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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第163話「開戦の合図」

「ワルト、すげぇえええええええええ!?!?」



 横から乱入したニセタヌキに囲碁を一手で逆転されるというカツテナイ敗北を喫した俺は、真面目に戦場を観察する事にした。

 そして目に映る、逃げ惑うブルファム兵と、嬉々として暴虐の限りを尽くす大魔王シスターズ。

 尻尾から繰り出されるレーザービームですら酷かったのに、白と黒の駄犬に騎乗してしまっては、もう、目も当てられない。


 しょうがないので、逃げ惑うブルファム兵の中に強者が隠れていないか見ていた訳だが……。

 ははっ、こっちはもっとすっげぇ事が起こったぜ!



「リリンとセフィナが1時間以上かけた戦果を一瞬で、か」

「ぐるげるきんぐっ!」


「英雄見習い・ラルラーヴァーが実力を隠しているのは分かってたが……、これが今のお前の実力なんだな、ワルト」



 思い出の中のワルトは、本当にただ小さいだけの女の子だ。

 得意な事は何もなく、俺や親父に比べて、いや、同年代の普通の子と比べても見劣りしてしまう存在だった。


 だが、今のワルトは違う。

 先程の弓撃は神殺しによるものに間違いなく、その威力もグラムやレーヴァテインに劣るものではない。

 そして何より、使用している戦術の上手さが俺やリリンよりも群を抜いている。


 一撃で戦場を白黒に塗り潰したように見えた光景も、実際は念入りに準備された作戦の上に成り立ったものだ。

 爆発の直前に見えた囲碁盤、その交点には最初から矢が刺さっていた。

 恐らく、一気に盤面を染める為の細工を先に施していたんだろう。


 無表情に頷くしかしかなったお前が色んな事を考え、こんな大魔王な策謀を平然と出来るようになったんだな。

 本当に凄いぞ。ワルト。

 積み重ねてきたであろうその努力を、後でじっくり聞かせてくれ。



「さてと。《超重力軌道ガルシステム、活性化》」



 俺が予め仕掛けていた準備とは、戦場のいたる所に重力特異点を撃ちこみ、論理を無視した高速移動を実現する事だ。


 自分の体の中に作った引力を使う事は勿論、メルテッサの体内に存在する鉄分に斥力ができる様に調整。

 バッファとアンチバッファの両方を実現した俺専用のフィールドこそ、親父との訓練で閃いた最高の戦術だ。


 ……ついさっきまでは。



「……なるほど。俺が作っておいた重力特異点の殆どは土の下か」



 活性化させた重力特異点の現状を垣間見て、眉間に皺を寄せる。

 リリンとワルトの暴虐を受けた地上は蹂躙され、土ごと掻き混ぜられた。

 その結果、俺が仕込んでいた重力特異点の大半が土に埋まり、効果が不安定になってしまったのだ。


 これはどうしようもない不可抗力なのは分かっているんだが……。

 はっちゃけ過ぎだぞ。大魔王共。



「しょうがねぇ、もう一回仕掛けるか《超重力軌道》」



 同じ戦闘準備を二回する……とは思わない。

 なぜなら、さっき仕掛けていた物よりも、遥かに効果が高くなるからだ。


 リリンとワルトが作ってくれたチェスボードは、1辺が15mに設定された正方形であり、細かな地面の凹凸もすべて取り除かれている。

 一定間隔に印が付けられた障害物の無い大地。

 これほど、重力特異点を設置しやすい場所はない。



「ちらっと囲碁盤を見せたのも、交点に重力特異点を打てって事だよな?その案、採用だぜ、ワルト!」



 左腕のガントレットに魔力を流し、掌に惑星重力制御の結晶を作る。

 そしてそれをグラムの刀身に翳して移動させ、力のままに振りかざした。


 絶対破壊の力により空気抵抗を破壊した結晶が、引力と斥力を推進力にして飛んでいく。

 一度の素振りで数百か所に重力特異点を埋め込む事に成功。

 それを何度か繰り返し、着々と準備が進む。



「ふぅ、これでよし……っと!」

「ぐるぐるぅ、きん、ぐぅー!」



 時は満ちた、さぁ、最後の戦いを始めよう!

 ……と言わんばかりに、キングフェニクスが高らかに鳴いた。

 囲碁で心を通わせた結果、言葉の意味が分かるようになった気がする。



「ボケ倒すのもこれくらいにして……、俺の出番だな」



 俺とキングフェニクスが見上げた空は幾何学模様に罅割れ、虹色のステンドグラスと化している。

 これはテトラフィーア大臣が指定した、俺の戦闘開始の合図だ。


 今までの伝令は手紙で来たのに対し、最期の合図には魔法を使用した。

 それはメルテッサに指示書の偽造をさせない為。

 大した情報を乗せていない簡素な文面だったのも、情報漏洩に対する備えだ。



「ん?模様がはっきりしてきたな」



 ステンドグラスのカラフルな図柄が示すは、七つの紋章。

 リリンの紋章である『ハンドベル』、ワルトの紋章である『天秤』、他にも、ゲロ鳥、銃、ドラゴン、注射針、そして、タヌキ。

 それぞれが心無き魔人達の統括者を示すカッコイイ紋章が大地を照らし……、俺の紋章をタヌキにすんな。



「さて、俺はあっちの塔に行くが、お前はどうするんだ?」

「きんぐ!」


「……上?」



 キングフェニクスが向けた視線の先……、ステンドグラスの更に上で、何かの影が浮かび上がった。

 その全長は500m規模。

 とてつもなく巨大な何か……、いや、俺はそれに心当たりがある。



「まさか、お前が天穹空母の相手をするのか?」

「ぐるぐる!」



 俺の問いかけにキングフェニクスは「当たり前だ!」と答えた……っぽい。

 理知の宿る瞳で俺に視線を向け、激励の為に羽根を広げている。



「あの船はお前がモチーフ。奪われたままじゃ納得できないよな」

「ぐるぐるっ」


「……死ぬなよ」

「きんぐぅー!」



 ここは戦場であり、俺達は互いに背中を預け合う軍人だ。

 ならばこそ、余計な語らいなど不要。

 挨拶代わりに翼と拳でハイタッチを交わし、キングフェニクスは天空に向かって走って行った。


 ……。

 …………。

 ………………いや、ちょっと待て。

 普通に流しそうになったが、ゲロ鳥が平然と空を駆けるんじゃねぇ。



「俺も行くか」



 仕切り直しに独り言を呟いて、メルテッサがいる塔を見据える。

 そして、俺も塔から飛び出し、一直線に走り抜けた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] この章に入ってからフェニクが好き過ぎる! [一言] こっからが楽しみだ!
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