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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第12章「無色の篝火狐鳴」

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第3話「嘲笑する老爺と心無き魔人達の統括者②」

 

「持っているだろうなとは思ってたが……、アレが村長の神殺しか」

「英雄ホーライの本気装備。凄くカッコイイ」

「かなり凡夫な感想だけどさ、正直に言って、滅茶苦茶ヤバい代物なんだが」



 きっちり帯をしめた和装に古下駄。

 どこにでもいるようなショボくれた老爺の格好でありながら、纏う覇気は人智を超えて。


 薄紅色の刀を肩に担ぎ、余裕綽々な眼光で俺達を見下ろすその姿は……、まさに、夜叉。

 妖怪を統べる総大将、ぬらりひょんって線も捨てがたいぜ。



「村長の気はそんなに長くない、手早く行くぞ。ワルト、あの神殺しの能力はなんだ?なんで地面が崖みたいになった?」



 俺達の跳躍はせいぜい上に10m、当然、滞空時間もそれほど長くないはずだった。

 だが、言葉を交わしてなお落下し続けている通り、地面が大きく抉られて深い崖みたいな有様と化している。

 リリンが似たような事を大魔王レーザービームでしても、ここまで深い穴にはならない。



「神話開闢・アダムス。その能力は起源と絶尽」

「始まりと終わりってこと?」


「あぁ、そうだ。アダムスは始まりと終わりを”切り出す”。そして、その終始を分かり易く言い換えると……、時間だ」

「時間とは?」


「あの刀で斬られた物の時間概念が操作される。『絶尽』を指定する事で時間が止まり、『起源』を指定する事で時間が加速するという具合にね」



 ワルトの解説によると、神話開闢・アダムスは、その名の通り、神との戦いを切り開く始まりの刃。

 唯一神を殺す手順が記された文献では第一の神殺しと呼ばれ、最初に使用するべき『アンチバッファ特化』の武器だとされている。


 時間の経過は、究極のアンチバッファ。


 どんな物質であれ外部からのエネルギーを常に受けており、永遠不滅・不変な物質など存在しない。

 服や武器などの無機物なら数年から数十年、肉体などの有機物なら数日、そして、魔法なら数十秒……、この時間が経過した物質は大きく劣化。

 場合によっては別の物質に変化したり、消滅したりする。


 そして、アダムスはそれを任意で操作する。

『絶尽』の能力で斬れば、外部への相互影響が出来なくなる『時間経過 停止 状態』。

『起源』の能力で斬れば、外部への相互影響が二重となり、『時間経過 加速 状態』となる。



「ん、白銀比様の能力より、冥王竜の方が近い?」

「そうだね。アダムスは時間を止めたり速めたりは出来るけど、巻き戻せはしない。記憶とも関係ないし」


「冥王竜の時間加速による魔法の強制終了ですら、すごく厄介だった。それの上位互換ともなると……」

「当然、無効化される。さらに、」


「さらに?」

「地面が断崖絶壁みたいになったのもそのせい。『雨垂れ石を穿つ』。小さな水滴ですら繰り返せば岩を割ってしまう、なら、大規模殲滅魔法が繰り返されたら?その結果がこれだ」



 村長はアダムスを振いながら、ランク0の魔法を同時に発動させた。

 それらが向かった先は地面、まず先に刀が差し込まれ、追従するように魔法が撃ち込まれている。


 そうして行われた攻撃は、リリンの12万5000発の魔法を集約させたような威力。

 恐らく、時間の概念を起源させ、一回の魔法が及ぼす影響を複数化。

 俺じゃ理屈が分からないんだが……、どうやら、リリンは分かるらしい。



「ぱ……、お父さんから聞いたことがある。本当に強い魔導師は並行世界すら利用すると」

「ホーライの事を言ってたんだろうねぇ。魔導師型の英雄を何人も育てているんだから、それを超える知識が有ってもおかしくない」

「それなのに、妖怪みたいな動きで襲いかかってくんのか」


「それだけでは無い。英雄ホーライ伝説で語られている魔道具を用いた戦いも嘘だとは思えない。そういうのも得意なはず」

「だろうね。ユルドおじさん並みの近接戦闘、アプリコット様並みの魔法知識、プロジア様並みの魔道具技術、ローレライにも戦い方を教えてるし、なんなら、メナファスの重火器の取り扱いだって影響を及ぼしているはずさ」

「……つまり、人類の英知の結晶だと?」


「それはすごい。とても尊敬する!」



 ワルトの言うとおり、本格的な戦い方を教わった相手は英雄ホーライだと、親父が自ら証言している。

 で、実は親父は絡め手が超得意。

 絶対破壊と惑星重力制御の両方を使いこなし、どんな状況でも優位に立つという、実に堅実な戦い方をする。


 アプリコットさんとは殆ど一緒に戦った事がないが、蟲量大数との決戦の時の魔法は完璧という他なかった。

 一切の過不足が無い最適解を最高のタイミングで行使する。


 プロジアはこの間の戦争中に会ったが、全く隙が見当たらない。

 恐らく、攻撃力は三人の英雄の中で最弱、だが、二人の異常な戦闘力の隙を徹底的に潰す役割を担っていたんだろう。


 そして……、戦闘系の世絶の神の因子を二つも持っているレラさんですら、村長に勝てないらしい。

 カミジャナイ?タヌキも一目置いているって言ってたし、というかそもそも、500年も生きてるのがおかしい。

 斬った物質の時間を止められるって話だったが、明らかに自分の肉体時間を止めてやがる。


 だとすると、既に、この空間そのものが効果の対象内という可能性すら――。



「そろそろモノローグは終わったか?ユニク」

「あと10年くらい欲しいぜ」


「ほほほ、そこまで儂が生きてるか分からんわ(笑)」



 嘘付けぇ!!

 寿命なんかとっくの昔に過ぎてんだろうがッ!!


 断崖絶壁の底に到着するや否や、背後から声が掛けられた。

 そして、カランコロンと下駄の音が響く。



「リリン、ワルト。本気出せ」

「いいの?」


「相手はホーライだぞ。殺したって死なねぇよ」



 これは俺なりの信頼と敬意だ。

 ここで今の俺達の全力を見せて価値を示しておけば、将来、村長が困った時に頼られるかもしれないからな。



「もっと老人を大切にせい」

「はっ、その腹の立つ笑顔をぶん殴ってやる。覚悟しろ、村長じじぃーーッ!!」

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