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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第151話「運命の紡ぎ糸」

「……僕のせいだ」



 レジェリクエの落命を知り、ワルトナは深く後悔した。

 どれだけ思考を巡らせて言い訳を考えようとも、それが自分のせいだと答えは出ている。



 誰かに何かを言われるまでもなく、レジェの敗北は僕のせいだ。

 僕が戦争を利用してユニとリリンを鍛えようとしたから、レジェの戦略に狂いが生じた。

 セフィナの暴走を誘発させたのはメルテッサだけど、そもそも、僕が連れて来なければ成立しない。


 戦争に勝利する事だけを目標にして、最初から僕ら全員が協力していたのなら、天穹空母が落とされる事も、メルテッサを取り逃がす事も、戦況をひっくり返される事もなかった。

 東塔に幽閉したメルテッサを僕がきっちり管理して居れば、こんな事にはならなかったんだ。



「……ごめん。ごめんよ、レジェ」

「ワルトナ」


「僕がもっと早く素直になってリリンに謝っていれば、こんな事にならなかった。レジェを傷つけるどころか、触れる事すらなかっただろう。本当に、謝っても謝り切れない……」



 力無く頭を垂れたワルトナから、後悔の涙が落ちた。


 あの子を取り戻そうともがくワルトナは、『死別』の意味を知っている。

 それは本来、取り戻す事が叶わない夢。

 それを叶えようとするのならば、この世界の頂きに君臨する絶対者に挑む必要がある程に、無謀すぎる夢幻なのだ。



「なにもかも、僕が間違っていた……。あぁ、こんなことじゃ、あの子もきっと取り戻せな――」

「大丈夫だよ、ワルト(・・・)



