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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第164話「錆鉄塔の対峙」

「……お前がメルテッサだな?」



 錆びた鉄塔を登り切り、最上部の開けた場所に出た。

 そこにいたのは、唯一人。

 俺の姿を見ても動揺することなく、すべて願い通りだとでも言わんばかりに、静かに手すりの上に座っている。



「へぇ……」



 小さく吐息を漏らした少女が、俺をまっすぐに見つめ返す。

 薄紫色の紙、薄紺色の瞳。

 一見してラベンダーを想い浮かばせるような姿は、こんにゃく姫とは比べ物にならないほどに可憐。

 無暗に触れれば、崩れて散ってしまうだろう。

 そんな感想を抱かせた彼女は、にぃ……と、指導聖母っぽく笑った。



「そうだよ。ぼくがメルテッサだ」

「おう、良かった。此処まで来て人違いだなんて言われた日にゃ、大魔王共に何をされるか分かったもんじゃないからな!」



 俺がここに来た理由は、メルテッサを倒し、戦争を終わらせる為だ。

 レジェンダリアから仕掛けているとはいえ、行っているのは人の命を掛けた戦争。

 いつまでも続けることはできないし、メルテッサを倒せば終わるというのなら、俺は進んで剣を抜く。


 だが、和解で済むのなら、それに越したことは無い。

 甘い考えだなんて言われるかもしれないが……、俺は俺の信念に従ってレジェンダリアを勝利に導く。



「抜き身の神殺しを見せながら言うのは気が引けるが……、ここら辺で終いにしないか?」

「なにを?」


「戦争だよ。俺達がどんな力を持っているのかは、そこからよく見えただろ?」



 チラリと横目を向けた先にあるのは、見渡す限りのチェスボード。

 神殺しの力を理解している俺ですら囲碁に現実逃避したくなる暴虐は、さぞかし驚いただろう。



「戦争ねぇ……。ひとつ、ぼくからもいいかい?」

「ん?いいぞ」


「戦争にしたいんだったら、もっと真面目にやれ」



 あ、普通に怒られた。

 どうやら、大魔王チェスはお気に召さなかったらしい。



「どんな反撃を仕掛けてくるのかと楽しみに待ってたら……、リリンサ一人で帝王枢機を真っ二つにするわ、遠隔で自動操縦にしたら粉微塵に擦り潰されるわ、いつの間にかセフィナが天使シリーズを着ているわ、しれっと皇種が参戦してるわ、挙句の果てに、戦場全てを爆心地に変えただと?小説よりもファンタジーするんじゃないよ、こんの魔王共!」



 ……可憐なラベンダーかな?とか思っていたら、かなりの長文でダメだしされた。

 流石はワルトと同じ指導聖母。

 大変に口が発達していらっしゃる。



「なんていうか。すまん!としか言いようがねぇ」

「仲間にすらそんな態度取られんのかよ。魔王共の頭はどーなってんだ」


「見えない所はもっとすげぇぞ」

「いっそのこと本にして出版したら?買ってやるよ」


「ワルトに伝えておくぜ!で、ちょいちょい気になる情報が出てきたんだが……、リリンが帝王枢機を真っ二つにしたって何?」

「そのままの意味だけど。魔王の尻尾で爆裂両断」


「……滅茶苦茶、強化、されてるだとぉ……」



 リリンの大魔王尻尾に装填されている魔法は、大半が雷人王の掌だ。

 大規模殲滅魔法ではある物の、帝王枢機の装甲を抜くには破壊力が足りていない。


 なのに、アップルルーンを真っ二つにできた、と。

 超魔王尻尾 VS 覚醒神殺しの弓。

 その間に立つ、俺。



「……粉微塵、ってのは?」

「悪喰=イーターっていう馬鹿みたいに巨大な切削機?みたいなのに落されて、文字通りの意味ですり潰された」


「……あっっ」



 た、タヌキの権能を手に入れてる、だとぉ……。


 記憶を取り戻した今、クソタヌキの力の根幹にあるのが悪喰=イーターという事も思い出している。

 幼い俺を何度も何度も何度も何度も何度も絶望に叩き落としたそれは、タヌキの皇種・那由他から与えられし権能だとクソタヌキが自慢していやがった。


 というかセフィナも使って来たし、ゴモラが与えた……って事だよな?

 まさか、カミジャナイ?タヌキと顔見知りって事は無いよな?な?



