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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第124話「目標との邂逅④」

可逆肯定リヴァーシブル・アドゥ。策を尽くせば尽くすほど、その結果が裏返る。今のは斬った対象に嘘をつかせる剣技だよ」

「だから、動きが速くなったのか……」


「妨害の裏返しは推奨、ふむふむ、バッファの効果になったようだね。……で、ユニくんは何してんのさ?」

「っく、結構、痛ぇ……」



 突き出されたレーヴァテインの先端から、俺の血が伝って落ちていく。

 冷徹な声のレラさんは冷めたような表情を浮かべ、その光景を見ているばかりだ。

 どうやら、斬撃を止める為に左腕を差し出したのが気に入らないらしい。



「どうもこうもねぇよ。左腕を使って攻撃を止めただけさ」

「ばっちり刺さってるけど、止めたって言うの、これ?」



 なおのこと冷めた様な……、言ってしまえばドン引きしているレラさんは、レーヴァテインを引き戻そうとして眉をしかめた。

 その白い手に俺の指が掛り、握手をしている様な格好になっていたからだ。


 レーヴァテインは俺の掌を貫通しても勢いが止まらず、レラさんの手元に届く位置に到達してようやく止まった。

 いや、その位置になる様に無理やり押し込んだと言った方が正しい。

 その手を掴んで拘束する為に、こんな無茶をした。



「あぁ、止めたんだ。俺の思い通りにな」

「女性の手を引きたいんなら、もっと綺麗な手でするべきじゃないかな?」



 左腕に付けているガントレットはグラムの副武装であり、惑星重力制御を中心にして作った。

 俺が指定した任意の物体に重力を付与して、引力・斥力を発生させ、様々な戦闘サポートを可能にする。

 だから、目が良くても関係ない。

 そんな力に、こんだけ近づけば動けないだろ?


 レーヴァテインは俺の左側で固定され、レラさんの利き腕は封じた。

 一方、俺の右手は健在で、今もグラムが輝いている。

 さっきは失敗したからな。

 今度こそ、主導権を奪いに行く。



「悪いが、一気に勝たせて貰うぜ」

「へぇ、やってみなよ」



 にやり。っと笑ったレラさんめがけ、グラムを振るった。

 刀身に纏わせている破壊力は既にレラさんの防御魔法と鎧を超えている。

 致命傷を与える気は無いが……、怪我ぐらいは覚悟して貰うぜ。



「《銀河終ーー》」

「《魔法次元乗ディメニスマジック四番目の世界へ(ワールドフォース)》」


「いっ!?この魔法は――っ!!」



 バラバラバラと空中が崩れ始め、漆黒の空間へと移り変わっていく。

 このまま飲み込まれてしまえば、俺はレラさんが作った世界に閉じ込められてしまうだろう。

 そしてそこは……、魔法の発動者であるレラさんが想像し創造した世界だ。


 このまま拘束状態で転移し不利な条件で継戦か、拘束を解いて転移を邪魔するか。

 えぇい、チクショウッ!!

 痛い思いして損したぜッ!!



「《ーー終焉核ッ!!》」

「にゃっはは、離してくれてありがと」



 態勢をねじ曲げて刃を穿ち、空間の崩壊を止める。

 ……が、ドスッっと腹に蹴りを撃ち込まれて吹き飛ばされ、再び、俺とレラさんは相対した。


 魔法次元に飛ばされる事は防いだが、まんまと拘束から逃げられちまったな。

 まったく、このままじゃ割に合わねぇから……、せめてその剣だけでも封印させて貰うぜ。



「《超重力軌道ガル・システム》」

「おっと、これは一本取られたかな」



 再び、周囲を取り囲んでいた白亜の砂礫が動き出した。

 今度こそは役目を果たさんと、レーヴァテインを中心に渦を巻く。

 ガントレットの惑星重力制御は、俺に近づけば近づくほど強くなる。

 だからこそ、俺の血液をたっぷり吸ったレーヴァテインには、この世で最も強い重力場が発生する。



「凝縮しろッ!《悪化する縮退星ディシナレイト・コラプスッ!!》」

「そういう感じか。へぇ、重っ!」



 さっき使った重質超過刃モール・ブレイクは、砂礫の一粒一粒の概念を壊して常識を超えた重力負荷を与え、その影響を受けた物質を金よりも重い高分子体化する技だ。

 当然、そんな重りが纏わりついたら、自慢の剣速もガタ落ちになる。


 周囲の砂礫がレーヴァテインに纏わりつき、漆黒の刀身を覆い隠していく。

 瞬く間に完成したのは、俺の意思によって重量が可変する白亜の鞘。

 いくら神殺しと言えど、鞘に入ってちゃ人は斬れない。



「これでちっとは俺が有利になっただろ?」

「レーヴァテインを封印したのは見事。でもさ、一時的な封印で左手一本を犠牲にするのは有利と言わないでしょ。まぁ、力の差があり過ぎて、それしか思いつかなかったんだろうけど」


