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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第174話「天穹の破壊者⑨」

「断罪の矢に貫かれ、僕の気分を晴らしておくれ。《降臨の雨飛(フォールド・レイン)》」



 天から降り注ぐ、七本の彩色矢。

 それらがチェルブクリーヴの全身を貫き、そして、それぞれの色を混ぜて――、虹色へと昇華する。



「ん、綺麗……」



 思わず漏れ出たリリンサの感嘆。

 それに答えるように、七色の光がチェルブクリーヴの全身から迸り始めた。


 この世界で存在するには、それを表現する為の色を持たなければならない。

 赤、青、緑、暖色、寒色、明度、彩度……、

 それらの構成因子を持つ事が、この世界に存在する為の絶対条件なのだ。


 そして、ワルトナが放った七色の矢は、物質の存在()を抜きだして混ぜ合わせ、強制的に白か黒へと二極化させる。


 白……、全ての物質が存在しえない空白。たった一つの情報も存在しない、白紙のページ

 黒……、全ての物質が存在している漆黒。たった一つも情報を追加できない、黒紙のページ。


 チェルブクリーヴのマジックグリース循環機構を駆け廻る七色の光は、それぞれが司る存在を解け込ませ、次第に膨大になってゆく。

 装甲がどれだけ堅牢な防御力を秘めていようとも、意味が無い。

 これは攻撃なのでは無く、物質そのものの在り方を書き変える創造の力だ。



「vigig……ヴぃ、gaAa、ze、asdf、ghjk……」



 途切れ途切れに発せられる音声はただの騒音と化し、機械の断末魔となった。

 あぁ、夢にまで見てうなされたカツテナイ・トラウマよ、さようなら。

 今日の夜は良く眠れそうだと、ワルトナは笑っている。



「さてと、ユニの方は――」

「……待って。まだだと思う!」


「まだだって?……ちっ、しぶとい!」



 漏れ出ていた虹色が晴れ、ワルトナの攻撃が終わる。

 輝かしい光の中から現れたのはボロボロと崩れゆく機神、虫食いの様に穴が空いた体。

 だが、そんな姿になってもチェルブクリーヴはこの世界に存在している。



「《緊急、展KAかかかい、……音響兵kiーroレRAI》」



 今にも折れそうな身体に纏う、銀色のマント。

 それに灯るは、虹色の光。

 まるで蕾のようにチェルブクリ―ヴの全身をマントが包み込み、そして……。



「ちっ、どうやら物質そのものの在り方を変える技は、物質主上とは相性が悪いようだ」

「《Complete(完全) repair(修復) completed(完了)》」



 ワルトナに返された音声は明瞭で、崩壊寸前の割れたスピーカーが発したものとは思えない。

 そうした刹那の驚愕の後、虹色の蕾が花開く。

 銀色に戻ったマントの下から現れたのは、完全に修復されたチェルブクリーヴだ。


 メルテッサがチェルブクリーヴに搭載させた三大機能、その内の二つはサムエルとエステルの両腕に集約されている。

 そして、天穹空母のマジックプレートで出来た銀色マントこそが、チェルブクリ―ヴ独自に搭載された最大の利点。

『魔法陣』という括りで縛られた道具であるこの装備がある限り、無限の再生能力を持っているに等しい。



「カミナ、解説を」

「天穹空母の横断幕は、あらゆる魔法をカスタマイズして使う兵器なの。当然、命を巻き戻す時計王(クロノス・グラス)などの時間逆光系の修復魔法も備えているわ」


「なるほど、レジェが魔法十典範を知っていたのなら間違いなく搭載させてるだろうね」

「ただ、それだけじゃないわね。物理的な破壊はアップルルーンの分裂機能を利用して瞬時に機体を複製して置き換え、魔道具として変質させるやり方は、物質主上によって過去の性能を取り戻される」


「ちなみに、アレが始めから分裂してないのは何でなんだい?」

「アップルーンの複製体制作はゴモラの魔法を主軸にした機能で、アップルーン独自の性能。エステルやサムエルで代替しても無制限に機体の複製は出来ないでしょうね」


「そういうことか。分裂したアップルーンも両断された事による苦肉の策だった訳だ」

「それでも、欠損した腕の複製はすぐに作れている。油断は禁物よ」


「流石はカツテナイ機神のパクリ。パチモンですら中々勝たせてくれやしない」

「完全に壊す為には、マントを含むチェルブクリーヴの全てを同時にかつ、一瞬で分子レベルになるまで破壊する必要があるわ。チェルブクリーヴとして認識できるパーツが残っていると無限に再生されるわよ」



 メルテッサに取って、チェルブクリーヴは己を守る騎士だ。

 そこに求めた性能は鉄壁の防御力。

 彼女自身があらゆる魔道具を支配するが故の攻撃力を備えている以上、レジェリクエとの戦いの様に、奇襲さえ防ぎきれば勝ちは揺るがない。



「なるほどねぇ……、リリン、準備運動よーい」

「分かった」


「さてと。このまま戦い続けてれば、いずれは僕だけでも勝てるだろうけど……、さっさと決着を付けたい。カミナ、メナフ、ホロビノ。ちょっと手を貸してくれるかい?」



 ワルトナは、弓兵としての自分を見せてしまったら、心無き魔人達の統括者はそこで瓦解するとだろうと思っていた。

 神栄虚空・シェキナを使うのは策謀の最終段階、リリンサに正体を打ち明けた後。

 そうなれば、リリンサを育てる為に作った心無き魔人達の統括者も役目を終えることになる。

 だが……。



「もちろんいいぜ。つーか、参謀のお前が指示を出してこそだよな?カミナ」

「そうね。ワルトナが狙撃職を兼ねられるなら、もっと良い陣形や配置が出来る訳だし、連携練習は必須だわ」

「きゅあ!」



 親しき友人達は、そう思っていなかった。

 確かに、心無き魔人達の統括者はそれぞれが自分の思惑を持っており、目的もバラバラだ。

 だが、それは仲間という存在と相反するものでは無く、……むしろ、その関係があるからこそ成し得る目標なのだと全員が理解している。



「僕が持つ弓兵として戦闘技術はさっきの通り。カミナとメナフは?」

「私の戦闘スタイルも昔とは別物よ。今は魔法も使うもの」

「オレのは純粋な強化だな。だが、英雄仕込みの戦闘技術は中々の代物だぜ」


「そうかいそうかい。若干一名、サボっている奴がいるのが不服だが……、ここからは全員でお相手するとしよう」



 ギラリと輝く4人と1匹の眼と、銀と深紫の鋼鉄。

 それを傍観している黒いドラゴンの掌の上、高さ140cm程の所(・・・・・・・・・・)で宙に浮いているキングフェニクスが、声高らかに最終局面開始の鐘を鳴らした。


……さすが、カツテナイ機神のパチモン。


このしぶとさに、ゴモラもビックリ。

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