いかけ、悲しみにとらわれた人が私の目の前に現れたら、あなたのことを語ります。そうすれば、きっと笑顔を取り戻し、失いかけていた夢も思い出してくれると思うのです。

徳川さんに出会ったひとときは私の宝物です。



さて、私も勉強がんばるぞ。

 今日がんばれば、言葉には表せられない喜びが私を待っています。

「その調子よ亜希子」

と出てきたのが姉さん。今日は私と姉さんしかいない暗闇を照らすキャンプファイヤーの場面だ。

またこれは夢だと言うことがわかる。

「どうしたの姉さん。もう私の夢には出てこないんじゃなかったの?」

「あれはやっぱり嘘。私はいつまでも亜希子の側でいつまでも見守っていたい」

「そう」

私は内心嬉しかった。姉さんがいつまでも側にいてくれるんだったら、私は心強い。

「亜希子」

「何姉さん?」

「サユリさんはあなたにとって、人生の最大の鍵になっているわ、いつまでも側でサポートしてあげるのよ。それとあづさちゃんを立派な大人にしてあげるのよ」

「わかっているよ姉さん」

「今日はこれぐらいにしておこうか」

夢で見る姉さんはいつもスマイルだ。しかもサユリさんとかぶる女神様スマイル。

改めて感じることだが姉さんは私の中でいつまでも生きているみたいだから、死んだとは思えない。

だったらいっそう私が眠るとき、幸せへと誘うヒントをいつも教えてくれる姉さんでいてほしい。



目覚めると、私は机の上だった。

どうやら私は勉強している最中に眠ってしまったみたいだ。ノートに涎まで垂らして汚い。

さてとあづさちゃんにミルクでもと思いきやあづさちゃんがいない。しかもゆりかごごと。

さては母さん。

部屋を出て台所に行くと母さんがあづさちゃんをだっこしてミルクを飲ませていた。

「母さん」

「あら、亜希子おはよう」

とさわやかな笑顔の母さん。

「何度言ったら分かるのよ・・・」

と説教してやろうとしたがあづさちゃんを見ると心地よさそうにミルクをしゃぶっている。

まあいいか。

母さんは私と姉さんを育てただけあって赤ちゃんのあつかいは私やサユリさんよりも上手だ。

「ねえ亜希子、お願いがあるんだけど」

なんてにやにやしながら言う母さん。

そんな顔をしている母さんを見て分かる。

それはあづさちゃんを自分の会社につれて行って良いかと言うことだ。それが分かる私は、

「ダメ」

と即座に言う私なのだ。

「エエッ、まだ何も言っていないのにどうして?」

「母さんの言いたいことは分かる。だめったらだめ」

「母さんは赤ん坊のおもりは得意だから良いじゃない」

「あづさちゃんの母親は私とサユリさんです」

「なによけち」

「母さんは会社でそんなことしている暇はないでしょ」

「何言うのよ。私はカラオケ屋の店長よ。母さんはいつもアルバイトの子達に指示するだけよ」

「だからって、仕事しないで赤ん坊のおもりをしているわけにはいかないでしょ」

「大丈夫よ。だからあづさちゃんを私にかしてね亜希子ちゃん」

にっこり笑いながらウインクして言う母さん。気持ち悪い。だから私は朝食をさっさと済ませ、あづさちゃんをおぶって、ホットイップクに向かうのだった。

到着して、時計は七時五十八分を示している。

サユリさんはまだいない。早すぎたみたいだ。

まあいい。軽く息をついた時あづさちゃんが泣き出した。

これはおしめのサインだ。

さて、おしめをかえて、あやしてあげてあづさちゃんを寝かしてあげた。

私は赤ちゃんの世話は大変だが面倒だなんて思ったことはない。あづさちゃんのかわいらしい寝顔を見ていると、自然と笑みがこぼれ、私はお世話した分幸せにしてくれるからだ。

これから大学に行くために勉強だ。

結構しんどいことだが、その日定めた課題を終わった後の充実感は気持ち良いのだ。まるで高い山を登り終えた後のようにすがすがしい。

「よし」

と手をたたいて、早速始めるのだ。

私は勉強に集中している。

部屋の中は時計の秒針を刻む音しか聞こえない。

「ワッ」

と後ろから大声が聞こえた。

そんな静かな部屋で大声がするのだ。私は「キャ」と言ってびっくりした。

「びっくりした?」

なんてにやにやといたずらな笑みを浮かべるのはサユリさんだ。

「もう。びっくりさせないでくださいよ。せっかく集中してやっているのに」

と文句を言う私。

「ゴメンね、ついねえ」

なんて、舌を出してごまかすサユリさん。

一息入れようとして、窓を開けると冷たい風に身をさらされ、小鳥達のさえずりを聞きながら遠くを見つめたくなるのだ。

「亜希子ちゃん」

「はい」

と振り返って、そこにはいつもの私が憧れている女神様スマイルのサユリさんだった。

「勉強お疲れさま。お茶にしましょう」

そんな一段落終えた後にサユリさんは私を幸せに誘うように言うのだ。

私はフッと笑って、

「はい」

と言った。


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