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チートな師匠と普通な俺  作者: azusa.yukari
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実戦それもまた修行

「死ね。」

 腹が立ってしかたがないので、とりあえず目の前の魔人をブッ飛ばしてみた、一瞬で原形もなく無くなっていた、チッ根性なしが。

 その後一瞬ひるんだ魔人共に狙いを定めて俺はまた剣を一振りした、声も出さずに消し飛んでいく、本当にこいつら強いのか?いつかのへぼ龍の方がまだ切りごたえあったぞ。

「隆二さんがとうとう理性を手放してしまいましたわ。」

「あれを見られたのがよほど不服だったか。」

「可愛いと思いますけど。」

 各々の持ち分を倒しながらひそひそと話す三人の言葉に、三人をギロリとにらめば三人が一斉に明後日な方を見る。

 イライラが最高潮に達した時馬鹿笑いしながらでっかい地竜に乗った腕輪じゃらじゃらの魔人が現れたので、さっさと両腕を切り落とす。

「ぎゃああああああ。」

 のた打ち回ってる魔人に念入りに炎魔法をぶつけて消し炭にしてやった、まだ気が晴れなくて乗ってた地竜を探したら、師匠にスライスされた後だった、どうやら今日の夕飯は地竜の肉のようだ。


 魔人の一団との戦いが終わっても俺はまだ機嫌が直らなかった、当然だ。

 今日、尻にある聖痕を三人に見られた、ちなみに俺自身知らなかった、だから油断してた、そしたらよりによって水浴びを覗きに来た三人に指摘された。

「サルレイガの花をハート形にして尾てい骨の所に付ける此処の神様のセンスはどうなってるんです!」

 サルレイガの花ってなんか純潔の象徴って聞いたけど?そこに此処じゃ性愛のシンボルのハートマークかたどらせて、よりによって尻に着けるとか何の嫌がらせか!

「子…子宝に恵まれる祝福紋ですわ!」

「男の尻に付ける紋じゃねえだろ!!」

 絶対三人が嫁嫁言ったせいだ!

「これ消えなかったらどうしてくれるんです!」

 日々増え続ける聖痕に本気でグロッキーになってた俺をようやく哀れに思ったのか、ルルさんが魔王さえ退治すれば一か所を残して後は消えると教えてくれた時はどれだけホッとしたか!逆に何で一か所残す!もしアソコのとか尻のとか残ったらどうすんだ、俺に一生童貞で居ろってか!?

「神からの褒美だ。」

「だったらこんな困るもんじゃなく普通に幸運度上げてくれればいいんですよ!師匠だってうっかりこんなもん残ったりしたら奥さんといちゃいちゃしづらいでしょ!」

 師匠が黙りこむ、ほらみろ!

「…せめて三人が水浴び覗きになんて来なけりゃ知らずに済んだのに。」

 知った時の衝撃の大きさったらなかった、後三人に全裸を見られた、あそこだけは死守した、お互い年頃の男女なのに気も使ってくれない三人に俺は深く絶望した。

「俺がうっかりでも見ようものならゴミクズ獣を見るような目で見られるのに…。」

「当然でしょ。」

「心から軽蔑する以外何をしろと?」

「隆二さんが恥ずかしがらずに聖痕を見せてくれないのが悪いんですわ。」

 確信犯の三人が全く悪びれていないのがさらに腹が立つ、下着姿で人の部屋に乱入してきたくせにいいいい!…今度から師匠と一緒の時以外は水浴びはやめておこう。

「でも隆二さん毎日水浴びしないと辛いと言ってるじゃありませんか。」

「師匠は四日に一度程度しか水浴びはしないぞ。」

「綺麗好きの隆二さんに耐えられますか?」

 三人が本当に悪びれもなくからかってくる、誰のせいだと!

「師匠…。」

 三人がいじめる!

「付き合ってやる。」

 さすが師匠!頑張って穴掘って湯も入れます!さっぱりしますよ!

「聞けば聞くほど隆二の世界の人間は贅沢だな。」

「毎日お湯を沸かして湯につかるなんてありえませんわ。」

「私たちだってお湯で体を洗うのなんて一週間に一度あれば十分贅沢なのに。」

 はっはっは、楽したくて科学発展させた世界ですから、後うちの国は世界でもそこそこ豊かな国ですから!お風呂も洗濯も毎日出来て当たり前、生まれてこの方飢餓何て体験したことない一般家庭に育った庶民舐めんな!

