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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第175話「天穹の破壊者⑩」

「ぐるぐるきんぐぅー!」



 声高らかな戦闘開始の合図と共に、心無き魔人達の統括者が動きだした。

 それぞれが思い描くは、過去の己との差分。

 そして、更に強くなった仲間への信頼と共に、手に持つ武器に力を込める。


 まずは先制、口火を切ったのはメナファスが持つ『サタンの天撃』。

 片手サイズの小銃の口径が可変し、直径40mmの弾丸を撃ち出す。



「小手調べから行くぜ、カミナ!!」

「もちろん分かってるわ《大規模個人魔導パーソナルソーサリィ生命認識メディカルチェック 強制支配アウトプット》」



 空を切る弾丸に追従するように、カミナの大規模個人魔導の効果範囲が拡大していく。

 心無き魔人達の統括者の第一手、それは、敵のステイタスの見極め。

 カミナが開発したこの魔法は、対象物の流動的な変化を読み取り数値化する。



「Interception(迎撃) selection(選択) …… Megiddo(天撃つ硫黄) Flame(の火)



 迫る弾丸を認識したチェルブクリーヴは過去の性能を参照し、確実な結果をもたらすであろう迎撃を選択した。

 翳された右腕の掌に溜まった熱源が膨張し、飽和。

 赤く焼けた鉄のような熱線が空を切って弾丸に迫り――。



「おっと、僕は魔導師を廃業したつもりは無いんだよねえ《次元の落とし穴(ウロボロス・ゲート)》」



 衝突する寸秒前に発動したワルトナの魔法によって、熱線がすり抜けた。

 次元を隔てて交差した攻撃、だが、チェルブクリーヴの熱線は目的を見失ったのに対し、メナファスの弾丸は目的を見据えたままだ。


 そうして、突き出していたチェルブクリーヴの掌に、新たな煙が噴き上がった。

 空気抵抗によって熱せられていた弾丸が挟まり、空気を燃料にして燃えている。



「ダメね。弾丸の方が負けちゃって、全く傷つけられていないわ」

「オレも観測した。一発で弾丸の損耗率がパァだぜ」



 メナファスが常時発動している大規模個人魔導・戦争依存地帯パラノイアコンクリフト

 物質の損耗率を可視化し残命を把握する魔法であり、カミナの大規模個人魔導と合わせることで、生物・無生物関係なく物質の耐久値を測定する事ができる。


 そうして行われた一手目は成功し、カミナはチェルブクリーヴの耐久値に当たりを付けた。

 始めから機体性能を記憶している彼女にとって、これはただの確認作業。

 そして、もう既に、次のプロセスに移行している。



「ところでメナフ、神性金属で弾丸を作ってみたんだけど、性能試験に付き合ってくれないかしら?」

「いいぜ、後で一杯奢りな」



 パチン!と軽快な音と共に、金色の弾丸がメナファスに投げ渡された。

 それは、この大陸に存在していない金属で作られた神話級の魔道具。

 この世界でもっとも硬い弾丸、それをメナファスは躊躇なく弾装に込める。



「《弾丸解析パラベラム》」



 メナファスが持つサタンの天撃は可変口径型魔道小銃と呼ばれ、読み込ませた弾丸を複製して装填する機能がある。

 例えそれが神性金属であったとしても、この世界のテクノロジーを用いて生成したものであるのならば、問題なく複製が可能。

 それは……、このサタンの天撃を含めた四つの魔導銃が、世界を滅ぼしかけた大災厄をモチーフにして作られた逸話クラスの魔道具だからだ。



「なるほどな。こいつはいい弾だ」



 まるで新しいおもちゃを貰ったかのように、メナファスは唇を釣り上げながらトリガーを引いた。

 その目に映った弾丸の強度はチェルブクリーヴの装甲と同等。

 ならば、傷つけらない道理はない。


 再び放たれた弾丸、それに対応するべくチェルブクリーヴも腕を翳し、先程のオマージュとなる。

 そして、再び同じ結果に終わった。

 天空から雨の様に降り注いだ矢によって熱線は掻き消され、メナファスの弾丸のみが役目を終える。



「命中っと。あらら、かなりいったな?」

「思ったより柔らかいわ。あぁ、魔法による多重防御が上手く作用していないのね」



 金属としての耐久値が同じでも、複数の防御魔法を重ねがけしているチェルブクリーヴの装甲の方が堅い。

 一発当てた程度では大した傷にならないだろうと、カミナとメナファスは思っていた。


 だが、想定よりも傷が深い。

 その理由について思い当たる節があったカミナは第九識天使を通じて心無き魔人達の統括者と情報を共有し、攻撃力の最適化が行われた。



「なるほどねぇ。操縦技術が高すぎるクソタヌキが防御機能を使い分けていたせいで選択肢が多く、メルテッサが最適解を選べて居ないと」

「ん、それじゃ?」


「エゼキエルよりも格段に柔らかいってこと。アンチバッファさえ掛けときゃ、ランク9程度でも効くだろうねぇ」

「了解。ホロビノ、私達の攻撃に合わせて竜滅咆哮!」

「きゅあ!」



 既に効果を確かめているアンチバッファを指示し、リリンサが颯爽と走りだした。

