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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第10章「真実の無尽灰塵」

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第95話「真・王女攻略⑦」

「はぁぁ~?メルテッサが悪性マリグナンシィ?あの子にそんな事はできません」

「あらあら、嫉妬ですの?妹の功績を認められないなんて、ブルファム王国の男尊女卑は女性同士でも通用しますのねー」


「だから、出来ないんですよッ!!だって私と同じ姫なんですッ!!出来る訳ないじゃないですかッ!!」

「出来ちゃったから問題なんですの。メルテッサは私達を出し抜くほどに強かですわ」



 大魔王大臣とポンコツ姫の姦しい戦いを背景に、俺はワルトの行方について考えている。


 ニセタヌキによって監視されているワルトは、ブルファム王城のどこかに捕らわれているはずだ。

 普通に考えれば牢屋にいるんだろうが、悪性を罠に嵌めて捕らえている以上、ある程度は自由に行動できる環境のはず。


 それらを踏まえると、この東塔にいるってのが最も納得できる。

 指導聖母・悪性が姫だというのなら、ここに出入りしていただろうしな。



「んー、じいちゃん。この東塔の中で白い髪の捕虜を見なかったか?その子がリリンの親友のワルトナなんだけど」

「捕虜などおらん。部外者でウロウロしておるのはラルラーヴァーだけだ」


「そうか。じゃあ王城の方なのか……?」

「それよりもだ、ユニクルフィン。メルテッサが悪性というのは本当か?」



 知ってたら楽で良いんだけどなーっていう俺の願望を討ち砕き、オールドディーンが話題を擦り変えた。

 まぁ、姫の教育者というの立場からすれば、教え子が指導聖母だったなんて笑えない話だ。

 真実を知りたくなるのは当然なんだが……、残念なことに、俺も知らない。



「正直に言って、俺は全く知らん。そういう策謀は大魔王陛下やテトラフィーア大臣の領分だしな。ロイは?」

「僕も同じだ。一応、僕は侵略された領地の領主だからな。ある程度の警戒はされて当然だ」

「知らんのか……。うぅむ」


「じぃちゃんにとって、メルテッサは身内みたいなもんだろ?それが指導聖母って権力を持ってるんなら良い事なんじゃないか?」



 戦争に負けそうとはいえ、ブルファム王家の中に指導聖母が居るのは心強いはず。

 大魔王陛下への抑止力になるし、指導聖母として持っている利権だってある。


 だが、じいちゃんの顔は色褪せ、逆にポンコツ姫の顔は真っ赤に染まっている。

 大局的な二人の態度を見る限り、なにかの因縁がありそうだ。



「メルテッサに思う事があるのか?アルファフォート姫の怒りも酷くなってるし」

「指導聖母・悪性とは、月毎に顔を合わせておる。陛下が伏せておる今、指導聖母との調停役は儂とアルファフォートが行っておるのだ」


「なるほど、圧倒的格上だと思っていた人物が身内でビックリしてると」

「それもある。だが……、アルファフォートと悪性は犬猿の仲なのだ。主にアルファフォートが自爆し、それを悪性が全力で馬鹿にするという構図が出来あがっておる」


「う、わー」

「問題なのは、姉妹としての仲は悪く無い事だ。むしろ、アルファフォートはメルテッサを重用しており、自分が王位を継いだ後で実務を任せる腹積もりなのだ」


「それ、姫として受けたストレスを指導聖母で発散してるよな。信頼関係がぶっ壊れてるじゃねぇか」

「信じたくないものだが……、メルテッサが指導聖母という物証は無いのか?」



 確かに、テトラフィーア大臣がポンコツ姫を煽る為に嘘をついている可能性はある。

 ……が、そんな事をしなくても、一方的にボッコボコにできるだろ。


 ほんの僅かにポンコツ姫の声に耳を傾けてみると、筆舌しがたい暴言が叩き付けられていた。

 一応、メルテッサを引き合いに出しているものの、その本質はポンコツ姫への嘲笑。

 妹に全く勝てていないと野次られ、なぜかこんにゃくが舞っている。

 ……あ、ポンコツ姫が涙目で震えだした。



「証拠はないけどさ、嘘を吐く必要もない。メルテッサは本当に指導聖母だと思うぞ」

「その意見に賛成だ。僕としても信じがた……ユニフ、レジェリクエ陛下の書状が光り出したぞ?」



 ロイが指差した先にあるのは、光り輝く大魔王陛下の勅令状。

 携帯電魔の包み紙かと思ったら、ちゃんとした役割があったらしい。


 突然の展開に俺達が身構えていると、勅令状の上に魔法陣が浮かび上がった。

 そして光が収まると……、そこには黒い重箱が召喚されている。



「えーなになに?ブルファム王国内における指導聖母活動の物証・その①」

「物証が欲しいと言っていたら、本当に届いたな」


「……なぁ、ロイ。盗聴器は見つけたか?」

「あぁ。だが、外す事は出来ないぞ」


「なんでだ?」

「服の全てのボタンが盗聴器だからだ。全部を外してしまったら、僕のズボンが落ちてしまう」



 発見される事すら織り込み済みなのか……。

 用意周到だな、大魔王共。



「僕の服の事は良い。それよりも」

「テトラフィーア大臣は熾烈な戦いを繰り広げながら、俺達の会話も把握してるって事だな。なにそれ、怖い」

「ふん、それくらい造作もなかろうよ。だから恐ろしいと言っておる。それで、この中には何が入っておるのだ?」



 オールドディーンは興味津々そうに重箱を眺めているが、手を伸ばしてはいない。

 相手の資産に許可無く触れるという非礼をしない為だろう。


 なので、俺が礼節に則って重箱の蓋を開け、オールドディーンに差し出した。

 箱の中に入っていたのは……、ブルファム姫の経歴調書……?



