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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第166話「天穹の破壊者①」

「《局地収斂雷過グルグルキングー!!》」



 天空にて相対した、二匹のゲロ鳥が睨み合う。

 そして、無言に徹する天穹空母を見据え、キングフェニクスは低く唸るような声で鳴いた。


 それは周囲の物質にマイナスの電荷を、自分自身にプラスの電荷を纏う事で引力を発生させる大規模殲滅魔法。

 だが、地上で冒険者相手に使用した時とは比べ物にならない規模の……、眷皇種時代に超越者と戦った時と同じ全力での発動だ。



「ぐるぐる……きんぐぅー!」



 大気中には、プラスとマイナス両方の電荷が無数に存在している。

 それらは周囲の環境によって増減し、おおよそ、人間が心地よいと感じる森林などの環境ではマイナスの電荷が多いとされている。


 ただしそれは、ほんの少しだけ正負のバランスが崩れた場合の話だ。

 現在の様に、空気中の電荷のほぼ全てがマイナスになるなど、自然現象では起こりえない。


 局地収斂雷過により、キングフェニクスを中心にした周囲2kmに存在するプラスの電荷が縮退を起こした。

 その向かう先に居るのは、輝かしい光を帯びたキングフェニクス。

 凝縮されたプラスの電荷がプラズマボールを形成し、発光現象を発生させたのだ。



「《陽極展開翼グルグルキングー!!》」



 そうして出来あがった雷光球が、キングフェニクスの鳴き声と共に羽根開く。

 己の羽根を媒介として、掻き集めた電荷を変電処理。

 巨大な二対の翼を創り上げ、両翼の先端に装備する。

 こうして、崩壊鳥・アヴァートジグザー時代と同等の戦闘力を得たのだ。



「ぐるぐる……ぐるげぇ!」



 ばさり。と一度羽ばたいただけで、数十の白電が舞い散り奔る。

 並みの生物ならば触れるどころか、近づくだけで即死。

 数億ボルトにも上る超超高電圧は、瞬時に肉体の水分の全てを蒸発させるほどのジュール熱を発生させている。


 だが、キングフェニクスが欲したのは熱による破壊ではない。

 高電圧を纏う事で翼を電磁石化し、金属の塊である天穹空母の動きを阻害しようと思ったのだ。



「ぐるぐるっ、きんぐぅー!」



 眼前にある天穹空母―GR・GR・GG―が僅かに軋みを上げた。

 その船体のプラス電荷を奪い、キングフェニクス自身を鉄を引き寄せる電磁石と化す事で、互いに引き寄せあうバトルフィールドを構築。

 そして、狙い通りのバッファを成功させたキングフェニクスは油断することなく、鷹の目の様な視線を向けている。



 私の知る天穹空母の最大航行スピードは、マッハ2に届いていない。

 逃げられた所で余裕で追い付けるが……、そもそも、逃げるなどと言う無様を、その姿で晒すなど有ってはならぬ。



 そんな意味を込めた鳴き声と共に、キングフェニクスは空を翔けた。



「《稲妻審撃グルグルキングー!!》」



 自然界における雷は、一秒間に30万kmの距離を進む。

 キングフェニクスが発動したのは、それと同等の性質を得る大規模殲滅魔法。

 発動より5秒間、物理法則限界の速度を得る最高位バッファ魔法だ。


 天穹空母までの距離、目視概算……、おおよそ750m。


 魔法発動より、1秒。マッハ3にて航空を開始。

 魔法発動より、1・66秒。天穹空母船首15m地点に到着。



「《至極電極蹴爪グルグルキングー!!》」



 魔法発動より、2・38秒。両足の裏側に光りの蹴り爪を形成。

 魔法発動より、3・21秒。船体に切迫。

 魔法発動より、4・31秒。切迫終了。

 魔法発動より、5・00秒。効果終了。



 たった5秒の時間を使い、天穹空母の船首から船尾に向かって巨大な裂撃が加えられた。

 それは、キングフェニクスの脚に出現した3mにも及ぶ巨大な蹴り爪によるもの。

 全長500mもの巨体に穿たれた同じ長さの裂傷は、大陸の歴史上でも類を見ない一撃だ。



「ぐるきんっ!?」



 だが、天穹空母は僅かにも体勢を崩さなかった。

 幾つものバッファを重ねがけした攻撃で揺るぎもしなかった事実に、キングフェニクスは驚愕の鳴き声を上げるしかない。


 付けられた傷は天穹空母の構造上で最も大切な『熱気球部分』を大きく裂いている。

 本来ならば勢いよく空気が抜け出し、航空不能に陥る。

 そうしてバランスを崩した所を準備していた飽和攻撃で仕留めるという、キングフェニクスの狙いが空を切ったのだ。



「ぐる……、きんぐっ!?」



 振り返りながら天穹空母の状態を確認し、再び、驚愕の声を上げた。

 ブラックパールの様な瞳に、想定範囲外の光景が映ったからだ。


