訪問者
何も無い日。
文字だけ見れば退屈な日に見えるだろう。だが、僕にしてみれば何も無い日というのは素晴らしいものである。特に行動しなければならないわけでもなく、ぼーっと1日を満喫出来る最高の日だ。
何も起こらず午前中が過ぎた。
「このまま午後ものんびり過ごしたいなぁ」
なんて独り言を呟く。
椅子に座っている父の視線がこちらを向く。あの目は知っている。農作業を手伝え、の目だ。
どうせ肥料の移動と耕しだろう。腰が疲れる。やだ。
昼飯を食べながら午後にすることを考える。
昼寝昼寝昼寝昼寝昼寝昼寝
やりたいことが山積みだ。
なんて忙しいのだろうか。
ふと机の上の食器の違和感に気づく。
揺れている
床も揺れている。どんどん揺れは大きくなっていく。
「なんだぁ?!なんで揺れんだよ!親父が家でも揺らしてんのか?!」
「アホか!!」
ツッコミあざっ!
親父が扉を開けて外に出る。僕も外を見てみる。他の家の人も外に出ているのが見えた。
「うちの家だけ揺れている、っていう嫌がらせはなかったな。」
残っている昼飯を掻き込んで外へ出る。
村中がドッタンバッタン大騒ぎだ。
揺れはどんどん大きくなっていく。
高台にいる村人が叫んだ。
「馬だ!!馬に乗ってる奴らがこっちへ来る!!!」
高級品である馬を持っている奴なんて、街か王国か教会にいるお偉いさんくらいだぞ!
なんでこんな村に!
村人の言葉がよく聞こえる。
村長が叫ぶ。
「みんな!落ち着け!あの人達とは私が話をする!みんなは家の中にいろ!」
村長の言葉が聞こえ、村人が家に入っていく。
僕も家に入る。
「なあ親父。」
「あぁ?なんだよ。」
「馬って見たことあるか?」
「1回だけならあるぞ。街に作物を売りに行った時見た。」
「馬って高級品だよな。」
「ああ、そうだな。」
「さっき高台の奴が馬に乗ってる奴らって言ったよな。」
「言ったな。」
「そんだけ馬を持っているってことは相当金持ちだよな。」
「誰なんだろうな。王国か中枢教会くらいじゃないか?」
「この村になんの用だよ...」
「さあな。」
村長の言葉を聞いてから結構な時間が経ったと思う。
やる事がなくて暇をしていると、扉のノック音が聞こえた。
「先の訪問者は君に用だよ。」
「え!?おれ!?」
「お前じゃねえ!」
「お前のこどもだ!!」
僕かよぉぉ.....