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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第11章「恋敵の壊滅竜」

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第82話「ユニクの休日 射的のセブン①」

「さて、何処から行こうかなっと……」



 ステージ建造中の広場から真っ直ぐ、大通りに沿って歩いてく。

 温泉郷の中央に流れる川を沿う様にして作られたこの道に並んでいるのは、店ごとに違うテーマを掲げた宿だ。


 例えば、温度が低い湯を広く深く張った温泉プール、室内でありながら大自然を楽しめる秘境温泉。

 変わった所では、酒を飲みながら入る風呂や、スポーツジムに足湯や岩盤浴サウナを添えた施設もあるらしい。



「んー、デートコースに風呂は向いてないよなぁ。結局は別々に入る訳だ……」



『カップル限定・混浴風呂』

 ……。

 …………。

 ………………えー?なになに?

 カップルでのみ利用できる混浴風呂です?


 カップル限定とか、デートコースとしちゃぁ、まさに王道って感じだな?

 だけど『ご利用の際に発生したあらゆる未来、その責任は当旅館では負いかねます。指導聖母・誠愛シンシア』って書いてある。

 なるほど、ここはカップルの破局を願う魔王温泉だな?



「ワルト、自分の恋路が進まないからって、こんな事してたのか。……連れてきたらどんな顔するんだろう?」



 普通に考えて、自分の裸を晒すメリットはない。

 だからこそ、デメリットを負ってまで得たい報酬が有るわけだが……、ここで目の保養をしてしまうと、パートナーが魔王と化す。


 そういえば、俺は混浴でワルトの……。

 あの時の反応を鑑みるに、ここに連れてきたらお湯がバラ色に染まりそう。

 その後で、拗ねた腹ペコ魔王に噛み付かれること間違いなし。

 うん、やめておこう!



「って、なんだこの貼り紙。『なお、パートナーが居ない寂しい人はぁ、そこの裏路地でレンタルできるわぁ。聖女・レジュメアス』」



 ……ブレねぇなぁ。大魔王陛下。



 **********



「ここが射的場か。へぇー結構、雰囲気あるな」



 第一の遊楽施設、『ぴこぴこ射的場なのです!』。

 専用の射的銃を使用して景品を打ち、棚から落とせたらGET出来る、か。

 ルールは普通な感じだな。


 様々な遊び場がある温泉郷は、お祭りの出店に似ているものが多い。

 最初の発想はリリン、その後は心無き魔人達の誰かが手を入れたって所か?



「いらっしゃいませー!」



 賑わっているが、行列が出来るほどではない。

 とりあえず中に入ってデートコースになるか検討しつつ、密かな目的、『顔見知り(ロイ)を探す』も実行する!


 ずっとリリンと過ごしてきた俺は、一人で行動するのに慣れていない。

 というか、さっきから独り言を言っているのに気が付いた。

 一人な観光客も少ないし、明らかに浮いてる。


 そんな訳で、早急に顔見知りを確保したい。

 ロイにテトラフィーア、セブンジードやナインアリアさん、バルバロアやイースクリムだって温泉郷に居るはず。

 特に、ここにはセブンジードあたりが居るんじゃないかと思ってきたんだが……、その読みは正しかったようだ。



「ヴェル、ヴェル、あの人、ユニクルフィン様だよね?」

「そうだよね。ユニクルフィン様だよね、シャトー」



 明るい金髪に、輝く八重歯。

 カジュアルな洋服と相まって、凄く可愛らしい。

 よく見ればロイに似ている彼女達の名は、ヴェルサラスクとシャトーガンマ。

 ブルファム王国姫の手羽先姉妹だ!