「多少の怪我はしょうがないさ」

「多少?おねーさんの目が見るに、ほとんど動かないでしょ、左腕」



 垂れ下がっている左腕を指差して、レラさんはつまらなそうに笑った。

 そんな、勝負はついたと言わんばかりの態度に、僅かに苛立ちが募る。



「利き腕じゃないとはいえ、左腕は体幹バランスを取る為に重要な役割を果たす。ユルドさんに教えて貰わなかったん?」

「だから動くって言ってるだろ、ほら」



 ボタボタと血が滴ったが、俺の左腕はきちんと動いている。

 握力だってちゃんと有るし、殴ったりガードしたりしても問題ない。

 だが、それを実演して見せると、レラさんは目を見開いて驚いた。

 どうやら、その目には再起不能に見えていたらしい。



「おかしいね。腱が切れてて何で動くのかな?」

「壊れてないからだ」


「壊れてない?どう見ても壊れてんじゃん」

「俺が壊れてないって言ったら、壊れてないんだよ」


「ガキみたいな話を――って、訳でもないのか。にゃるほどにゃるほど……」

「神の理さえも両断するグラムの絶対破壊は、『破壊した』という任意の状態を作り出す魔剣だ。だからこそ、その逆、どんな状態であっても『破壊されていない』とする事で機能不全を起こさせない。それがグラムの『絶対破壊不可』だ」



 もう一度左手を握ってみせると、今度は血すら滴り落ちなかった。

『破壊されていない』という認識をする一方、剣で斬られたら血が出るという神の概念を破壊。

 無理やりな方法ではあるが、これで、一撃で命を刈り取られない限り俺が受けるダメージは最低限となる。



「怪我をしても無理やり我慢するってことね。かなり痛いだろうによくやるよ」

「かつての俺の力を取り戻す為には、痛いくらいで丁度良さそうなんでな」


「窮地に追い詰められてのパワーアップ狙い?ちょっと小説を読み過ぎでしょ、にゃははははー」



 レラさんは砂礫が纏わりついたレーヴァテインを素振りし、重量と感覚を確かめている。

 だが、ランダムに変化する重量に対応するには、まだ時間が掛るはず。

 だから……、俺はその間に見つけなければならない。

 自分の中にある蟲量大数との決戦、その記憶を。


『ユニク、過去のお前はグラムの性能に頼り、いや、その性能だけで『世界最強』と渡り合った。思い出しさえすれば、並み以下の皇種なら戦えるぞ』

『へぇー、じゃさっさと思い出し……って、出来たら苦労はしねぇよ!?その記憶はアプリコットさんの魔法で封印されてるんだろうがッ!』


『落ち着けよ。アプリの魔法で封印してるのは、あくまでもあの子に関する事だけだ。……まぁ、あの子がいる前でグラムの使い方を説明し、あの子と一緒に訓練してたんだけどな』

『じゃあダメじゃねぇかッ!!』


『そうだな。どうやって強くなったのかとか、技の原理とか、そんなものは思い出せん。だが、蟲量大数との戦いで最後に残ったのは俺とお前だ。だから、その時の戦いだけは切っ掛けさえあれば思い出せる。あの時と同じ……、死を覚悟した戦いに身を置けばな』



