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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第190話「造物主VS神壊者⑩」

「なぜだッ……!なぜ、キミは、ぼくの全てを超えてくるっ!?」



 もう既に、俺が壊した剣の数は20本を超えた。

 神性金属の性能を宿させた剣は相応の強度を誇っているが……、俺とグラムの破壊力には及んでいない。


 ほら、その剣もそろそろ終わりだぜ。

 数度の剣撃によって亀裂が走っていた剣は、振り翳したグラムの破壊力に耐えきれず、木端微塵に砕け散った。



「ちぃっ!《変換(コンバート)》」



 チェルブクリーヴは舞い散る金属片に手を伸ばし、掌の液晶ユニットを輝かせた。

 その光に吸いこまれるように金属片が吸収され、チェルブクリーヴの中へと還っていく。


 俺に剣を砕かれる度に、メルテッサは残骸を回収した。

 掌から出現させる剣は魔法では無く、しっかりと実体を持っている。

 当然、造物主が支配できる物質アイテムにする為には、材料が必要、無尽蔵に製造はできない。



「ワルトに宝物殿を抑えられたのが効いてるみたいだな?」

「ちっ、確かにそれはぼくの怠慢だからね。準備不足を認めよう」


「それ以外にも不満がありそうな声だが?」

「大ありだ。どうかしてる。なぜ、人間であるはずのキミが、機神と同じ運動性能を発揮できる?」



 通常、機械は人間の体で出来ない事をする為に造られる。

 例えば、人間の握力ではリンゴを潰すのですら苦労するが、金槌を使えば一瞬だ。

 だから、機神に乗り込むメルテッサと生身の俺は、道具で武装した人間とサルの関係になるはずだと思っているんだろう。



「あぁ、大前提が間違ってるぞ。俺はグラムで武装してる。生身の人間じゃない」

「たった一本の剣があった所で、何ができる?」


「何でもだ。俺の手にグラムがある限り、どんな形の『破壊』でも作り出せる」



 メルテッサの顔色は見えない。……が、上ずった声は焦りの表れだろう。

 機神の性能を振りかざした正攻法じゃ、まず勝てないと理解したようだ。


 全ての神殺しに標準で備わっている機能の中に、『神の理の影響を受けづらくなる』というものがある。

 その理とは、この世界の物理法則。

 神殺しを覚醒させると、そういった法則を魔力を使って突き破れる、特殊なバッファ状態となる。



「その様子じゃ、グラムの性能は復元できてねぇみたいだな」

「これも準備不足の一つだね。キミを倒した暁にはそのグラムを手に入れて、ぼくは最強になるとしよう」



 ……最強だと?

 はは、馬鹿を言ってんじゃねぇよ。

 もし、お前が相対しているのが『最強』だったら、0.1秒でこの戦場の全て……いや、ブルファム王国そのものが粉微塵だ。



「そろそろ、新しい剣を作るのも厳しいんじゃないか?降参すれば、その機神(おもちゃ)は壊れなくて済むぞ」



 目に見える形で俺が勝つのなら形はいとわず、降参や投降、なんなら大魔王取引でも結構だ。

 だが、メルテッサは両腕の魔法液晶を輝かせながら、ギシリ。と機体を攻撃体勢へ傾けた。



「ぼくが使っているのは澪騎士の剣術に、バルワンの体術を組み合わせたものだ。発揮するのがぼくの肉体で無いのなら、体格の違いによるデメリットは無いに等しい」

「だが、それじゃ足りてない」


「実感したよ。超越者は、生物としての肉体成長限界を超えられると聞いていたが……、ここまで違うとはね」



 ……聞いていただと?


 メルテッサの近くに超越者は居ない。

 居るんなら、俺の身体能力が誤算にならないはずだしな。

 なら、メルテッサに力を与えた存在……、簡単に言葉を交わせない神に聞いたと考えるのが妥当か?



「そういや、俺達は神の先兵と戦ってるって事になるんだよな?」

「そうなるのかな?今の所は一応、部下なんだけど、神」


「……部下?」

「悪辣に聞きな。神が正体を暴露した時にガチ泣きした悪辣にねぇ」



 この悪辣大魔王のワルトが泣いた……だと?