「おぅ、ユニクルフィン様だぜ!で、ロイと一緒に来たのか?」

「そうだ……、そうですわ。不躾な願いだと存じてはおりますが、どうしても御一緒させて欲しいと懇願したのです」

「ロイにぃ……、ロイ王子とユニクルフィン様・リリンサ様はご友人であらせられるとお聞きしました。私達の名も覚えて頂けたら光栄にございます」


「心配すんな、ちゃんと覚えてるぞ、ヴェルサラスク、シャトーガンマ」

「あ!……失礼しました。思わず感涙の涙が零れてしまいそうですわ」

「私たちは、いずれは皆様のお役に立ちたく思っており、えっと、」


「まてまて、無理して丁寧な言葉を使わなくて良い。ここは遊び場だしな!」



 敬われるのは悪い気はしないが、砕けた言葉でも懐いてくれる方が嬉しい。

 これは偽らざる俺の本心。

 流石に「全裸英雄なんでしょ?鳴いて!」って言われたら困るが……、まぁ、最終的に鳴く。


 ヴェルサラスクもシャトーガンマも、ブルファム姫として狭い世界で生きて来た。

 見方を変えれば、捕らわれていたと言っても良い。

 そんな彼女たちは、射的場の中で笑顔を溢していた。

 それは礼節なんかよりも、ずっと大切なことだ。



「ロイは……、居なさそうだな?」

「ロイ兄様は、町を視察するって」

「慌ただしく動き回るから、ゆっくり遊んで居られないんだって」



 お互いに視線を交わし合ったヴェルサラスクとシャトーガンマが敬語を止めた。

 信用しても良いって思われたらしい。よしよし、素直が一番だぜ!



「そっか、ロイと遊べなくて残念だな。にしても、ちっとくらい空気を読んでやればいいのに」

「そうだよねって、私も思うけど……、ロイ兄様は国王様になるから」

「ちょっとでいいのにって、思うけど……、国王様の勉強で忙しいから」


「んー、ちゃんと我儘を言ったのか?」



 ロイの話では、手羽先姉妹は我儘言い放題だったらしい。

 心を許せる存在がロイしかいなかった彼女達は、たまに遊びに来るロイに様々な感情をぶつけていたようだ。


 俺の問い掛けに、二人は言葉なく頭を横に振った。

 本当は遊んで欲しかったけど、我慢した。そんな雰囲気だ。

 確かに、我儘を言い過ぎるのは良くない。

 だが、全く言わないのも問題なんだぜ。



「姫とか王子とか関係なく、お前達はロイの妹だ。で、兄ってのは妹のお願いを叶えるのが仕事なんだぜ」

「「そうなの!?」」


「そうなんだ。だから、たまにだったら我儘を言って良い。二人が何かを頑張って、目標を達成した時にご褒美を要求しても良いよな」



 無条件で我儘三昧は流石にダメだが、たまにだったらどうにかしてやれよ、ロイ!

 忙しかろうがなんだろうが、それくらいできなきゃ無理難題を吹っかけてくる魔王の傀儡は出来ねぇぜ!



「で、お前は子守りか、セブンジード」

「護衛だっつーの。姫に気さくに話しかけるお前みたいなのから守るのが仕事だよ」



 やれやれと肩を竦ませたセブンジードは、ちょっとだけ疲れた顔をしている。

 なんというか、魔王に揉まれた後って感じ。



「休暇中じゃないのか?」

「あぁ、休暇中だよ。だからあんの魔王陛下に、遊びに連れて行ってあげてねぇって、大国の姫を投げつけられちまった」


「昨日も宝探しに駆り出されてたよな?お疲れ様だぜ」

「ホントだよ。折角の温泉郷なのに、ガキが相手じゃなぁ……」



 知ってるかユニクルフィン。この温泉には混浴があるんだぜ?

