第169話「天穹の破壊者④」
~お知らせ~
圧倒的ぐるげぇ!感が足りなかった為、二度に渡り、前話を加筆修正しています。
(1回目 10月16日の夜、2回目 10月17日の昼すぎ)
1000文字ほど追加して、キングフェニクスのカッコ良さUP!
「Battle Process Select……、clear」
落下する雷塊鉄集巨鳥を奮い立たせようとしているキングフェニクスに向けて、深紫の魔導巨人……『チェルブクリーヴ』は右腕を翳した。
開かれた掌の中心にあるのは、カメラレンズの様な結晶が付いている孔。
そしてその穴こそ、チェルブクリーヴが纏う三大主武装の二つだ。
右手の結晶に、『攻勢眷族・魔王枢機サムエル』の性能を。
左手の結晶に、『守勢眷族・魔天枢機エステル』の性能を。
遥か数千年前に存在した古の魔導巨人、そして、魔王と天使シリーズへと姿を変えた現在の性能を集約したそれらは、元・眷皇種程度をひねり潰すには過ぎたる力だ。
「 creationWeapon=Great Spear」
バチバチと火花が奔り、結晶に浮かんだ魔法陣から巨大な槍が錬成された。
魔王シリーズが持つ『自律』『可変』『増幅』の能力によって、腕の内部に格納されている鋼材が瞬時に加工されたのだ。
出来あがった全長3mの投げ槍を振りかぶり、チェルブクリーヴは小さな標的へカメラを向けた。
精密機械であるが故の完璧な投擲フォームを経て、槍の先端が空を貫く。
「ぐるきんっ!?」
周囲へ張り巡らせていた電磁波に異常を感じたキングフェニクスは飛来する槍に気が付き、すぐに三つの選択肢を用意した。
①迫る槍との間に雷塊鉄集巨鳥を潜り込ませ、盾とする。
②雷塊鉄集巨鳥を捨てて、全力での回避を行う。
③電磁路回避での自動回避があるから、何もしない。
キングフェニクスの経験からすれば、③番一択だ。
①も②も雷塊鉄集巨鳥を失うことには変わりなく、勝機を手放したも同然。
一方、③であれば、超電磁刃砲を撃ち込む隙ができるかもしれない。
そんな理知を巡らせた結果、キングフェニクスが取った行動は……②。
落ちゆく雷塊鉄集巨鳥への魔力供給を止めた上での、全力の回避行動をとる。
「ぐるぐるぅぅぅきんぐぅっっ!!」
一心不乱に鉤爪を空間に食い込ませ、キングフェニクスは空を駆けた。
一歩でも遠く、力の限りに距離を取れ。
そんな直感に従い、そして――。
「Attack judgment……、miss」
キングフェニクスが立っていた空間を穿った槍が、込められていた性能を発揮した。
周囲一帯、360度へ叩きつけられたのは、『負荷』『固定』『移動』『飛躍』の相反する暴風雨。
その効果範囲は穿たれた槍を中心にした30mの球形、そこに入ってしまった雷塊鉄集巨鳥は、ひしゃげ、歪み、擦り減り、ねじ切れる。
『負荷』と『固定』の効果により空間を満たす空気抵抗値が引き上げられ、それに擦りつけるように、強制的な移動が繰り返された結果だ。
「ぐるぐるぅ……」
思わず漏れ出た鳴き声は、その状況を的確に表していた。
キングフェニクスの奥義である雷塊鉄集巨鳥は、まさにグルグルと掻き混ぜられたかのようにバラバラになり――、崩壊。
粉々になった勝機、それを掻き集めるべく、キングフェニクスは声高らかに鳴く。
「《陽極展開翼!!》」
残り少ない魔力を奮い立たせ、両翼に纏うプラスの電荷を最大化。
バチバチと迸る雷光によって、空気に混じった細かな金属粒子が再び集結する。
僅かな目論みと、多大な偶然によって出来あがったのは、キングフェニクスを中心とした銀色の不死鳥。
翼、くちばし、鉤爪と蹴り爪、長尾、それらのみを創り上げたその姿は、竜族が得意とする魔法陣での肢体召喚に近しい。
「ぐるぐるぅ、きんぐぅぅうー!!」
自惚れるなよ、死にぞこないが!!