 いや、昔は良く泣いていたけどさ。

 クソタヌキが出てくる度に怯えまくってガチ泣きしてた。



「雑談はこれくらいにしようぜ。つーか、ワルトを煽るのやめろ。狙撃されるぞ」

「はは、神殺しが二本とは恐れ入る。ぜひとも、グラムを手に入れた後でご参加願いたいもんだ」


「あぁ、それは無理な話だな!」



 さっきメルテッサに剣を突き立てた時、言い表しがたい嫌悪感を抱いた。

 死んでいないと分かっていても、人を傷つけた事には変わりない。

 それに比べれば、お気に入りのおもちゃを木端微塵に破壊する程度、気が楽だ。



「人間の性能では勝てない。機神の性能も既に敗北している。なら……、これだ。《造物主マスターアーティクル魔王の復元(デモン・インストール)》」



 騎士然としていたチェルブクリ―ヴの姿勢が、魔王の様に禍々しい物へと変化した。

 俺はこれに覚えがある。

 メルテッサが復元したのは恐らく……、使用者の精神を汚染し好戦的にさせる、魔王シリーズに備わっている性能だ。



「魔王シリーズの凶暴化か」

「ぼくの熱烈なアプローチがこうも防がれると釈然としない。プレゼントだ、ユニクルフィン。その腹に剣をくれてやる」



 魔王シリーズ……、攻勢眷族・サムエルの本質は『敵勢力の撃滅』。

 あらゆる手段が攻撃へのプロセスとなる為、攻撃力が大幅に向上する。


 で、何でそんな事を俺が知っているのか。

 ……実は、魔王シリーズの凶暴化を遥か昔に体感している。


 クソタヌキがエゼキエルを見せびらかし怯えまくったワルトは、涙目でラグナに助けを求めた。

 そん時の俺は冥王竜と戯れた後で疲れていて、雑に扱われたクソタヌキがワルト達にちょっかいを掛けた訳だ。


 で、あんの野郎、あろう事かエゼキエルをパワーアップさせてラグナをボコリやがった。

 ワルトが過去一番に号泣したのは言うまでもない。



「……くたばれ、ユニクルフィンッ!!」



 再び掌から大剣を引き抜きながら、チェルブクリーヴが突撃を仕掛けてきた。

 ただ走るだけだったさっきと違い、今回はその巨体そのものも武器と化している。



「そんなのに轢かれんのは、流石に笑えねぇッ!!」



 さっきまでの戦いで使用していた破壊は『圧力値』のみ。

 物体内部の圧力を破壊する事で脆くし、俺に掛る気圧を破壊する事で速度を上昇させていた。


 そんでもって、ここからは他の単位系の破壊も使う。

 まずはそうだな……、重さを壊してみるか。



「《単位系破壊システムブレーク質量値ダイン》」



 この世界で最も重い剣がグラムである以上は絶対に勝てる訳で、相手の重量を破壊ゼロにする意味は無いと思うかもしれない。

 だが、俺が求めているのはアンチバッファ、チェルブクリーヴの誤作動だ。



「ぶっ飛べッ!!ユニクルフィ……」

「それはお前だッ!!」



 振るわれたチェルブクリーヴの剣には、機体の突進エネルギーも乗っている。

 先ほどよりも格段に殺意が増した本気の攻撃。

 その結末は……、腕を上げての降参だ。



「なんっ……!?」

「まさにお手上げ。貰うぜ、その腕」



 グラムを衝突させた刀身から二の腕までの重量を破壊ゼロにした。

 これによって剣に乗っているエネルギーの基礎値が無くなり、振るったグラムの推進力が剣に直接叩きこまれる事になる。

 そして、チェルブクリーヴの二の腕以降の重量はそのまま、つまり、二の腕は上方向に、体は下方向に進もうとする。


 断裂した腕はひしゃげ、空の彼方へと消えた。

 圧力破壊を解除しているから爆発こそしていないものの、回収できないという意味じゃ同じだ。



「痛ッ……」



 くぐもった声を発したメルテッサは、失った右腕をマントで隠す。

 代わりに左腕を伸ばし……、へぇ、そういう事も出来るんだな?



「《雷人王の掌(ゼウス・ケラウノス)ッ!!》」



 掌の液晶ユニットに魔法陣を描き、行使。

 放たれた魔法は完全な形であり、威力は語るまでもなく強大だ。

 だけど、今更、その程度の雷人王の掌で俺が傷付くとでも?

 そんなもん、12万5000発からが本番だ。



「《単位系破壊システムブレーク電気量クーロン》」



 グラムに魔力を通し、対雷撃破壊へと昇華する。

 発せられた膨大な電圧と熱を一太刀で破壊ゼロにし、俺自身が閃光の中を駆け抜ける。



「返すぜ。《電荷崩壊刃(クーロンブレイカー)》」



 雷人王の掌は、魔法を火種にして自然現象を引き起こし、威力を高める特性を持つ。

 だから、純粋な魔法よりも威力が高い訳だ。


 そして、俺が破壊した雷撃は、自然現象として大気中に存在していた雷撃を含んでいる。

 そうして起こされた歪な電荷状態。

 それは、純粋100%の自然雷を引き起こす。



「ぐ、ああぁあああッ!!」



 バチバチと雷電が走り、それを亀裂が追従する。

 黒煙を噴き出した左腕、それを足掛かりにして跳躍し、天からグラムを振り下ろす。



「《単位系破壊システムブレーク重力加速度ガル》」



 向かう先はチェルブクリーヴの左半身。

 メルテッサが搭乗しているであろう核を避け、左肢の破壊を狙う。

 だが……。



「《アップルカットシールドッ!!》」



 グラムの進路上には、チェルブクリーヴの肩パーツがあった。

 そして、マントを保持する役割だと思っていた菱形の装飾が変形展開し、巨大な盾と化している。

 ちっ、壊し……、損ねたッッ!!



