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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第142話「魔神リリンサ VS 機神セフィナ ④」

「むぅぅぅう!!」



 怒り猛る鳴き声をあげたリリンサは、感情のままに尻尾を地面に叩き付けた。

 そんな、あからさまな恫喝をしてセフィナを硬直させつつ、静かに思考を巡らせている。



 むぅ。ワルトナの悪知恵のせいで私の戦略が破綻してしまった。

 セフィナと仲良しになってるのは良い事だけど、後でしっかり苦情を入れておこう。


 さて、近接戦闘特化である魔神の右腕が一瞬でボロボロにされた以上、接近戦は不利。

 それに、私が破壊出来ているのも、ルインズワイズの刃先と、アップルカットシールドの一部だけ。

 エゼキエルは四肢よりも本体の装甲が堅くなる傾向があったし、手足や武器は消耗品として割切られているっぽい?



「……セフィナ」

「ひゃい!」


「確かにおねーちゃんは食べる事が大好き。でも、ちゃんと節度は守っている!決して食べ過ぎなんかでは無い!!」

「そ、そうなの?」


「そう。第一、ご飯の食べ過ぎとはなんなの?という話になるんだけど、セフィナは知ってる?」

「え、えーと、食べ過ぎると、お腹が痛くなっちゃう……?」


「そう!つまり、体調を崩さない限り、食べ過ぎではないということ!!美味しく食べている内は絶対に食べ過ぎとは言わない!!」

「え、あっ、そうなんだ!」



 ……ふふ、これはワルトナやレジェですら言葉を詰まらせた殺し文句(必殺技)

 セフィナの知能では太刀打ちできない!


 余りにも清々しい開き直りにワルトナとレジェリクエを絶句させた決め台詞を吐いて、リリンサは満面のドヤ顔を咲かせた。

 セフィナを取り戻した後で一緒に楽しくご飯を食べるという目標への布石を打ちつつ、思考誘導を続ける。



「さて、ご飯のメニューは後で考えるとして……、とりあえずセフィナを捕まえてしまおう」

「そうなんだ……。美味しく食べられるなら、食べ過ぎじゃないんだ……」



 戦闘の後にはご褒美(ご飯)が待っているという餌をチラつかせながら、リリンサは最短手での勝利を模索し始めた。

 真っ当に戦っても勝てると試算した上で、姉の威厳を見せ付けるべく完全勝利をしようと思ったのだ。



 セフィナは魔神シリーズ、特に尻尾を切る事にこだわっている。

 そして、尻尾を切られたとしても、勝敗に直接的な影響を及ぼす事は無い。

 魔神シリーズの攻撃手段は尻尾だけじゃないし、そもそも、パパと練習した私の最大の武器は魔神シリーズでは無い。


 この戦いでの私の敗北は、意識を奪われること。

 それをセフィナが狙っていない以上、敗北は起こり得ず、いずれは勝てる。


 逆に、私が提示すべきセフィナに勝つ方法は、すべての反撃手段を奪って、敗けを認めさせれば良い。


 セフィナは負けず嫌いだけど、負けを認めない訳じゃない。

 一度負けを認めた上で、対策を考えて挑戦してくる。


 ねぇ、セフィナ。

 取り戻した後なら、何度だって遊んであげられる。

 それこそ、勝つまでだって付き合っても良い。


 だから……、今回はどんな手段(魔王的手法)を使ってでも、勝ちに行く。



「セフィナ。勝負しよう」

「勝負?」


「背中を付けたら負けゲーム。覚えている?」

「ん、覚えてるよ。お布団に背中を付けたら負け!」


「そう。そしてここにお布団は無い。だから地面に背中を付けたら負け。もし、私に勝てたら特別に凄いご褒美……お菓子のお城を食べさせてあげる」

「お菓子のお城なのっ!?」



 リリンサが巡らせた策謀、それは明確な敗北条件の提示だ。


 殺し合いと武術試合、言ってしまえば姉妹喧嘩でさえ、根本的には同じものだ。

 そこには『死別』『採点』『母の仲裁』などの明確な終了条件があり、それを達成する事で闘いが終わりになる。

 ならば、それを提示してしまえばいい。

 もちろん、自分に有利な条件で。


 そんな大魔王な考えの元、リリンサは『背中を付けたら負けゲーム』を仕掛けた。

 魔神の脊椎尾を支えに使うことにより人間離れしたバランス感覚を得ているからこその策謀だ。



「どう?挑戦する?」

「するよっ!だってお菓子のお城だもん!食べ過ぎにならない自信があるもん!!」


「ふふ、じゃあ……、どこからでも掛ってくると良い!!」



 幼いリリンサとセフィナが毎晩、布団の上で暴れまわった遊び。

 それは子供特有の、ルールが曖昧すぎるもの。

 攻撃魔法どころか、他者を効率よく攻撃する方法なんて知らない二人のそれは、本当の意味での姉妹の喧騒。


 押し倒し、くすぐり合い、頬を摘まむなどを思い出させられたセフィナは、持っていたルインズワイズを強く握りしめた。


 新聞紙を丸めた剣で、偉大なる姉を倒す!


