表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

796/1332

第188話「造物主VS神壊者⑧」

「へぇ……、こんな風になってるんだね。カッコイイじゃないか」



 魔導機神・チェルブクリーヴ=エィンゼールのコクピットに乗り込んだメルテッサは、感嘆のままに息を吐いた。

 目に映るのは本の中で夢見た光景。

 想像よりも遥かに多くの機械に囲まれたメルテッサは、その現実感の無さに思わず頬を緩ませている。



「さて……」



 メルテッサがチェルブクリーヴに乗り込んで戦わなかった理由、それは『それをした所で対して意味が無い』からだ。


 リリンサ達と戦ったチェルブクルーヴは『天使の星杯』を核にして建造されたものであり、残り六つの天使シリーズを使ったこの機体よりも格段に性能が劣る。

 使用された神性金属が増えると魔力伝達速度が上がり、機体に搭載されたバッファ・防御魔法の性能が格段に向上するからだ。


 だが、相違はそれだけだ。


 メルテッサ自身が乗り込んでも、さらに高い性能を発揮させる事は出来ない。

 それどころか、人間と機体を繋ぐ存在『ゴモラ』がいない以上は操作をする事が出来ず、ここにいても意味が無いのだ。



「……ユニクルフィン。オールドディーン(じぃさん)の孫であり、英雄ユルドルードの息子。ははっ、カッコイイね」



 メルテッサは呟く。

 一人ぼっちのコクピットの中……、誰にも聞かれる事が無い独白を。

 ひた隠しにしていた、小さな小さな、感情を。



「灰色に塗れた人生、向上する事がない究極の悪平等は、ぼくに虚無を抱かせた。自死を選ぶ事は無かったが、生きている理由もない。……惰性。全てが堕落し抜けおちた感情は、好奇心すら抱かなくなっていた」


「でも、キミは……、いいや、魔王達(キミ達)は向上のあり方を示してくれた。ぼくの価値観を否定し、蔑み、間違っていると教えてくれた」


「ありがとう、ぼくの目の前に立ち塞がってくれて。そうじゃなかったら、きっと、気が付かないまま終えていたと思うから」


「だから……、無茶でも何でもしてみよう。誰も成しえなかった挑戦をしよう。それができれば、ぼくは――」



 言葉が最後まで紡がれなかったのは、ユニクルフィンに声を掛けられたからだ。

 そして、メルテッサが呟きの間に行っていた準備も既に終えている。


 チェルブクリーヴの操作ユニットはアップルルーンの転用であり、人間が直接操作できる設計になっていない。

 大聖母が搭乗する際は必ずゴモラも乗り込み、人と機体を繋ぐ役割をこなすからだ。



「よぉ、メルテッサ。待っててくれてありがとな」

「礼には及ばないとも。ぼくも同期アップデートをしていたからね」



同期アップデート

 それは、造物主の能力には無い、新たな思い付き。

 操作ユニットの内部へメルテッサの指は取り込まれ、名実ともに、肉体と機体を同期《融合》させたのだ。


 天使の星凱布……、『貫通無効』『反動強化』 

 天使の十星磔……、『拘束』『風化』

 天使の十赦槍……、『処断』『確定』

 天使の星冠 ……、『歪曲』『判例』

 天使の星杯 ……、『魔力蓄積』『魔力変換』

 天使の星守器……、『復元』『保全』

 天使の俸祭具……、『調律』『融和』


 魔王の首冠……、『負荷』・『統率』

 魔王の心臓……、『解析』・『保持』

 魔王の右腕……、『自律行動』・『可変』

 魔王の左腕……、『循環支配』・『増幅』

 魔王の下肢骨格……、『移動』・『固定』

 魔王の脊椎尾……、『支援』・『決戦』

 魔王の靭帯翼……、『飛躍』・『結束』



 十四種・二十ハの能力の内、『解析』『可変』『歪曲』『魔力変換』『循環支配』『復元』『調律』『融和』を使い、メルテッサは自身の肉体を可能な限り、チェルブクリーヴと同じ魔道具へと改編させた。

 そして、同一の魔道具であるのならば、造物主による相互能力干渉が可能となる。


 メルテッサの全身を巡る得体のしれない刺激、それはチェルブクリーヴの外部センサーから流れてきた感覚だ。


 無痛・無汗症を患う彼女の肉体は、人生で初めて、空気の冷たさを知った。

 続いて起こるのは、大地を踏みしめた心地よさ。

 掌に魔力を流せば熱さを感じ、高揚のままに剣を引き抜くと背筋を快楽が走り抜ける。



 ……あぁ、楽しいな。

 こんな思いを知ってしまったら、もう、元には戻れないじゃないか。



「ユニクルフィン。愛しの恋人の前で悪いが……、キミには負けて貰うよ。ぼくは勝ちたい理由ができた」




 **********



「勝ちたい理由があるのはお互い様だ。だがな……、俺の場合は、遥か彼方の無量大数(無限)を超えなくちゃ手に入らない。こんな所で負けちゃ、話にならなねぇ」



 メルテッサが乗り込んだチェルブクリーヴの雰囲気が変わった。

 機械特有の無意志が無くなり、一体の生物と相対した時と同じ感覚になっている。

 おそらく、造物主でメルテッサ身体能力をチェルブクリーヴへ伝えているんだろう。


 クソタヌキが駆るエゼキエルと、皇種を始めとする超越者の身体能力の差は殆どない。

 どちらも尋常じゃない外皮強度を誇る上に、防御魔法を何重にも纏い、さらに膨大な魔力を使った迎撃まで仕掛けるポテンシャルを持つ。


 明確に違う点は、機械であるエゼキエルには、生物が無意識に行っている体のリズムが無いことだ。

 肉体を動かし続けている方が早く動けるが、その動き自体を読みやすくなる。

 どちらも一長一短、どちらが優れているとかは無いが……、このチェルブクリーヴが生物寄りの動きをするというのなら、そういう対応をすればいい。



「《単位系破壊システムブレーク圧力抵抗値パスカル》」



 なぁ、メルテッサ。

 お前の能力ってさ、無量大数が持つ『最強』の権能に似ているんだ。


 文字通りの意味で無限を司る存在……、蟲量大数。

 奴の『最強』の権能は、この世界で観測したあらゆる事象の最高値を自動で手に入れる。

 故に、限りが無い。

 一見して最強。だが、この能力にも攻略法が存在する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