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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第140話「魔神リリンサ VS 機神セフィナ ②」

「えいっ!!」

「やぁっ!!」



 可愛らしい掛け声と共に振るわれているのは、なだらかな丘を容易に更地へと変える――、カツテナキ暴力。

 漆黒の尾と真紅の斧が交差する度に、けたたましい金属音が響き、その衝撃によって空に七重円の雲が出来あがっている。


 全ての魔王シリーズを装備し完全体となったリリンサの能力は、もはや、人類のそれでは無い。

 黒曜石の様な鎧に覆われた右腕・両足が外部へ与える影響は帝王枢機と遜色なく、きまぐれに放った蹴り一発ですら100mmの鋼鉄を簡単に貫通する。



「セフィナ、大人しく捕まって!」

「やだっ!!」



 だが、リリンサを相手取っている者こそ、正真正銘の帝王枢機。

 その装甲は並みの鋼鉄などとは比べ物にならない神製金属。

 ましてや、リリンサの薙ぎ払いを幾度となく食い止めているアップルカットシールドはこの世界最高峰の強度を持っている。


 アップルルーンを捉えようと迫る魔神の脊椎尾の進路を、アップルカットシールドが塞ぐ。

 最初は避けようとしていたリリンサだが、それに自動防御機能がある事を知ってからは力技での突破を狙っている。

 大振りな薙ぎ払いで盾を吹き飛ばし、無理やりに攻撃を通そうとしているのだ。


 魔神の尻尾と機神の盾、それらが激突した数は既に100回以上。

 だが、どれだけ勢いを付けた衝突であろうとも、特殊効果が無ければ傷つく事は無く。

 生身の人間ならば立っている事すらままならない音の衝撃のみが、延々と撒き散らされている。



「……むぅ、堅い。防御は大切だと教えたのが仇になったかも」

「えっへん!私は堅いんです!柔らかいのは『ほっぺ』と『表情』で十分だからねって、ワルトナさんにも褒められました!」


「セフィナ、それ、たぶん褒められていない」

「えっっ!?」



 リリンサは思い浮かべた情景の中で、口に饅頭を詰め込まれている。

 余計な事を言うな!という合図と共に繰り出される口撃は、おおよそ、褒める振りをした誹謗中傷だったと最近になって気が付いた。

 そんな微笑ましい思い出のオマージュをセフィナとワルトナがしていたと知って、リリンサの表情が僅かに緩む。



「とりあえず、ワルトナ()扱いが良かった事に安心した」

「はい!ワルトナさんはとっても優しくしてくれます!!」



『捕虜になっていたワルトナの扱いが良いもので安心した』というリリンサの呟きに対し、『ワルトナさんは私に優しくしてくれました!』とセフィナは答えた。

 絶妙に噛み合っていない会話も、ツッコミを入れる者がいなければ問題視される事は無い。

 常識人である軍団将はリリンサの命令で帰還させられ、セフィナの保護者であるラグナガルムは既にこの場を去っているからだ。


 ラグナガルムにお願いされた命令は二つ。

 一つは『セフィナを守る』こと。

 そして、もう一つは……、『セフィナとリリンサが何故か戦い始めてしまったら、すぐに僕を呼びに来ておくれ』というものだ。

 成功報酬である『極上ステーキセット』を楽しみにしているラグナガルムは、忠実にご主人(ワルトナ)の命令を遂行している。



「そろそろ体も温まって来た。ちょっと本気出す」

「そうだね!私もやっと慣れてきたとこ!!」



 リリンサが魔神の脊椎尾に搭載された機能を使用せずに鈍器としていたのは、以前の魔王の脊椎尾と使用感が異なっていたからだ。


 魔王シリーズは、もともとは『攻勢眷属・魔王枢機サムエル』という一体の魔導枢機であり、それぞれの能力同士が噛み合うように設計されていた。

 だが、エゼキエルの外部武装に求められたのは、特出した一点突破。

 状況によって能力を使い分けるのが拡張兵装の長所であり、求めた性能の邪魔をする機能は根こそぎ取り払われている。


 そして、カミナによってリメイクされた『召し置く魔神の警醒体』は、七つ同時使用を基礎設計理念とした。

 カミナは、人間であるリリンサが使った時に最高のパフォーマンスを発揮するようにカスタマイズ。

 使用者の体に負担を掛けないように様々な機能を制限した一方、『攻撃』として扱われる動作は以前よりも強化されている。


 だからこそ、リリンサが思い描いた動きと、魔神の脊椎尾の動作に僅かなズレが生じた。

 以前と同じように振るっても速度が出ず、逆に、乱雑に振るった時に思いがけない衝撃が帰ってくるのだ。


 そんな違いを感覚で理解し是正し終えたリリンサは、これからが本番だと不敵に笑って尻尾の先端を唸らせる。



「ドリル尻尾、起動!」

「えっ!?それ回るの!?!?」



 事あるごとに尻尾を回転させていたリリンサだが、その光景をセフィナは知らない。

 リリンサが尻尾を手に入れてすぐにワルトナは温泉卿を出ており、フィートフィルシアで行った暴虐は認識阻害の仮面を被っていた。


 ギュイィィィィン!と高速回転を始めた魔神の脊椎尾を見たセフィナは、小さく「え、なにそれ……」と呟いた。

 大好きなおねーちゃんが魔王のコスプレをしているだけでも文句を言いたかったセフィナは、高速回転する尻尾を見て目を丸くしている。



「おねーちゃん……、そんな尻尾、なにに使うの?」

「……穴を掘ったり、畑を耕したり?」


