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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第118話「戦闘管制」

「ロンリゴン小隊、キングフェニクス小隊と合流。負傷していたストラインを治癒し、進軍可能です」

「北東部より進軍していたジルバシラス小隊、敵軍870を相手に交戦、圧倒。敵兵回収に遅延が出ています」

「ブルファム軍中央天幕へサンジェルマ侵入、指揮官8名を捕獲。帰還要請が来ています」



 総勢250名の管制官が連なる指令室。

 その中央に座っているのは、レジェンダリア軍総司令官のテトラフィーア。

 彼女がその席に座る理由、それはたった一つ『この戦闘管制はテトラフィーア以外には行えない』からだ。


 個人同士の戦いと違い、戦争に勝つ為には、『どれだけ正確な情報を手に入れられるか』と『手に入れた情報をどれだけ有効活用するか』の2点が肝心となる。

 極論、国を滅ぼす力を持っている個別特殊脅威であっても、弱点を突いて殺す事が出来れば勝ちなのだ。

 故に、敵軍の情報を集め、弱点を浮き彫りにすることこそ、もっと簡単に戦争に勝つ方法だ。


 そして、レジェンダリア軍において、テトラフィーアよりも秀でた才能を持つ人間はいない。

 彼女の持つ絶対音階はあらゆる情報を音声から拾得する能力であり、それを利用した戦闘管制システム『情報照合共有チェックメイト』が、盤石な指示を可能にするからだ。



歩兵ポーンNO.100、2―bから2ーdまで水平移動。4―d騎士ナイトNO.37と挟撃し、敵兵35名を拘束してくださいまし」

「続いて、ポーンNO.23、3―aへ後退、3―c歩兵NO.43と合流、bー6まで進軍」

「さらに、1―b、1―d、1―f、1―hの僧正ビショップ、8まで交戦せずに進軍、到着地で射線を確保ですわ」



 テトラフィーアと管制官の前にある液晶画面、そこに映し出されているのは、戦場に出ている者が付けているNO.プレートが発している音波探知を元に作成した精密な立体地図だ。