 それが幼かった頃のセフィナの基本戦術。

 そうして近接戦闘を強制されたセフィナは、リリンサに向けて一直線に駆けだした。



「さっきの様にはいかないよっ!!」

「へぇ、そうなの?」



 セフィナが翳したルインズワイズには、もう既に刃が付いていない。

 真紅のフレームが有るだけであり、戦刃槍というよりも杖やメイスに近くなっている。


 そして、それは二人の思惑が一致した結果だ。

 セフィナはルインズワイズに『赤色巨星の終わり(クライシス・ベテル)』というランク8の星魔法を付与している。

 特殊な魔法効果が無い代わりに、凄まじい爆風を生じさせるこの魔法は、リリンサを転がすのに最適だと思ったのだ。


 瞬きの間に接近する二人、それぞれの武器が振るわれた。

 最大限の勢いを付け、それぞれの思いを乗せ、相手へ真っ直ぐに進んでいく。



「いっくよぉ!!」

「きて!」



 天高く振り下ろされたルインズワイズと、地を這うように振り上げられた魔神の脊椎尾。

 それらは音速の壁を容易に超え、ソニックブームを伴って突き進み――、刹那。二つの影か重なり、そして、その場で留まった。


 発せられたのは、けたたましい金属音のみ。

 セフィナが意図した有爆は起こっていない。



「えぇっっ!?嘘でしょ!?」

「嘘では無い。これはおねーちゃんの得意技。その名も真剣白刃取り!!」



 単純に振り下ろされただけのルインズワイズに対し、魔神の脊椎尾は明確な対処を狙って行動を起こしていた。

 リリンサは、ドリルの先端部を展開して三本指のアームを作り、ルインズワイズを器用に挟んで止めたのだ。



「お、おねーちゃんって魔導師だよね!?何でそんな事ができるの!!」

「私は剣の勉強もしている。この大陸で一番有名な剣士・剣皇シーラインの弟子でもある!」



 オタク侍ではなく剣皇シーラインと呼んで威厳を行使。

 セフィナの意識をそちらに向けさせ、リリンサは魔神の脊椎尾の回転を起動した。


 そして、尻尾で真剣白刃取りされるとは思っていなかったセフィナは、動揺のあまり手を緩めてしまっていた。

 僅か一瞬の気の緩み。

 それがもたらした結果は、天高く弾き飛ばされたルインズワイズと、それに漆黒の鎖が巻き付いていく光景だ。



「封印せよ、《魔神の黒縄獄(デモン・セカンド)!》」

「させない、対策のやり方をゴモラに教わったもん!!」



 リリンサは再び魔神の能力を発動させ、セフィナは素早く対応した。

 能力が完成した後で対処するのは難しい。

 だが、鎖が巻き付き始めた時点での対処法をしっかり聞いていたセフィナは、今度は対応を間に合わせた。


 それが、リリンサの狙いであるとも知らずに。



「えっへん!おねーちゃんの狙いだってお見通しだもんね!」

「そう?じゃあ何で……、セフィナを守る盾が一枚もないの?《魔神の大叫喚獄(デモン・フォース)凝結せし古生怪魚(ダンクルオステウス)》」



 リリンサの声に従い、魔神の脊椎尾に備わっている魔法出力回路の全てが開く。

 そして、物質を凝結させる怪魚の数千匹群れ、それが50の軍隊を成し、360度を埋め尽くすように放たれた。


 圧倒的な物量に対し、アップルカットシールドは3枚しか無い。

 そして、それが攻撃である以上、自動防御は稼働してしまうのだ。


 全ての怪魚がアップルカットシールドに吸い込まれるまで、おおよそ10秒。

 武器を失い、盾を失い、平常心を失っての10秒は、勝負を付けるには十分な時間だ。



「セフィナ。魔神の本気を見せてあげる!」


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