「あっ、意外と便利そう」

「それと、聞き分けのない妹を転がせる!」


「それはだめだよ!?おねーちゃん!!」



 出会った人物の90%からアホの子と称されるセフィナにツッコミされるという戦慄の光景も、今のリリンサには関係ない。

 なぜなら……、思い焦がれていた妹との触れ合いと、新しいおもちゃを手に入れた高揚感が合わさって、セフィナ以上のアホの子と化している。



「ふふ、クローラードリルが生み出した回転エネルギーは、同等の金属であろうと掘り進める」

「クロ……?良く分からないよ、おねーちゃん」


「このドリルは、セフィナのアップルルーンも簡単に貫通できるということ!」

「そんなの妹に向けないで欲しいなっ!?」



 英雄見習いや真っ黒聖母が全力で肯定するツッコミを無視して、リリンサは動きだした。

 魔神の脊椎尾で大地を削り飛ばしながらの突撃、それは、どんな相手も委縮させる威圧。


 だが……、セフィナの頭の上にいる魔獣は、そのドリル尻尾(ソドムの尻尾)に慣れている。



「ヴィギルーン!」

「えっ、ゴモラ!?」



 触れれば一瞬で粉微塵にされるそれに対し、ゴモラがとった手段は真っ向からの迎撃だった。


 三枚のアップルカットシールドの先端部には、半月状のブレードが付いている。

 ゴモラはそれを三角錐状に連結させ、乱回転。

 そうして擬似的なドリルを作り出し、魔神の脊椎尾を迎え撃ったのだ。



「ん、流石はセフィナ!直ぐに私の真似をしてしまう!」

「今の私じゃないよ!?ゴモラだよ!!」



 高速回転するドリル同士の激突が、鈍器と斧と盾の殴り合いに劣るはずが無い。

 お互いが発した動的エネルギーに巻きこまれた空気が分子崩壊を起こし、無数の瞬雷が空を駆ける。

 それは魔法を宿していない物理現象だが……、遠くの地で振り返った軍団将達は、「総指揮官達、すげぇ魔法使ってんな」と感心した。



「ヴィーギルルン!」

「えっ、気を緩めるなって、まだ何かあるのっ!?」



 衝突したドリル同士は二つとも弾き飛び、この戦いは引き分けに終わる……かと思われた。

 だが、ソドムと壮絶な兄妹喧嘩をしてきたゴモラは、魔神の脊椎尾の嫌らしさを存分に理解している。

 だからこそ、セフィナに警告を飛ばして対応したフリ(・・)をさせようとしているのだ。


 セフィナが座しているのは、帝王枢機の操縦席。

 人間用にカスタマイズされたバイクの様な形をしており、両手で操縦桿を、両足でブースターを操作する仕組みになっている。


 そして……それは擬似操縦(ダミー)

 アップルルーンの操縦はセフィナが行っているのではなく、頭の上で思考を読み取っているゴモラが行っているのだ。



「えっと、えっと、連結解除っ。それと……、」



 この後に何が起こるのかを予想しているゴモラは、セフィナにどうすれば対応できるのかを教えた。


 それでも、セフィナの意思なくアップルルーンを動かしたりしない。

 リンサベル家の守護獣は、数千年も前に受けた恩を返す為に、シアン・リンスウィルの血族を見守っている。

 これが姉妹喧嘩である以上、手を出すのは最低限にするのがゴモラの矜持だ。



「えっと、それと、これ……」

「残念、私の勝ち。もう能力を組み終えてしまった」



 フィィイィィィンというドリルの回転とは異なる駆動を発し、魔神の脊椎尾の胴に赤い光が灯った。

 そして起こるのは、胴体側面の赤いライン内部の魔導規律陣が起動し、 召し置く魔神の警醒体の能力行使。


 七つの魔王シリーズの統合である召し置く魔神の警醒体は、それぞれが持っていた能力を受け継いでいる。


 魔王の首冠デモン・クラウンチョーカー―、『負荷』・『統率』

 魔王の心臓(デモン・センターコア)―、『解析』・『保持』

 魔王の右腕(デモン・ライト)―、『自律行動』・『可変』

 魔王の左腕(デモン・レフト)―、『循環支配』・『増幅』

 魔王の下肢骨格(デモン・ロアボーン)―、『移動』・『固定』

 魔王の脊椎尾(デモン・テール)―、『支援』・『決戦』

 魔王の靭帯翼(デモン・リグメント)―、『飛躍』・『結束』



 これら14個の能力を組み合わせた8つの技が、召し置く魔神の警醒体の本懐。

 リリンサは高揚する気持ちを隠そうともせず、初めて使う技に想いを馳せた。



「いけ、《魔神の黒縄獄(デモンセカンド)》」

「なんか出たよっ!?おねーちゃん!!」



 魔神の尻尾の側面がピシリと軋み、赤い宝珠から黒い鎖が飛び出した。

 それらが向かう先にあるのは転送の魔法陣、そして、ドリルと化していた三枚のアップルカットシールド付近に転移し、その体を巻き付かせる。


魔神の黒縄獄(デモンセカンド)

 接触した対象物を『解析』し、動きを相殺する『負荷』を与えて『統率』し、『結束』の鎖で『固定』する。


 5つの能力を行使した鎖は対象物を捕らえる魔神の拘束具。

 完全に能力が発動してしまえば『固定』によって鎖と対象物そのものの状態が固定され、外部からの干渉を受けなくなる絶対拘束と化す。



「まずは盾三枚を封印した。次は……、その巨大な斧を狙う!」

「むー。そんなのさせないよ!!」



 対処が間に合わなかったセフィナは3枚のアップルカットシールドを失い、形成がリリンサに傾いていく。

 それを挽回するべく、セフィナはルインズワイズに魔力を通した。

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