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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第171話「天穹の破壊者⑥」

「僕らが本気で戦うには、この世界じゃ強度不足だ。ちょっと補強させて貰うよ」



 キリリ。と引き絞られた弓に、虹色の矢が番えられた。

 それは覚醒神殺しが放つ、世界の理へ干渉した事を示す光だ。


 神栄虚空・シェキナの真なる覚醒体『神憧への櫛風沐雨アドマイアレイン・ゴッデス

 竪琴とも見間違う巨大な弓に宿る能力は『創造』。

 16本の弦が奏でる音階は、全ての魔法が格納されている魔法次元の扉へ作用する。

 そうしてワルトナの望むがままの魔法を宿した矢は、思い描いた願いを履行する、神をも騙す虚空の聖矢と化すのだ。



「《静夜の雨仕舞(サイレント・レイン)》」



 16本の弦に指が這い、人間の発声領域と同じ音階が奏でられた。

 人間に与えられた『声』という名の特殊能力を代替えすることで、呪文の詠唱を行わずに魔法次元の扉を開くことができる。

 そしめ、神殺しでサポートすることによって……、任意の状態にカスタマイズした魔法の行使が可能となるのだ。


 ワルトナのしなやかな指が奏でた音階が矢に光を灯す。

 想像したのは、『雨水の一粒すら通さない、檻』。

 チェスボードの境界を起点にし、外部への影響の一切を遮断する。

 万が一にもブルファム王都へ戦闘の余波を伝わらせない為に、ワルトナは保険を掛けたのだ。



「《Target(標的) ReSelect(再選択)……clear(完了)》」



 巨大なチェスボードの中心に向かい、矢が進んでいく。

 だが、矢が大地を穿つよりも速く、チェルブクリーヴが行動を終えた。


 その手に握られているのは、ワルトナが放った『静夜の雨仕舞(サイレント・レイン)』。

 無造作に握られて折れた矢はすぐさま崩壊し、その攻撃は潰えて消える。


 突然に姿を露わした複数の敵に対し、チェルブクリーヴが行った第一手は優先順位の選択だった。

 それぞれの戦闘力の概算値を算出し、最も警戒するべき相手を軸に戦闘計画を立てたのだ。


 心無き魔人達の統括者が持つそれぞれの装備の中で、最も強いエネルギーを発しているのが神栄虚空・シェキナ。

 そして……、覚醒神殺しと幾度となく戦ってきた『エステルとサムエル(ソドムと帝王枢機)』は、その対処をした過去を持っている。

 超反応とも呼ぶべき速度で矢を認知したチェルブクリーヴは、翼のように広げている銀色のマントに風の大規模戦殲滅魔法を宿展開。

 爆発的な加速で空を駆け、矢を捉えたのだ。




「ひゅー!射った矢に追い付いてキャッチするとか、凄まじい運動性能してんな」

「ふむ、運動性はアップルルーン準拠。ただし、一切の無駄を排除した動きで高パフォーマンスを発揮してるわね」



 仲間の攻撃が失敗に終わったというのに、明るい声での野次が飛び交った。

 まったく困った様子の無いそれこそが、心無き魔人達の統括者の日常。

『ワルトナの初撃が無意味に終わる訳が無い』という信頼は、決して揺らぐ事はない。



「さて、この戦いを見ていた(・・・・)であろうメルテッサに質問だ」

「gig……、バチッ……。」


「この世界のどこに、矢を射る前に標的を宣言する弓兵がいるんだい?少なくとも、僕には心当たりが無いねぇ」



 バチバチバチ……と雷光が奔る。

 それは、ワルトナが放った一連の攻撃の帰結。


 静夜の雨仕舞(サイレント・レイン)を握り捕らえたチェルブクリーヴは、すぐに飛んできた矢の軌道計算を終えた。

 そして、苛烈な反撃を行うべく目標へカメラを向け――、その目に、ワルトナが放った本命である第二射、魔法十典範を宿した矢が突き刺さったのだ。



