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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第191話「造物主VS神壊者⑪」

「この双剣は機神ぼくの命そのものだ。燃やして消える命を賭して、キミを討つッ!!」



 俺の心を見透かしたかのように、メルテッサが前に出た。

 燃え盛る炎の双剣、それは確かに機神の命を燃やす諸刃の剣だ。


 魔力の伝達力が高い神性金属を燃やす事で気化させ、斬り伏せた物質へ浸透させる。

 金属が燃えるほどの高温、おそらく摂氏数千万度は下らない。

 そんな物が体内に侵入した場合、瞬間に骨の髄まで焼き尽くされ、世界に還元する事になる。


 温泉郷で戦った新型エゼキエルが出した、炎の槍の上位互換。

 ……おもしれぇ。受けて立つ。



「《単位系破壊システムブレーク熱量ジュール》」



 メルテッサの攻撃をまともに喰らえば、敗北確定。

 だがそれは、グラムを持つ俺にも言えることだ。


 何度も武器や腕を壊されたチェルブクリーヴは、体を再生する為の材料を節約しながら戦っている。

 ……だが、完全に無くなることは無い。


 なにせ、メルテッサは空気を魔道具と認識し、性能を復元していた。

 だから、大地を魔道具として認識し、含まれる金属を使って再生はず。

 たぶん、錬成のスピードが遅いせいで供給が間に合っていないだけで、時間を掛ければ材料を用意されてしまう。



「あぁあああああッッ!!」

「気合十分だな。そうじゃなくっちゃ、張り合いがねぇってもんだッ!!」



 だが、チェルブクリーヴが世界から金属を錬成できても、特殊な神性金属は作れない。

 そして、機体を維持するには神性金属が必要不可欠。

 当然、俺が壊した武器や腕の中にも、僅かにだが神性金属は使われていたはずだ。


 大振りに振られた剣の片割れ、それをグラムで迎え撃ち、最終決戦開始の鐘を鳴らす。

 耳障りな金属音、それが周囲へ伝わった時には既に、二十を超える激突が過ぎ去った。



「流石は魔王様の戦闘スキル。無駄がねぇな」

「一撃でさえも、攻撃が、通らないッ……!」


「勘違いしてるぜ。攻撃してんのは俺の方だ」



 魔王シリーズの凶暴化によって澪さんの剣撃が精錬され、凄まじい剣激へと昇華している。

 だが、どれだけ取り繕ったとしても、その剣筋じゃ綺麗すぎる。

 全て同じタイミングで最高の威力に達する以上、そこに至る前に叩き壊せば済む話だ。


 剣を振った直後、

 音速の壁を越えた瞬間の揺らぎ、

 機械独特の油圧シリンダーの癖、

 物理的な死角配置。


 あらゆる要因を使い、チェルブクリーヴの動きに先手を打つ。

 攻撃は最大の防御。

 それが俺の戦闘スタイルだ。



「これで、剣、ゼロ。盾、三枚」

「ッ!?」



 右側から迫っていた剣の片割れがグラムに触れた直後、真っ二つに砕けた。

 回転しながら飛んでいく刀身は、その役目を終えたとばかりに燃え朽ち消える。


『《単位系破壊システムブレーク熱量ジュール》』


 俺が指定したのは、単純に熱を破壊ゼロにすること……ではない。

 むしろその逆、物質が蓄えられるエネルギーの上限を破壊し、本来よりも温度を高めていた。

 そうすることで、剣が折れてグラムの影響下から外れた後、刀身の耐久値を大きく超えた熱が押し寄せ消滅する。


 そうして、回収する間もなく『双剣』は『短剣と長剣』となり、『両刀のナイフ』となって、ただの『二本の柄』へと変わった。



「ちぃッ!」



 刃と攻撃力を失った両腕の代わりに、チェルブクリーヴが蹴りを放つ。

 それグラムでいなし、反動を使って上空へ飛ぶ。

 クルリと一回転し、目標を見据え――ッ!!



「掛ったなッ!!」



 鋭い5本の切っ先が、俺に向いている。

 それは、柄を回収して創ったであろう魔王の鉤爪。

 禍々しい刃には紫電が灯り、薄く輝いている。



「握り、殺すッ!!」

「《単位系破壊・電気量クーロン》」



 再度、刀身に対雷破壊を纏わせ、刹那のすれ違いを終えた。

 バチンっと弾けたのは、グラムの刀身。

 バラバラに砕けたのは、機神の鉤爪。



「《大気の復元アトモスフィア・インストールッ!!》」

「……その手は悪手だぜ」



 連続で攻撃手段を失ったメルテッサは体勢を立て直す為に、大気の性能を復元した。

 目の前から叩きつけられたのは、尋常ではない風圧。

 これは、どんな攻撃も撥ね退け吹き飛ばす――、蟲量大数の『世界最強の圧力』。


 俺達と戦い始めた、いや、『戦い』になると思っていなかった蟲量大数は、仁王立ちのまま羽根を開いた。

 奴が発する羽音は世界の全てを、空気も大地も、人も魔法も、次元も心も、あまねく平等に掻き混ぜ震わす。

 そして、理を壊す事で外側に抜け出た俺だけが、奴に近寄る事が出来た。



「《単位系破壊・圧力パスカル》」



 叩きつけられる圧力へグラムを叩きつけ、そのまま突き破る。


 これは、本来ならばグラムを持っていても簡単には出来ない、暴挙。

 理を破壊する前に身体が壊されてしまっては、どう頑張っても剣を振る事ができない。


 だからこれは、神壊因子を持つ俺だけに許された、特別な結末(ユニークフィン)

