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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第107話「大魔王朝礼③」

「侵略会議を始めるわ。今、余が最も欲するは『時間』。手早く決めて、早々に決着を付けるわよ」

「おう」

「了解。一秒でも早くセフィナとワルトナを助け出す!」



 ブルファム王を取った今、戦争自体の決着は付いたと思っていた。

 だが、ラルラーヴァーと第六姫・メルテッサが共同で宣戦布告を出した事により、状況は一変している。

 もし仮に……、ロイを含めた王位継承者の全員を殺害され、絢爛謳歌の導きを奪われれば、正当な王位継承者はメルテッサとなってしまうからだ。

 現状は俺達の方が有利なはずだが、油断はできない。



「まずは、セフィナ、ラルラーヴァー、メルテッサ。この三名が何処にいるのかについてだけれど、ワルトナは『ブルファム東・平原』『レジェンダリア軍』と言い残している。故に、セフィナ、ラルラーヴァーはそこに居ると仮定するわ」

「なるほどな。だが、ワルトは俺達に『逃げろ』とも言っていた。敵の戦力は相当に高いはずだ」


「そうね。ただ、それはラルラーヴァー個人に対する評価よ。だから……、ユニクルフィン。貴方一人でラルラーヴァーに勝つ事が出来るかしら?」



 真剣に問い掛けられた質問、それは『英雄見習いを超えろ』というものだった。

 あえて俺一人に限定している理由は分かる。

 リリンの相手はセフィナであり、そして……、ラルラーヴァーは俺の過去の関係者。

 なら、俺がケジメを付けるのが筋だ。



「勝つさ。俺だって昔は英雄見習いを名乗っていたんだ。過去の俺に出来て、今の俺が出来ませんじゃ話にならねぇだろ」

「よろしい。では、ユニクルフィンの第一目標をラルラーヴァーに設定するわ」


「任せろ。きっちり捕まえてやるぜ!」



 英雄見習い。大牧師。神殺しの使い手。

 そんな情報は取るに足らない些事だ。

 俺とグラムが揃っている以上、条件は同じ。

 後はただ普通に勝って、そしてーー、アイツの頭でも撫でてやればいい。



「次に、リリン。あなたの相手はセフィナよ。ここで確実に捕まえなさい」

「分かった。セフィナは天才と言えどアップルルーンにはまだ慣れていないはず。付け入る隙は十分にある」


「余と戦った時が初搭乗だと言っていたわ。あぁ、セフィナは指導聖母の教えを受け継いでいるだけあって、認識錯誤の魔法を使ってくる。気を付けなさい」

「その戦い方はワルトナで慣れてる。分かっていれば問題ない。あ、そうだ。カミナにお願いがある」



 俺に続いて目標を定めたリリンは、平均的にギラついた目をカミナさんに向けた。

 猛禽類のように鋭い上目遣いで、静かに口を開く。



「私は全ての魔王シリーズを集め終えた。でも、その内の二つは私専用にチューンアップされていない」

魔王の下肢骨格(デモン・ロアボーン)魔王の靭帯翼(デモン・リグメント)ね」


「そう。カミナにはこれらの最適化をお願いしたい。セフィナは慣れていないと言えど、相手は帝王枢機。私も本気でいく」

「分かったわ。時間がないから、すぐに出しなさい」



 リリンが持っている魔王シリーズは7つ。

 その内の5つの時点で、九万人の冒険者を一方的に蹂躙しまくった。

 だが、相手はカツテナキ・クソタヌキロボシリーズ『帝王枢機・アップルルーン=ゴモラ』。

 万全の上に完全を重ねても、心配が過ぎるという事は無い。


 早速、リリンは召喚陣を発動し、二つの魔王を呼び寄せた。

 その波動にロイが青ざめるも堪え……、ん?カミナさんの頬が引きつっているな。なんでだ?



