自己紹介
あれから、レン、レシア、ユノの3人は、ひとまずレンの家に帰った。帰る間、誰も一言も喋らなかった。
「ただいま。」
いつもなら、おかえりと帰ってくるあの声が今日はなかった。やけにシーンとしていた。
レンは、2人を自分の部屋に入れた。レシアはユノに、こっちこっちと呼びながら、連れてきた。なんか、もう仲良くなってる?そんな気がした。
俺はベッドの上、レシアは椅子、ワタワタとしていたユノは、カーペットの上にちょこんと座った。居ても立っても居られない俺は、ユノに、あの時の状況を聞いてみた。ユノの答えはこうだった。
「僕は、ここで暮らすのは最後だったから、お祭りを楽しも〜って、市場に出たんだ♪でもやっぱりもう一度、レンくんに会っときたくて……。レンくんの家に向かったの。そしたら先客がいたみたいで、家の中から、言い合いする声が聞こえてきたの。僕、その時レンくんのお父さんってこんな怖いの〜…って思っちゃって、その言い合いがドアのすぐ向こう側に聞こえた時、僕はとっさに隠れたの。そうしたら中から兵士達が出てきて、レンくんのお父さん、連れてっちゃたの。無差別の逮捕かもって気づいたのが、もう3人が市場の中に入って行っちゃった時で、追いかけたんだけど、僕、身長が小さいせいで、人波にのまれちゃって…。結局先回りして兵士達を止められたのが、あの広い広場だったてこと。そこからは見ての通り〜。」
いつものように、ゆる〜くしめたユノはレシアの方を向いてキラキラした目で見つめて続けた。
「ねぇねぇ、レンくん!この子だよね〜〜♪幼馴染さんって〜、美人〜!♪」
突然話が振られたレシアは顔の前でブンブンと手を振った。
「いやいやー。ユノちゃんだっけー?ユノちゃんは可愛いよ。私、レシア。レンの幼馴染。よろしくね♪」
「レシアちゃんか〜〜、よーし。じゃあ僕も自己紹介する〜☆」
と言ってユノは、ぴょこんとその場で立った。レシアはびっくりしていたが、レンはこれから何が始まるか、なんとなくわかっていやだった。
「僕の名前はユノ!魔法学校の卒業生で、見た目も可愛い☆天才魔法使いで〜〜す!レシアちゃん!よろしく〜♪」
レシアはユノを見て、かなりドン引きしたようだ。顔の口角が引きつっている。俺はレシアに目配せをして、口パクで
『早く慣れて、このテンションに。』
と言った。レシアには伝わって、うなづいて帰ってきた。その間もユノは決めポーズを決めまくっていた。
女の子同士の自己紹介も終わったので、俺は本題に入ることにした。
「これからどうする…?」
レンはポツリと言った。これを聞いたユノとレシアも目をふせた。また部屋が静まり返った。レンは続けた。
「俺は、父ちゃんを助けに行きたい。結果的に失敗に終わるとしても……。」
「まぁ、そうだよねぇ。」
ユノがあっけらかんと言い放った。
「ユ、ユノちゃん!?」
そんな態度のユノに、レシアはびっくりしていた。
「何が悪い!俺は本気なんだ!」
レンが言葉を強くすると、ユノは目をふせた。すると、ユノには似合わない、作り笑顔でポツリと言った。
「レンくんを反対しているわけじゃないの。僕もこんなことがあったからさ……。」
「え……!?」
レンとレシアは、同時に驚いた。ユノはあっと口を閉ざしたが、もう後の祭りだった。
「ユノ。それ、何の話だ。」
レンが言うと、ユノは空に目を泳がせていたが、はぁ…とため息をつくと、話し始めた。