 グラムを覚醒させている時に限り、この身体に受ける影響(神の理)を任意で無効化(破壊)する事ができる。



「アップルカットシー……」

「《絶対破断加重(ニュートンブレイク)》」




 俺の狙いはゲロ鳥のくちばし、その先端を突き差し壊すこと。


 大気を使っての防御に失敗したチェルブクリーヴは、体勢的に回避不可能。

 そうなるように誘導している以上、俺の予定通りにアップルカットシールドを出すしない。


 割り込んできた巨大な盾を串刺し、刀身に込めていた重力場を解放。

 発生した超重力向かい盾が引き寄せられて凝縮し、ボールサイズの金属球へと変貌する。



「残り、盾2枚ッ!!」



 出来あがった金属球へグラムを叩きこみ破壊し、煽りの言葉を吐く。

 俺の主武器は剣であり、魔法も実践レベルで使えないが……、言葉を武器にしてはいけないというルールは無い。



「ちっ、《機神の不死鳥尾(フェニックステール)ッ!!》」



 煽りが効いたのか、それもと、元々そうするつもりだったのか、メルテッサが新しい攻撃を仕掛けてきた。

 機神の腰についていた羽根を射出し、扇状に展開。

 開けた装甲の間に並ぶ魔法陣の羅列は、まさに鳳凰の羽根と呼ぶにふさわしい。


 おっと、見取れてないで対処しないとな。



「ブチ消えろッ!!」

「《単位系破壊システムブレイク魔力カロリー》」



 体内に燻っていた魔力を沸き立たせ、可視化させた斬撃を放つ。

 チェルブクリーヴが放つ灼熱の集中熱線 VS 俺の薄紅色の斬撃。

 両者は拮抗し、焦げ付く世界は白煙が噴き出し――。



「とったッ!」

「訳がねぇッ!!」



 上と右、十字を切るように白煙を切り裂き、炎の剣が出現した。

 それは先ほどよりも短い、|輪を描いて回る炎の剣《ハーファクト・ラハット》。

 盾を更に一枚、それと両腕の魔王の鉤爪を材料にして作ったのか。


 右から来る剣をグラムで、上から来る剣をガントレットで迎え撃つ。

 そのどちらの破壊値数も、既に確認済み。

 十分に足りるだけの破壊力を俺の両腕に宿したのなら、あとは、神壊因子を使って壊せばいい。



「なっ、拳で壊――ッ!?!?」

「お前に造物主があるように、俺には神壊因子がある」


「それは、ぼくに劣る力じゃ……」

「造物主の能力行使そのものを壊す事は出来ねぇ。だが、能力で作った物質が必ず俺に勝てる訳じゃねぇんだろ」



 俺の体に秘められた、唯一にして『最強を超える』特殊能力、神壊因子。


 蟲量大数が手に入れる『最強』こそ、世界を構築する物理法則。

 世界に新たに刻まれ続ける『物理法則の限界』という神の因子を破壊する力、それが俺の神壊因子だ。



「《神因子破壊コマンドメンツッ!!》」



 体の内から外へ、心の中に燻る魂を滾らせ、チェルブクリーヴを両腕で穿つ。

 その刀身とガントレット、どちらも神壊戦刃・グラムであり、絶対破壊の力が宿っている。


 罅われ、砕け、噴煙を経て、世界に帰す。

 神壊因子の波動を受けたチェルブクリーヴの双剣は両腕ごと消滅し、やがて、無防備を俺に晒す。



「これで、残っている盾は一枚。最後だ」

「黙れッ!!」



 大地を踏みしめて走り、チェルブクリーヴの目の前でグラムを振りかぶる。

 苦し紛れに翳されたアップルカットシールドにも、既に亀裂が走っている。

 ……この攻防で最後にしようぜ。



「覚悟は良いか?」

「まだ、終わっちゃいねぇんだよッ!!」



 盾にグラムを突き刺した瞬間、その役割を終えたとばかりに崩壊した。

 事実、確かに役割を終えたんだろう。

 メルテッサ最後の攻撃、それを隠し通せたのだから。



「《陽極子鳴光(グルゲルキン)建御雷(グルグルキングー)ッ!!》」



 目の前で開くは、あぁ、愛しのキングゲロ鳥のご尊顔。

 煌々と輝く光を纏い、森羅万象、あらゆるものをひれ伏せ――。


 ……って、こんな所で、ぐるぐるきんぐぅー!?!?

 最終奥義がそれでいいのかッ!?ぐるぐるきんぐうぅぅぅーー!!



「本当に、最後の最後まで俺の期待を裏切らねぇ。だが、終わりだ」



 残っていた神性金属を掻き集めて放った決死の一撃、『陽極子鳴光グルゲルキン建御雷(グルグルキングー)』。

 オリジナルよりも遥かに高い威力であろうそれも、神をも壊す刃の前では意味を成さない。



「《神聖破壊・神すら知らぬ(グランドエンド)幕引き(ゴッデス)》」



 輝かしい光の中を突き進み、巨大なキングゲロ鳥へ引導を渡す。

 剣を刺し込み、そのまま突き上げるように表面を走り抜け、チェルブクリーヴの胸から頭部を両断。

 追従した衝撃が全身を駆け抜け、その巨体を崩壊させた。



「メルテッサッ!!」



 空へ投げ出されたメルテッサを見つけ、直感に従って手を伸ばす。

 彼女は既に意識を失って、いや、意識どころか……。


 掴んで抱き寄せた血の気の無い顔、薄らと微笑むメルテッサは――。

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