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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第152話「敗北運命・破綻会談①」

「――、これが現在判明しているメルテッサの能力ですわ」

「もぐもぐ……、なるほどねぇ。流石に邪神(アルタ・マンユ)様に魅入られただけの事はあるようだ」



 昼食代わりの饅頭を咥えながら、ワルトナはメルテッサの能力を把握した。

 思っていたよりも10倍は悪い状況だが、その表情は曇っていない。



「邪神様って……、唯一神様をそんな風にお呼びしていいんですの?罰が当たりますわよ」

「いやいや、あいつはマジで邪神だから。唯一神だねぇ、唯我独尊だねぇ」


「随分と気安い間柄なんですのね?唯一神様が指導聖母に紛れているとは、お聞きしましたが」

「気安いどころか愉快犯そのものだよ。唯一神・ヤジリはこの戦争を傍観者であり楽しんでいる。メルテッサに肩入れしたのも、物語を複雑にして面白くしてやろうっていう犯行だ」


「……。この世界の行く末が不安になりましたわー」

「本当にロクな事を仕出かさない唯一邪神様の犯行記録は、指導聖母用の史実書に記載されている。あとで貸してあげるから、しっかり読みこんで信仰心を粉砕しな」



 真っ黒な笑みを浮かべつつ額に青筋を立てたワルトナは、唯一神のどうでもいい話を打ち切った。


 確かに、この状況は唯一神が画策した結果だ。

 だが、これ以上の介入は無いと、その唯一神から証言されている。



「僕がセフィナを放っておいた理由は、緊急の用事があるとノウィン様に呼び出されたからだ」

「オレも似たようなもんだ。ワルトナの声で電話が掛って来てよ、すっかり騙されちまったぜ」


「ノウィン様は虚構礼拝堂で頭を抱えていらっしゃったよ。邪神様と一緒に、僕らがメルテッサに騙される様子をご覧になられていてねぇ……」



 ワルトナの声に含まれている感情の半分が怒りで、半分が恐怖なのだとテトラフィーアは聞き取った。

 神への怒りは当然として、もう一つは大聖母への恐怖。

 テトラフィーアは、「神に対する感情と同等の恐怖を抱かせる大聖母の所に、私はお嫁に行こうとしてるんですわねー」と放心しそうになった。



「不幸中の幸いとして、邪神様はこれ以上の干渉はしないと証言した。思ってたよりもメルテッサが能力を使いこなしててビックリ!ごめんねー!ってさ」

「あぁ、唯一神様を愉快だの邪神だのと揶揄するのは、よく考えないで行動なさるからですのね。私の清らかな信仰心を返して下さいまし」



 ワルトナが貸すと言っていた史実書に記載されいるのは、神罰とは名ばかりの『ド天然』。

『なんとなく、ノリでやったら、こうなった』な大災害の記録は、読んだ人を混乱と絶望の淵に叩き落とす禁書だ。



「つーか、ヤジリは指導聖母の仕事をしやしない。アレの存在意義の100%が愉快犯なんだし、邪神で妥当だろう?」

「一応言っておきますが、その邪神はこのやりとりを見ていると思いますわー」


「……。そんな訳で、唯一神・ヤジリ様に唆されたメルテッサが人類を脅かす大災害に成長する可能性がある訳だ。そんな奴に情報不足の状態で挑む事になったレジェに、哀悼の意を」

