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チートな師匠と普通な俺  作者: azusa.yukari
2/17

お嬢さん方の事情

 お嬢さん方の話をまとめると、この国の貴族の男と言うのは、全般的にあんまり働かないらしい。

城勤めの人たちはともかく、役職のない領地もちの男は、家人や家来に仕事を丸投げして、自分はニート生活を満喫しているのだそうだ、この場合の家人とは大概の場合数人いる妻の事、それを見て育つもんだから、息子も後を継いでも働かない。

「すごい悪循環だな。」

 女性に不利過ぎる、いや確かに地球にもそんな少数派の地域がどっかにあった、主に草原だか山岳だかのごく限られた地域の人たちだが。

「だから働かなくても、せめてもう少し性格の良い方か、穏やかな方に嫁ぎたいんです。」

 ルルさんの顔が怖い、他の二人も超真剣である、うん、ほんと一生に係わるもんね。

「この国いっそ女性で乗っ取った方がよくない?」

 軍人とか一部の人を除いて女性が権力握っちゃえばいいのに。

 そう言ったらものすごく悲しげな顔をされた、曰く、結婚前の女に家庭内での発言権はなく、結婚後は、夫と舅に従順でなければならない、と言うのがこの国の女性の現状らしい、女性・人・権団・体の皆さん助けてください!!

「師匠的にはこういう現状をどう思いなんですか?」

 俺じゃ何とも言いようがないので、この場唯一の男性貴族な師匠に矛先を向けてみる。

「下らん。」

 一言で終わらないで師匠!

「それはどっちに対してでしょう。」

 俺がさらに聞けば、そんなもの男どもに決まっていると言い切った。

「己の自堕落さを棚に上げ、妻や娘ばかり働かせる男なぞクズ以下だ。」

 さすが元平民、平民の皆さんは夫婦で助け合って生活してますもんね、かかあ天下も当たり前ですもんね、親父と母さん元気かなあ。

「師匠、やっぱり王位簒奪しません?」

 師匠ぐらいまともな人が王様なら、みんな安心して嫁に行けると思うんです。

「だからそういうことはティナ殿に言え。」

 ごもっとも、では改めまして。

「ティナ殿下、王位取りに行く気ありませんか?」

「私がお師匠様と結婚して、お師匠様の嫁として隆二もついてくるなら考えよう。」

 おおぅ、無理ゲー…はい、無茶を申し上げました。

「何だ諦めてしまうのか、つまらん。」

つまらなくありません、一生の事です。

「あきらめたらそこで試合終了ですわよ。」

 バスケはしないです、安〇先生。

「なんでそんな言葉知ってるんですかサシャ(魔法使い)さん」

「私がお師匠様にこんがり焼かれている時に、ニヤニヤしながら言っているのは隆二さんですわ。」

「心よりお詫び申し上げます。」

「わかればよろしい。」

 素直に頭を下げたら可愛く偉そうに言われました、3人は師匠の地獄のしごきから生き延びる戦友のせいか、ふだんは可愛いとか美人とかそういう感情はないけど、こういうちょっとしたしぐさは素直に可愛いと思う、向こうも同じことを俺に対して堂々と言ってくるので恋愛には発展しないが。

「「「やっぱり師匠の元に嫁がせてください。」」」

 お嬢さん方の好意総取りの師匠と言えば。

「若いのを自分で教育しろ。」

 ととてもすげないお返事でした、ああ、逆紫の上計画ですか、その辺りが確実ですね。

「紫の上?」

「…あー、俺の国の古典文学です、高尚さを抜きで言うと、マザコンで遊び人のやんごとなき方の落とし胤の貴族の坊ちゃんが、色んな彼女とか、奥さんキープしつつ、小さい女の子若紫ちゃんを自分好みの彼女に育てる話だったと、すいませんさらっとしか勉強してないんで間違ってるかも。」

 ちなみに紫の上は、奥さんになってからの呼び名です。

「つまり、私たちもよさげな男児を自分好みに育てればよいのだな、よし、どこかの良さげな3男辺りを攫ってくるか。」

 え?ティナさん?どうしました?犯罪は駄目ですよ…?(震え声)

「まあまあまあ、隆二さん良い案をくださいましたわ、うふふふふふ。」

 ル…ルルさんなんすか、めっちゃ怖い!それに言い出したのは師匠です!

「俺に振るな。」

 そんなすげない事言わないでください!

「あそことあそこは多産で男児も何人か…、いえ育ちすぎている、なら去年生まれたあちらの家の…。」

 サシャさん!!止まってください!いやぁああああ、犯罪は駄目ええええ!

「なら、隆二を婿にすればいいだろう。」

 被弾!師匠何言ってるの!俺部外者ですよ、貴族じゃありません!

「「「隆二さんはありえません。」」」

「・・・・・。」

 別にいいけどさ、泣いていいかな?

「隆二さんは可愛らしいですが、なんと申しますか、嫁仲間にしか思えません。」

 ルルさん酷い…(泣)

「うむ、隆二はやはり我々と共に師匠に嫁ぐべきだ。」

 やだやだやだ、可愛いお嫁さんがほしい。

「大丈夫ですわ、私が誠心誠意立派な(理想の)婿殿を育てますから四人で嫁ぎましょう。」

 だから!俺を嫁枠に入れないで!

「師匠!」

 何とかしてください、と言う前に師匠がスウっと居なくなってた。

「逃げんなあああああ!!」

 いつの間にか川辺で洗い物している師匠に俺は心の限り絶叫した。


 確かに師匠は理想の婿だね、だけど俺は嫁には行きません!!