「おっと、僕とした事がとんだ失礼をしたようだ。目が見えない人に探し物をしろだなんて」



 視力を失ったチェルブクリーヴ(メルテッサ)に分かるように、ワルトナは声に出して嘲笑を放った。

 くっくっくとオマケの笑い声まで付けたそれは、心無き魔人達の統括者・戦略破綻が最も得意とする『戦闘否定』。


『相手にとって最も良い未来から順に消し去って行く。そうすれば、相手の勝利は絶対に無い』


 相手が持つ戦力、戦略、戦術、戦局、戦功、それら全てを片っ端から破綻させる事こそ、ワルトナの基本戦術。

 そのルールに則り、『チェルブクリーヴによるユニクルフィンへの狙撃』という、メルテッサの勝ち札を封じたのだ。



「メルテッサ、物質主上はとても強い能力だ。だが、それを持つキミ自身が戦闘慣れしていないんじゃ、お話にならないんだよねぇ」



『お話にならない』

 それは、神へ物語を献上する役割を持つ指導聖母にとって、最も唾棄すべき罵倒。

『存在価値が無い』と言われたチェルブクリーヴ、その穿たれた頭部がビギリ。と軋みを上げた。


 ワルトナがこれ見よがしに放った静夜の雨仕舞(サイレント・レイン)は、確かにチェスボードの外を保護する効果を宿していた。

 だが、そんなものは、チェスボードが出来あがった時には既に備え付けられていたのだ。


 テトラフィーアが出した戦闘管制は『戦場から魔道具と人間を取り除き、メルテッサの弱体化を図る』

 そして、それを加味した上でチェスボードを作ると提案したのは、他ならぬワルトナだった。



『チェスボード、ですの……?』

『そうさ。メルテッサへの狙撃を確実に成功させる為に、正確な距離の目算が必要なのは分かるね?』


『存じてますわ。ですが、それをメルテッサに利用されては同じ条件になるだけでは?』

『相手は道具のスペシャリスト。当然、そう考えるだろうし、逆手にも取られるだろうね』


『なら……、いえ、』

『ご明察。チェック柄はとても錯視が発生しやすい。だからこそ、チェスボードの外側に刺し込んだシェキナの矢を見落としてしまうと思わないかい?』



 半径5kmにも及ぶ巨大なチェック柄。

 完璧な正方形で描かれたそれは、強力な目の錯覚を誘発させる。

 チェスボードの中心にいるユニクルフィンを見れば良い心無き魔人達の統括者と違い、メルテッサはチェスボードが作られた意味を探さなければならない。

 そして、じっくりとした観察に苦痛を感じさせる事は、メルテッサの集中力を大きく削ぐことになる。



Machine(機械) repair(修復).star(開始)……!」

「させるかよ《魔弾詠唱・氷点巣の魔魚(バハムート・ゼロ)》」



 雷光が奔る頭部へ、絶対零度で象られた弾丸が突き刺さった。


 神が作りし温度という概念の最低値、-273.15度(絶対零度)

 それを受けたチェルブクリーヴの頭部は急激に温度が下がって超電導状態となり……、電気抵抗がゼロになった雷光が一気に内部機構へと流れ込む。


 超高圧電流の連鎖爆発によって、チェルブクリーヴの首から上が跡方もなく吹き飛んだ。

 視覚に次いで聴覚までも失ったチェルブクリーヴ、その隙だらけの背中に添えられたのは……、魔神の脊椎尾。



「木端微塵に吹き飛んで。《五十重奏魔法連(クィンクァゲテット)×五十重奏魔法連(キュービクル)×五十重奏魔法連(マジック)雷人王の掌(ゼウスケラウノス)!!》」




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― 新着の感想 ―
[良い点] うわー、引く程強い。 連携というか、それぞれがそれぞれの持ってない部分でカバーしあうからマジでパーティーとして強いんだな魔人達。 [気になる点] あれ?リリンってまだカンストしてなかったん…
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