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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第122話「目標との邂逅②」

「これはレジィの戦争だ。だから、これ以上は何も語らない」



 仕方がなさそうに、けれど、絶対に譲らない。

 そんな表情でレラさんは語り、話はここまでだと俺に告げた。


 だが、簡単に納得して良い話じゃないんだよ。

 これは戦争で、この戦場のどこかでは既に死者が出てしまっているだろう。

 レラさんの感情を蔑ろにはしたくないが……、無理にでも話を聞かせて貰うぜ。



「そりゃあ通らない相談だな。何かを知ってるなら話してくれ。それがレジィの為にもなるだろ?」

「だから話さないんだよ。今ここでおねーさんが介入すると、レジィにはきっと悔いが残る」


「悔いだと?そんなもん、人の命に比べれば――」

「レジィは1%側……、英雄を目指すと宣言した。だから、この戦いは最後までレジィの判断で終わらせてあげたいんだ。例えそれが、敗北の運命だったとしても」



 ローレライさんは戦いに介入せず、その結果どんな結末になろうとも、それがレジィの為になる?

 じゃあ、その為に人が死んでもいいっていうのか?


 俺の脳裏によぎる、レジェンダリアの王位継承問題。

 500名もの高官を虐殺し亡国を演じることで、世界を騙し切ったレラさんの策謀。

 人の命はさ、そんなに軽いもんじゃないだろ。



「受け入れられねぇな。そもそも、介入するつもりが無いのなら何で出て来たんだよ。プラムさんを誘拐したのも俺達をおびき出す為だろ?」

「それは別件。私が狙っていたのは、ユルドさんを倒したっていうタヌキ帝王・エデンだからね」


「あんの親父が、倒された……?」

「逃げ延びてはいるけどね。1%側の最上位、帝王枢機も含めてどんなもんなのか試しておきたかったのさ。別の大陸に行く前に」


「なんだそれ……、別の大陸って、クソタヌキ帝国があるっていう場所か?」

「そんなんあるんだ?楽しみだね、にゃははははー!」



 レラさんの目標は、別の大陸に行く前に、この大陸の強者と戦っておく事だと言った。

 俺を始めとする、英雄見習い。

 皇種、眷皇種、英雄。

 簡単に纏めてしまえば、超越者にカテゴリーされる者と戦って自分の実力を確かめておきたかったらしい。



「エデンを釣ろうと思っていたら、ユニくんが出てきちゃったわけ。ま、それはそれで良いかなと思い直して、ちょっかいを掛けている訳だ」

「戦争とは無関係だっていうのか?」


「そういうこと。ちっとは賢くなったじゃん」



 ……なるほどな、あくまでも無関係を装う訳だ。


 レラさんは『おねーさんが殺さずとも、殺される』と言った。

 それはつまり、俺が殺される程に強く、害意を持った敵が居るという事で。

『おねーさん的にも、そしてユニくん的にも、ここで殺し合うのは有意義なんだ。お互いに望むことだよ』

 そしてこれは……、レラさんと戦って強くなっておけという暗示だ。


 俺はレラさんに勝てると思った事が一度もない。

 雨の日に室内で遊んだゲームだって勝てると確信した事は一度もなかったし、結果的に勝てて嬉しかった事もあったが、同じ戦略じゃ二度と勝てなかった。

 そうか……、レラさんはいつも俺に真意を隠したまま、導いてくれるんだな。


 でもさ、もう、俺はそんなに弱く無い。



「話さないってんなら、しょうがないか。って、納得する訳ねぇだろ」

「にゃはは、納得しなくてどうするん?」


「意図的に情報を流すとレジィの為にならないってんなら、俺はレラさんを倒して情報を聞き出す」

「へぇ……」


「情報収拾は戦争の基本だって聞いたからな。これなら文句ないだろ?」



 これは戦争で、相手の命を奪ってはいけないという条件が付いている。

 なら、最初から懸念なんて無かったんだ。

 立ちふさがる障害は、斬り伏せて進めばいい。



「ユニくん、グラムを真なる覚醒できるようになったんだね。凄いじゃん」

「あぁ、村にいた頃の俺とじゃ比べ物にならないぞ」