「だから、俺にも選ぶ権利がある…。」

 師匠の声が珍しく疲れてました。

 

俺は俺で、その後もことあるごとにお嬢さん方から、一緒に嫁ごう攻撃を受けることになる、そしてもはやネタの域に達した頃俺は涙目で絶叫した。

 だから、俺は男!嫁に行く方じゃなくて、貰う方なの!!


 さすがに反省したお嬢さん方は、しばらく静かだったが、のど元過ぎてしまった頃また言われ出して、本気で泣いた。

「だって隆二さん可愛いらしいんですもの。(小動物的に)」

「手放したくはないんです。(恋愛は無理だけど)」

「だったら、私たちと同じ男に嫁いでもらうのが一番だろ?(そうすれば家族だ)」

 …普通に友人で良いんじゃない?

「「「嫁いだ女が夫以外の男に(私用で)会えるとでも?」」」

 だからって嫁は極論すぎだろ!


 モンスターを倒しながらそんな会話をしている日々、気が緩んでると、戦闘中なのに師匠からの愛の鞭が飛んでくる。

「ぼげえええええ!!」

「気を緩めるな馬鹿者。」

「ずみまぜんでじだ…。」

 モンスターの攻撃より、師匠の一撃で瀕死になりながら、俺たちの旅は続く。

 

 

 旅に出てそろそろ半年かぁ。

 本当さっさと魔王倒して、焼き肉食いに行きたい。

「空腹ですわ…。」

「煮込んだシチューが食べたいです。」

 贅沢言わんでください、はい、どうぞ。

「隆二は着々と料理の腕を上げているな。」

 簡単肉スープお気に召してよかったです、師匠どうでしょう?

「まだまだだな。」

 精進します…、と言うか師匠の激ウマ料理と一緒にしないでください。

「隆二さんでまだまだなら、私たちの料理は家畜のエサですわ。」

「いや、ルルさん達の料理だって十分すぎるほどうまいです、師匠の天才料理人っぷりがおかしいんです。」

 全員そこは同意した、おんなじ材料使っても師匠の料理は異次元の域だから一緒にしてはいけない。

「しかし、隆二の食事は確かに私たちより美味だ。」

「ありがとうざいます、お代わりですね。」

 肉多めがいいんですね、知ってます。あと、基本だしの概念が微妙なこの世界とだしが基本の国で育った違いかと、それでも激ウマの師匠の料理はやっぱり異次元です。

 師匠の味付けで、焼き肉作ってもらえないかな、安い肉も天上の味になるに違いないから。


「俺いつ帰れるんだろ…。」

 つらくはないけど思わず呟いちゃう今日この頃です。


「あと五か月ほどで魔王城にたどり着きますわ。」

 長いなあ。

「ぶっちゃけ魔王ってどの程度の強さなんです?」

「邪王龍よりは確実に強いです。」

 あれかぁ、師匠どころか俺の一撃で倒れたへぼ龍。

「一応あれには国つぶしの名が冠せられているんだぞ?」

「えー?」 

 納得いかん、この世界の軍弱すぎない?

「じゃあみんな、師匠に鍛えてもらえばいいのに。」

「「「常識を知りなさい。」」」

 3人全員に叩かれました、理不尽。

「ドラゴン一騎打ちで倒せる方たちに言われても。」

「「「邪王龍を一撃で倒す人間が言わないで。」」」

 ちなみにここで言うドラゴンは竜でも龍でもなく、羽のついたでかいトカゲ、火は吹かないし、雷も操れない、ただのでかくて速くてやたらと鱗が頑丈な凶暴なトカゲ、騎士6人がかりで仕留めるのが普通のトカゲ、なんかトカゲトカゲ言い過ぎた。

 逆に竜と龍は火は吹くし、雷だったり植物だったり土とか岩とか雨とか平気で操るし、氷だって種族によっては火の代わりに飛ばしてくる、しかも魔法が使えるちょっとしたチート生物。

 「いや、俺の基準師匠なんで。」

「「「あれは世界最強生物です、一般人と一緒にしない!」」」

 師匠が人間扱いされてない件、いや、俺も人間じゃないとは常々思ってるけど声に出しちゃ駄目でしょ、ってほら、案の定。

「お三人さん、師匠が地味に落ち込んでます。」

 慌てて三人が師匠を見やれば、そこにはいつもより若干肩を落としながら、川辺で洗い物をしている師匠の姿があった。

 慌てて謝罪に向かう三人を尻目に俺は寝床の準備のするのだった。

 その夜久し振りに剣の精(?)が夢に出てきた。

 貴方ねえ!強くなり過ぎ!私が砕けちゃうじゃない!自重してよ! ホントこの前だって、砕けちゃいそうだったんだから!私砕けたら魔王倒せないのよ!

 と文句を言ってきたので次の朝布でぐるぐる巻きにして封印の術をかけておいた、うむ、これで安眠できる、しかししょぼい剣だな。

「師匠この剣の代わりになりそうな物って何かありませんか?」

「・・・・。」

 どっから出したのか師匠が無言で剣を一本くれました、軽く振ってみると遠くで一匹、竜が真っ二つになってました、おお、業物ですな。

「空間魔法!師匠!教えてください!」

「今度な。」

 あ、これ面倒だから教えてくれないパターンだ、サシャさんががっくりと肩を落としていた。


まあ、ひとまずさっきの竜を回収に行こう、竜の肉は固いし不味いけど、師匠の手にかかればA5ランクの牛肉様もびっくりな極上肉に早変わりしてくれるし、さあ、朝食朝食!


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