「随分と堅ぇ。腕とは大違いだ」

「はぁ、はぁ、……そうだろう」



 グラムに纏わせていた破壊力の指定は重力。

 重力加速度という衝撃の上限値を取り払った一撃は、容易に左腕と左足を破壊できるはずだった。


 だが、結果は惨敗。

 壊れること無く俺の攻撃を防ぎきったのだから、盾の勝利だ。



「なるほど……、その肩に付いている盾は、魔王と天使の神性金属を集めて作ってるんだな?」



 メルテッサからは、肯定も否定もなかった。

 だが、沈黙は肯定と同意義。

 そもそも、よく目を凝らしてみれば違いは明らかだ。



「性能を復元しても、完全コピーにはならないのか。破壊値数がかなり違うぜ」

「よく喋るね」


「あぁ、殺し合いじゃねぇしな。まだまだ余裕だぞ」

「減らず口を叩くなと言っているッ!!」



 チェルブクリーヴ本体と、盾の強度はまるで違う。

 堅いというもあるが、そもそも、破壊値数の系統が違うのだ。


 鉄には鉄の、木には木の、人間には人間の、それぞれ適した壊し方がある。

 物体は定められた固有振動をしている時、受けるエネルギーが数倍に達するからだ。


 さっきの斬撃は、チェルブクリーヴの腕を破壊するべく最適化していた。

 だから、全く別の破壊値数(性能)を持つ神性金属は破壊できない。



「ブチ、殺、がれッッ!!」

「あ、右腕が直ってる。ん?そう考えると変だな?」



 さっきブッ飛ばした右腕は再生され、既に剣も持っている。

 だが、左腕の液晶ユニットも雷撃で破損していたはず。

 だから、それ以外の――、マントで修復したのか。


 そして、そう考えるとおかしい所がある。

 最も重要な頭部がマントで覆われておらず、修復できないのだ。



「盾だけじゃなく、頭も神性金属か。で、それは簡単には修復できない」



 俺の声を掻き消す様に咆哮し、チェルブクリーヴが両腕を振りかざす。

 右手には大剣、左手には氷で出来た魔法槍。

 間髪入れずに繰り出された別系統の同時攻撃、それを俺は遮断する。



「《単位系破壊システムブレーク磁束(ガウス)》」



 チェルブクリーヴは金属であり、磁束の影響をかなり受ける。

 さらに平べったい形状の剣を持っている右腕は顕著だ。


 反発作用を受けた両腕は押し留められ、左腕だけが先に前に進む。

 これは意図的に用意させた他段攻撃。

 そして、そんなものは順番に破壊すればいい。



「左腕、そして右……ッ!」

「《アップルカットッ、シールドッ!!》」


「待ってたぜ」



 俺の狙いは両腕の破壊では無くなっている。

 まず壊すべきは、6枚の盾。

 新たに材料を用意できない神性金属を失う事は、敗北を意味する。



「今度は壊すぜ《重力加速刃ガル・ブレイド》」



 最適化した加速による、超光速の剣技。

 触れた物質は原子崩壊を起こし、世界へと還元される。


 跡方もなく消し飛んだアップルカットシールドの余波で、俺とチェルブクリーヴの間に距離ができた。

 決着の方向性が見えたし、仕切り直すのにちょうどいい。



「早速、1枚貰ったぜ」

「……ちぃ、本当に小賢しい」


「で、次はどうすんだ?」



 盾の枚数は6枚、その内の1枚を壊した。

 おそらく、身を守る盾は、重要機関部を修復する為の材料でもあるはずだ。

 神聖金属は特殊な素材を加工して作るとかクソタヌキが言っていたからな。

 流石のお前でも、材料が無けりゃ何も出来ねぇ。



「つくづくキミの言うとおりだ。リスクを背負わなければ勝てない。《造物主マスターアーティクル武装の複製(バージョンアップ)》」



 俺がチェルブクリーヴの弱点に気付いた事を悟ったメルテッサは、両肩の盾の二つに光輝を宿した。

 そして、それらが変形し造られたのは……、燃え盛る炎の双剣。



「――斬罰せよ、神の名の元に。《輪を描いて回る炎の剣ハーファクト・ラハット》」



 へぇ……、かっこいい剣じゃねぇか。


 盾、残り三枚、

 剣、残り二本。


 それがお前の寿命だ、チェルブクリーヴ。


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