昔話
村長、親父から説明を受けた。
意味が分からない。
なに!シルミトファって!聞いたことないわ!
なに!加護って!僕守られてるの?
まあ死にそうになった僕を守ったのはあのでっかい槍っぽいし、納得というか理解は出来なくもない。
だが急すぎて理解が追い付かない。
森の賢者は言った。
「正直、女神シルミトファの加護というのはおとぎ話の中だけのものだと思っていた。女神シルミトファの話は知っているかね?」
僕は首を横に振る。
世界が生まれました。
世界といっても何もない。空間と言ってもいいでしょう。
創造したのは絶対神ガヴァ。絶対神は神を創りました。
絶対神は神に何を創るか決めさせました。
神の案によって、大地ができ、生命ができ、神ができました。
絶対神の創った神は創造神アヌザスとなりました。
創造神は神に生命の種類を決めさせました。
生命は、人間・スライム・ゴースト・ゴブリン・ウルフ・ドラゴンと何種類にも増えていきました。
創造神の作った神は生命神ドワドゥとなりました。
生命神は女神を作りました。
生命神は女神に世界の秩序を正すよう命じました。
この頃、生命のうちの一つ、人間が国という一つの概念を作り出しました。
生命神は人間の成長にとても喜びました。
しかし、他の生命の成長が無いなか、人間だけが成長するのをみて生命神は退屈になりました。
そこで生命神はドラゴンに知能を与え、人間を襲わせました。
世界の秩序を正すよう命じられた女神が、人間を襲うドラゴンを倒しました。
ドラゴンを倒された生命神は女神に怒り、ドラゴンに、より高度な知能を与えました。
ドラゴンは人間以上の知恵を持ち、人間だけでなく世界を破壊し始めました。
世界を破壊されていることを知った創造神は、神槍を創造し女神に与えました。
女神は神槍を使い、ドラゴンを倒し尽くしました。
女神はその功績から、女神シルミトファとなりました。
女神シルミトファは人間に、ドラゴンキラーと女神シルミトファの加護を与えました。
長い長い森の賢者の話を聞いていて、3度寝そうになった。寝なかったので褒めてほしい。
「つまり今の話で出てきた女神シルミトファが人間に与えたスキルと加護を僕が持っているってこと?」
「信じ難いがそういうことじゃろうな。」
「じゃあなんで僕のスキル名が分かって村のみんなに聞いたとき誰も分からなかったの?」
「加護の話は一般的に知れ渡っているが、スキルのことに関しては知っている者が驚くほど少ない。この村に関して言えばわししか知らんじゃろうな。」
まじかよ。僕すごいじゃん。英雄になれるんじゃね?でもめんどいな。ならなくてもいいや。ずっと寝てたい。
「…ぁの…おとうさんが……よんでます(小声)」
かわいい
「ありがとう、アンライちゃん。」
「まだ私自身、君の加護についてあまり信じれていない。しかし、事実君を助けたのは君の言う槍なのだろう。……あぁ。すまない。私以上に君は混乱しているよな。すまない。とりあえず、村の混乱は避けたい。このことは、内密にしていてくれないか。」
ゴミ同然の僕の頭でも分かる。もし仮に今僕の加護に関して村に公表すれば、確実に村は混乱するだろう。自分の生活を守るのに必死なのだから。
村長との話し合いから4日が経った。
相変わらず僕は家にいる。加護が分かったからといって、なにか特別なことが起こるわけでもない。
今まで通りの生活ができればいいのだ。
しかし、そんな僕の日常も終わる。
馬の足音がだんだん近付いてくる。