 キングフェニクスは、天穹空母の性能の全てを熟知している。

 カミナが書いた設計図を読み込み、レジェリクエと共に建造中の船体を何度も視察。

 取り付けられた兵装どころか、内装、外装の意匠すら完全に把握しているのだ。


 そんなキングフェニクスは、天穹空母の外装プレートに浮かび上がった魔法陣を見て目を細めた。

 防御壁の役割のみを与えられているはずのそれが、どう見ても大規模殲滅魔法の魔法陣を描いている。



「ぐっぐるっうぅ!」



 光りの翼を無理やりに翻し、発している磁力を上方向に誘導する。

 そうして作り上げた上昇気流、その軌跡を塗り潰す様に、万にも及ぶ氷の槍が空間を埋め尽くした。


 船体の右側全てを彩った魔法陣からの、一斉掃射。

 人間どころか、並みの皇種ですら魔力が足りなくなるほどの広範囲攻撃に、キングフェニクスはぐるぐるぅ……と喉を鳴らした。



「ぐるぅ!」



 飛んできた氷の槍で作った、氷の防御壁。

 キングフェニクスはそれに隠れながら空を翔け、高高度から天穹空母の全容を見下ろした。



 私が知っている天穹空母とはまるで違うようだ。

 破損していない外装は本来の5分の1程度、その他は……魔法物質による代替か。


 移動式本陣として考案されている天穹空母には、魔導銃を始めとする道具の整備室が備わっている。

 そしてそれらは、工員たちが日常的に使用してきた道具だ。


 天穹空母を建造した道具の性能を行使すれば、自己修復が可能なはず。

 だが、メルテッサはそれをせず、不安定な魔法物質のままにしている?

 材料が無い……?いや、神性金属などの特別な物は使用されていない。

 集めることは可能のはずだが……?



「ぐるぐる……?」



 なにかある。そんな意味を込めた呟きを空気に混ぜ込みながら、キングフェニクスは再び稲妻審撃を発動した。

 今度は表面を切り裂くのではなく、船体中央動力部……天穹空母の心臓を狙う。



「《雷霆回路針グルグルキングー!》」



 巨大な翼を螺旋に束ねて作るは、全長7mのスクリュードリル。

 そうして放たれたマッハ3の光撃は、天から打ち降ろされた不可避の鉄槌。

 熱気球部を貫通し、船体中央の動力機関部へと到達せんと迫り――。



「ぐるげっ!?」



 確かに、キングフェニクスは天穹空母の動力機関部を貫通し、船外へと飛び出した。

 纏った数億ボルトの電圧で周囲の機械を焼く尽くし、漏れ出た電流で回路内のメモリーすらも完全に消去。

 電子機器としての性能を完全に破壊した。


 だが、それは無価値な一撃だった。



「ぐるぐる……!ぐるげぇ……」



 キングフェニクスが通り抜けた動力機関部は、破壊するまでもなく既に壊れていた。

 魔法によって最低限の動きはしていたものの、数千発の大規模殲滅魔法を発せる程の出力を発していなかったのだ。


 物質主上の能力による復元インストールは、過去の性能を超える事が出来ない。

 そもそも、天穹空母の動力は船体を動かす為だけに使用されるものであり、魔法の発動はレジェリクエとテトラフィーアの魔力依存。

 先程の氷の大規模殲滅魔法の乱射など、最初から起こりえない異常だったと、キングフェニクスは気が付いたのだ。


 そして……、動力機関部の奥、レジェリクエ達が指揮を執る指令室があるはず場所に、キングフェニクスが知らない物体があるのが見えた。

 それは、様々な工具や工作機械に囲まれた『巨大な人間の上半身の様なもの』。

 天井から吊るされているソレからは何本もの管が伸び、鳥肌が立つような濃密な魔力が流れ出している。



「ぐるぐるぐるぅ……?」



 なんだあれは?

 だが……、天穹空母の中身はまるで別のモノだという事は分かった。


 希望を費やす冥王竜の攻撃を何度も受けた事により、天穹空母の本来の機構は、ほぼ失われていた。

 最低限の修理しか施されていないのは、修理をする為の道具の製造から始めているからか?


 この機を逃せば、出来あがった工具によって船体は一気に修復されるだろう。

 ざっと見繕って、制限時間は30分といった所。

 当初の予定通り、私の最大奥義を以て殲滅し、一片の欠片も残さず微塵に破壊するのが最善手のようだ。



 そんな意味を込めて、キングフェニクスは高らかに鳴いた。


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― 新着の感想 ―
[一言] GR・GR・GGって普通にみる分には格好いいけど、ぐるぐるげっげー!の略だと知ると……ぐるぐる、きんぐぅー!な感じだ。
2021/10/19 17:50 退会済み
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