「リリンサも大概に問題だが、あのチェスボードはなんなんだ?人類に対する当て付けか?」

「そっちは単純にお前対策だな。魔道具の性能をコピーできるんだろ?」



 迫りくるタヌキ汚染に震えていても仕方が無いので、メルテッサの話に乗っかった。

 俺達の行動をどの程度把握しているのかも含め、探りを入れておきたい。



「あぁ、魔道具を戦場から消してしまおうって腹つもりなんだね」

「参照元の魔道具が無ければ、その神の因子も効果半減だろ?」


「確かに魔道具がなけりゃ、何の役にも立たないね」



 今のメルテッサの外見は、ぱっと見た限りでは非武装だ。


 だが、グラムを覚醒させている俺は物質の破壊値数が見えている。

 そして、着ている服、指輪、靴、ペンダントに至るまで、全ての破壊値数が高水準で一致。

 メルテッサが身に付けている物の全ては、魔王シリーズと同等以上の魔道具で統一されている。



「随分とおめかししてるんだな?」

「ぼくはこれでもお姫様なんでね、ドレスコートと言ってくれたまえ」



 ワルトの指導聖母の礼服と同じものを翻し、メルテッサが笑った。

 良く見れば凝ったデザインだが、ありえないほど違和感が無く、記憶に残りづらい。

 認識阻害の効果があるのは間違いねぇ。



「なるほど、こりゃレジィでも苦労する訳だ」

「なんだい、唐突に」


「神殺しを覚醒させるなどして、世界の理を超越できていないと認識阻害を見抜けない。お前が仕掛けている初見殺しが効いちまうわけだ」

「逆に、キミには効かないのかい?」


「もう効かねぇよ」



 昨日までの俺なら、メルテッサの装備の正体を見破れずに罠に掛ったかもしれない。

 だが、この程度の認識阻害は蟲に比べたら低次元だ。


 ……これに気が付けたのも、レラさんと戦って記憶を取り戻したからか。

 今度会ったら、本気でお礼をしないとな。



「つーことで、お前の方が圧倒的に不利な訳だ。一度しか言わないぞ、降参しろ」

「く、っくく。それを言われたのは二度目だね」


「レジィも言ってたのか?」

「そうだとも。そうして余裕ぶった態度をとった挙句に殺されたんだから、こんなに愉快な事は無い」


「……なに?」



 メルテッサは手すりから飛び降り、足元の赤い水溜りを踏みしめた。

 酷く粘り気があるそれは、どうみても人間の血液だ。



「そういえば、手紙には死んだとは書いてなかったね?」

「ん、内容を把握してるんだな?」


「白紙の紙に手紙の性能をコピーすればあら不思議。偽造文書の出来上がりってね」



 俺が手紙を読んで受けた印象は、レジェリクエ女王陛下の敗北、そして、生存だ。


 最初に来た敗北の報には深刻さが有ったのに対し、二通目の現状説明では一切触れていない。

 俺を動揺させない為にワザと情報を抜いた……ってよりも、手紙をメルテッサに読ませて混乱を狙っている気がする。


 ってことは、レジィ陛下の安否はメルテッサが確認できない所にある?

 明言するのは避けつつ、情報を探った方が良さそうだ。



「ぼくは背後から脊椎と気管支を一突きした。即死はしないが致命傷だ」

「心無き魔人達の統括者には医者がいる。死んでないなら助かるはずだぞ?」


「いや、計測していた生命情報バイタルが停止した。キミらの女王はぼくに殺されたんだ」



 メルテッサには揺らぎが無い。

 そして、死んだと確信している口ぶりに添えられているのは、喪に伏す人の表情だ。

 殺すつもりで攻撃しておきながら、一定以上の礼節を抱いている?



「そうか。レジィ陛下は殺されたのか」

「ぼくがその仇だ。遊んでいる場合じゃないって事は理解できたかな?」


「仇だってんなら、手加減はできねぇな」



 そう、本当に殺されたというのなら、手加減している場合じゃない。

 だが、レジィ陛下は生きている。


 レラさんは言っていた。


『レジィは1%側……、英雄を目指すと宣言した。だから、この戦いは最後までレジィの判断で終わらせてあげたいんだ。例えそれが、敗北の運命だったとしても』


 敗北の運命だったとしても。

 その言葉では勝敗が決まっていないように聞こえる。


 女王であるレジィ陛下が死んでいるのなら、この戦争は敗北だ。

 それがまだ不確定であり、俺がメルテッサを倒す事で逆転するというのなら……。

 瀕死の重傷を負ったレジィは、レラさんが保護していることになる。



「メルテッサ、戦いを避ける事は出来ねぇ。そういう事で良いんだよな?」

「そうだとも。僕はキミと戦うのを楽しみにしている。大人しくしていたのもその為さ」


「ったく、指導聖母は本当に口が減らねぇな。……殺しはしねぇ。だが、相応の覚悟はして貰うぞ」


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