 右腕には真紅の刃。

 左手には巨大な掌。

 さらに回転する尾を追従させ、チェルブクリーヴに近接戦を申し込む。



「断・裁せよ、《魔神の等活獄(デモン・ファースト)!》」

「ランク9で十分っていう僕の説明、聞いてた?」



 ギャリギャリギャリと凄まじい金属の軋轢音を響かせ、リリンサの右腕とチェルブクリーヴの左腕が衝突し合った。

 その動きのどちらも、人間離れした精密な攻撃。

 機械であるチェルブクリーヴは当然として、リリンサが振るう右腕も一切の迷いなく攻撃を繰り出している。


 魔王の右腕の基礎性能は『自律行動』だ。

『解析』や『支援』といった補助機能を駆使し、最も効果的かつリスクの少ない攻撃手段を自動で行使する。


 そして、それはチェルブクリーヴにも備わっている機能だ。

 同じルールに則った、機械的な攻防。

 まるで予め流れが決まっている演舞の様な攻防が繰り広げられ――、そこに、弾丸が添えられる。



「リリン、大振りな攻撃に切り替えてけ。サポートはオレがしてやる」

「分かった!」



 寸分の狂いが無かったチェルブクリーヴの動作に、明らかな異常が混じり始めた。

 それは、滑らかだった動きのガタツキ。

 関節機構の歯車に神性金属性の弾丸(異物)が挟みこまれた事により引き起こされている。



「vi!?vigiruoonn!?」



 そしてそれは、完璧なメンテナンスをされている帝王枢機にとって未知の攻撃だった。


 機械特性を逆手に取った攻撃をしてくる存在は珍しい。

 ましてや、天使・魔王シリーズを完全武装したエゼキエルを出さざるを得ない強者は、そんな小細工を必要としない。

 結果的に、ソドムが敵として戦った相手の中に、この状況に対して有効な対処をした者はいなかった。


 メナファスが撃った弾丸が歯車に巻き込まれる度に動きが鈍り、その隙をリリンサが切り捨てた。

 魔神の右腕がチェルブクリーヴの装甲に触れた刹那、ホロビノが竜滅方向を発動。

 一時的に神性金属の強度を失い、するりと五指の刃が反対側へと通り抜ける。



「ん、腕とった!」

「それじゃ、私の出番ね」


「いってらっしゃい!」



 リリンサの尻尾に指を掛けながら、カミナが名乗りを上げた。

 何かとトラブルの多い心無き魔人達の統括者、その問題を無かった事にする彼女の二つ名は、『再生輪廻』。


 ブン!と振られた魔神の尻尾の慣性に従い、カミナ自身が前に飛び出す。

 その手に握るはレンチとドライバー。

 更に腰には様々な工具をぶら下げ、瞬きの間に一閃する。



「処置完了。これでもう復元できないわ」



 チェルブクリーヴの自動再生は、二工程に分かれている


 ①破壊される前の性能を瞬時に復元し、機能を維持する。

 ②アップルルーンの複製能力を使用し、破壊された部位を直す。


 こうする事で、部位欠損が起こした隙を最小限に留めているのだ。


 そして、カミナはその仕組みを理解している。

 だからこそ……、破壊された部位を先に修復する事で『そういう魔道具』として生まれ変わらせ、過去と結びつかないようにしたのだ。



「いやはや、良い動きだ、カミナ。かなり高位のバッファを使ってるようだね?」

極限なる覚醒者サウザンド・ハンドレッドっていう魔法よ。擬似的に超越者と同じ身体能力を得る事ができるの」


「へぇ、それは凄い。何が凄いって、普通はそういう魔法は英雄に教えて貰うもん。なのにキミはタヌキに教えて貰ったと来たもんだ」 

「そうね、タヌキと人間、どっちかを選ばなくちゃならないなら、間違いなくタヌキを選ぶくらいには傾倒しているわ」


「お願いだから人間を贔屓して。マジで」



 軽口を叩きながら、ワルトナは弦に指を這わせ、番った矢に魔法の効果を付与して行く。

 そして、リリンサの尻尾の光りに合わせた、水属性(ぶにょんぶにょん)の矢(きし矢ー!)が放たれた。



「渦巻き!《水害の王クラーケン・オブ・タイタニカ》」

「轟け!《魔神の大叫喚獄(デモン・フォース)雷人王の掌(ゼウスケラウノス)!》」



 左腕を失っているチェルブクリーヴの半身に、合計15本の矢が刺さった。

 ホロビノが撃ち込んだ竜滅咆哮の効果が残っている場所を穿ち、矢に込めた魔法を機械内部に直接流しこむ。


 莫大な水量が機械内部を押し広げながら進み、そして、そこに魔神の脊椎尾で強化された雷人王の掌が撃ち込まれた。

 凄まじい破壊の電流がチェルブクリーヴの電子基盤を直撃し――。



「No signal」



 ばちん。っと大きな音を出し、その目に宿っていた光りが消えた。



「やったかな?」

「第一段階はクリアしたわ」


「第一段階ぃ?どういうことだい?」

「言ったじゃない。チェルブクリーヴを倒すには一瞬で木端微塵にするしかないって」


「確かに聞いたけどさ。で、これからどうなんの?」

「そうね、たぶん試験形態テストモードに入るんじゃないかしら?」



 バチバチ……と弾けていた、チェルブクリーヴの頭部。

 消えていた眼光に赤い光が灯る。



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