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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第177話「戦姫の勇将救世①」

「メルテッサ、空が賑やかだな」

「何の話……!」



 メルテッサの声を遮り、雷鳴が轟いた。

 そして、眩い閃光に穿たれた曇天に映ったのは、全長500mは有ろうかという巨大な……二つの影。



「目には目を、ゲロ鳥にはゲロ鳥を。悪いが、お前の備えには既に手を打ってある」



 心無き魔人達の統括者が総出で行った、物質主上攻略作戦。

 大地を爆砕する事で存在していた魔道具を吹き飛ばし、ついでに巨大なチェスボードを作るという凄まじすぎる策謀だ。


 そして……、それはおそらく半分だ。

 天穹空母(最大級の魔道具)が鹵獲されている以上、それを攻略して、初めて全ての魔道具を取り除いた事になる。



「天穹空母は俺達が作ったものだ。失念してる訳ないだろ?」

「そりゃそうだ。それで?」


「自分の策が見抜かれてた割には、随分と余裕がありそうだな?」

「そうだねぇ。もしも全部を見抜かれていたら、その時は焦ってあげてもいいかも」



 全部を見抜かれていたら?

 ってことは、天穹空母以外に策があるのか、それとも……?



「ま、どうあるにせよ、キングフェニクスに勝てるとは思えねぇけどな」

「参考までに教えておくれ。何がどうして勝てないんだい?」


「どうやらアイツは眷皇種らしくてな。しかも、かなり戦闘慣れしてる」

「へぇ、そうなんだ。冥王竜よりも強いって事で良いのかい?」



 取り戻した記憶の中に潜む、数々の化物達。

 その中の一角である『眷皇種』は、世界の理を簡単に超越する絶対強者。

 その証拠として、殆どのやつがレベル100000に達している。


 眷皇種は、皇種が持つ権能を与えられた超特殊個体だ。

 不安定機構が発行している危険動物図鑑の巻末に記載されており、特に、ブラックページに記載されてるのは特にやばい。

 その戦闘力は、最低でもドラピエクロ以上。

 明確な意思を以て攻撃した場合、町を一つ滅ぼすのに30分も掛らない奴だっている。


 ……が、その実力は結構ピンキリだ。

 同じ種族の眷皇種でも戦闘能力に大きな開きがあり、大体の場合、身体がデカイ奴はそこまで強くない。

 逆に……、人間よりも小さい体で眷皇種を名乗ってる奴は例外なく超絶強い。

 クソタヌキとか最たる例だし。



「冥王竜もそこそこ強いが……、戦わせればキングフェニクスが勝つぞ」

「ブルファム王国民が恐怖する大災厄を、随分と安く見積もるんだね?」


「確かに攻撃力はある。が、アイツは攻撃を迎撃しようとする癖があってな、絡め手を使うと簡単に勝てるぞ」



 俺が冥王竜をポンコツと呼ぶようになったのは、ドラゴンの誇りだとか、黒土竜の王たる威厳だとか、戦闘に関係ない見栄を気にして隙を晒していたからだ。

 そんな訳で、一騎打ちを申し込んだ俺と睨み合った冥王竜は、後頭部を滅多打ちにされ成す術なく沈んだ。

 うん、マジで悪ガキだな。過去の俺達。



「まぁ、確かに冥王竜は口ほどにも無かった。揺り籠に負けるくらいじゃねぇ」

「揺り籠?」


「そう揺り籠さ。まさか、キミ達の帝王枢機に対抗する為に作った僕の機神を、鳥にお披露目なんてするなんて思わなかったよ」



 ……僕の機神、だと……?


