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復讐遊戯 9

 ロックはどうやら塩水を口に含むのを忘れていたようだ。

 パニックになって隠れていた場所に塩水の入ったペットボトルが置き去りにされているのを確認して、しかし、そのまま私はマイクのスイッチを入れた。


 『皆さまにお知らせします。ただいまロック様が亡くなりました。

ジーク様、ギル様、そしてアクア様。ご健闘ください』


 ずらりと並んだ画面のあちこちから生き残っている三人の、それぞれの呟きが聞こえてくる。

 

 「マジか」


 「良い気味だ」


 「助かる、私は助かる。大丈夫、私は主人公なんだから」


 あの女の言葉は事情を知らなければただの痛い発言である。

 ギルは自分の指を切り落とした人間が死んだ事を、心の底から喜んでいるようだ。

 ジークはといえば、自分の番が回ってくることを恐れているようだ。

 エディの死体が怪異によって動き回っていることは伝えない方がよさそうだ。

 隠れてばかりもいられないと判断したのか、ギルとアクアが同時に動く。


 「そもそも縫いぐるみが動くわけないんだ」


 ギルはそう考えたらしい。

 縫いぐるみが沈んだままであろう、桶のある部屋に向う。

 しかしそこには、当たり前だが縫いぐるみが存在していない。

 それを確認して、


 「うそだろ?」


 そこに、エディが現れる。


 「みいつけた」


 その声に、ギルの表情が信じられないとばかりに動いて喋ったエディを凝視した。


 「あはは、普段は威勢が良いくせに、結局弱い存在の前でしか偉そうにできないなんてタマの小さい男」


 血の付いた燭台を掲げ、今度はあっという間に距離を詰める。

 

 「ひぃっ!!くるな、くるなぁぁあああ!!??」


 ロックと同じようにナイフを振り回す。

 それがエディの腹に突き刺さった。

 しかし、元々エディは死体だ、そして痛覚もないようで、刺さった所で平然としている。

 ナイフを持つギルの手は指が切り落とされて無い方だ。

 その手首をエディは掴むと、ニタァと笑いながら、


 「つかまえたぁ」


 そう言った。

 エディが燭台を振りかざす。


 「離せ、離せよ!」


 そこで、コテンとエディが首を傾げる。


 「何故、私が貴方の言うことを聞かなければならないの?

だって、あなたは、私に乱暴したじゃない。

嫌がる私の足を無理やり開いて、私を犯した。

貴方だけじゃない、このエディも、ロックも、ジークも。

制裁だ、断罪だって言って、私の話を聞かずに冤罪で犯したじゃない」


 「おまえ、まさかリリーか!?」


 ギルの叫びに私は、固唾を飲んで成り行きを見守る。

 名指しされたエディは、嬉しそうに微笑んだ。


 「だいせ~か~い」


 来てくれた。

 私は胸がいっぱいになる。

 

 「姉さんが整えてくれた舞台だもん。楽しまなきゃね」


 なんて言ったかと思うと、エディの体から力が抜けてその場に崩れ落ちる。

 

 「ねぇ、君はさ、冤罪で裁かれた人間がどれだけ恨みをもつか、知ってる?」

 

 今度はギルが妹の口調で話し始めた。

 どうやら、今度は彼に取り憑いたようだ。

 倒れた時にエディの手から滑り落ちた燭台を拾いあげ、先程ロックを貫いた先端を喉に向けながら、取り憑いたリリーは続けた。

 

 「他人はどうかわからないけど、こうするくらいには」


 「や、やめ」


 「私は私に乱暴した貴方を恨んでる、憎んでる。

私は取り憑いた人の痛覚を感じないの、だから、私が受けた以上の痛みを感じて死んで」


 「嫌だぁぁぁあア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」


 ざしゅ、ざしゅ、ぐちゅ。

 ぐりぐり、とギルは自分の喉元を何度もさした。

 文字通り息の根を止めたようだ。

 またエディに戻ると、燭台を抜こうとしている。

 四苦八苦しながらも、何とか燭台を抜いたあと、エディに取り憑いたリリーはカメラに向かって笑顔で手を振った。


 「姉さん、最後までそこで観てて」


 なんて言ってくる。

 私はマイクのスイッチを入れた。


 『アクア様、ジーク様にお知らせします。

ただいまギル様が亡くなりました』


 声が弾むのは仕方ない。

 二人は演技ではない、恐怖の表情を浮かべている。


 『そうそう、先に死んだ二人は塩水を口に含んでいませんでした。貴方達、勝つ気あるんですか?』


 私の言葉に二人は慌ててペットボトルの塩水を口に含んだ。


 「あ、ちょっと姉さんハードルあげないでよ。せっかくの出来レースだったのに」


 私の放送にリリーは楽しそうにカメラに向かっていう。

 私は少し緊張しながら、妹へ言った。


 『ゲームは、お互いルールを守ってこそ楽しめるものでしょ?』


 リリーはそりゃそうか、と納得してくれた。

 一方、標的達はなんの話か分からず首を傾げている。


 

 

 

 

 







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