 深く被った帽子の上から、ワルトナの頭が撫でられた。

 ゴシゴシと無遠慮に撫でつけるそれは、記憶の彼方に封印された懐かしき思い出。


 想い焦がれ、憧れ願った感覚に、思わずワルトナは頭をあげる。

 そして、そこにいたのは、心配そうに見つめてくるリリンサだ。



「ワルトナ、心配しなくて良い。レジェは生きてるはず」

「……確証が有るんだね?なぜ、そう思うんだい?」



 リリンサと長い時間を分かち合ったワルトナは、平均的な表情の中の感情を読み取れる。

 一切の迷いなく言い切られた言葉には確かな信憑性があると、僅かに気持ちを軽くした。



「私とユニクは此処に来る前にローレライと会っている」

「……なんだって?」


「正確には、私は澪と、そして、ユニクはローレライと会い、それぞれ訓練を付けて貰った」



 リリンサの証言を聞いた全ての人が、一気に感情を好転させた。

 ローレライの関与の確定。

 そこにある理由を度外視しても、それが吉報なのは語るまでもない。



「とても興味深いお話ですわね。ユニフィン様はなんと仰っておりましたの?」

「ローレライの正体はレラさんだったと。そして、ユニクとの実力差は圧倒的。全く対抗する事が出来ずに、最初は一方的な戦いになった」


「リリンサ様よりも近接戦闘で優れているユニフィン様でさえ?流石は陛下のお姉様ですわ」

「だけど、ユニクはローレライに対抗してみせた。新しいグラムの覚醒体『神界殱酷・グラム=ギニョル』を生み出し、訓練を引き分けに持ち込んだと」



 この場にいる誰もが、ローレライの実力を知らない。

 だが、自分よりも圧倒的に格上だという事は理解している。

 そして、その実力にユニクルフィンが迫ったと聞いて、何人かの頬に朱色が差す。



「ローレライ様が介入した結果、ユニフィン様は新しい力を手に入れたんですのね。ところで、リリンサ様と訓練をされた澪騎士様は何か仰っておりませんでしたか?」

「鏡銀騎士団の指揮権を私に譲渡すると。面倒なのでテトラにあげたいって聞いたら、良いって言ってた」


「あら、それも嬉しいお話ですわ。とても手間が省けますもの」

「ちなみに、ミオ達は私達を探していたとも言っていた。ここで訓練をしておかないと大変な事になるとも」


「……なるほど。ローレライ様はユニフィン様を強化したかったと」

「たぶん、ローレライはレジェの敗北を知っていて、ユニクに訓練を付けた。だから、レーヴァテインが使われたというのなら、それをしたのはローレライ!」



 リリンサが展開した持論は、簡単に崩せてしまえるほどに脆いものだ。

 だが、この場には大陸有数の頭脳達が集結している。

 極めて正確に、そして冷静に状況を分析し終えた彼女達が出した結論は、『レジェリクエの生存』だ。



「戦争を静観すると仰っていたローレライ様がユニフィン様を鍛えたという事は、静観を止めざるを得ない状況に陥った事を知っている」

「……そうだね。なら、ローレライがレジェの敗北を知ったのは確定。そして、ユニが状況を打開できるかを試した」


「えぇ、時系列的に考察すると、陛下の敗北、セフィナと軍団将の交戦はほぼ同時。僅かな時間を開けて、ユニフィン様とローレライ様が訓練を始めています」

「ローレライがレジェの敗北を偶然に知ったのなら、成立しない行動の速さだ。何らかの方法でレジェの戦いを見ていたんだろう」


「観察されていたのなら、ユニフィン様の実力と比べて憂いたとしても不思議じゃありませんわね」

「そして、ローレライが見ていたというのなら、助けられない道理は無い。彼女は魔導師型の英雄だ。肉体の損壊など問題にもならないよ」



 散りばめられていた情報の断片が、高速で組み上げられていく。

 そして、そこに隠されたローレライの真意を読み取ったワルトナとテトラフィーアは、小さく安堵の吐息をついた。



「なるほど……、陛下の存命が確定して一安心です。……が、なぜ、陛下は出て来ないんですの?」

「通常、魔法で傷を癒すのにも限界があるが……、まぁ、英雄の領域に到達するという事は、その限界を超越したという事だからね。なんでもありさ」


「それだと、出て来ないのは不思議では?」

「前から思っていたけど、キミには致命的な欠点がある。感情を聞き分けられるからか、人の気持ちを察するのがとても不得意だ」


「……自覚が有りませんわね」

「いいや、キミは感情の機微に疎い。だから、ローレライとレジェがこれ以上の介入ができない理由を理解できないんだよ」



 ワザとらしく肩を竦ませたワルトナは、これ見よがしに溜め息まで吐いて見せた。

 そのあからさまな当てつけにイラっとしたテトラフィーアだが、これがワルトナの得意なやり口だと気が付いて閉口する。



「いいかい、盤上の『レジェリクエ(クイーン)』は確かに取られた。だが、『戦争(チェス)』そのものが終わった訳じゃない」

「……そういうことですの」


「既に取られたレジェリクエも、両軍に属していないローレライも、既に盤外の駒。これを盤上に戻す事はチェスではルール違反だろう」

「陛下はメルテッサに敗北し、死が確定した(取られた)。だからこそ、同じ盤外の駒であるローレライ様は関与した」


「だからこそ、レジェリクエは戦争チェスに戻れない。それをしてしまうと、『レジェリクエが仕掛けた世界核戦争』でのレジェンダリアの勝利では無くなってしまうからだ」

「陛下達は私たちの勝利と信じ、戦いを降りたんですのね」



 その真意に辿りついたテトラフィーアは、強く拳を握った。

 絶対に勝つと目標を改めたのだ。



 陛下はとても人が悪いですわ。

 自分だけさっさと全力を出し切って、静かな場所から傍観しているなんて。


 はぁ、まったく、いい御身分すぎますわよ。

 私の実力を見せつけて、一度、黙らせた方がいいですわね。



「ワルトナ様、リリンサ様、セフィナ様も、お力をお借りしたく存じます」

「頭を下げるのは僕の方だ。キミの持つ情報が欲しくて堪らない」

「もちろん協力する。とてもいい運動になりそうだし」

「えっと、よく分からないけど、おねーちゃんとワルトナさんの味方をします!」



 それぞれの意思を聞き取り、テトラフィーアは思考を開始した。

 手に入れた武力とメルテッサの実力。

 それらを天秤に掛けながら、正確な現状をまとめ上げていく。



「……リリン」

「ん、どうしたの?」


「さっき庇ってくれただろ?お礼を言っておこうと思ってさ。ありがとう、キミは本当に優しいねぇ」

「……ん、まだ許した訳ではない。勘違いしないで」


「……ちっ、セフィナならこれでころっと騙されるんだけどな」

「私の警戒心は最大値を振り切っている。もう二度と騙されることは無い!!」



 本心と照れ隠しと策謀を混ぜ込んだ会話が終わると、そこには開いた口が残されていた。

 どうしたもんかと思考を巡らせたワルトナは、取りあえず、リリンサと自分の口に饅頭を詰め込んで、無理やり会話を終わらせる。


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