 看過できない事を云い放ったメルテッサは唇を歪ませ、天を見やった。

 その視線の先で雲を突き破って現れたのは天穹空母の残骸と……、剣や盾で作られた巨大なゲロ鳥の首。



「相打ちか……?いや、違うッ!!」

「キミ達の天穹空母は揺り籠だ。物質主上で作った僕の機神『チェルブクリーヴ』を育てる為のね」



 遥か頭上で凄まじい雷光が爆ぜ、その衝撃によって曇天が全て拭き飛ばされた。

 そしてそこには、銀色のマントで全身を覆った深紫の魔導巨人が君臨している。



「マジかよッ!?あんなもんを作りやがったのかッ!?」

「くっくっく、そうだよ。カッコイイでしょ?」



 天空にて躍動するは、驚愕と失笑をごちゃ交ぜに掻き回す、カツテナイ・ラスボス。

 セフィナに叩き落とされた怒りを晴らさんと、天穹空母は機神へと生まれ変わったのだ。


 ……いや、まるで意味が分からんぞ。

 百歩譲って、天穹空母の技術を転用したのはいい。

 物質主上は魔道具の性能をコピーできるって話だったからな。

 だが、機神を作るのはズルイだろ、機神は。



「うん、なんていうかな……。機神なんぞを戦争に持ち込むんじゃねぇよ!」

「お前らだけには言われたくない」


「ぐっ!……いや、アップルルーンを持ち込んだのはラルら……あ。うん、持ち込んだのはウチの策謀大好き聖母様なようだな?」

「土下座で詫びろ。真面目に戦争してた全世界の人々に」



 ボケ倒してお茶を濁そうかと思ったが、この状況はある意味で自爆。

 というか、ほぼタヌキによる無差別テロだが……、どっちにしろ、俺達の陣営が原因なのは間違いない。


 正直な話、俺は魔王シリーズや天使シリーズの性能をメルテッサに奪われた所で、大した障害にはならないと思っていた。

 超魔王リリンと戦い慣れた現在、俺の方が優位に立つ事が多いからだ。


 だが、流石に機神が出てくるなら話は別だ。

 超遠距離からブルファム王都を狙撃とか、レジェンダリアへ転移して襲撃とかされると甚大な被害が出てしまう。

 最初から真面目に戦うつもりだったが、予定を切り上げて速攻で……ん?



「あー、そのなんだ。悪かったよ」

「随分と潔いじゃないか。まさか恐れを成して全面降伏とか言わないだろうね?」


「それはねぇよ。ただなぁ」

「ただな……?って、うわっ!!」



 遥か遠く、メルテッサの後ろがキラリと光った。

 そして、覚醒グラムによって感覚が強化されている俺は、その光が何なのか手に取るように分かる。

 眩い光を放って行方をくらましたその矢は、グラムと同じ覚醒神殺しの攻撃だ。



「あっっっ、ぶねぇ!!人が気持ち良く話している時に後ろから狙撃するかッ!?普通ッ!?」

「だって俺達、魔王だし。心無き魔人達の統括者(アンハートデヴィル)と人は呼ぶ」


「心が無いにもほどがあるだろッ!!」



 平然と話して誤魔化しているが……、内心に抱いた危機感で背中に汗が伝って落ちた。


 今でこそ分かる事だが、テトラフィーア大臣の狙いはシェキナによる狙撃での決着。

 遠距離狙撃が可能な覚醒神殺しを持っている以上、それが最も効率が良い勝ち方だ。


 そして、メルテッサはそれを防いで見せた。

 認識阻害が掛けられた光速に近しい矢、それが突然出現した巨大な腕によって握り捕らえられている。



「お前らホントにえっぐい。そんな集団の正体が、女王、聖母、姫、かみさま、保母、アホの子姉妹とか、マジでどうかしてる」



 ……。

 …………。

 ………………駄犬が抜けてるぞー。



「にしても、よく反応出来たな。その矢を止めるのは俺でも苦労するのに」

「ついでに言うが、ぼくの能力に探りを入れんな」


「あ、バレた」

「キミ、指導聖母の知能、舐めてるだろ?」



 舐めてるというか、慣れてるが正しい。

 記憶を取り戻した俺は、目を背けたくなる人の黒さまで思い出している。



「さてと……、俺は俺の仕事をしないとな」

「へぇ、お友達のゲロ鳥を助けに行かなくて良いのかい?」


「さっきも言ったはずだぜ。空が賑やかだって」



 何も心配する必要はない。

 なぜなら、チェルブクリーヴの前に心無き魔人達の統括者が集結している。

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