「ふむ、姫全員が個別にファイリングされておるのか。だが、厚さに随分と差があるな」

「メルテッサは辞書並みの厚さだな。次にテロルさんと来て……手羽先姉妹もそこそこページ数がありそうだ」

「逆に、アルファフォートさんのは薄すぎる。というか、表紙しかないよな?」



 そう言ったロイがアルファフォートさんの調書を手に取って開いた。

 そこに書かれていたのは、たったの一行。


『ブルファム第三者王女。特記事項・無し』


 と書かれていた。



「アルファフォート姫って『第三王女』だよな?俺の目が確かなら余計なもんがくっついてやがる」

「……『第三者』王女か。明らかに『当事者じゃない』という意味が込められているだろうな」


「いくらなんでも可哀そう過ぎる……。特記事項にも何か書いてやれよ、大魔王」

「アルファフォートさんは基本的に東塔から出ないからな、しょうがない」



 無言で目を背けたオールドディーンを見る限り、フォローの仕様が無いっぽい。

 それ程までに酷いのか。ポンコツ姫の実態。


 ちらっと視線を向けてみると、ポンコツ姫はぷるぷるしながら机に突っ伏していた。

 酒場で潰れている冒険者そっくりな光景を見てしまうと納得するしかないぜ!



「肝心のメルテッサの調書だが……、認める他ない様だ」



 現実から目を背ける為に調書を手に取ったオールドディーンは、別の現実に行きついて溜め息を吐いた。

 調書の中は決定的な証拠だらけだったらしく、諦めるしか無かった様だ。

 それにしても……、ワルトですら指導聖母の正体を掴みあぐねていると言っていたはず。

 良く調べたもんだぜ。



「悪性と直接的な関与をしたことはないが……、メルテッサが指導聖母か」

「あぁ、そうか。ロイにとっちゃメルテッサは妹分になるのか」


「随分と実力を隠していたようで僕も驚いている。指導聖母になったのは3年前なんだな」



 記されていた情報によると、指導聖母・悪性はブルファム王国に属している指導聖母の取りまとめ役。

 指導聖母が出した利益をブルファム王に奏上し、その見返りを他の指導聖母に分配する立場だったようだ。


 当然、その頭脳は大魔王並み。

 実績があり、王族としての血統も所持している以上、ポンコツ姫に勝ち目はない。



「なんか……、言葉に困るな、ロイ」

「そうだな、ユニフ。アルファフォートさんも、自分なりに頑張ってきたんだろうが」



 遠い目になった俺達の視線の先には、人生に絶望したポンコツ姫がいる。

 いや、もはやポンコツというよりもガラクタに近い。

 なにせ、電話から聞こえてくる暴言の破壊力が高すぎる。



「同じ条件の妹達は強かに人生を歩んでいるというのに、貴方は夢見がちに肥え太るばかり。私、溜め息を吐きたいですわー」

「ぐすぅ、ごふ、ぐぅぅ……」


「そう言えば、ブルファム王国の婚姻適齢期は16歳でしたわね。20歳を過ぎた今、消費期限も過ぎているのではなくて?食べられないこんにゃくなど、いよいよ、使い捨てるしかありませんわ」

「ぶぅふぅ……、ぐす、ちぐしょぉぉ」


「貴方はブルファム姫の中でも下の下の下、総じて丸めて、ぐるぐるっー!ですわねー」



 机に伏して体を起こせないアルファフォート姫の眉は吊り上がり、目には涙を溜め、鼻息は荒く、耳は真っ赤で、口は引き締まり、頬は膨らんでる。

 顔のパーツ毎に喜怒哀楽を表現するとか、ずいぶん器用だな。


 しょうがないので、俺が認めてやる。

 顔芸だけは一級品。



「ぐじゅ、ぐぅ、ぐぅぅぅ……」

「あら、耳障りな鳴き声だこと。これじゃ、ゲロ鳥にすら見向きされないですわ」


「じぇったい、じぇったいころしてやるぅ……、まおーめぇ……」

「うふ、お待ちしておりますわ。あぁ、準備期間は30年以内でお願いします。『ヴィンテージ(年代物)こんにゃく』とか聞いた事がありませんもの」


「ぐぅぅぅう!!また馬鹿にしてぇぇ!!」



 怒りと悲しみと憎しみと殺意と嫉妬と苛立ち。

 あらゆる負の感情が混じり合った瞳で、ポンコツ姫が携帯電魔を握りしめている。


 そろそろ収拾を付けたい所だが……、テトラフィーア大臣は、一体何を考えて此処まで酷い罵倒をしてるんだ?

 いくらなんでもやり過ぎだし、何か裏があっ、



「ユニク!最高のディナーが出来た!!」



 ここで腹ペコ大魔王、帰還。

 平均を軽々と超えた満面の微笑みで、俺に笑顔を向けている。

 そして……、その横にいるのは、同じく満面の頬笑みのテトラフィーア大魔王大臣だ。


 ……。

 …………。

 ………………収拾?付く訳ねぇだろ。

 今からここは戦場だ。

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