「魔王の下肢骨格の方は美品だから良いわ。で、リリン。この袋に入った残骸は何かな?」

「魔王の靭帯翼……、だったもの!」


「こんな状態だとチューンアップって言わないわ。リメイクっていうのよ」

「今は呼び方とか、どうでもいいと思う!文句ならセフィナを捕まえた後で聞くと誓う!!」


「よし。言質は取ったわ。レジェ、隣の部屋を借りるわよ。あぁ、もし覗きなんていう崇高な趣味をお持ちの方が居たら、遠慮しないで部屋に入って来なさい。実験材料として使ってあげるわ」



 輝かしい光を灯した笑顔で毒を吐いたカミナさんは、二つの魔王を抱えて隣の部屋へ消えていった。

 なお、誰ひとりとして一緒に行こうとする者はいない。

 ……カミナさんの目はマジだったしな。

 誰だって命は惜しい。



「さて……、最後は想定外のイレギュラー、メルテッサだけれど……。コイツは余が相手をするわ」

「レジェだけなの?相手はワルトナの策謀を掻い潜っている。一人は危険だと思う」


「そうねぇ。テトラはレジェンダリア軍の総指揮官として、開いた戦端を閉じて貰う。必然的に余のパートナーはいない訳だけれど、誰か適当に見繕うわ」



 大魔王陛下は仕方がないと肩を竦めているが……、問題大有りだ。

 この戦争の仕掛け人であるレジェリクエ女王が討ち取られれば、それだけで戦線が崩壊しかねない。

 メルテッサの実力がラルラーヴァーよりも未知数である以上、危険な橋は渡らない方がいい。



「適当にって、危険すぎるだろ。サーティーズさんの件もあるしな」

「では、僕が行こう」


「……ロイ?お前じゃ――、」

「言うな、ユニフ。戦闘力で劣っている事なんか百も承知している。僕がレジェリクエ陛下と一緒に行くのはサポート要員としてだ」



 事態を静かに見守っていたロイが、決死の表情で語りだした。


 ロイ曰く、ブルファム東の平原は軍馬演習で何度も訪れていて、地の利があること。

 さらに、メルテッサと顔見知りであり、隠れ場所の見当が付いていること。

 そして……、



「ここが戦争の最終局面なんだろう?なら、次代のブルファム王として参加しない訳にはいかない」

「これは余が敷いた運命ではないわ。戦死する可能性だってある。覚悟はしているのかしら?」


「そんな可能性は無い。だって僕は英雄見習いの友人だからね。危なくなったら、ユニクルフィンが助けに来てくれるさ」

「あら、調子がいい事ぉ。いいわ、気に入った。余に仕えなさい、ロイ」



 本当に調子がいいとは思うが……、ラルラーヴァーが直ぐに見つかるとも思えない。

 もし大魔王陛下が俺達より先にメルテッサを見つけた場合は応援に行き、協力して倒してもいい。


 それに、そもそも、ラルラーヴァーとメルテッサが一緒に行動している可能性だってある。

 リリンがアップルルーンに苦戦する事も考えられるし、俺は敵全体を狙う『遊撃役』をやった方が良さそうだ。



「では、ユニクルフィンはラルラーヴァーを捜索しながら、救援要請が出た所に駆け付ける。確実に敵の戦力を削いでちょうだい」

「あぁ、任せろ。この戦争ではイマイチ活躍できてねぇからな。ばっちりフォローに入って、称賛を送りたくなるような戦果を上げてやるぜ!」


「恩賞は期待しておきなさぁい。では、リリン。ホロビノを呼んでくれるかしら?冥王竜ともども戦場に乗り付けるわよ」



 ここにいるのはごく少数であり、ホロビノと冥王竜の二匹が居れば問題なく移動できる。

 既にレジェンダリア軍が本陣を構えているから、この身一つで行けばいい。


 そして、リリンがホロビノを呼ぶ笛を取り出し、一気に息を吹き込んだ。

 ピィーーー!という甲高い音が放たれ……、なぜか、外からタヌキの悲鳴が聞こえる。



「ちゃんと着地するし!」

「ギギロアッ!?ヴィギルギル!?!?」


「文句言うなしぃー!!」

「ヴィギロァアアアアアアッ!!」



 ……は?