「ピンチになったら都合よく覚醒するとか、自分でもご都合主義だと思うぜ。だが、俺に関しちゃ理屈が通るらしい」

「にゃはは、なにそれ。主人公じゃん!」


「そうだな。せっかくだ、ここは悪落ちした育ての姉を救いだすって設定で」

「悪落ちって……、剣に悪戯した上に逆切れって、ユニくんの方が反抗期でしょ」


「はは、本気でブチ転がしに行くから覚悟してくれよッ!!」



 ザクリと砂を踏みしめる音……そうだ、この感覚には覚えがある。

 世界最強の破壊力をもつ蟲量大数。そのいかなるどんな攻撃でさえも、万物を粒子へと崩壊させる。

 戦い始めて3分も経たない内に、俺達は砂礫の上で戦っていた。



「《重力衝撃破ガルバーストッ!!》」



 打ち合えば即死。

 だからこそ、俺達は斬撃を飛ばして距離を取っていた。



「あー、剣が振りづらい。癖が強いなぁ」



 バギィン!とけたたましい金属音が鳴るも、お互いに無傷。

 世界最強の硬度を持つ外殻は、並みの斬撃じゃ形跡すら付ける事は出来ない。



「《次空間移動ディメンジョンムーブ》」

「今度は空間の重力の方を壊したか。でも、おねーさんへの影響は遮断させて貰うよ《自然万有引力ニュートラルナチュラル》」



 どれだけ遠巻きに攻撃しても、全ての攻撃が無効化されては埒が明かない。

 だったら、グラムの破壊力を直接叩き込んでやればいい。

 目の前にある重力に関する神の因子を破壊し、最高速度で突撃を仕掛ける。



「《特異点の刻印(シンボル・ユニーク)》」



 願うのは、絶対即死の刃。

 相手が世界最強の硬度を持つというのなら、斬った対象物に破壊の波動を流し込み、どんな小さな傷でさえも致命傷へと進化させればいい。

 僅かにでも刃が通れば、それはすなわち――、両断になるのだから。


 激しい火花を散らしながら激突するグラムとレーヴァテイン。

 纏わせた砂礫を簡単に斬り裂き、その先、漆黒の刀身へ刃を突き立て、絶対破壊の刻印を刻む。



「うおぉらぁあああッ!!」

「……あ、初めて見た。レーヴァテインにヒビが入ったの」


「じゃあ、そのままエンディングだッ!!《無物質への回帰(ユニークエンド)ッッ!!》」

「にゃはは!そうだね、お終い。……合格」



 亀裂が奔ったレーヴァテインへ向けて、渾身の力で破壊の力を注ぎこむ。

 バキバキと亀裂が罅割れへと進化し、やがて、崩壊する様に刀身を砕けさせ――。


 ――いや、違う。

 崩れて無くなるはずの刀身には、未だ、芯が残っていて。



「《覚醒せよ、犯神懐疑=レーヴァテイン》」

「ここまで……、ここまでやって、まだ届かねぇのかッ!?」


「《神害を成す死法の剣ディスハイドゥーゴッデス》」



 真っ白く塗りつぶされた世界、そこで、英雄の剣技を見た。

 全てが精錬された、幾何学模様が煌めく世界。

 その一つ一つがレラさんの剣の軌跡であり、世界を泡沫のように斬り刻む御技だ。



「無くしちゃったね。英雄としての力……、そして、それを持つ右腕すら」



 グラムの覚醒体は砕け散らされた。

 吹き飛ばされた剣の持ち手には、俺の手がぶら下がっている。


 持ち主と斬り離れされたそれらは、地面を飾る模様の一つとなっている。

 奇しくもその位置は、レラさんを挟んで反対側だ。



「はぁっ……、はっ……、ぐっ……」

「おー、よく我慢したね。大抵の奴は腕を飛ばされた時点で意識が途絶えるってのに」


「この程度、蟲量大数にやられた事がある……気がするからな……」



 尋常じゃない量の血が肘から噴き出し、視界の端が白くなっていく。

 ……ダメだ。ダメだ、安心するなッ!!

 相手はレラさんで、斬られたのは斬撃を取り消せるレーヴァテイン。

 どうせなかった事に、助けて貰えるなんて思うんじゃねぇッ!!



「覚醒体も使わされたし、ま、合格点だね。良くできました」

「はぁ、はぁ……、何、勝手に……」


「でも、これじゃあ無理かな。ということで、後はおねーさんに任せて、ゆっくり戦争ごっこでもしてな」

「はぁ、はぁ、……おい。勝手に終わらせ、てんじゃねぇよッ」


「……おねーさんに向かって『おい』ね、ちぃっと反抗期が過ぎるかな?」



 このまま受け入れていれば、苦しい思いをしなくて済んだだろう。

 だがそれは、苦しい想いの後伸ばしにしかならない。

 今ここで無理やりにでも進化しておかないと、後で絶対に後悔すると思うんだ。



「《……来い、グラム》」

「やめなよ、おねーさんは手負いの獣が嫌いなんだ。まだ勝てるって思ってる無謀さが特に鼻に付く」


「《覚醒せよ、》」

「はぁー。飛ばすよ、首」



 朦朧とする意識の中、思考の中に浮かんだのは、歪に『壊れた』の姿のグラムだった。

 それは、過去の俺が呼び出した、……永い時の間、グラムに封印されていた戦いの記憶。

 その中で、見知らぬ男は戦いで肘から先を失うと……、迷わずグラムの刀身をそこに突き刺した。



「今更、そんな事して何になっーー!?」

「《神界殱酷ッ・グラム=ギニョル(残虐の狂喜劇)ッ!!》」



 ――ユニク、グラムの中には手を出しちゃいけねぇ力がある。

 俺はそれで、大陸を半分、沈ませ掛けた。


 あぁ、親子揃って同じ事をするとはな。

 後で叱ってくれ、親父。

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