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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第126話「目標の破壊②」

 

「あぁそうだよ。とっておきの二つ目さ(・・・・)!!《神聖幾何学機構アルカライズ・ジオメトリー》」



 レラさんの瞳に映った魔法規律陣が虹色に輝き、世界の理に従って魔法が顕現した。

 瞬きの間に空間にグリッド線が引かれ、パネルを翻していくかのように景色と常闇が入れ替わって行く。


 出来あがったのは……、いや、恐らく前もって作られていたであろう漆黒の空間に、俺達は転移した。

 360度、全面が黒いガラス状で薄く光を発している。

 そんな、見渡すかぎりに魔法と神殺しの波動が広がる世界に、自然と身震いが起きた。



「ちっ……、ここが第四次元層ワールドフォースか?」

「正解。しかも、ここはカツボウゼイを殺す為に作った特別な場所(狩場)だ。トカゲを苛めた時とは訳が違うのだよ」


「壊すのに苦労しそうなだけは有るってか。……だがまぁ、そっちは別にいい。俺が気になっているのは、抵抗する間もなく引きずり込まれたって所だ」



 神界殱酷・グラム=ギニョル。

 新たな姿であるこの覚醒体は、神の因子を破壊する事で様々な制約から脱却する事が出来る。

 人間として維持する為の限界値……、視覚、聴覚、触覚、嗅覚、聴覚、味覚、などの能力、それが体に負担を掛け過ぎさせない為のリミッターを壊す事が出来るのだ。


 だが、肉体の限界を破壊したはずの俺ですら、魔法の行使スピードに追い付けなかった。

 その速さはリリンの3倍以上。

 詠唱をしないルーンムーン覚醒時と比べても各段に速く、俺の常識では考えられない事だ。



神聖幾何学機構アルカライズ・ジオメトリーって言ったか?その目が悪さをしたんだよな?」

「魔法を発動する場合、魔法次元の扉と一致する鍵……、魔方陣を世界に示して解錠しなければならない。だからこそ、何らかの前準備が必要になる」


「魔法陣が組み込まれた魔道具を使う、もしくは、紙に魔法陣を書くとかだろ」

「そう。さらに、複雑な音を発せる声帯を持つ人間は、魔法名を唱えることで声紋を重ね、魔方陣を空気中に描く事も出来る。これは安易な方法であり準備は不要。ただし、必ず音を発しなければならないという制約があり、別の音が混じるなどの不確定要素がある訳だ」


「なるほど、だから魔法の威力に個人差が出ると」

「一方、おねーさんは瞳の中の虹彩を変化させ、魔法陣を描いている。声帯を震わせるのと同様に前準備の必要がなく、 音を発しないため外部からの影響や制約もない。当然、失敗もしない」


「……つまり?」

「完全状態である魔法をノーリスクで行使できる。神聖幾何学機構アルカライズ・ジオメトリーを持つおねーさんはね、神が作りし魔法次元を手に入れているに等しい。事実上、この世界で最も優れた魔導師なのだよ」



 ……。

 …………。

 ………………この世界で最も優れた魔導師だと?

 レーヴァテイン(世界最高の剣)を覚醒させておいて、それ言う?



「なぁ、一つ良いか?」

「何かなー?」


「あんだけ剣主体の戦いをしていて、なんで今更、魔導師?」

「時系列を考えてねー。レーヴァテインは王になる時に手に入れたもので、王位簒奪を成す為に使った力とは別物だよ」


「……つまり、元々は魔導師だったと?」

「正解!レーヴァテインなんていう最高に面白い玩具を手に入れたから使ってるけど、魔法戦闘の方が得意だよ」


「うん、なんて言うかな……。ずっっっるいッッッ!!!!!」

「にゃははははは!良いね、その顔、最っ高だ!!」



 ここに来て更にパワーアップすんのはズル過ぎんだろッッ!?

 つーか、完全に俺が勝つ流れだっただろうがッ、ちくしょうめぇぇぇッッ!!



「はぁ、はぁ、ちっ。英雄ってのは本当に腹が立つな。どいつもこいつも理不尽の塊みたいな性能しやがって」

「才能だけでいえば、ユルドさんの若い頃よりも上だって言われてるからね」


「若い頃って所が引っ掛るな。ついでに教えてくれ」

「今のユルドさんはおねーさんよりも強いってこと。一目見るだけで絶望するよ?」


「……マジか。温泉郷で会った時はそれ程じゃなかったが」

「今の状態のユニくんなら途方もない力量差が理解できるよ。ちなみに、お師匠はもっとやべーからね」


「あれはクソタヌキと同類だから別枠だ」



 ホント、色んな意味で英雄が酷すぎる。

 俺の中にレラさんのイメージって、『親しみやすい、八方美人系おねーさん』だったんだぞ?

 それなのに過去編で500人を虐殺してるわ、余裕でレベルの限界値を突破してる超越者だわ、大魔王陛下もビックリな特殊能力を持ってるわ、平然と神殺しを覚醒させて殺しに掛かってくるわ、ホントもう、どうしてこうなったッ!?