「にゃはは!いいねいいね、楽しいね!!そんじゃま、ここでお知らせがあります!」

「お知らせ?」


「おねーさんは犯神懐疑レーヴァテインを覚醒させてない。使わせる事が出来るかな?」



 ふっとレラさんの姿がブレ、刹那、目の前3mの位置に出現した。

 それは転移魔法では無く、卓越した足裁きによるもの。

 俺が出会ってきた中で――、親父よりも鋭いかもしれない動きに、グラムで応戦する。



「《超重力軌道(ガル・システム)》」



 レラさんは人間を超越し、人類の極致にいる。

 だからこそ、グラムの力を使って身体能力を底上げする。

 周囲に散りばめた重力点を駆使しての軌道、これで同等に動けるはず――ッッ!!



「分かり易いよ、それ」

「かはっ……」


「覚醒させるどころか、剣を使う必要性すら感じない。あーあ、興醒めだなぁ」



 ミシミシと肋骨が軋み、潰された肺が強制的に嗚咽を吐かせた。

 間一髪のところで左腕を差し込むもダメージを防ぎきる事が出来ず、視界が点滅しながら5m程は吹き飛ばされた。



「ユルドさんはどんな訓練を付けたのさ?ちょっと甘過ぎでしょ」

「げほ、げほ……、レラさん、つぇーよ……」


「にゃはは、懐かしいねその言葉。いつもは花を持たせて勝たせてあげたけど、今日はそんな訳にはいかないよ」



 地面に伏せている俺とレラさんの距離は4m。

 僅かに姿勢を正し、死角になる様にグラムを構える。


 あと半歩、そうだ、近づいて来い。

 どんな姿勢からでも剣を振れるのが、この技の強みだ。



「《空気破壊パスカルブレッ!?》」

「おねーさんの目は神様の目だ。だから、全部見えてる」



 完全な状態で死角を付いたはずの一撃は、なんの成果もあげられなかった。

 まるでそうなると知っていたかのような淀みない剣閃がグラムを迎え撃ち、無効化。

 その結果、剣がぶつかった証明の音すらしていない。



「なんだ今のは……、これがレーヴァテインの能力なのか?」

「グラムがそうであるように、レーヴァテインも疑心の能力を未覚醒状態で使える。分かってると思うけど、その能力の出力は十分の一以下だけどね」


「じゃあ、そんな状態でグラムの攻撃を受け流したっていうのか?」

「剣の能力自体はレーヴァテインが劣っている。その差を埋めているのは、純粋な技量と神の因子だ」


「神の因子……?」

「おねーさんの世絶の神の因子『絶対視束アルゴリュート』は目に映った物の価値を見い出す。そして覚醒し、世界の理に干渉・鑑賞できるようになった。24時間以内にこの目で見た視点、その現在を、いつでもどこでも見る事が出来るんだ」



 レジィ達の世絶の神の因子ですら、絶大な力を有している。

 言葉で他者を支配する、未来の確率を確立する、音から感情を聞き分けるなどなど、どの力も容易に国を支配できるものだ。


 だが、覚醒したレラさんの神の因子は、その上をいく。

 その力は、24時間以内の視点の全てが監視カメラになる様なもの。

 故に死角が無い……、どころの騒ぎでは無い。

 離れた地の出来事すら一望できる――、神の目。


 考えつくほぼ全ての奇襲が封じられた現状、俺は実力でレラさんを越えなければならない。



「人体構造駆動、経験則、刻一刻と変わっていく戦況、それらを統合し、視束するこの目は行うは――、究極の先読み。未来が見えるおねーさんの目には、ユニくん達の敗北が映っている」

「親父には単純な英雄の強さを叩きこまれたが、レラさんは絡め手が得意なんだな」


「にゃは。これでも一度は王様になったからね。目は肥えているつもりだよ」



 得意げに語るレラさんだが、その目は笑っていない。

 まるで地面の虫を見下すような冷徹なそれは、俺達の間にある絶対的な力の差を露わしているように思えた。

 だが……。



「それが神の因子だというのなら、俺も神の因子『神壊因子コマンドメンツ』を使えば対抗できるんじゃないのか?」

「おおっと、良い着眼点だ」


「負けるつもりなんてさらさらねぇし、そもそも、負けちゃいけねぇんだよ。俺の中に力が眠っているというのなら、まずはその封印を破壊する」


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