 っと思っていると、外から風を切る音が聞こえて来た。

 そして、勢いよく窓から飛び込んでくる、ふっくらタヌキ。


 その勢いは止まらず、目の前の机にぶつかってバウンドし、結果的に俺に胸の中に収まりやがった。

 色々と言いたい事はあるが……、凶暴な幼馴染を持つと苦労するよな、ドングリ。



「う”ぎるあ!!リンなんちゃら、困った事になったし!!」

「ん、どうしたの?プラムは見つからなかった?」



 冷静を取り戻した俺がドングリを窓から投げ捨てようかと思っていると、そこからアルカディアさんが登場した。

 出て行った時も驚きだったが……、ここ、何階だと思ってやがる?



「プラムは人間の群れの中にいる。それ自体は良いけど……。ヤバい奴が見張ってたし」

「ヤバい奴……?どんな人?」


「おじさまに匹敵する人間。アレはヤバい。お腹が減ってる時に相手していい奴じゃないし」



 おじさまに匹敵するヤバい奴だと……?


 親父に匹敵するって、明らかに英雄クラスの実力者だ。

 だとすると……、ラルラーヴァーがプラムさんを捕らえているって事なのか?



「これは良くない状況だよな?ラルラーヴァーの居場所を見つけたという点では好機だが……」

「この後に及んで面倒事を起こしてくれるとかぁ、どちらのお馬鹿さんかしらぁ?」


「どちらのお馬鹿さん?ラルラーヴァーだろ?」

「違うでしょうねぇ。ねぇ、アルカディア。そのヤバい奴の特徴を教えてくれるかしら?」


「茶色い髪の女剣士だし!!でも、私の動きを見切るとか、絶対魔法が得意なはずだし!!」

「……。OK、分かったわ。アルカディアにはその敵を任せる。満足するまでご飯を食べて、本気で戦っていらっしゃい」


「お腹が減っていなければ、速攻で倒すし!!」

「そんな事になったら、色んな意味で歴史が動くわぁ」



 一瞬だけ思案した大魔王陛下は、そのヤバい奴への対処をアルカディアさんに任せた。

 だが、ラルラーヴァーやセフィナ、メルテッサ以外の第三の強者の出現は看過できるものではない。



「アルカディアさんは、そのヤバい奴が何処にいるのか分かるんだよな?」

「匂いを覚えたから追跡できるし!」


「そうか。なら……、最初は俺、リリン、アルカディアさんでソイツの所に向かおう。その後、三人で戦うか、離脱してセフィナとラルラーヴァーを探すかは臨機応変に行く」



 どんな流れになるのか分からないが……、居場所が分かっている敵は直ぐに片付けた方がいいはずだ。

 だが、全員で向かってしまうと、それが敵の罠だった場合、後手に回る可能性がある。



「チームを二つに分けたいと思うんだが、どう思う?大魔王陛下」

「そうねぇ。そのヤバい奴という人の立ち位置か分からないものぉ。どんな顔で会えば良いのか分からないわぁ」


「そうか。プロジアさんみたいな第三勢力って可能性もあるんだよな……。よし、俺達はラルラーヴァーやセフィナを探しながら、そこに出向く。大魔王陛下は自分の作戦を優先させてくれ」



 別働隊の大魔王陛下、テトラフィーア、ロイは一度レジェンダリア軍と合流し、戦力を再編成。

 バルワンさんを含めた軍団将と打ち合わせを行い、万全の状態でメルテッサと相敵する。


 こうして、俺達の作戦は決まった。

 窓の外に見える二匹のドラゴンが到着次第、一気に攻勢を仕掛けるぜ。

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