 その声は、俺にだけ聞こえるように弱々しかった。


 まぁ、口ではそう言っているが、別に子守りが嫌な訳じゃなさそう。

 大魔王陛下の命令に従うのは癪だが、手羽先姉妹を遊びに連れていくのはまんざらでもないらしい。



「ナナに嫌み言われたー」

「ナナが私達に盾付いたー」


「「テトラフィーア御姉様に言ってやろー!」」

「ぐぅ……」



 にしし!と笑い合う手羽先姉妹と、ぐぬぬと奥歯を噛みしめるセブンジード。

 愛称を付けられているあたり、関係は良好な様だ。



「ずいぶんと懐かれてるじゃねぇか、セブンジード」

「はっ、チャラ男を舐めるなよ。女の子と遊ぶ事に関しちゃ、俺はレジェンダリアで一番だぜ!」


「……大人の女性には相手にされないから、子供ばかりを……?」

「ふざけんなッ!!誰がロリコンだテメェ表に出ろこの野郎ッッ!!」


「悪い悪い、冗談だって!」

「ったく、流石に守備範囲外だっつーの。5年後は分からんがな」



 おい最後。チャラ男としても最低な部類の発言は止めろ。

 そんな事を言うから、テトラフィーアに叱責されるんだよ。



「二人とも、困った事があったらテトラフィーアに相談するんだぞ。コイツは色々と問題が多いチャラ男だから」

「ガチ目のアドバイスすんじゃねーよ!つーか、そんなことしなくても筒抜けだっつーの!」


「そうなのか?」

「テトラフィーア様はコイツらの後見人になった。しかも、えらく気に入ってるんだぜ、教育を施して側近にするってなぁ」



 テトラフィーアの側近。

 聞いた瞬間はメイドさんにでもするのか?と思ったが、そこは完全実力主義であり、物凄く過酷な世界だというのをセブンジードに教えて貰った。

 それはテトラフィーアが周りに厳しい……という訳ではなく、そのカリスマ性に憧れた侍従達が自主鍛錬を欠かさずに行う精鋭部隊だからだ。

 その為、新たに侍従になる為の競争倍率は凄まじく、一芸に秀でている程度では話にならないらしい。


 なお、ナインアリアさんは身体能力的に十分に側近になれるが、勉強がアレなせいで学校に通っている。



「今も課題を出されててな。ったく、子供にやらせるにはキツイ目標だ」

「そんなにか?」


「3日で利益率500%だ」



 利益率500%?

 それって、決められた資金を5倍に増やせってことか?



「んー、ヴェルサラスク、シャトーガンマ、どんな課題なんだ?」

「ヴェルとシャトーで良いよ、ユニクルフィン様」

「でも、アルファフォート姉さまは、アルファフォート姫って呼んでね、ユニクルフィン様」


「……その心は?」

「私たちともお友達になって欲しーなー」

「でも、お姉さまは拗らせてるから、適度に距離を取った方がいいと思うなー」



 子供だけあって、ドストレートに言ってくる。

 つーか、名前を覚えてくれたら泣くほど嬉しいって言ってたの、5分前なんだが?

 既に心無き小悪魔アンハートミニデーモンになってるだろ、この子たち。



「テトラフィーア御姉様の課題は、それぞれ貰ったお小遣い10万エドロを50万エドロに増やすことだよ」

「温泉郷から出なければ何をしても良いの。二人で100万エドロを目指しているんだよ」



 二人に出された正確な課題は、『3日後、テトラフィーアにそれぞれ50万エドロを返す』ことだ。

 魔王もビックリの利子率だが……、その本質はお金の使い方と価値を経験させる事だろう。


 常識的に考えて、3日で資金を5倍にするのは難しい。

 だが、3日で100万エドロを稼げと言われたら、不可能ではない。

 極論、セブンジードに100万エドロで売れる危険生物を狩って来いって命令すればいいだけだからだ。



「なるほどなぁ、過度なアドバイスは禁止って所か?」

「俺が許されてるのは質問に答えるだけだ。ここにも、『賭けたお金以上に得できる場所を教えて』って言われたから連れて来た」



 確かに、射的は遊戯料金よりも価値が高い景品が手に入る事がある。

 的に当てるだけでもそれなり楽しい筈だが、客の大半が冒険者な以上、目に見える利益が必要だ。


 ちなみに、観光ガイドによると温泉郷には賭博場があるらしい。

 経営者はテトラフィーア。勝てる気がしない。



「景品を手に入れて、お金にしよう、か。面白いと思うぜ」

「取れればいいんだがな。魔王共の店だぞ、そう簡単に済むとは思えねぇよ」



 セブンジード達も来たばかりなようで、どんなものが景品なのか知らないらしい。

 なお、壁に貼ってあるポスターには『緊急入荷!1/1アヴァロンぬいぐるみ』とか書いてある。


 おい、色々と問題があるぞ、アヴァロン。

 まず、でかい。

 1/1って、アイツの全長は1.5mもあるんだが?

 おもちゃの銃で落とせる気がしない。魔導銃持ってこい。


 次に、ポスターにされてる点。

 お前ってまさか、人気商品なのか?

 タヌキの癖に、確固たる地位を築いちゃってるのか?



「お金とか関係なしに、タヌキのぬいぐるみは欲しいよね、シャトー」

「寝そべりアヴァロンと立ち上がりアヴァロン、両方取ろうね、ヴェル」



 2種類もあんのかよッ!?

ついに900話を突破!

これも皆様の応援のおかげです、本当にありがとうございます!!


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