 というか、もし過去に戻れるのなら、ナユタ村を出発する所の俺をぶん殴って止めたい。

『レラさん、俺は強くなって帰ってくるよ。その時には必ずレラさんの悩み事を聞く。もう二度とそんな顔はさせないからな!』って、馬鹿すぎる。

 その結果、物凄い微妙な顔をされたし……、あっ、涙が出そう。



「……はぁ。もうどうでもいいや。俺の自尊心も破壊するー」

「めっちゃ投げやりじゃん?あれあれ、勝てないって分かった途端にやる気が削がれちゃったのかな?」


「いいや、やる気はあるぞ。そんだけ万能なら、さぞや有益な情報を持っていそうだからな」

「当然の如く知っているとも。ユニくんの過去(今まで)も、そして、未来(これから)も」



 レラさんは魔導規律陣が宿る瞳で笑い、レーヴァテインを構えた。

 真っ直ぐに突き出された刀身に左腕を添え、そこに魔法陣を転写してく。

 三回、瞳の魔法規律陣を切り替えて、何らかの効果を宿し――、ふらり。っと歩み出す。



「魔導師だと名乗っても剣は使うんだな」

「さぁ、どうだろね?これは犯神懐疑・レーヴァテイン。神をも騙す第十の神殺しだ」



 剣で斬り結ぶにしては遠い間合いで、レラさんはレーヴァテインを振るった。

 切っ先が届いていない以上、斬られたのは俺ではない。

 その予測を示すように、ピシッ、っと真っ直ぐに空間が上下に割れ、そこに灼熱で出来たアギトが無数に蠢いた。



「数が多いな」

「触手に慣れてるっぽいしね。そりゃ、5倍は盛るでしょ」



 リリンのぶにょんぶにょんドドゲシャーが持つ触手の数は、大体500本くらいだ。

 その5倍、2500本の灼熱のアギトが一斉に口を開き、俺を喰い殺そうと突撃を仕掛けて来ている。

 しかも、後方に控えている奴は口に中に熱線を溜め、援護射撃の準備中ときた。


 まったく、殺意が高すぎる。



「《熱量破壊ゼロ・ジュール》」



 俺がグラムに求めたのは、熱量という神の因子の破壊だ。


 この世界で観測できる事象には『単位』が与えられ、同一視しないように管理されている。

 圧力、重力、電流値、熱量など、これらの事象は全て神が定めし理であり、世界を構成する因子。

 それらの破壊に特化したグラム=ギニョルは、一方的にかつ完全に破壊する事が出来る。



「処理に10秒も掛らないとは、やるじゃん!」

「剣士としての基本は腕立て、腹筋、スクワット。毎日やってりゃ慣れもするぜ」



 親父との訓練で最初に覚えさせられたこと、それが腕立て・腹筋・スクワットだった。

 それぞれ、攻撃、防御、回避の訓練になると言われて始めたが……、結果、俺の動きは精錬され、グラムが覚醒状態なら超人と呼ぶべき身体能力を手に入れている。


 超越者同士の戦いでは音速では遅すぎる。

 場合によっては光速が飛び交う世界――、あぁ、そうだ。蟲量大数も言っていたじゃねぇか。

『我が輩に攻撃を当てるには、光速を超える必要がある』と。



「《光度破壊カンデラアウト》」



 光の直進速度は約30万キロメートル毎秒。

 俺には途方もない速度という事しか分からないが、要するに、この速度が世界における物理限界速度(リミッター)だ。

 それを破壊したグラムの剣速は、文字通りの意味で、光速を超える。



「ん!《虚実停廃アヴォリションッ!!》」



 剣を右側から振った刹那、視界一面の空間が崩壊した。

 切っ先に触れたかどうかなんて関係ない。

 グラムの剣速が光速を超えた事により、空間の強度が耐えられなくなるからだ。


 砂場を蹴り飛ばしたように粒子が舞い、バチバチと空間が爆ぜる。

 それでも、レラさんは立っている。



「うわ、流石にすっごい威力」

「光速を超えたんだぞ。対応されるとは思っていたが、こうも平然とされるとな」


絶対視束アルゴリュートの方もお忘れなく。……にしても、ユニくんを此処に引きずり込んだおねーさんに感謝して貰いたいものだね」

「そうだな。敵味方諸共が巻き添えなんて洒落にならねぇ」



 親父が大陸を沈ませ掛けた理由も、今なら分かる。

 さっきの技がそうであるように、神の因子を破壊するという事は、その支配下にある物質では抵抗できないことを意味する。

 対抗できるのは、同じく神の因子を超える事と前提として作られている神殺し、もしくは、神の因子を創り出す側の直接的な神の力か。


 人間としての能力を大きく超える世絶の神の因子も、恐らくそれに該当する。

 定められた神の因子以上の性能を肉体に発揮させている以上、そうだとしか思えない。



「段々と目標が見えて来たぜ」

「へぇ……、それはおねーさんに勝つ算段があるって意思表示なのかな?」


「そうだ。俺は蟲量大数と戦えている。絶対に、この程度であるはずが無いんだ」

「カツボウゼイですら蟲量大数の配下、それなのに、おねーさんよりも強いからね」



 過去の俺は、今の俺よりも強い。

 だがそれは、グラムの性能に頼りきった戦い方だ。

 真っ当な剣士としての技量を覚え、身体も成長した今、その知識さえ手に入れば、俺は過去を越えられる。



「思えば、俺には随分と魔法が念入りに掛けられているよな?記憶喪失に始まり、レベルが上がりにくい事、レラさんの正体に疑問を持たなかったのも変な話だ」

「にゃははー。三日に一回くらいのペースだったね。洗脳」


「……なるほど。時々、自分が何をしようとしたのか分からなくなったのはそのせいか。って、今は良い。後で追及するけど置いておく」

「そんで目標だっけ?おねーさんに勝つ事じゃないの?」


「それを成す為に何をするのかって話だよ。俺はグラムと自分自身の『神壊因子』を使って白銀比の権能(アプリコットの魔法)を破壊し、記憶を取り戻す。そして、レラさんを倒して答え合わせだ」


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― 新着の感想 ―
[良い点] いつも楽しく読ませていただいてます! [気になる点] 119話 対象物が多ければ多いほど精細が欠けるはずよ」 →対象物が多ければ多いほど精細さが欠けるはずよ」 [一言] なんだかユニクとロ…
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