「笑えない冗談は止めてくださいまし!」


「だが、そのおかげで僕らはメルテッサに勝つ事ができる。……この戦争が終わったら、レジェの小言に付きやってやるさ」



 出来るだけ気分が暗くならないように。

 そんな思惑で行われていたワルトナのブラックジョークを無理やりに笑い、一同は総指揮官テトラフィーアに視線を向けた。



「では、具体的なメルテッサの攻略を致しましょう。まず初めに、通信機を破棄してくださいまし」



 テトラフィーアの戦闘管制システムの基幹となっているのは、心無き魔人達の統括者が持つ携帯電魔だ。

 戦闘用に特化されているものの、通信技術の根本は同じ。

 メルテッサに傍受されている以上、その破棄は戦争勝利の絶対条件だ。



「あぁ、壊さなくても異次元ポケットに収納すれば問題ない。魔法空間の中には干渉できないからね」

「俺はその魔法を使えん。どうすればいい?」


「あぁ、キミは魔法が不得意なんだね、セブンジード。だが、安易に魔道具で代用しないあたり、頭は悪くないようだ」

「俺は情報部隊を率いる軍団長だっつーの。馬鹿で務まる訳がねぇ」



 誰だコイツ……?だが、絶対に魔王の係累に違いねぇ。

 そんな警戒をしているセブンジードは、ワザと口調を雑な物に切り替えて話し、様子を窺っている。


 リリンサと違い、ワルトナの正体を知っている人物はほんの一握りだ。

『心無き魔人達の統括者・戦略破綻』『指導聖母・悪辣』『聖女シンシア』を使い分けている事実が、情報管理の完璧さを物語っている。



「今は私が預かりますわ。アリアのもです」



 通信機を外し終えたセブンジードは、その違和感に気が付いた。

 今まで行動を共にしていたんだから、このタイミングで通信機を外すのはおかしいと思ったのだ。

 そして、ここに来る途中にした作戦会議を思い出し――、それがメルテッサへの攻撃だったのだと理解する。



「へぇ、やるね。テトラフィーア」

「伊達や酔狂で陛下の片腕を名乗っているんじゃありませんの」

「……どういうこと?」



 ずっと饅頭で口が塞がっていたリンサベル姉妹は聞き役に徹していた。

 だが、最後の一個をセフィナに譲ったが故に、リリンサの口が空いている。



「情報過多がメルテッサの弱点って事さ」

「多すぎる情報の全てを理解し、精査するには慣れが必要ですの。突然、能力を強化されたメルテッサは、情報の真偽を見極めることはできないでしょう」

「むぅ、よくわからない……」



 総指揮官であるテトラフィーアの会話こそが、この戦争の状況そのもの。

 それを傍受するのは当然だ。


 そして、テトラフィーアは正偽を織り交ぜた作戦会議をワザと傍受させた。

 メルテッサの物質主上が影響を与えることができない『心理戦』を仕掛ける為に。



「リリン風に言うなら、ラーメンを食べている時に餃子が出てきたらどう思う?」

「嬉しいに決まってる。当たり前」


「じゃあ、チャーハンも出てきたら?」

「なお嬉しい。五目チャーハンだと至高!」


「続いてシュウマイ、ふかひれスープ、エビチリと来て……」

「満漢全席になる?完璧!」


「チョコレートパフェ。それも、ウエハースとかアイスクリームとか乗った豪華な奴」

「……えっ、ちょっと合わないと思う!」


「困るよねぇ?でも、キミは美味しく食べようと考える。そして、ラーメンから意識を手放してしまうんだ」



 食べキャラな二人は、テトラフィーアの仕掛けた策謀を深く深く理解した。

 既に味を知っているラーメンよりも、他の食べ物へ意識が向かうのは経験済みだからだ。



「メルテッサに与えた情報による行動制限は既に終えております。ユニフィン様と交戦する以外の選択肢は準備が必要だと錯覚させましたわ」

「いいね。ローレライがユニを試し、その後で自由に行動させているという事は十分に勝機がある判断したってこと。ユニは対メルテッサの決戦戦力だよ」



 テトラフィーアが行った説明の中には『レジェリクエも、テトラフィーアも、リリンサも、ラルラーヴァーも、物質主上の前では話にならない』という神託も含まれている。

 それは、それぞれの実力を把握しているであろう神のお墨付き。

 そして、その中にユニクルフィンは含まれていない。



「ちょっと待って。ユニクはレジェに呼び出されている、でも、レジェが負けていたという事はっ!?」

「電話を掛けてきたのはメルテッサですわ。でも、ユニフィン様には連絡済みです。今は待機していらっしゃいますので、ご安心くださいまし」


「そうなの?ん、携帯電魔は使えないはず。どうやって?」

「フェニクに伝令書を持って行って貰いましたの」



 なにその、伝書鳩っぽいの。

 ホント利便性高すぎだろ、ゲロ鳥ぃ。


 そんな呟きを飲み込んだワルトナは食べキャラ共にクッキーを与えて封印を施し、本題を切り出した。



「メルテッサは全ての魔道具のパラメーターを把握している。魔道具を装備している限り、その所在を含めた情報を習得され続けるという事ですの」

「ユニの所在もバレている訳だ。だが、メルテッサから仕掛けるのはリスクが有ると思わせている」


「そういうことですの。ユニフィン様の現在の役割はメルテッサを引きつける疑似餌ですわ」

「疑似餌ねぇ……。僕の勘違いじゃ無ければ、キミはユニに熱い想いが有ったはずだが?」


「とても愛おしいですわぁ。あぁ、ユニフィン様ぁー」

「なんか棒読みぃ……」



 ワルトナは指導聖母であり、非常に賢い。

 特に策謀立案能力は高く、ユニクラブカードを持つ人間全てを管理している実績を持つ。

 ……だが、恋の駆け引きは素人だ。



「メルテッサの能力はとても強力ですが、それ故に癖が強いですの。逆手に取ることは出来ますわ」

「情報収拾に特化した世絶の神の因子を持つキミの言葉だ、信憑性があるねぇ」



 回りくどい言い回しをしているワルトナだが、その言葉に含まれている感情は『感服』と『尊敬』だ。

 それを聞きとられている事を理解しているからこそ、自分の格を落とさないように恰好を付けている。



「それはそうとして、メルテッサが魔道具の所在を把握できるなら、ナインアリアはよく隠れられていたね?服だって魔道具だろうに?」

「自分、テトラちゃんの為に恥も外聞も捨てたであります」


「………………。脱げって命令()されたのか。可哀そうに」



 もともとのテトラフィーアはフランベルジュ国姫であり、ナインアリアは中級貴族の娘だ。

 その身分の違いをよく理解している上級貴族出身のセブンジードは、「何で俺の扱いが一番悪いんだろう」と思っている。



「アリアの尊厳の為に言っておきますが、私は全裸を命じていませんわ。ちゃんと天然由来の服を着せましたもの」

「自分、テトラちゃんの為なら声高らかに鳴くでありますよ」

「……天然由来で鳴くだってぇ?アレおかしいな?それって第一級極刑じゃなかったかい?」



 錆鉄塔に向かうナインアリアに渡された服は、ぐるぐるげっげーな羽根。

 ゲロ鳥品評会に出場する際に渡される衣装とは呼べない(魔道具ではない)それを身に纏い、ナインアリアは戦場を駆けたのだ。



「うん、まぁ、僕はそんなアホみたいな恰好で戦場に行くのは嫌なので、別の手段を行使するとしよう」

「あらそうですの?ユニフィン様はゲロ鳥品評会に興味津々でしたのに」


「……。いやいや、僕の戦略の方が優位性は上だから」

「あ。一瞬だけ揺らぎましたわね。分かり易いですわぁ」


「うるさい!つーか、メカゲロ鳥作ったり、ゲロ鳥を戦略兵器に使ったり、ゲロ鳥の服を着せたりするんじゃない!真っ当に戦争しろよ、こんのゲロ鳥フェチ共が!!」


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[良い点] ワルトナがいると思ってること全部代弁して突っ込んでくれるから好きだわぁ。 [一言] 恋の駆け引きは素人w
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