 それが映しているのは地形だけでは無く、その上にどのような物体『人間』『建築物』『落下物』『罠』があるのかなどを複合的に示している。

 予め作ってあるアイコンの中から近い物が選ばれ自動で更新されるそれは、戦場をまるごと映像化するに等しい――、カミさま謹製の魔道具だ。



「6―g、歩兵NO.89、救援要請です」

「緊急伝令、6―e僧正NO.1(・・・・)、6―g歩兵NO.89、援護。遠距離狙撃で対応して下さいまし」

『了解、……敵兵無力化終了。回収要請8、次の指示は?』


「お見事ですの。温泉でふやけていないようで安心しましたわ」

『そりゃどーも!!』



 そして、その映像には、チェスと同様に数字とアルファベットが振り分けられている。


 ⑧

 ⑦

 ⑥

 ⑤

 ④

 ③

 ②

 ①

  『a』『b』『c』『d』『e』『f』『g』『h』



 縦・横8分割に分けられた盤面は、敵味方の位置関係を明確にし、その動きを浮き彫りにする。

 盤面に出ている軍人に予め振られたNO.(強さ)を元に、的確な戦力配置が可能となるのだ。


 そして、このシステムがチェスを模されているのは、盤面管理だけでは無い。


 終末の鈴の音・歩兵ポーン

 ポーンの騎士・騎士ナイト

 諜報特殊部隊・僧正ビショップ

 全軍総括軍団将・戦車ルーク


 と分かれており、それぞれ与えられた役割がある。

 特に、メイが率いる特殊私兵と、セブンジードが率いる諜報部隊を合わせた諜報特殊部隊『命脈消音(サプレッサー)』の有用性は大きい。

 広い攻撃範囲と対応力が有り、戦況のコントロールを担う心臓部だ。



「ふぅ……、ひとまず、私たちが有利な状況まで盤面を回復させましたわ」

「さすがテトラぁ。惚れ惚れする手腕ねぇ」


「それでも、いくつか誤算がありますの。……突如、空に出現したメカゲロ鳥2号は、どう呼称すればよろしくて?」

「冥王竜だとややこしいしぃ、普通にゲロ鳥で良いんじゃないかしらぁ?」


「……ゲロ鳥、そのまま空に待機。そこにいるだけで十分に敵を錯乱してますから、撃墜されないようにしてくださいまし」

『ぐるぐるきんぐぅー!』



 厳格なチェスの盤面に異物が紛れ込み、テトラフィーアは眉間に皺を寄せた。

 ゲロ鳥が居るというだけで頭を抱えたくなるというのに、未曾有の大災害に匹敵する暴力を知らされていなかったからだ。


 愉快そうに笑っているレジェリクエの声から心情を聞き取ったテトラフィーアは、「フェニクスにあんな能力があるなんて、いつ調べたんですのー?」と思っている。

 だが、戦況対応に追われてタイミングを逃し……、一旦、思考から追い出しておく事にした。



「さて、だいぶ情報が集まりましたが……。陛下、結論はどのような物になりましたの?」

「聞いたらビックリするわよぉ」



 テトラフィーアが戦闘管制をしている最中、レジェリクエはポーンの騎士から上がってくる報告と盤面と照らし合わせ、メルテッサの能力解明に取り組んでいた。

 それぞれへ個別に指示を出し、魔道具が発揮している性能、効果範囲と時間、同時に使用した場合などの検証を行い、統計学などの数理的手法を用いて答えを導き出す。


 そしてそれは、レジェリクエが知っているどんな能力よりも優れたものだった。



「物質主上は、『指定範囲内にある道具、その過去の能力値を含めた全ての性能を、任意で発揮させる力』。一言でいうなら、遠隔操作ね」

「この時点で十分にチート、神の因子が進化しただけで、これ程までに利便性が上がるんですのね」


「変更された点は二つ。『対象が所持している魔道具から、指定範囲内に存在する全ての魔道具へ変更されている』、『他者や自分が発揮した能力を任意で行使できる』。そして、弱体化や異常動作は観測されていない」

「マイナス補正が無いのが救いですわ。でも、行使できる能力は『過去最大』だけではない。ですわね?」


「正解。メルテッサが余の声を真似出来たのは、通信機が過去にレジェリクエの声を発した事があるから。メルテッサが声真似をしていたのではなく、機械で声を変えていたのね」



 メルテッサが声真似をできた理由、それは『通信機を操作し、レジェリクエと同じ周波数の声を発するように設定した』からだ。

 通信機が機械である以上、それがどのような音を発するのかはメルテッサの想いのまま。

 言葉を変えるのか、音質を変えるのかの違いしか無く、本質的にそれらは同じものだ。



「そして、能力を発揮させるには、対象と範囲を指定する必要がある」

「対象と範囲?」


「この能力を使うには、能力を発揮させたい魔道具と、能力の参考元を同じ系統で結ぶ必要がある。例えば、『長剣』という系統で対象と範囲を縛ると、『範囲内にある長剣に、その中の長剣が過去に発揮した最高の切れ味』を付与する。という具合に」

「なるほど。『長剣』を指定しているから、『短剣』には影響を及ぼせないと。ですが、『剣』で縛ればいいだけでは?」


「それだと弱体化する可能性があるわ。長さも重さも違う剣に能力を付与しても、何処かで無理が発生するもの」

「確かに。では、普通の剣が炎の剣の性能を発揮した例は観測されていません。なぜですの?」


「系統が離れ過ぎていると、対象範囲に入らないのでしょう。事実、レジェンダリア側が装備している伝説級の魔道具、及び、カミナが作った特注装備の性能は改変されていない」



 グオを始めとするポーンの騎士は戦場を駆け巡りながら、様々な武器を使用し性能の変化を調べた。

 その結果、炎の魔剣の切れ味には向上が認められたが、同時に出した水の魔剣の能力を行使する事は出来ていない。


『剣』として持つ切断力→『剣』に付与可能。であるのに対し、

『炎の魔剣』の火炎魔法→『炎の魔剣』に付与可能なのではないかと結論付けた。



「もし、対象を『魔剣』にすれば、水の魔剣で炎を出す事が可能になるかもしれないけど……、やはり、何処かで無理が起こって弱体化する。矛盾する事は出来ないって事ね」

「効果範囲が5kmもあると、細かい指定はできないんでしょうね。物質主上は扱いにくい神の因子でしたもの」


「そして、そこに勝機があるわ」



 テトラフィーアが聞き取ったレジェリクエの声、そこに含まれている感情は危機と嬉々。

 久しく忘れていた不利に立たされる感覚、それをレジェリクエは面白いと思っている。


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