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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第182話「造物主VS神壊者②」

「お前はさっき、『この世界の物質は、全てぼくの神の因子の影響下にある』って言っていたな。ならさ……、神の娯楽を生み出す道具(存在)である『人間』も対象の範囲内なんじゃないか?」



 一連の攻撃が終わり、俺達は戦場チェスボードに降り立った。

 互いの距離は5m。

 それぞれの攻撃間合いギリギリ外側の立ち位置であり、僅かな停滞が空気に混じっている。



「せっかくだ、そう思う理由を聞かせておくれよ」



 俺の攻撃を裁いたあの動きは、明らかにリリンのそれと同じだった。

 つーかそもそも、尻尾なんていう人間に無い部位を迎撃に使っている時点で、リリンの戦闘を参考にしてるのは明らかだ。


 問題なのは、戦争が始まった後……、つまり、メルテッサが見ている所で、リリンは全方位攻撃の迎撃を使用していない。

 空にいた魔導巨人が放った全方位爆撃も、ワルトとメナファスが対応したしな。



「お前が複製しているのは武器の性能だけじゃない。リリンの戦闘経験そのものを得ているはずだ。ガントレットの殴打を防げたのも、俺の攻撃を予め知っていたからだろ?」

「くっくっく、バレちゃったか」


「……バラしたの間違いじゃねぇのか?その能力は奇襲でこそ真価を発揮すると思うぜ」



 他人の能力を無条件で行使できるというのは、魔道具の性能を複製するよりも戦闘向きの能力だ。

 例えば、子供騙しのような弱いパンチの性能が、屈強な男が繰り出した全力での殴打になっていたとしたら。

 大体の奴が軽く受け止めようとして、ほぼ間違いなく骨折する。


 俺の問いを聞いたメルテッサはニヤニヤと笑い、イタズラを成功した子供の様にはしゃいでいる。

 利益や目的を度外視した、一時の快楽の為の行動。

 どうやら、ただ勝つだけじゃ不満のようだな?



「そうだね。確かに奇襲向きの能力だと思う。だが、そんなもので勝った所で面白くない。故に、ぼくは能力の説明をする。キミを圧倒して勝つ為に」

「そういうとこ、ウチの大魔王そっくりだな」


「キミの女に似ている、か。口説き文句のつもりかい?」



 おい、なんだその取り繕った上目遣いはッッ!?!?

 マジでやめろッ!これ以上、妙なフラグを追加するんじゃねぇよッッ!!

 つーか、『俺の女に似ている』って、口説き文句として最低すぎるだろッ!!



「物質主上の上位互換、世界への影響を強めた『造物主マスター・アーティクル』は、それこそ世界を改変するための能力だ」

「道具を改変できるとは名ばかり……、その名の通り、神が作った物質ならば、有機物・無機物を問わずに影響できるってことか?」


「そういうこと。あぁ、付け加えておくと、ランク3となった神の因子は全て名称が変化するらしい。人間が持つ才能アーティファクトでは無くなるからだ」



 皇種や眷皇種などの超越者が持つ特殊能力の総称を『権能』といい、通常は、皇種から配下に与えるものだ。

 そして、それに対抗する為、人間のみに与えられた力が『神の因子(アーティファクト)』。

 そのどちらも神が由来だし、神の因子の強化版が権能だと考えれば納得できる。



「そして、造物主には新たな能力が追加され、魔道具改変のルールも変更されている」

「へぇ……?どんな?」


「造物主による道具の能力向上。それが作用しているのは、魔道具では無く世界の方だ」

「ん?」


「例えば、白紙に万年筆で文字を書いたとき、水彩筆のような筆跡にする事ができる。そしてこの時、造物主が作用しているのは筆では無く、紙。毛筆で書いたという結果を紙に直接に与えている」

「まだ分からんな」


「ペンと紙の間に造物主が挟まっていると考えれば良い。『ペン』から読み取った能力を、『造物主』を介して変化させ、『紙』に描写する。この場合の紙とは世界の事だ」

「紙=世界か。なるほど、剣を『切れ味の良い剣』にしているのではなく、『切れ味の良い剣で斬った斬撃』を世界に顕現させていると」


「そういうこと。だから、ぼくの細腕でも屈強な大男の膂力を発揮する事ができる」



 メルテッサは足元に落ちていた錆鉄塔の残骸を握り締め、粉々に砕いた。

 破壊値数を見た感じメルテッサの体格では壊せない強度だったし、言ってる事に嘘はなさそうだ。


 だが、手に血が滲んでいるぞ?



「分かり易くチートだな。だが、能力を使う度に怪我をしてちゃ話にならんだろ」

「そうなんだよねぇ。造物主は指定範囲内にいた同格者の経験と身体能力による結果を手に入れる。ただし、ぼくの肉体が変わる訳では無いので、身体が付いてこないという状態になるわけだ」



 メルテッサが使っているのは、バルワンの筋力ってところだな。

 当然、その力で殴る事は出来るが、メルテッサの拳も傷つき、体も反動で吹き飛ばされる。

 言ってしまえば諸刃の剣であり、長期戦ではロクに役に立たない。



「当たり前だけど、人間の性能というものは、肉体ありきで発揮されるものだ。故に、その能力だけを復元しても、あまり使い勝手が良くない」

「だろうな。だが……、お前の弱点だった戦闘経験の無さは解消される」


「ご明察!レジェリクエが騙されてくれたおかげで、ぼくの望む舞台を用意することができた。この戦争に勝利した暁には、ニヤニヤ笑う写真の前でお礼を言わないとねぇ」

「はっ、それはできねぇ。取らぬタヌキの皮算用ってやつだぜ」



 遺影の前で嫌味を言おうって事なんだろうが、そもそも大魔王陛下は死んでない。

 どっかに隠れながら、いえーい!って感じでニヤニヤ笑っていると思う。



「取らぬタヌキの皮算用ねぇ。確かに皮は手に入れてない。が、カツテナイ・ロボを手に入れた訳だが?」

「リリン達が壊しただろ……って、そうか、あれの能力もその装備に受け継がれてんのか」


「当然だろう。ぼくがチェルブクリーヴを捨て駒にしてまで求めたのは、機体性能を試して堕天シリーズに復元する為と、リリンサが持つ魔王シリーズの技術経験を得る為。直接的な攻撃手段が魔道具なら、ぼくの身体が傷付く事は無いからね」

「色々考えてんだな」



 メルテッサは『魔王シリーズを超える装備を生み出し』『その使い方や性能を熟知し』『戦いを有利に進めるための戦闘感を手に入れた』。

 最前線で戦ってきたリリンを筆頭に、系統の違う心無き魔人達の統括者全員の戦闘に精通した訳だ。


 なるほど、こりゃ、リリン達がチームで戦っても負けるかもな。

 得意な戦法がバレている上に、異常な高火力と対応力まで備えられちゃ、殆どの攻撃が通用しなくなる。

 空気を対象にする事で、蟲量大数の真似ごとも出来るしな。



「作戦が思い通りに行ってご満悦。そんな顔をしてるぜ」

「認めるよ。事実、この瞬間はぼくの人生の中で一番楽しい」



 ……そりゃ良かったな。

 だが、そろそろ楽しい時間は終わりになる。



「さてと……、やるか」

「だね」



 メルテッサは指導聖母だ。

 楽しく交わした言葉の中に、虚偽や意図的な情報封鎖が仕掛けられているだろう。


 だが、結局の所、何の意味もない。

 グラムさえあれば、順当に勝てる。


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