「ありえん。」

「どんな楽園よ。」

 ティナさんが頭を抱え、サシャさんがあり得ないと言う顔で言う。

「そんなわけないじゃないですか、俺の国以外では飢餓だってあるし洗濯や風呂なんてまともにできない人だって大勢います、あの世界において俺はそこそこ恵まれた国に生まれただけです、この国でいう所の町人なんですから俺は。」

「そうは言っても、それなりの家なんでしょ?」

 まだ信じてないサシャさんに俺はきっぱりと首を振った。

「父は普通の勤め人…こっちで言う商人の元で働いてるだけで、母も時間で雇われてる日雇い人です、兄は今年役人の試験に受かって役人してますがその程度の家です。」

 こっちの世界じゃ下から数えた方が早いくらいの貧乏人だ、三人どころか師匠まで目を丸くする。

「だから言ったでしょ、恵まれた国だって。」

 資源も何もない国だけど、知恵を絞って成り上がってきた国です、庶民だって腹いっぱい飯が食えるのが普通になる為先人たちが必死に頑張ってくれた結果です、ティナさん達もお姉様とよく相談して、国民を大事にしつつ頑張ってください。

「その前にどうすればいいか教えろ!」

「俺に判るわけないじゃないですか。」

 高校入ったばっかりの15歳舐めんな、え?16歳じゃないのかって?俺早生まれなので来年まで15歳です。

「そういうのは兄の方が得意なんで。」

 俺の言葉になぜかティナさんの目が光った、グリンと師匠の方を見る。

「お師匠様!隆二の兄上を連れてこれますか!?」

 は!?

「できない事もないが本人の了承がいる。」

 出来るんだ、と言うか家の兄ちゃんの誘拐計画が立ってる!

「師匠!」

「安心しろお前を返す時についでに頼んでみるだけだ。」

 それなら安心…なのか?でもなあ、兄ちゃん結構ブラコンだから俺を危険な目に合わせた国に協力してくれるかな?

「隆二、お前からも頼んでくれ!」

 あんまりにもすごいティナさんの剣幕に俺は折れた。

「…兄の事いじめないなら。」

 としか言えなかった、兄ちゃん根性なしの弟でゴメン。

 ただ一つわかる、食料自給をかなり放棄してるうちの国はこの世界の感覚では絶対に生存できないって事だけは。

 まあ、国なんていい所も悪い所もあるよねってことで、俺は考えるのを放棄して、兄ちゃんと女王様に丸投げを決め込んだ。

「明日は聖痕が増えてませんように。」

 寝る前のそんなつぶやきもむなしく、翌日右腕に蔓状の聖痕がしっかり刻まれていた、もう嫌だ…。

「なんでこんなに聖痕増えるんだ、そこまでしなきゃ魔王倒せないの?そんなに強いの?」

 ぶつぶつ言いながら落ち込んでいる俺に、サシャさんがお肉を一枚分けてくれました、ありがとうございます。

「でもおかしいですわね?隆二さんほどの勇者など私聞いたことがないのですが…。」

 ルルさんが不思議そうに首を傾げ、ティナさんも同意する。

「うむ、大概の勇者は魔人に苦戦し、瀕死になりながらも魔王を打倒したと書かれているのにな、隆二もだが、我々は一度たりとも魔人相手に苦戦したことは無いのだが。」

 確かにね、ルルさんの浄化魔法の出番もないくらいあっさりやられちゃうし。

「私の杖の一撃(物理)で倒れる者も少なくありませんし。」

 サシャさんが自覚してない、そろそろ棍棒使いにジョブを改めた方が良い事を。

「隆二さん、何か言いました?」

「いえ何も。」

 あっれー?なんか言いました?知りませんよ俺は。

「師匠に至っては近頃剣抜いてませんよね?」

 なんか初期並みに小枝で戦ってません?

「あれで十分だろう。」

 そうですけど手抜いてませんか?

「あれぐらいが鍛えるには良い。」

 ああ、修行の一環でしたか、実戦中に何やってるんです。

「お前たちも今日からはいつもの武器は禁止だ、魔法も初級魔法以外は使うな。」

 !!久し振りに師匠の無茶振り来たああああ!俺たちを殺しにかかる地獄の修行!え?ここで?

 固まっている俺たちを無視して師匠がさっさと武器を取り上げていきぽいっと投げられたのは普通の木刀…え?初期ですら俺使ったことありませんよ?え?これで倒すの?と言うか倒せるの?

「し…師匠。」

「死ぬ気でやれよ。」

 ぎゃあああああ!

この世界のお風呂事情

 一般の庶民は一月に一回水浴びできれば贅沢、普段は数日おきに水で濡らした布で体を拭くくらい、貴族でも同じ、労働力を気にしなくていい分、週に一度は湯浴びが出来る。

 水も薪木も各々で調達、近くを流れる川等から各人が往復してその日の水を運び、薪木も各々が森に入って拾う、井戸、水路が未発展の為水も貴重、木を育てると言う発想もないのでも薪木も貴重、畑の水も各々で運ぶので間違っても大きな畑など作れない、ゆえに湯を沸かしてそこに浸かるなんて贅沢は王族でもできない。

 魔法は本来特別な修行を何年も受けてようやくできるようになる特別な物で、湯を沸かすためだけに使うと言う発想はなかった、しかしチートな師匠に魔法を教わり、早々に魔法を身に着けた現代っ子の隆二がこちらの世界の常識をあっさりと覆し、毎日野外風呂を楽しんでいたのを知り、三人はその贅沢さに目を疑い、聖痕見たさもあって彼の水浴び…ではなく入浴タイムに乱入した。 

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