そんな意味を込めた咆哮を発しながら、キングフェニクスは巨大な翼を広げた。
周囲一帯のマイナスの電荷を体と結びつけ、強力な引力を発生。
己自身を超電磁刃砲と化し、瞬きの間に駆け抜ける。
「《Battle Process Reselect……、clear》」
今度は左腕を前に突き出したチェルブクリーヴは、両方の掌に光りを灯し始めた。
音を置き去りにして迫りくる雷光、それを視認する事はできても、迎撃する事は難しい。
単純に体の性能が追い付かないというのもある。
だが、仮に鍛えた肉体を持っていたとしても、それを完全に処理する為の戦闘知識が欠落している場合が殆どだからだ。
だが、その法則は今回には当てはまらない。
なぜなら……、チェルブクリーヴが手に入れている性能と戦闘知識は、幾度となく世界終焉に関与してきた『タヌキ帝王ソドム』と、『天使と悪魔シリーズを装備した完全武装・エゼキエル』のものだ。
「きんっ……っ!?」
「Lock-on」
キングフェニクスが『死にぞこない』と称したのは、その機体を構成している物質の殆どが、天穹空母の由来であると見抜いたからだ。
この大陸で手に入る金属である以上、絶対的な硬度を誇る神性金属では無い。
己の攻撃力で十分に貫通できると理解したからこそ、キングフェニクスは雷光を纏って貫こうとしたのだ。
だが、それこそが誤算だった。
チェルブクリーヴには、少ないながらも神性金属が使われている。
心臓部で稼働するのは天使シリーズの一つ、『天使の星杯』。
そして、たった一つでも神性金属性の道具があるのならば、全ての金属は神性金属と同等の性能を得ることになる。
キングフェニクスが纏う銀色のくちばしが、チェルブクルーヴの左腕によって受け止められた。
バチバチを激しい火花が散るも……、『貫通無効』『拘束』『確定』『歪曲』『反動強化』の効果により、全てが費えて霧散する。
「ぐぅっ……!!」
「creationWeapon=Positron cannon」
纏っていた銀色の不死鳥すら失ったキングフェニクス、その視線の先にあるチェルブクリーヴの右腕が輝いた。
そこに宿るは、レジェンダリアの魔導銃に、魔王の脊椎尾と超電磁刃砲を融合させた武器。
雷塊鉄集巨鳥は剣や槍の集合体。
そして、それらが発揮した超電磁刃砲は既にメルテッサに掌握されていて。
そうして創られた決死のエネルギー砲は眩い光を溢れさせ――。
「ぐるぐる……、きんぐぅ……」
ここまでか。とキングフェニクスが小さく鳴いた。
思えば、幸運な生涯だったと振り返る。
眷皇種に選ばれた事こそ実力だったが、多くの絶対的強者……、白銀比や天王竜、ソドムなどと出会って生きている。
それも、ただ許されただけでは無く、友好を築いた者さえいたのだ。
そして、もう少し時が立てば、人間の英雄とも友好を築けたかもしれない。
ユニクルフィンは勿論の事、ワルトナ、リリンサ、そして……レジェリクエ。
その将来を見る事ができない事だけが、ちょっとだけ、名残惜しく感じた。
「ぐるぐるきんぐー!」
せめて最後は声高らかに。
私こそが、鳶色鳥の王だ。
そんな想いを込めた鳴き声は、……後ろから掻き消された。
「お前は死んだら死ぬのだ。簡単に諦めてはならんぞ、盟友よ」
「ぐる、ぐるぅ、きん……!」
漆黒の腕に抱き抱えられ、キングフェニクスは上を見上げる。
その瞳が捉えしは――、希望を繋ぐ冥王竜。
「欠片も残さず喰らい尽くせ、《悪喰=イーター》」
そして、平均的に冷ややかな声によって、陽電子収束砲は食い止められた。
出現した赤黒い球体はエネルギーを余さず吸い込み、バギッバギッと咀嚼音を奏でている。
「大丈夫?フェニク」
「キングな鳥さん、お助けします!」
「やれやれ、ゲロ鳥空中大決戦ですら酷いってのに。なんだこれ、混沌かな?」
「そうね、技術革新はいつだって混沌としているものよ」
「革新どころか、革命しまくってレボリューションしてんだろ」
「きゅあー」
嬉々として交わされる言葉。
事実、そこにいる者達は親しい。
なぜなら、青い髪の少女を中心としたこの集団は、この大陸の諸悪の根源。
後の世に七つの大罪などと揶揄される……心無き魔人達の統括者が集結したのだ。
「……ん、強そう。私達の本気をぶつけるのに最適だと思う!」
皆様こんばんわ(こんにちは)、青色の鮫です!
なんと本日の更新で『777話』ッ!!
そして、文字数400万字、ブックマーク1100件、総合評価2900pt突破ッッッです!!
これもずっと読み続けてくれる皆様のおかげです。
特に、評価ポイントをくれた方、感想やレビューを書いてくださった方、誤字報告をしてくれる方の応援は何よりも嬉しいものであります。
第10章、心無き魔人達の統括者VS新たなる魔導巨人。
そして、主人公ユニクの戦い。
魂の限りに執筆しますので、応援の程、よろしくお願いします!!




