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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第11章「恋敵の壊滅竜」

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第67話「失くしたモノ」

 

「んー、バイタルは安定しているけど、目が泳いでいるわね。お薬を処方しましょうか?」

「生き返った直後に一服盛ろうとすんな」



 覚えている記憶の最後は、腹に突き刺さったバビロンの腕が俺の心臓を引き抜く光景だ。


 あんな状態で意識があったのは、たぶん、絶対破壊のエネルギーを使って起死回生を試みたからだ。

『臓器が傷付けば、人間は死ぬ』という神の理を半端に壊してしまったせいで、通常でありえない状態になったんだろう。


 当然、手足に力が入る訳もなく、アレから何かを出来た気がしない。

 恐らくそのまま死んで、そして……、アホタヌキに身を委ねながら生き返ったと。


 ……。

 …………。

 ………………なんだこの、カツテナイ臨死体験ッッ!?!?


 タヌキ(ライバル)に殺されて蘇る……、までは百歩譲っていいよ!?

 だったら、俺に膝枕をするのはリリンもしくはワルトの役目だろッ!?

 何でヒロイン枠までタヌキが担ってんだよッッ!?!?!?


 で、お前はお前でまんざらでもなさそうな顔してんじゃねぇよッ!!

 つーか、膝枕じゃなくて腹枕じゃねぇか、アホタヌキィィィッッッ!!!!!!



「なぁ、カミナさん。嘘偽りなく答えて欲しいんだが……、俺はバビロンに殺されたのか?」



 確かめるまでもなく死んでいると思うが、心の整理をする為に必要だ。

 なにせこれは、正真正銘、俺の人生で類を見ない、カツテナイ敗北だからだ。


 俺は当然死んだ事がない。……はず。

 クソタヌキは俺を小馬鹿にするのに情熱を掛けていたが、本気で殺し掛かっていない。

 その他の戦闘は親父の管理下だったし、レベル99999に達していた王蟲兵との戦いは、前衛の親父に常に守られていたのを覚えている。


 だから、俺は、ここまで決定的な敗北の経験が無い。


 敗北は敗北だ。それ以上も以下もない。

 だが、意味を見出せるかは、これからの俺が決める事だ。



「言いづらいのは分かってる。だが、教えてくれ」

「……そうね。私は医師として、時に残酷な告知もしてきたわ」


「オブラートに包む、なんて洒落た手加減も要らない。真っ直ぐに頼む」

「あらそう?じゃ、遠慮なくいくわね」


「おう」

「タヌキに心臓ハートを鷲掴みにされて死んだわ」



 ……。

 …………。

 ………………考えうる限りの最悪の死に方じゃねぇか。



「タヌキに、ハートを、鷲掴み……」

「なお、そのタヌキはオス。両性愛者バイセクシャル動物性愛者ズーフィリアとは、カミさまな私でもお手上げね」


「……。手加減は要らないとは言ったが、トドメを差せとは言ってねぇぞ!!」



 おい、誰が両性愛者で動物性愛者だ?あ”ぁ”?


 俺は口を閉じてれば可愛い女の子属性のリリンと、黙ってれば可愛い僕っ娘属性のワルトを両手に握りたいと思ってるだけだ。

 ここ2~3日ほどは魔獣・怪獣・珍獣と添い寝をしているが、それだって不可抗力って奴だぞ。

 だから俺は決して、両性愛者でもなければ、動物性愛者でもない。



「えっ、そうなの?」

「なにその驚愕した顔っ!?白々しいにも程があるッ!!」


「ふふ、流石に冗談よ。タヌキは3番目だもんね?」

「しれっと3番目にすんなっ!!というか、さっきから流れが酷過ぎるッ!!これをなんて言うか知ってるか?死体蹴りつーんだよッ!!」



 こんの女医魔王ォ……、実は一番、性格が魔王なんじゃねぇのか?

 リリンはド天然だが常識はあるし、ワルトは常識を無視するが倫理感はある。

 大魔王陛下は論理感こそ破綻しているものの裁量は完璧だし、メナファスに関しちゃ特に言う事が無い。


 一方カミナさんは、俺達が必死に訓練している間にタヌキの軍門に下り、機神を製造。

 結果的に、俺、リリン、ワルト、ホロビノ、大魔王陛下、をブチ転がしている。



「今更だが、この白衣の魔王がやりたい放題すぎる」

「あら?やりたい事はやるべきでしょ。人生って一回しか無いのよ。普通は」



 そう言ってカミナさんは、全く悪びれない朗らかな笑みで舌を出した。

 なるほど、そういえばこの人はカミさまって呼ばれてるんだっけ?


 魔王なカミ様。略して、魔神。



「さて、冗談は程々にするとして、ユニクルフィンくんが聞きたいのは、戦闘の感想で良いのかしら?」

「そうだ。第三者視点で見た場合、俺はどこまでやれていた?」



 バビロンに勝つ。なんて戯言はもう言えない。

 実際に負けてしまった以上、格好付けなんて出来る訳が無い。



「そうね、身体能力に武器の性能を含めたパラメーターは、それほど差があるとは思えなかったわ」

「実力が拮抗していたってことか?」


「違うわ。実力がまるでバビロンに届いていない。同じパラメーターがあるのに、ユニクルフィンくんの組み立てた戦闘のプロセスはとても未熟だったもの」

「俺の戦闘は未熟……」


「バビロンは始めから一撃必殺を狙い、その結果の為にあらゆる準備をしていた。気付いていたかしら?噛神食指にエネルギーを溜める為に、貴方の実力に合わせた戦いをしていたって」

「んなっ……」


「ユニクルフィンくんがそうであるように、神殺しを覚醒させた者は異常にしぶとい。神の理を超えているんだもの当然だわ」

「一撃で殺す為に、実力を隠しながら戦った。だから、手甲も最後に……」



 俺は、常に全身全霊を掛けて戦ってきた。

 持っている実力が未熟だから、それ以上を求められた時には、自分の実力すらも破壊して前に進んできたんだ。


 だから、次第に……、どんな壁でも超えられると思うようになった。

 カツテナイ、勝つ手無いと言っておきながら……、心のどこかで『勝てる』と思って慢心していたんだ。



「ふむ、何をそんなに焦っておるのじゃの?」



 気付いてしまった事実、それを摘まみ上げるような声は、重厚でありながらも幼い。

 今まで静観していたタヌキの皇・那由他が、座り込んでいる俺を見下ろしている。



「いじけ方がユルドそっくり。流石は親子じゃの」

「いや……、親父もいじける事があるのか?」


わっしがイタズラを仕掛けると五割の確率でいじけるの」

「あんの親父が五割でいじけるイタズラって、どんなんだよ」



 親父は、俺達が仕掛けた唐辛子の素揚げマスタード入りをツマミにしながら、酒入りワサビ汁を喉を鳴らして一気飲みした英雄だ。

 なお、寝落ちしたせいで残ったツマミは、何も知らないワルトがラグナの所に持って行った。



「別に大したことはしておらん。こっそり神殺しを3つ覚醒させて訓練してやっただけじゃの」

「だめだ。規模が違い過ぎる」


「ともかく、ショボくれた奴を何度も見て来たからの、愚痴を聞くのも随分と上手くなっておる。話してみるが良い」



 起伏の無い胸を張りながら、那由他が頬笑んでいる。

 ……なんだろうこの感じ、なんか気持ちが緩んで……。



「格好付けたかったんだ」

「ふむ?」


「リリンも、ワルトも、二人とも自分の目標にまっすぐで、一生懸命で、……格好良くてさ。だから俺も、負けてられなくて」

「バビロンはレベル999999(ミリオン)に達した強き古タヌキ。今の実力で勝てんのは、ソドムと戦っていたお前さんなら分かっておる筈だがの?」


「勝てるって思いたかったんだ」

「馬鹿じゃの。その感情は羨望と虚飾。嫉妬と言い換えることもできるが、その本質は七原罪。多くの”それなり”が陥った過ちじゃの」



 多くのそれなり、それは恐らく、名を馳せること無く死んでいった過去の超越者の事だろう。

 紛れもなく頂きに君臨する那由他は、今の俺の実力が『有象無象(それなり)』なのだと知っている。



「リリンやワルト、あの子、もしかしたらセフィナにテトラフィーア、レジィ、メナファスやカミナさんやホロビノ、……それどころか、世界中の全ての人の命が、俺と蟲量大数の戦いに賭かっている」

「蟲量大数・ヴィクティム。奴は周囲を省みることはない。だからこそ、『ヴィクティム(犠牲)』と名乗るに相応しいじゃの」


「それは、俺が引き起こした罪なんだ。俺が天命根樹からあの子を守れていれば、蟲量大数に勝っていれば、全ての不条理を壊せるだけの力があれば……、こんな事にはならなかったんだッ!!」



 心のどこかに、いや、ずっと真ん中にあった答え。

 俺はリリンやワルトの想いに答える資格が無い。


 失敗したが故に出会い、こうしてなお、失敗し続けているのが不甲斐なくて。

 リリンに関係を迫られた時に先延ばしにしたのも、本当は、自分の為だった。

 リリンの気持ちが変わってしまうのを考慮したんじゃ無く、俺の実力がバレてしまうのが――、怖くて。



「いつの間にか見栄や意地ばかり張って、勇気と無謀を取り違えた。本当に何をやってんだ……、俺」

「ふむ、周囲の影響が大いにあるような気もするがの……、良いじゃの」


「何が良いんだよ。こうして失敗して死にかけた。いつまで経っても何にも成長して無いじゃねぇかッ!!!!」



 そうだ。

 あぁ、そうだ。


 俺は何にも成長できていない。

 いつだって無謀を振りかざして失敗して、色んな人の命を――。



「そんな事は無い。ユニクはとても成長している!」



 真後ろから掛けられた声が、鈴と響いた。



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